NARUTO~行商人珍道中~   作:fall

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5 いざ、買い物へ

NARUTO~行商人珍道中~

 

5 いざ、買い物へ

 

 

 

 

 

≪木の葉のはごろも≫に着替えたハクを伴い、宿屋を後にする。まずは風呂屋だと朝日が登り切っていない街へと繰り出す。

 

 

 風呂屋に到着したが朝一から風呂に入る物好きはこの街にはいないらしく、俺たち以外の客の姿は見えず、貸し切り状態だった。この風呂屋は何でも、近くにある温泉源から直接引っ張ってきているらしく、二十四時間絶えず暖かい風呂を味わえるというのが売りの風呂屋なのだとか。……しかし、客足はそこまで多くないようである。

 

 温泉が二十四時間入り放題、実にいい響きだ。店主に挨拶し、料金を払って奥へと進む。俺自身も風呂に入るのは久しぶりのことで、この街につく前までは手拭いに水をつけ体を拭いたり、水とんの巻物をシャワー代わりに使って汗を流す程度のことしかしていなかったため。実際、かなり嬉しい。

 

 脱衣所で服を脱ぎ、手拭いを腰に巻きいざ、風呂へ。と向かおうとしたのだが、ハクが何やらもじもじとしており、一向に羽衣を脱ごうとしないので、何をしているんだと声をかけ、先に入っているぞと言い残して久方ぶりの風呂を満喫しようと高いテンションで引き戸を開いた。

 

 

 

 内装はまさにジャパニーズ銭湯と言った感じで、富士山に似た山の一枚絵に木で作られた桶にたわしと石鹸、それと広い浴槽が全てだ。早々に髪と体の汚れを洗い落とし、さっぱりとした俺は浴槽でゆったりと寛ぐこととした。

 

 

 

 

 

 

 ハクの奴遅いな。何をやっているんだ。俺が浴槽に浸かってから裕に二十分は経過しているだろう。しかし、ハクは未だに姿を現さず、えも言われぬ不安に掻き立てられる。

 

 ひょっとして、風呂に入るのは嫌だったのか?いや、しかし、ああまで汚れていてはもはや、例え風呂嫌いなのだとして無理にでも入れる事も考えねば。

 

 

 そう思いたち、浴槽から立ち上がると。ガララっと引き戸が開く音がして、ヒタヒタと軽い足音が此方に向かってくる。湯煙で薄らと見える小さな人影がハクだということを分からせる、のだが。

 

 

 

 

 

 

「ハク。お前、女の子、だったのか……?」

 

 胸を手で覆い隠し、下半身を手拭いで巻いて隠しているハク。俯きながらも己の性別にうなずき、答える。

 

「はぃ、ボクは女子(おなご)です。あの……そんなに見ないでください」

 

 顔を赤らめ恥ずかしさ故にか体を時折捩じらせる。その姿は俺のような汚れた大人が見るには居た堪れなくなる。かつ肢体を布一枚を隔てて恥ずかしげにする仕草はその筋の人から見れば垂涎ものであろう。

 

 

 

 

 

……なんてことだ。いや、まて、少し考えてみれば分かることだろう俺。なぜ気が付かなかったっ。というか、あの時泣き出したのはそういう意味合いも有ったっていうことなのかっ!?

 

 まて、待て待て待て。初めに言っておくぞ、俺は何もしていないからな。いや、正確に言えば。倒れていた所に薬を飲ませて、宿屋まで背負って運んでベッドに寝かせただけだからっ……ってこの説明の仕方じゃあ完全に変態じゃないかっ!?

 

 まて、落ち着け俺。何も悪いことはしていない。それにだ、いくら独身生活が長かったとはいえ五歳児相手に情欲を掻き立てるほどの精神は持ち合わせていないぞ。大丈夫、俺はロリータコンプレックス等という感情は到底持ち得ていないのだから。一人、赤くなったり青くなったり百面相する俺を怪訝な表情でじぃっと見つめるハク。

 

「と、ところで、ハク。風呂に入る前は体の汚れを落とさなければならないのは知ってるよな?」

 

 若干というか、かなり焦っている俺は上ずった声を出しながらハクへと問う。

 

「ぅん、そ、それでね、おじさん。……ボクまだ髪の毛を上手く洗えないんだ。だっ、だからね、もし良ければなんだけど。お、おじさんが洗ってくれないかな?お願いっ」

 

 恥ずかしげに、それでいて懇願するように顔の前で手を合わせながら、かわいらしく。≪お願い≫をされてしまった俺は、断るにも断れなくなってしまったのだ。

 

 

 

 

 

 女の子と分かってしまったからには、それ相応の髪の洗い方なんてものが有るのだろうが、生憎と女性とそこまで深い付き合いが有ったわけではない俺にそんな洗い方など知る由もなく、なるべく優しく、爪を立てないように洗っていく。

 

 どうやら、ハクは泡が目に入らないようにギュッと目を瞑っているようだ。痒いところはないかとか、痛くは無いかと聞きながら、汚れているところを重点的に洗ってやる。暫くして、長い髪を洗い終える。泡で真っ白になっている髪にお湯、掛けるぞ。と一声かけて泡を洗い流す様に頭のてっぺんから掛けていく。

 

 

 

 その後、体の方は自分で洗えよと言い残し、急ぎ足で脱皮のごとく浴槽へと駆け寄りダイブした。他に客も居ないためマナーが悪いことは許してもらいたい。

 

「はぁ~癒される。風呂は心の洗濯だとは良く言ったものだな。」

 

 等と、慣れないことをして、凝り固まった肩と腕をもみほぐしながら、呟く。すると、ちゃぷんという音とともに体を洗い終えたハクが浴槽へと入ってくるのが見えた。

 

「ずいぶんと、小奇麗になったものだ。」

 

「はい、おじさんに髪も洗って貰いましたし、本当は体の方も洗ってほしかったのですが……。綺麗になりましたよっ、おじさん。」

 

「それはよかった。しかしだ、体は簡単に男に許しちゃいけないよ。それは本当に≪好き≫になった人にだけ許してあげるんだ。分かったかい?」

 

「ぇ?でも、おじさんの事、ボクは好きだよ。」

 

「あぁ、その気持ちはとても嬉しいが、ハク。キミのそれは俺の言っている≪好き≫じゃあないんだ。ハクがもう少し、大人になれば分かるはずだから、それまでは誰にも体を許しちゃいけないよ。勿論、おじさんにもだ。約束出来るかい?」

 

「ぅ、うん。分かった。……でも、髪の毛は洗ってくれるよね?ボク、まだ、一人じゃ洗えないから。」

 

「あぁ、それくらいならいつでもやってやるさ。」

 

 不安と疑問とが織り交ざる表情をしながらも俺が髪の毛を洗うと約束しただけで、ハクは満面の笑顔に表情を変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 久方ぶりの風呂を満喫した俺とハクは風呂屋を後にして、今度は床屋へと足を向けた。床屋では、とりあえず伸びに伸びきった、足元にまで届きそうなくらいの黒髪を背中あたりまでにカットしてもらい、前髪もだいぶ伸びていたのでこれまた目に入らないように、自然にカットしてもらった。

 

「これで、いかがかしら?素材が良かったから、この子に合う髪型選ぶのに時間かかったわ。」

 

「あぁ、ハク。どうだ、他に要望はあるか?」

 

「はい、これくらいで丁度いいです。」

 

「ん、じゃあ、勘定して次行くとしますか。」

 

 そう言いながら、店主に会計を頼む。

 

「あら、そういえば、貴方どこかで見たことがあると思ったら。昨日ここらで露天商してた人じゃない?」

 

「ん。まぁ、そうだが。それがどうかしたか?何か入り用か?」

 

 

「ええ。彼の写真。まだあるかしら?ほら、あの太眉毛の。目が凛々しくて……はぁはぁ」

 

 太い眉毛?凛々しい目?っガイの事かっ!でも、一体全体あんな奴の写真を買ってどうするつもりなんだ?

 

「確かに、まだあるが。……これのことだろう?」

 懐から取り出したかのように見せ、ガイの写真を店主へと手渡す。

 

「ああん。これよ、この凛々しい眼差し!鍛えられた鋼のような体躯、それでいて、写真越しにも力強さを感じさせる雰囲気っいいわぁ凄くいい」

 

 体をくねくねと捩じらせながら手に握った写真へと熱い眼差しを送る店主に、ふと、昨日のオカマ達を思い出す。嗚呼、そういえば、あのオカマにものすごく似ている。と

 

 

 

「喜んでいただけて何よりだ。それで、その。取り込み中のところ済まないのだが。散髪の会計を済ませたいのだが。」

 

 このまま放っておくとずっと身を捩じらせ続けるのではないかと錯覚させる程に写真と見つめあう店主。

 

「っは!お会計なら、この写真でいいわ。さて、ワタシはこれから、ヤることが出来たから。今日はこれで店じまい。さぁ、帰った帰った。」

 

 やることって、一体ナニをやるんだ……?それにまだ昼前だぞ。そんな勝手に休みにして大丈夫なのか。まぁ、散髪代が浮いたことは有りがたいし、深く突っ込むと藪蛇になるから早々にこの場を立ち去ろう。ハクに悪影響を与えかねん。

 

 少しばかり急ぎハクに早く店から出ようと言い、床屋を後にして表通りへと向かう。

 

 

 

 

 表通りには露天商が所狭しと並び、それぞれ、客を集めていた。街は今日も賑わっているようだ。

 

「ハク、離れないように近くに居るんだぞ。」

 

「はいっおじさん。」

 

 あの衰弱が嘘だったように元気よく返事を返すハクに目を細め、優しく切りそろえられた髪を撫でる。

 

 

 

 

 

 アイテムストレージ(別称倉庫)に関して新たに判明した事を書き記す。

 

 俺の能力である。≪ナルトRPG内におけるアイテムの無制限使用権≫は初め、ナルトRPGという一から三まで発売されたゲーム内アイテムの使用並びに行使、取り出し入れが出来る。というものだったのだが、俺は一つ、疑問に思うことが有った。それすなわち、ゲーム内に登場していない物をストレージに取り込んだ場合、その物はどうなってしまうのか?という、至極普通の些細な問いだった。

 

 

 大方の予想としては、失敗ならば当然入らないだろうと。しかし、もし上手くいけば、ゲームアイテム化が適用されるのではないか?と冗談半分で予想を立てていたのだが。まさか、本当にそうなってしまうとは思いもよらず、これにて、またしても、この≪間違えて付けた≫能力と書き残した神の真意を疑うことになった。

 

 まぁ、真意を疑うも何も、あの見るからに頭の軽そうな女にそんな思慮深いことを考えられるとは微塵にも思っていないのだが。一応、本当に一応。何らかの意図があってこの力を付けたとしたのなら、奴の狙いは何なのだ?と今更になって疑問に思った次第である。

 

 とは言ったものの、あの女とはもう、逢うことはないだろうと心のどこかで理解している。あの女も仮とは言え神の一柱。神が世界に干渉してきたことは有史以来一度たりとも有りはしない。

 

 たとえ、神が何らかの干渉をしてきたとしても、それに対して俺たち人間は奴らの圧倒的な力の前では無力でしかない。つまり、何が言いたいのかと言うと、成るようにしかならないのだ。というわけだ。

 

 起こりもしない事にびくびくと怯えていても意味は無いし、そんな無駄なことをする時間があるのなら、修行や露天商人並びに行商人として金を稼がなければならない。何をするにも金が必要だ。まず、当面の目的は金を集め、家を建てることだ。

 

 

 根なし草な俺はとりあえずのところ、安全で、安心に眠ることができる住居が欲しい。のだが、木の葉、てめぇはダメだ。何回襲撃されれば気が済むんだと言いたいほど短期間で街を壊滅させられる、我らが原作主人公達の隠れ里である木の葉隠れの里。俺が知る限り、九尾の襲撃並びに大蛇丸の木の葉崩し、加えて、もう一度暁のメンバーによる襲撃が有ると友人からネタバレをさせられた記憶がある。

 

 俺が知る限りで大きな襲撃は三回、少なく見積もってこれだ。小さな小競り合いも含めると二桁は軽いだろう。

 

 それにだ、あそこにはいろいろと厄介な一族が多すぎる。≪うちは≫≪日向≫≪奈良≫≪山中≫と言った、特殊な能力を操る、敵に回すと厄介すぎる一族が多すぎるというのが木の葉の嫌らしい一点だ。

 

 それに、うちはは、一族郎党が一人の男にガキ(弟)一人を除き全員殺されている。そんな恐ろしいところにノコノコといける訳がない。もし、万が一いや億が一そんな現場にでも遭遇してみろ、目撃者として即お陀仏だ。

 

 というわけで、なるべく危険を回避しながら各国を渡り歩きつつ行商を行おうと算段しているわけだ。詰まる所の問題点としての食糧はすでに一種類ずつ買い込み、ストレージにてアイテム化してある。勿論、食器類もだ。それと、酒は何処に行っても色々と使えるためこれもまた各種取り入れた。

 

 

 全国を見て回ろうと思っているので見やすい地図を買いあさり、次々にストレージへと入れていく。ああ、地図で思い出したが。今いるこの街は≪水の国≫の北西部に位置するタンバと呼ばれる街なのだそうだ。道理で湿地帯やマングローブ林が多かったり、海が近いと思ったよ。

 

 トリップ当初は波の国なのかな?と思ったりしたのだが、波の国には忍者が居ないと≪カカシ≫が言っていたような気もするので、違うんだろうなとあたりをつけていた。

 

 そういえば、火を起こすことに時間がかかったなぁと思い、マッチや何かと使えるであろうロープやら簡易テント等なども買い込み、キャンプに行くときのそれと余り変わらないなぁと苦笑交じりに店を見て回って行った。

 

 最後に、いい加減、スーツ姿のままでは色々と不便だと思い至り、動きやすい服を買うため、呉服屋へと向かい、自分で服をコーディネイトする程のセンスは持ちあわせて居ないため、動きやすい服と告げて甚平、フォーマルな上下を二、三点見繕ってもらった。

 

 

 結果、今日一日だけで昨日の稼ぎである百数万両の内約、四分の三の金が消えたのだった。…………マイホームを購入するまで、まだまだ時間が掛りそうだ。

 

 


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