NARUTO~行商人珍道中~   作:fall

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3 商売繁盛なるか?そして、新たなる決意

NARUTO~行商人珍道中~

 

3 商売繁盛なるか?そして、新たなる決意

 

 

 

 

 さて、活気ある街の中心部へと移動したわけだが、はてさて市場の価格は如何ほどのものかな?先ずは八百屋から見て回るか、ええと、何々大根が百五十両にキャベツが二百両、人参玉ねぎジャガイモがそれぞれ五十両っと、そういえばNARUTO世界って時代背景が不明なんだよな……加えて一両が日本でいうところの一円と同等だったような気がするし。

 それにしては、ゲームで≪小太刀≫が六百両で買えちゃったりしてアレ?っと思うことがあったのだけれども。あの価格は絶対におかしいよなぁ。

 

 

 不審がられないように大まかなメモを取りつつ、次の店へと移動する。隣はアクセサリー店かな?貝殻のネックレス?みたいなものとか、シンプルな装飾品各種にリストバンド……メモメモっと。

 

 うーん、まぁここまでは許容範囲以内かな。次いこう次、武器屋崩れのよろず屋かな?茣蓙の上にクナイとかの一般人でも使えそうな忍具や白紙の巻物に、携帯食料、ベストがマネキンに掛けられて置かれている。

 

 これは、特に重要だ。多少怪しまれてもいいから片っ端からメモを取る。その後、宿屋、甘味どころ、御茶屋、本屋、花屋等も一応見て回りそれぞれある程度メモを取ってきた。

 

 宿屋の価格が目下の問題である。安いところで八十両、ホテルのようなところは千両超えとかなりのバラつきがあった。一般的な宿屋は百五十から三百位が目安となるだろう。

 

 

 小耳に挟んだ街人の話では上納金の存在が無いという驚くべき話を聞いてしまった。どこぞの商会に売り上げの何割かを持って行かねば成らないと覚悟してはいたのだが、まさか≪楽市楽座≫を行っているとは予想だにしていなかった。

 噂によればここら一帯を取り仕切る大名様の施策で楽市楽座を取り入れたような商売システムを試験的に行っているらしく、税を払わなくてもいいということで流れの商人が多く集まる街なのだそうだ。これのおかげで、この街は他の街よりも発展し、懐具合も潤っているようだ。

 

 

 

 大方のメモ取りや市場調査を終えた俺は空きスペースを今現在探している。人通りが良い所は既にそのほとんどが露店商人らに埋め尽くされており、店を広げられるとしても狭く置き場があまり無い場所しか残っていないためである。

 

 

 

 

 ここなんてどうだろうか?スペースはあまり広くはないが中々に人通りがある場所だ。さて、場所は決まった。後は茣蓙に商品を陳列するのみだ。しかしここまで、人通りが多いとあからさまな能力の行使はしづらいな。

 

 

……そうだ、アノ手を使おう。

 

 

 たしか、俺の記憶が正しければ巻物から忍具やら何やらを取り出して使っていた様な描写が有ったはずだ。カムフラージュとして、巻物を手にしながらいかにも巻物の中から取り出した様に見せれば、能力の使用はある程度隠せる筈だ。

 

 この手を使えば、多少不思議がられはするだろうがいきなり手のひらに物が現れるより、幾分かはましと言えるだろう。そうと決まれば、早速実践しようじゃあないか。

 

 

 

 

 能力について修行していて最近分かったことがある。

 

 トリップ初日のA4紙に事細かく書かれ制約として設けられあった、声に出して取り出す動作が修行のおかげか≪出てこいと念じる≫だけで出現するようになってきたのである。このことから察するにこの能力にも熟練度のようなものが存在する可能性が出てきた。

 

 これのおかげで物を取り出す際にわざわざ声に出さなくて済み、戦闘や生活により便利な能力へと変貌したのだ。それと、武器・防具についてだが、これらはあくまでもゲーム内の≪こうげき力≫と≪ぼうぎょ力≫を参照しているらしい。しかし、付属効果については別らしく、他のアイテムと同じく三倍増しになっているようだ。

 

 

 長々とした説明を終え、再び≪四代目のマント≫を今度は茣蓙として敷き詰める。毎度、感謝しております。四代目様。貴方様のおかげでわたくしは商いをすることができます。亡き四代目火影に冥福を祈り、茣蓙となったマントの上にどかりと腰を下ろす。

 

 

 その後、商品として売り出してもよさそうなものを片っ端から探し出し、見本として一品ずつ置いていく。

 

≪カップラーメン≫≪おかしのつめあわせ ≫≪カラクリ(飲料水)≫≪酢コンブ≫≪HAPPYゴーグル≫≪水ふうせん≫≪てぬぐい≫≪リストバンド≫≪ぶき大ぜんしゅう≫≪バラのはなたば ≫≪はちうえさいばいキット ≫等など統一性は全くないが兎に角、売れそうなものを客が見やすいように気を使い置いていく。

 

 

 当然、売れなければ困るので、価格は一部を除きそれぞれの店で売っていた値札を平均化して二割減した価格で提供しようと考えている。

 

 

 次に、忍者用品兼自衛用品として、≪木刀≫≪忍刀(しのびがたな)≫や≪てっせん≫≪クナイ≫≪手裏剣≫≪千本≫マネキンに≪金らんの胴丸≫と≪鉄ビョウの脚絆≫を着せたものを配置しておく。

 

 

 それと、裏(大人男性向けプラスアルファ)商品として≪綱手のしゃしん≫≪四代目のブロマイド ≫≪三忍のブロマイド≫≪ガイのブロマイド≫≪イチャイチャパラダイス上・中・下≫≪イチャイチャパラダイス(総集本)≫≪イチャイチャバイオレンス≫≪イチャイチャライセンス≫≪イチャパラSLG(シュミレーションゲーム)≫≪イチャパラストラップ≫≪イチャパラDVD≫等を執筆なさった、またはなさることになる。かの著名な≪自来也≫氏がお書きになられたイチャイチャシリーズもメニュー表の隅に小さな文字で書き込んでおく。

 

 これらは現在の時間軸が不明瞭なため、あまり売りに出したくはないのだが、いかんせん今の俺には金が必要なので、何か問題が起きてしまった場合それもやむなしとして受け止めることとしよう。それに、これらに関しては殆ど市場に表立って出回らないような代物だと勝手に解釈しているので価格を最高値にしてこの場限りの限定販売とする事に決めたのだ。

 

 

 さて、準備は整い後は呼子をするのみとなった。これより、俺の長い行商人人生が始まるのだ。それでは、大きな声で、いらっしゃいませーっ!いい品置いてますよー!ちょっと見ていかれませんかー?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いやー儲かった儲かった。余は満足じゃ、はっはっはっ、と思わず殿様気分になってしまうほどに儲かりに儲かった。まさか、ああも飛ぶように物が売れるとは思わなかった。あれほど、どんどことアイテムを取り出したのはトリップ初日以来初めてのことだろう。

 

 初めはぽつりぽつりとまばらに足を止めた客だったのが、巻物から取り出す動作も相まってか、大道芸かなにかかと周囲に人が集まって人垣ができたのも原因の一つだろうと思う。調子に乗って能力を使用したインチキ手品をした事も一因になっているだろうが。いずれにせよ、金がかなり儲かった事は事実だ。

 

≪元手が掛らないからマイナスの値に行くことはない≫というのはかなりの強みである。

 

 それにしても思ったより、裏メニューに気が付く男性陣が多く驚いた。女性陣もそれなりにいたが。彼らのおかげで必要となっていた宿屋代の百両を瞬く間に集めることができ、尚且つ当面は商売をすることなく豪遊することさえ、できそうな位には集まった。

 

 それにしても、意外と人気があるんだな……若いころの綱手姫。いや、まぁスタイル抜群だし顔も良い。金糸の様に流れる長髪金髪美人に見惚れるのも無理はない。性格と酒癖、ギャンブル癖さえなければ本当に完璧な美人だものな。見ている分には見目麗しい女性だわな。家柄も火影様の孫とか高嶺の花そのものだしな。

 

 

 四代目のブロマイドも概ね盛況で金髪イケメンの爽やか笑顔に胸を射抜かれた女性陣が多数出没し、もっと別の写真はないのか、この殿方はどこのどなたなのですかっ!?と鬼気迫る表情で詰め寄られ辟易した次第である。

 

 

 しかし、本当に驚いたのは奴のブロマイドである。ガイ。なぜか、オカマ連中に好かれ大量に買われていった彼の写真。果たしてどの様な末路をたどるのであろうか。

さぶいぼが立ってきたのでこれ以上考えるのはやめておこう。

 

 俺は、心底祈りたくもない冥福を祈りつつ合掌しておいた。安らかに眠れ。オカマと共に。自来也氏のブロマイドは……うん、余りに売れずに哀れだったからイチャイチャシリーズの購入者におまけとしてつけておいた。っと、余計な話は置いておき、今回の儲け分の集計をしようと思う。

 

 

 携帯食料・お菓子、嗜好品各種の集計額は十五万七千両。これは、現代日本でも行われている。≪たたき売り≫を使ったものだ。

 

 適当な詰め合わせセットを作成して、セット価格として若干安めにして投げ売りのような形で売りに出した。結果は言わずもがな、女・子どもに大反響でこれは大成功だったといえるだろう。

 

 

 

 次に、ゴーグルなどの雑貨用品。これらはある程度は売れたがあまり客足は多くなかった。集計額は四千五百両と少し。少々低目な理由は顧客がたたき売りのせいでか、客層が低くなりがちなために起こった問題だ。次回、たたき売りをする際は少し控えめにしようかと思う。

 

 

 お次は、忍者用品兼自衛用品である。これはそこそこに売れはしたが、ほぼ予想通りの集金となった。集計額は十六万四千両と少しである。大体、二十万両程度儲かればいいなと思っていたが許容範囲以内である。

 

 忍具に余り関心がないのか、珍しがって買っていく者や如何にもヤの付く自営業の方が忍刀を買いたいと言われた時は思わず肝を冷やした。丁重に接客をこなしたおかげか、早々に帰っていただけて本当に助かった。

 

 

 

 

 さて、ラストだ。裏メニューの集計に移ろうと思う。先にも、言った通り予想をはるかに上回った男性陣がこぞって買いあさった十八禁のイチャイチャシリーズ並びに綱手姫の写真はこれまた飛ぶように売れた。

 

 買っていった男性陣が知人友人にも教えたのか、どんどんと≪ネズミ講≫並みに増え続け、中には各種三冊や複数枚の写真を買っていく猛者もいた。どこの世界にもコレクター(収集家)ってのは居るもんだなと何故かしんみりと思うことになった。

 

 男ってやつはいつまでたってもバカなんだぜ……。と若干ブルーな気分になりつつも、意気揚々とスキップしながら帰っていく男たちを白い目で見つめていた女性陣に男性陣の近い将来に起こるであろう惨状を憂いた。

 

 貴女たちも人のことをとやかく言えないじゃないですか。と思わず口から声が出そうになり、慌てて口を噤むことができて本当に良かったと思う。

 

 

 

 

 さて、気を取り直して、集計に移ろうと思う。集計額はダントツの一位。聞いて驚け、なんと九十四万五千両である。いや、どんだけ売れたらこんな金額になるんだよっ!と聞かれそうであるから先に説明しておくと。

 

 イチャイチャシリーズ一巻につき約五千両で販売することにしていたので軽く百冊以上売れた計算になる。とはいえ、流石に本一冊に五千両も出す者は少なかったため、とあるテレビ番組を思い出し、≪イチャイチャ九種類お得セット≫で買うならば通常の三割引きの価格で販売するジャ〇ネット方式で売りにかけた。

 

 希少価値が高いことも有ったのか、市場に出回っていないらしく皆、珍しがって飛ぶように売れたのだ。それに加え、綱手姫の写真や四代目のブロマイド、予想に反してガイのブロマイドも数えるのも億劫な位の量を売り払ったのでこのとんでもない額を一日にして荒稼ぎしてしまったのだ。

 

 まぁ、元手が全くかからない分、売れば売るほどそれが純利益につながるのだから、この結果はある意味では当然と言えるだろう。

 

 いやぁそれにしても男性陣並びに女性陣の皆様そして、オカマの皆様。お買い上げ誠にありがとうございます。お陰様でわたくしの懐具合はかなり潤っております。

 

 まさに、笑いが止まらないとはこのことですな。わははっ。しかし、油断や慢心は危険だ。と気を引き締める。それでも緩む心を抱えて今日の宿へと歩を進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 周囲は既に夕刻時である。太陽が山の背へと差し掛かり、じきに夜になろうかという時間帯、俺は露店を切り上げ悠々と宿屋への道のりを歩いていた。ふと、何かが視界の隅に見えたのでわき道へと視線を見やると暗がりに誰かが倒れているのを発見する。

 

 

 ははーん、さては酒でも飲んで酔いつぶれたか?と気分が乗りに乗って調子付き、緩みに緩んでいた俺は親切心から暗がりへと身を遣った。陰で頭部だけしか見えなかった人物が近づくにつれて段々と明瞭に見えてくる。と同時、俺はその人物に急ぎ駆け寄った。

 

 

 

 

 

 倒れていたのは四、五歳程度のガキだった。ひどく衰弱しており、衣服は彼方此方すり切れ、長い間散髪していないのか髪は伸びに伸びきり煤と埃に汚れていた。薄く消え入りそうな吐息は浅く、風邪か何らかの病気を患っているのか熱を帯びてぐったりとしている。

 

 正直、この子どもの姿は恐ろしい、そして同時に憐れだ。嫌悪の念すら抱くほどに。現代日本に住んでいた俺からすればこれほどまでに汚らしく衰弱しきっている子どもなど見るはずもなく。いや、元の世界中をくまなく探せばこれよりも酷い状態の子どもを見つけることが出来るかも知れないのだが。

 

 俺自身、直接これほど迄の劣悪な状態のガキを見るのは初めてのことだった。それほどまでに弱り切った子どもを初めて、見てしまった。見つけてしまった。知ってしまった。

 

 

 

 体中を筆舌しがたい熱い何かが駆け巡る。行き場をなくした感情が胸を早鐘のように激しく打ち鳴らす。今にも、死んでしまいそうな、苦痛に表情をゆがめる子どもに、己が如何に恵まれた環境にいたのかを様々と見せつけられる。

 

 分かってはいた。いいや、分かっていたつもりだった。というのが正解か。

 

 

 この世界はNARUTOの平行世界だ。あくまでそれは大本となる根底がNARUTOの世界というだけで、これはれっきとした現実だったのだ。それをあたかも傍観者にでもなったつもりでのうのうと過ごして居たのかもしれない。

 

 

 不本意ながらテンプレ神と呼ばれる神様に出会い能力をつけられトリップをし、今の今までうまくいき過ぎていたことで俺はこの世界はまだ、他の漫画やゲームの様に人死にが起こらない、いや例え起きたとしても原作主人公たちの周囲のみのことであって、俺の周りではそんなものは起こらないと心の片隅で甘い考えをしていたのかもしれない。

 

 

 

 俺がこの子をこんな風にしたわけではない。この子みたいな子どもがいることなど知らなかった。見て見ぬふりをすればいい。……少し考えれば言い訳はいくらでも出てきた。だがしかし、それで本当に良いのだろうか?

 

 今ここで、知らない振りをすれば、俺はいつの日かきっと後悔するんじゃないだろうか。諦める。見て見ぬふりをする。という行動は一種の毒だ。自分には出来ない。自信が無いから。とやろうとする前から諦めて辞めてしまう。ただの一度でもそれを犯してしまうとその後も何かと言い訳を見つけてそれを盾にやろうとはせずに終えてしまう。……過去の俺は少なからずそうだった。

 

 勉強など別にやらなくても生きていける等と息巻き。甘く、愚かな考えで楽観的に過ごしてしまい、後々の卒業間近になってから、嗚呼、もっと勉強しておけば良かった。と後悔をしたのだ。

 

……本当に、それでも良いのか。俺。それでは、過去の俺と全く同じじゃないか。

 

 

 作中で語られた≪物語≫はあくまでも物語でしかない。極端に言ってしまえば主人公たちの心や体を強化するイベントでしかないのだ。

 

 敵を殺すことの意味。護るという事の意味を知る。友人、恩人との出会いと別れ、裏切り、自身の住む街の崩壊とそれに伴う感情の変化。

 

 さまざまな出来事を乗り越え心も体も絆も共に強くなっていく。彼らの舞台装置でしかない脇役はこうやって、ひっそりと消えていく、死んでいく。ひょっとしたら、その中に俺も含まれているのかもしれない。

 

 

…………そんなのは、あんまりだ。例えそれが、彼らが謳う最善の行動の結果なのだとしても。

 

 

 

 

 

 

 

――――死なせはしない。俺の手の届く範囲に助けられる命があるとするのなら。仮初の力だろうがなんだろうが使ってやる。たとえ、それがどんな命だろうと失って良い筈は無いのだから。

 

 

 

 この世界に来てからずっと、心のどこかで燻っていたのかもしれない。現実では到底なりえない、時代遅れだと時に囁かれる。英雄(ヒーロー)達の様になってみたいと。

 

 幼い頃、夢描いた。助けを求める誰かを人知れず救っている彼らのように。己惚れるなと、たかが一人で何ができると笑いたければ笑うがいい。貶したければ、虚仮にしたければ勝手にしていろ。

 

 

 俺には力がある。この世界の異分子たる俺には。それも、とびっきりの反則(チート)がだ。脇役の一人や二人いや、十人や百人救ってやろうじゃないかっ!

 

 

――――最初の一人目はお前だ。まずは、お前を救ってやる。だから、死ぬなよ。ガキ。

 

 

 


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