LIBERAL TAIL   作:タマタ

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第11話: それぞれの激戦

響き渡る高音が戦いの激しさを知らせる。間合いのない連続の斬撃を経験と神経を頼りに避けていた。そして、強烈な斬撃を確実に与え、着々と魔動機の数を減らしていたエルザも体力がかなり減少したのか、細かな息が微かに溢れていた。

 

「面白いぞ、妖精女王(ティターニア)。俺の魔動機相手にここまでやってくれるとはな、驚いたぞ」

 

「ふっ、そうか。ならば、こちらも全力を尽くす・・・換装!天輪の鎧!!」

 

「行けぇっ!」

 

ザーロが作り出した魔法陣から数々の魔動機が現れた。目測だけでは検討がつかないほどの数だった。100、いや、もしかしたらそれをも優に超えているのかもしれない。

しかし、臆することなくエルザは立ち向かい、体勢を少しの間、低くしてから跳びかかっていく。

 

「天輪・繚乱の剣(ブルーメンブラット)!!!」

 

魔動機とエルザがすれ違う様に、魔動機の大群と匹敵するほどの無数の剣が魔動機をことごとく切り裂き、粉々にした。それでも、魔動機の数は半分、減っているかどうかであった。

 

「けっ、やるじゃねーか。だが、これからだぜ?」

 

包み込むように包囲されたエルザは鎧の周りを浮遊する剣で自分を囲むようにして、隙を作らないようにした。しかし、魔動機は無感情の兵器。死を恐れずに向かってきた。

 

「甘い・・・!」

 

エルザは浮遊させていた剣を精密に操り、魔動機に突き刺し、切り裂いた。魔動機が一瞬で数を減らしていった。

その時、1機に魔動機が剣の嵐を掻い潜りエルザの懐に潜り込んだ。すぐさま、飛び退くがさらに詰め寄ってくる。すると、わずか数歩しかないこの近距離で手のひらから筒のようなものを発射してきた。

 

「くっ・・・!はあぁっ!!」

 

右剣を振り上げて、筒を真っ二つに切り裂いたエルザはそのまま、距離をおこうとした刹那、筒が急に破裂した。その瞬間、エルザの鎧のわずかな隙間に細かな針が何本も突き刺さった。

 

「くぅ・・・!?な、なんだこれは・・・・・・!」

 

「その筒の中に仕込んだ麻痺針が全方位に飛ぶ仕組みになっている・・・。強烈な麻痺性だ。そう簡単に動けねーだろ・・・」

 

「うくっ・・・動け・・・な・・・い」

 

「終わりだな、妖精女王(ティターニア)

 

魔動機がエルザの方へとゆらゆらと浮いて、近づいていく。そして、1本の剣を振りかざした。そして、エルザの脳天めがけて振り下ろされた。

 

「なっ・・・!?やるじゃねーか。気力で動くとはな・・・」

 

「ハァ、ハァ・・・ハァ」

 

ふらふらと立ち上がり、剣が落ちそうな握る力で目が半分くらいしか開いていなかった。身体の節々がピリピリと痺れているのが、肌で感じられる。

 

「そろそろ、終わりにしようじゃねーか・・・!!」

 

「いいだろう、ハァー・・・ハァ」

 

ザーロの後ろにいる無数の魔動機の標準が一斉にエルザに向けられた。次の瞬間、魔動機が一気に足裏からものすごい強烈な空気を発射し、ものすごい速度で突撃していった。

それに対し、剣の数を増やし、飛び上がったエルザはたったひとりで突撃していった。

 

「はぁぁぁあぁあぁっ!!!」

 

偉大な雷声を上げて、エルザは猛烈な気迫で魔動機の大群の中へと入り込んだ。そして、魔動機の大群の中でまるで、爆発が起きたかのように魔動機達が粉砕し、真っ二つに割れ、吹き飛んだ。

 

「換装!!黒羽の鎧!!!」

 

すぐさま、換装してから猛勢な勢いで魔動機を切り裂いていく。次々に吹き飛び、切り裂かれていく。

 

「黒羽・月閃!!!」

 

攻撃力を跳ね上げ、斬撃を繰り出した。次々に呑み込まれ、魔動機達は粉々にはじけ飛ぶ。

 

「換装・・・飛翔の鎧!!!くらえ・・・飛翔・音速の爪(ソニッククロウ)!!!」

 

両手に握られた双剣で一瞬にして魔動機を切り刻んだ。そして、最後となった魔動機に向かって剣を×印型に交差させ、切り付けた。

 

「ハァー・・・ハァ・・・ハァー」

 

「へっ・・・・・・流石だぜ・・・」

 

一瞬に間合い詰めたエルザは剣先をザーロに向けていた。ザーロは身動きが取れずに額に汗を流しつつ、冷静さを装う。

 

「リーナはどこにいる?」

 

「フン、教えるとでも・・・おもったかよっ!!」

 

「な!!?」

 

後ろから魔動機が吹き飛んできたのをすぐさま、横薙ぎに払った。魔動機が一瞬にして破壊されたが、ザーロに背を向けてしまっていたエルザは隙だらけだ。

 

「どうせ、死ぬなら一緒だ、クソヤロー!!!」

 

「爆弾っ!!?」

 

ザーロの手には魔法によって作られた、爆弾らしきものが握られていた。今にも爆発しそうな緊張感を醸し出す。

 

「堕ちろぉぉぉおおお!!!妖精女王(ティターニア)ァァァアアア!!!」

 

要塞の一部に強烈な光が生じ、刹那、大爆発が起きた。

 

 

 

 

 

 

 

「ジュビアを甘く見ないほうがいいわ」

 

ジュビアはそうグレイに自信満々の忠告を放った。

 

「そうかい。なら、俺も忠告しておくぜ。妖精の尻尾(フェアリーテイル)をなめんなよ」

 

「そ、そう・・・私の負けだわ。ごきげんよう・・・・・・」

 

何故かジュビアは頬を赤らめてグレイに背を向けてしまった。その行動に深い意味が見られないグレイは思わずコケそうになった。

 

「オイオイオイ!!」

 

「(自分のものにしたい!!!ジュビア・・・・・・・・・止まらない!!!)」

 

ジュビアは急激に振り返り、グレイを睨みつけるような狂気な殺気を放った。驚くグレイに容赦なく魔法を放つ。

 

水流拘束(ウォータロック)!!」

 

グレイをあっという間に水塊に閉じ込めた。

 

「ごぽっ・・・うぎぃっ・・・!」

 

グレイは以前、シェルナにやられた傷口が開き、激痛に耐えられず、おもわず声が漏れた。

 

「まあっ!!怪我をしていらしたなんて!!ど、どうしましょっ・・・解かなきゃっ!!!」

 

急いで魔法を解こうとするジュビアより早くグレイが力を振り絞った。

 

「ぁぁあ・・・あぁぁああっ!!!」

 

グレイは水を自ら氷へと凍らせ、自力でジュビアの拘束から脱出した。

 

「やってくれたなぁ・・・コノヤロー・・・・・・痛てて」

 

腹の傷を抑えながら、服を脱ぎ捨て、ジュビアを睨んだ。その姿を見るジュビアはさらに頬を赤らめた。グレイは気づかずに魔力を高めだした。

 

「アイスメイク・槍騎兵(ランス)!!!」

 

数本の槍をジュビアに放った。しかし、ジュビアの身体に命中したのだが、槍はジュビアを通り抜けていった。いつの間にか、ジュビアの身体は液状化していたことにグレイが気づいた。

 

「な、なんだ!?」

 

「ジュビアの体は水でできているの」

 

「はぁ!?水だぁ!!?」

 

ジュビアの尋常ではない能力に驚愕するグレイは思わず2歩、後退した。対するジュビアはなぜか悲しそうな表情で魔法を放った。

 

「さよなら、小さな恋の花!!水流斬破(ウォータースライサー)!!!」

 

「なに言ってんだコイツ―――っ!!」

 

ジュビアの魔法をギリギリで避けたグレイはそのまま、攻撃態勢に入った。そして、右拳を左の手のひらに乗せる。そして、唱えた。

 

「アイスメイク・戦斧(バトルアックス)!!!」

 

造り出された巨大な氷の斧をジュビアめがけて横一閃に振るうがジュビアの体はまたしても、液状化し、攻撃は無意味になっていた。

 

「あなたはジュビアには勝てない。今ならまだ助けられる。リーナを諦めて頂戴」

 

グレイにそう交渉をだしたのだが、グレイはそれを大きく否定するどころか怒声をあげる。

 

「ふざけたこと言ってんだじゃねーぞ。リーナは仲間だ。命に代えても連れ返すぞ!!」

 

「ッ!!」

 

グレイの言葉を聞き、頭は上の空になったジュビアは傘を落とし、目に涙を浮かべた。その様子に戸惑いながらも、グレイは気迫を出し続ける。

 

「キィィイイイイイイッ!!!」

 

「な、なんだ!!?」

 

「ジュビアはリーナを許さない!!リーナを決して許さない!!!」

 

なぜか衝動的に動いていたジュビアは帽子を脱ぎ捨て、突如体のいたるところから湯気が沸い出てきた。そして、一瞬にして温度が上がる。その水しぶきがグレイの頬に掠る。

 

「あちっ!!熱湯っ!!?」

 

急襲にグレイは飛び退いて避けるが、回り込まれてまたすぐに追撃を狙われるハメになる。

 

「くっ!!」

 

それを身体の屈伸運動のみで反動をつけて跳び上がり、またしても避けた。しかし、ジュビアもすぐさま、方向を変え、突進してくる。

 

「くそっ!!速ぇな、ちくしょぉ!!」

 

熱湯がグレイに迫っていく。空中では身動きのとれないグレイは無防備であった。

 

「アイスメイク・(シールド)!!!」

 

しかし、グレイは空中でいながらも魔法を放ち、氷の盾を一瞬にして造り上げた。その盾に豪快にジュビアの熱湯がぶち当たる。だが、幸運もつかの間、氷の盾は高温の熱湯によって溶け始めていた。

 

「ゲッ・・・マジかよ!!くそっ・・・ぐぁあぁぁッ!!!」

 

熱湯は盾を突き破り、グレイに直撃した。グレイはそのまま、床を転がりながらも、態勢を立て直し、攻撃態勢に入ろうとしたが、目の前には熱湯が迫ってきていた。

 

「速ッ!!!うぐぁ!!」

 

熱湯に呑まれ、そのまま、流れるように屋根を突き破り、屋外へと飛び出た。

 

「熱っ・・・皮膚が焼けて」

 

身体中に火傷を負っていた。このままではマズイとグレイも対策を考え出した。

 

「んのヤロォ!!!凍りつけぇ!!!」

 

自ら片手を熱湯の中に差し出し、大量の魔力を消費して最寒の冷気を起こし出す。一瞬にして熱湯は高温から低音へと引き下がり、やがて、完全に凍りつき、氷の柱へと変貌した。

 

「そ、そんな、ジュビアの熱湯が・・・・・・凍りつくなんて・・・・・・」

 

氷の中で驚愕するジュビアにグレイは無言で得意げな表情を浮かべた。

 

「ん、雨なんか降ってたか?氷が溶けちまうじゃねーか、うっとうしい雨だな・・・」

 

「(はっ・・・この人も同じ・・・・・・・・・)」

 

その瞬間、氷付けにされていたジュビアの体が燃え上がるように高温の熱湯を繰り出し、みるみると氷を溶かし始めた。そして、あっという間に氷は溶けていき、雨と混じりあった。

 

「同じなのねぇぇぇぇ!!!」

 

「うおっ!!?」

 

湯気を豪快に噴出するジュビアは先程とは全くの別人にも見え、グレイは驚愕した。

 

「来るならきやがれ!!!」

 

「(ジュビア・・・・・・もう・・・恋なんていらないっ!!!)」

 

再び高温の熱湯に呑み込まれた、グレイはもがきにもがくが全く成果はでない。

 

「また、凍らせて・・・さっきより高温なのか!!?」

 

魔力を絞り出しても氷は出る気配もなく、グレイは熱湯とともに暴れまわった。

 

「負けられねぇんだよ!!!」

 

「シエラァァァァ!!!」

 

そして、グレイが雄叫びをあげ、魔力をできるだけ解放した。そして、熱湯は徐々に凍りつき、やがて、雨までも凍りつき始めた。

 

「雨までも氷に!!?・・・なんて魔力・・・!!」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)をなめんなよぉぉぉおおぉおお!!!」

 

「うっ・・・ジュビアの熱湯が・・・凍りつ―――っ!!!」

 

氷欠泉(アイスゲイザー)!!!」

 

「ああぁぁああぁっ!!!」

 

熱湯ごと凍らされ、悲鳴をあげるジュビアは氷の中から出てきたもののその場に倒れ込んだ。そして、グレイはその場に近づき問いかける。

 

「どーよ?熱は冷めたかい?」

 

「・・・・・・・・・あれ・・・雨が・・・雨が・・・・・・止んでる・・・」

 

ジュビアは空を見上げながらそう感心しかかのようにつぶやいた。青空が広大に広がり、それはとても綺麗な青空であった。

 

「お、やっと晴れたか・・・」

 

「(綺麗・・・これが青空!)」

 

「で・・・まだやんのかい?」

 

涙を流す、ジュビアにそう問いかけたが、ジュビアは返事をすることなく、その場に目をハートへと急変して気絶した。

太陽と重なったグレイ表情はとても晴れやかに一人の少女を雨という呪いから救い出したのであった。

 




ちょー久しぶりですね・・・。結構、間が空いちゃいました。すいません。もう打ち切りと思った方も多いのではないでしょうか。本当にすいませんでしたぁ。

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