第01話: 妖精の尻尾
世界のどんなところでも使われる魔法。ここは魔法世界。魔法は奇跡などではなく、人の中を流れる気と自然の波長が合わさり、具現化される。その魔法はいつしか世界の隅々にまで澄み渡りいつの間にか魔法世界となった。
世界中の幾多も存在する魔導士ギルド。魔道士達に仕事を仲介する組合組織の様なところであり、魔導士達に欠かせないものでもあった。
どこにでもある魔導士ギルドの中の一つのギルド、妖精の尻尾。
今日も彼らはいつも通りに暴れ回っていた―――。
左右対称に造られた建物、それは評議員の集会場であり、会議場である。大きく立派な建物の中に評議員達はいた。
コロコロコロ、と水晶でできた玉を転がし、割れては元に戻っていた。この静寂に包まれたこの区域では似合わない音だ。
「ウルティア。遊ぶのはよさないか」
腰にリボンを付けている服を纏い、黒髪を長く垂らして、口を開いた。
「だってヒマなんですもの。ね、ジークレイン様…」
青い髪が小さな風で揺れ、大きな態度で座り、足を組んで笑いながら言った。
「ヒマだねぇ…。誰か問題でも―――」
「――つ、慎みたまえ!!何でこんな若僧どもが評議員になれたんじゃ!!」
「ふっ…魔力が高ェからさ……。じ・じ・い」
「ぬっ!?ぬぅ~~~~!!」
睨み合う二人の魔力が僅かに上がっていく。次第に机や椅子が少しずつ小刻みに揺れ始めた。大きく目が開いた直後、一つのつつましい口調により、止められた。
「これ、双方魔力を抑えよ。魔法界は常に問題ごとが山積みじゃ…。中で早めに手を打っておかねばならんのは………」
また静寂に包まれて、風の囁きが耳に僅かに届く。
「“
強調されたギルド名を聞いた評議員達は頭を抑えてその悩みを抱え込むかのような表情でため息をついた。冷静に会議を進めたのだった。
騒がしい歓声がギルドの中で響き渡る。喧嘩する者もいれば、ジョッキを掲げて打ち鳴らす者もいた。
そんな中で桜色の髪、首に鱗の模様のマフラーを巻く少年、ナツが特に騒いでいた。怒号を上げて、黒髪の露出男、グレイと殴り合っている。これはいつもの事だ。
「今度こそ決着つけんぞ、こらぁ!!」
「上等だぁ!!」
怒鳴り合い、腕を振るう。砂塵が暴れるように舞い、長机や長椅子を粉砕しながら暴れ回る。腕と腕がぶつかり合い、ますます、騒がしさが増した。
その中でもゆっくりと苺ケーキを愉快そうに味わう緋色の長い髪をして、銀色の鎧を身に付けているエルザはいつもより大人しかった。
その横で金髪を側頭部で青いバンダナで束ねている少女、ルーシィは乱闘の起こっている場から一歩でも遠くに行きたそうな表情で手を顎につけて肘を机に置いて、乱闘を眺めていた。
「はぁー…いつも通りね…」
そのため息は長く続いたが、やがて、消え失せていた。
「ぶほぉッ!?」
一人の男が吹っ飛んできてエルザの苺ケーキが乗っている机にぶつかった。苺ケーキはその衝撃で一瞬にして、形が崩れ、零れ落ちるように床に落ちた。
「な……!!!!!!」
大いに驚愕したエルザの顔には怒り狂っているということが見て取れた。その後、エルザの魔法、《換装》でハンマーを出した。
ルーシィはその姿を見た途端、耳の横から一粒の汗を流した。
刹那、エルザが怒号を上げて、凄まじい速度で飛び出した。
「わたしのォォォォォォォ……苺ケーキィィィィィィィ!!!」
見る間に人は薙ぎ払われ、吹っ飛び、潰され気絶。だが、エルザはその緋色の髪を激しく揺らしながら暴れ回る。
いつの間にか、ナツ、グレイ、巨体のエルフマン達をも易々と再起不能にさせてしまった。
こうして、ギルドの中はいつも通りよりちょっと酷い感じとなって一日を過ごした。
「はぁ、はぁ、はぁッ…」
フィオーレ王国内に位置する街、ハルジオンの街で桜色の少年は胃が狂ったかのように苦しそうに息を吐いていた。列車の中の赤い長い座席に腰を下ろしたまま、体を背凭れに任せる。
その横で無表情の青いネコ、ハッピーがピョン、と座席から飛び降りて、駅員に言った。
「いつもの事なので…」
ハッピーはさっさと列車から降りて、黒々として黒光りする列車を眺めた。窓からはナツが上半身を乗り出して下を向いていた。
「うぷっ…」
吐きそうになるナツは口を押えて無理やり嘔吐物を喉に押し込む。
その時、列車が動いた。
「…あ」
ハッピーが助けようと思えば、列車はどんどんと離れて行き、ナツはどんどんと離れて行ってやがて、小さくなっていった。
「た~す~け~て~!」
ナツの苦しそうな悲鳴が木霊したのであった。
「列車には二度も乗っちまうし」
とぼとぼと俯いて歩くナツの横を小さなネコ、ハッピーが続ける。
「ナツ乗り物弱いもんね」
更にナツが弱音を吐く。
「腹は減ったし……」
ナツが言った直後、腹から空腹の合図が長々しく鳴った。それに続けてハッピーが言う。
「うちらお金ないもんね」
いじけた表情のナツを下から見上げるハッピーは励ます様な表情になった。その時、ナツが言う。
「はぁぁぁぁ。なぁ、ハッピー火竜ってのはイグニールのことだよな?」
「火の竜なんてイグニールしか思い当たらないよね」
表情がパッと明るくなり、両腕を大きく上げて元気溢れる大声で叫んだ。
「やっと見つけた!!!……ん?」
悲鳴が微かにナツの耳に届いた。ハッピーに分からないようだが、獣のような耳にはちゃんと聞こえた。
「ハッピー!!行くぞ!!」
「どこか見つけたの?」
「違ぇ!!!悲鳴だ!!」
ナツはもの凄い速さで突っ走る。その背中で揺れる大きな布団にハッピーは乱暴に振り回されながら付いて行った。
「いい加減にしろッつってんだよ!!」
「きゃぁぁぁッ!!」
そこには青い髪の男性とピンク色の長髪に淡い緑色の瞳を持つ少女がいた。
明らかに見てわかる。少女が尻餅を地に付き、青髪の男性が何度も激しく少女を蹴飛ばしていた。少女は両腕でなんとか防ぐもののそのか弱い腕では防ぐことなど到底、不可能に思えた。
「おい、テメェ…」
「…あ?なんだ小僧…」
ピンク色の少女がナツの顔を見上げる様に見た。その顔には傷や血が付いていた。
「おめぇが悪党だろうが、知った事はじゃねぇが……」
「うるさい小僧だ…!!殺れ!!!」
ナツの声は遮られ、青髪の合図の直後、大勢の盗族らしき男性たちが凄まじい勢いでナツに跳びかかって行った。
「「「死ねぇぇええッ!!!」」」
大勢の男性に囲まれ、姿が確認できなくなったナツだったが、直後、ナツの大きな叫び声が轟いた。
「うおりゃああああぁぁぁぁぁぁッ!!!」
塊の様になっていた男性たちが四方八方に吹っ飛び、壁にぶつかり、地を滑り、地に強打する者。
「つ…強ぇ……」
一人の男性がそう言って頭を地に置き、力尽きた。
「ほぅ…やるな、小僧……」
「おめぇのせいで火竜、イグニールを探す時間が少なくなったじゃねぇかぁッ!!どうしてくれんだぁあ!!」
怒るところが青髪の男性とずれていた様で男性は思わず転びかける。
「ゴチャゴチャうるせぇ………餓鬼だッ!!!」
青髪の男の腕から炎が放たれた。その炎はナツを包み込み、激しく燃え上がる。
「ちょっと…!!」
少女が助けに行こうとする身振りを見せると、ハッピーがいつの間にか翼を出し、少女を制していた。
「大丈夫。ナツは強いから」
ハッピーの自慢げに言うその言葉は信用できないことかもしれないが、黙って少女は見届ける。
炎の中から、桜色の髪を逆立たせ、凄まじい威力で地を蹴飛ばし、真っ直ぐ男目掛けて、ナツが飛んでいく。
「これでも………」
「うわああぁぁあッ!!!や、ややめろッ!!分かった分かった―――ぶべら!!!」
「くらぇぇぇえええぇぇえッ!!!!」
ズトォオォオオォン!!!
ナツの拳が青髪の頬に直撃し、男性は耐えきれずに空へと吹っ飛んだ。
「はっはっはっは!」
ナツはそうやって高らかに笑った。
あの後、ナツとハッピーは助けた少女、“リーナ”に奢って貰い、満腹になったのであった。
「ぷはぁー!食った食った!」
「あい!」
街が坂になっているハルジオン街は坂街とも呼ばれているみたいだ。その中間らへんでナツとハッピーは膨らむ腹で嬉しそうに会話していた。ハッピーは柵の上で海を眺めていた。
「そいや船上パーティーやるって誰かが言っていたよね。あの船かなぁ」
「…船?うぷっ…!気持ちワリ……」
「想像しただけで酔うのやめようよ」
ナツが地を見つめながら、口から出そうな物を抑え込んだ。
「あ!あれってあの有名な火竜って呼ばれている魔導士が開いている船よ~!」
「“
「私も行きたかったなあ」
ナツの目つきが変わる。
「「!!」」
ハッピーの耳がピンと張りたち、驚愕した表情に瞬時に変わった。ナツの顔も苦しそうながら驚愕している。
「い、今…」
「あぁ、言ってた……」
ナツが続ける。
「イグニール!!
呆気にとられたハッピーは沈黙する。
「違うと思うよ…」
「んじゃぁ!!イグニールは兄弟だったのかぁぁッ!!?」
「…多分、アイツじゃないかなぁ?あの青髪の……」
「すまねぇ、全然分からねぇ…」
唖然としているハッピーはナツを可哀想に見る。
「…妖精の尻尾……」
ナツは疑うようにしゃがみ込みながら、小さく煙を舞い上げる船を眺め続けた。
「な!!!何なのよコレ!!?」
「気づくのが遅ぇんだよ。ようこそ、我が奴隷船へ…」
「なっ…!!?あ、あんたは!!」
「ハッハッハッハ!!さっきはよくもやってくれたなぁ…」
火竜は拳を後ろにめいいっぱい下げてからぶん殴った。
「お返しだァァ!!」
「きゃあぁぁッ!!!」
「あんたはここに来てから商品なのさ…」
リーナは体をもがくように暴れるが、怪力の男達の力には到底かなうはずもない。それどころか、ぐっと握り締められ、腕が折れるほどまで痛んだ。
「奴隷の烙印を入れさせてもらうよ」
「うっ…!」
蒸発している赤い判子の様な鉄がゆっくりと近づいてくる。リーナの目から涙が一粒、落ちた。
バキッ!!!
「なっ!!?…昼間のガキ!!?」
ナツが天井を豪快に突き破り、床に降り立った。だが、壁にもたれ掛かり俯いて、激しく酔っている。
「ハッピー!?」
リーナが涙を拭きながら天井から見下げる様にしているハッピーを見つけ、声を掛ける。
「行くよ!!」
「えっ!?なにが!?…キャッ!!!」
「逃げよ」
ハッピーは翼を器用に使い、リーナの襟を掴み取ると、尻尾を使ってリーナの細い腰に巻き付けそのまま、飛び去って行く。だが、リーナは驚いた表情でまだ理解しきれず、とにかくハッピーに叫んだ。
「ナツは!!?」
「あい、二人は無理…」
リーナは呆気にとられた様子でハッピーを見つめた。
「逃がすかぁッ!!!」
火竜が巨大な炎を放ち、天井を突き破ってハッピー達に襲い掛かるが、ハッピーは見事に避けて空へと舞い上がる。
「チッ!!アイツ等ぁぁっ!!二人を追え!!!」
五、六人くらいが外へと出て、舵を取る。ハッピー達はどんどん岸の方へと逃げる。それに対し、船も大きくハッピー達を先導にフルスピードで追いかけた。そのため、船が大きく揺れる。
「おぉぉおおぉぉ…」
大きく船が揺れることに比例し、ナツの酔いも増す。
「ふっ…!」
ハッピーはリーナを素早く岸に下ろし、舵を取る二人に向かって超高速で向かっていく。それに対し、銃を乱射する。銃声が鳴るにつれ、弾丸がハッピーの横や上を通り抜ける。ハッピーが舵を蹴飛ばした。
「うぉい!?ヤベッ…!舵が壊れたぁぁぁッ!!」
船は行く先をなくしたように暴れ回り、やがて、岸に横倒しになって凄まじい轟音とともに滑った。船尾が砂に突っ込む様に逆さまになっている。砂塵が舞い、港が大騒ぎになる。砂が撒き散らされ、大半が削れる。
パラパラ…ガラっ……
破片が落ちて、小さな音を立てる。傾いている船に違和感を覚えるが、ナツは立ち上がった。
「止まった…。揺れが…止まった…」
「ナツ!!だいじょ……!」
ナツの放つ威圧感に思わず恐怖したかのように思えたリーナは足を止めて、驚愕する。
「小僧…またやるのか?今度は……知らんぞ…?」
何故か上着を脱ぎ、後ろに豪快に投げ捨てる。ナツはそのまま、睨み続ける。
「オイ!さっさとやっちまえ…!!」
「「はっ!」」
二人の男がナツ目掛けて走って行く。
「おまえが
「それがどうかしたか?」
笑うかのように火竜はナツの質問に答える。
「よォくツラ見せろ」
ナツにどんどんと近寄っていく二人の男。ナツの視線はその二人を見ておらず、ましてや気づいているのかさえ、分からない。
刹那、頭と頭が激突した。
「オレは
皆、驚愕し、沈黙が流れる。
数秒後、一人の男が呟いた。
「ボラさん本物だぜ!!」
「バカ!!!その名で呼ぶな!!」
ハッピーがピクッと震え、呟くように話す。
「ボラ…プロミネンスのボラ。数年前、タイタンノーズっていうギルドから追放された奴だね。魔法で盗みを犯してたんだ」
ナツがギリッと鋭い歯を擦り、音を立てる。
「フン!何で怒っているのか分からんが、これを相手に…できるのか?」
自信いっぱいに言ったボラは微笑むかのようにナツを睨み付けた。
その後ろでは、あの男達がなにか紫色の液体を飲んでいる。喉が膨らんでは落ちていき、やがて、液体が無くなった。
「なにあれ!?」
「なにやったか分からねぇけど…行くぞォ!!!」
ナツが飛び出した。
体が一瞬、浮き上がったの様な素振りを見せ、男一人が飛び出した―――速い!
ビュゥゥゥン!!!
「な!!?」
ナツは思ってもなかったもの凄い速度に足を止めてしまい、思いきり殴られた。その速さが殴る威力を上げ、ナツを壁に向かって吹き飛ばした。腰を後ろに、ナツは壁に激突した。
「へっへっへ…!」
「ナツが…吹っ飛んだ……?」
「ふっ…。これは、ストリングAPっと言ってな…」
「知ってる…!でもそれって……」
リーナがそう驚く様に叫んだ。
「そうさ。これは販売中止となった。言わば……禁物の薬品だ。これを飲んだ者は強大な力を手にする。それは何倍にも及ぶと言われている。だが、これを飲んだ者は寿命が縮む…」
確かに、飲んだ者の体が大きくなったような気がする。肉体が発達し、目つきも変わった気がする。ハッピーの後頭部に汗が流れた。
「ちくしょォ…!!」
「これなら、貴様にも勝てる!!!」
「汚い勝ち方ね!!」
「ふ、何とでも言え」
ボラは笑いながら、ナツと男を見つめた。
床が深く抉られ、破片が後ろに飛ぶ。男は凄まじい速度で飛び出し、ナツに襲い掛かる。
「いっ!!?」
ナツは抵抗できずに、腕を交差し、ガードを試みる。
だが、強烈な一撃を抑えることはできず、ナツは壁に強打する。更にそこから怪力は更に怪力を加え、やがて、壁を打ち破り、ナツは外に出て、吹っ飛んだ。
「ぐぅぅぅッ!!!」
ナツは逆さまになった船の甲板を滑り落ちた。ナツはなんとか止まろうと、手をついて踏ん張って滑る勢いを抑えるが、前方からまたあの男が飛び掛かって来た。
ズドォォォォッ!!!!
甲板に大きく穴が空き、破片が四方八方に飛ぶ。砂塵が舞い、その中から男が飛び出てくる。
ナツは既に飛び退いて、地に降り立っていた。
だが、そこにまた別の男が飛び掛かって来ていた。男は拳を握り締め、ナツ目掛けて振るう。
ぐっと握った拳と拳がぶつかり合った。刹那、二人共、後方に地を滑る。五メートルくらいでようやく止まった。
「もらったぁあああッ!!!」
また他の男が上から襲い掛かってきている。足が斧のように重そうに襲う。ナツは後ろに飛び退いて逃れる。だが、地についた直後、男は大きく前に躍る。
「うぐ…!」
ナツは無理やりしゃがみ込んで避ける。だが、目の前から木の様に太い脚がもの凄い勢いで振るわれた。
空を裂くような音が聞こえる。ナツはなんとか、後ろに態勢を崩しながら飛んで避けた。だが、その態勢はあまりにも苦しい。
「ここだぁッ!!」
男がまた前に蹴り上げた脚がナツの顔面に直撃した。
「がぁあッ!!!」
ナツは悲鳴を上げることなくそのまま、壁に叩きつけられた。砂ぼこりが舞い上がり、ナツの周りに立ち籠る。
「いぎぎっ…!強ェなぁ……」
ナツは首を抑えて煙の中からその姿を現す。
「こっちだよ…!!」
気づけば、後方に回り込んでいた男が腰を思い切り蹴飛ばした。
「ごはっ…!!!」
ナツはそのまま、吹っ飛んでいき、地に落ちる瞬間―――
「――でりゃあああッ!!」
他の男がナツを蹴り飛ばした。
「がはっ……」
ナツは腹部に強烈な一撃を食らい、血を吐いた。ナツは空へと打ち上げられていた。そこへ男がナツの高度より高く飛んで両手の指を絡め、一つの拳を作って、振り下ろした。
轟音が響き渡り、ナツは天と地が逆になり、地へと急降下していった。コンクリートでできた地へと激突したナツを煙が包み込む。
煙からふらふらと現れたナツの姿はボロボロ。服の裾などが削れ破れ、額の右上からは血が目を通って流れていた。ポタッと雫となって落ち、血がコンクリートに染み込んでいく。
「逃がすかぁあッ!!!」
「きゃああぁッ…!!」
「わぁぁあああッ!!!」
ハッピーがボラの放たれた炎に襲われ、その姿は炎の中へと消える。僅かに黒い影が薄らと残る。ハッピーはリーナを連れて飛んでいたが、炎を避けきれずにやむを得ずにリーナを離し自らが攻撃を食らった。
「ハッピー!!」
リーナが急いで落ちていくハッピーを追う。ダイビングしてハッピーを地に付けずに腕で受け止める。
その光景を唖然として、沈黙してナツは見ていた。
「おい!!よそ見してんじゃねぇぞ!!!」
「ハッ…ピー…を……」
「あぁ?聞こえねぇな」
ナツは俯きながらだんだんとその力を上げていく。魔力が膨らみ出し、ナツの周りの空気がゆっくりと熱くなる。
「ハッピーを……!!!」
「いい加減…死ねぇッ!!」
男三人が一斉にナツ向かって飛び出す。
「火竜のォォオオオオオォォオ!!!」
男三人とナツの間合いはたった数歩、その状態からナツが一歩前に踏み出し、
「鉄拳ッ!!!!」
殴った。
三人一気に仕留め、吹っ飛ぶ。炎を纏った拳は威力が増し、相手に火という追加ダメージを与える。三人は倒れ、動かなくなった。
横から飛んでくる男を肘で落とし、上から来る男を蹴り上げて逆さまの状態になり、後ろに炎を纏った足で蹴飛ばす。前方から来た、四人を見、大きく長く強く息を吸った。顔を上げて、
「火竜のォ咆哮ォオオオッ!!!!!」
紅蓮の業火を放った。
四人は一瞬にして黒焦げになり、倒れる。
ナツはそのまま、地を蹴り飛ばし、一気に前に飛び出して、ボラの所へと向かう。
「なっ!!!」
足を止め、踏ん張り、睨み付け、殴り掛かる。
下から思い切り振り上げ、顎に激突する。骨が折れた様な音が僅かに聞こえたが、ナツは構うことなく上に吹き飛ばした。ボラは船の甲板に落ち、滑り落ちていくが、ナツがそこに飛び上がり、蹴飛ばして咆哮を上げた。
「全部、二倍にして返してやらぁぁぁああッ!!!!!」
ナツは甲板から飛び降りて、地についた刹那、凄まじい速度で飛び出す。
「妖精の尻尾を勝手に語った分!!!!」
炎を纏った拳で殴る。
「ハッピーを傷つけた分!!!!」
炎を纏った足で蹴る。
「リーナを傷つけた分!!!!」
壁まで追い込んだナツは思い切り殴りかかった。壁にぶつかった瞬間、ナツが更にそこに力を加え、壁が豪快に破壊され、家の壁を突き破っていく。
ゴッ!!!ドォン!!!ズドドドォ!!!!ドガァァアァアア!!!!!
「この騒ぎは!!!何事かねぇぇぇぇえええッ!!!!」
「良かった!軍隊が来ッ―――キャッ!!」
「ヤベ!!逃げんぞ!!!」
「あい!!!」
「何で私までぇぇぇ!!?」
「来いよ…!
「…うん!!!」
嬉しそうに頷いたリーナの笑顔は先程までの戦いを忘れさせてくれたみたいだった。
こうして、三人(?)は軍隊から歓喜に満ち溢れた表情で逃げて行った。
そう、これからだった。このことから始まったんだ、俺達の物語は…………
FARIY TAIL好きなので、執筆してみました。上手くできないところもございますが、どうか温かい目で見守り下さい。初小説なので…。
早速、オリキャラを加えて、ちょっと原作変えてみました。
ま、これからもよろしくお願いします。どんどんと原作崩壊していきます………。