NARUTO~行商人珍道中~   作:fall

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取りあえず、序章が終わる位までは今有る穴だらけのプロットで書いてみようと思います。

致命的な穴やその他諸々有るかと思いますが感想にてご指摘いただけると有りがたいです。

話はドンドン暗くなるばかりですがそれでも良い方はどうぞ。

※グロ&鬱描写がございます。苦手な方はブラウザバックを推奨させて頂きます。


10 悪夢、壊れ行く心

NARUTO~行商人珍道中~

 

10 悪夢、壊れ行く心

 

 

 

 

――――嗚呼、またか。また、この光景だ。

 

 薄ぼんやりとした意識の中であの日から永遠と壊れたテレビの様に続く夢を見る。夢だと分かって居てもなお、この光景はもう見たくない。

 

 俺の身体は大地に伏している。否、巨大な出刃包丁のような刀。銘を首切り包丁と呼ばれるそれが俺と地面とを縫い付けて動けない様にされて居るのだ。どれ程もがこうと足掻こうとしても俺の身体はピクリとも動いてくれない。

 

 そこへ、何時の間に現れたのか俺の血を浴びて真っ赤に染まりながら宙を仰ぐズタボロなハクともう一本の首切り包丁をハクに向けて上段に構えている再不斬。何やら、ここからでは聞き取れない会話を二言三言交わしたかと思うと構えられたそれを勢いよく振り下ろした。

 

 

 バッサリ、そう表現する事が一番適切であろう。脳天から股下にかけて一刀のもとに両断されたそれは左右に割れ、肉の内に隠された臓物を外気に晒す。ダラダラと流れ出てきた赤い血は地へと広がり血溜まりとなってハクの亡骸を更に紅く染め上げる。

 

 直後、狂ったような大きな嗤い声が周囲を包み込む。それに混じって俺を責める様にハクの声が木霊する。助けて。約束してくれたのに。どうして来てくれないの。痛いよ。……お願い、早く殺して。もう、楽にさせてよ。耳元で囁かれる言葉が刃となって襲い掛かってくる。

 

 

 それが、何度も、何度も何度も、繰り返し、永遠にリピートされる。…………もう、止めてくれ。頼むから、止めてくれ。両の目を閉じようとしても。両の手で目を覆い隠そうとしても。耳を塞ごうとしても。俺の身体は微塵も動いてはくれない。

 

 

 様々とハクが殺される光景を沸々と心に何かが溜まっていく事を感じながら、呆然と見続ける。見せつけられる。聞かされ続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「止めてくれぇッッッ!ハァッ、ハァッ……はぁっ」

 

 覚める。アノ長く忌々しい夢から。目が覚めた場所はどうやら、宿のベッドの上の様だ。外はもう既に日が落ちている。満月と成っている闇夜を黄金に光照らす球体がまさか、太陽の光を反射しているに過ぎない事をこの世界の人々は知っているだろうか。と不意に詰まらない思考が脳裏を過る。

 

 後、どれ程の間この最悪で最低な夢を見続けなければ成らないのだろうか。ハクは本当に無事なのだろうか。俺は奴に勝てるのだろうか。不安が、一挙に押し寄せてくる。

 

 駄目だな。こんな弱気では、ハクや撫子に心配されてしまう。……俺は、大丈夫だ。俺は大丈夫だ。まだいける。まだやれる。自身に暗示を掛ける。俺はまだやれるのだと。こんな所で諦めるような男ではないと。

 

 あの日以降、恒例化してしまった自己暗示をこなすと自身の周囲を見渡す。そういえば、悪夢を見る前に俺は撫子によって気絶させられたのだったなと苦笑が浮かぶ。くくっ、まさか投げろと言ったからと言って全力投球されるとは思わなかったぞ。

 

 看病をしながら寝てしまったのか、目の端に薄らと涙の後を残したあどけない表情を浮かべた撫子がベッド脇に伏して寝ているのを確認する。嗚呼、また泣かしてしまったな。どうして俺の周りの人間というか俺も含めてこうも涙脆いというか泣き虫が多いんだろうな……ハクしかり撫子も。それでも不思議と俺の事を心底心配してくれたのだと分かってとても心が暖かくなる。

 

「くくっ涎何て垂らして、一体どんな夢を見ているんだか……」

 

「ぅ……ぁ、ミヤ駄目だそれは私の肉まんだ……っあ、やめっ」

 

「本当にどんな夢見てんだよ、俺の悪夢と交換して欲しいくらいだな」

 

 撫子は頬を少し赤らめながら何やら寝言を漏らしだす。それに突っ込みを独り入れながらも昨日のアレを思い出す。……チャクラをコントロール出来なかった。いや違うか、出すことは出来たのにも関わらずどれ程止めようとしても止まらなかったのだ。仮説を建てるのならば俺自身がただ単に扱いきれていない事が一点。そもそも俺のチャクラは放出する事だけにしか使えないという点。その他にも色々と原因は思い浮かんだが取りあえずこのうちのどちらかが原因とする。

 

 さて、どちらが本命かな?と突き詰めようとした所で扉がリズム良く三々七拍子に叩かれた。……合図だ。漸くアイツらの居場所を突き止めてくれたのか。この一週間、待った甲斐が有ったというものだ。

 

「入ってくれ。ナズナ」

 

 俺の声が聞こえると同時、音もなく扉を開き入ってくる暗部装束の女性ナズナ。彼女には連れ去られたハクと連れ去った再不斬を追って貰っていたのだ。俺が撫子のデコピンによって気絶してから二日後ベッドに拘束された後、撫子が花を摘みに行っている最中に呼び出し、主に追跡系統の≪忍び札≫を装備させて追って居て貰ったのである。

 

 まさか、これほどまで速く知らせをしてくるとは思っていなかったが……どうやら式達は俺が思っている以上に優秀なようだ。それこそ独りでも再不斬程度の命を刈り取る程度には。しかし、俺が依頼した事は再不斬の殺害ではない。ハクの安否確認と現在地の把握にのみを最優先に行動してほしいと頼み込んだのだ。

 

 結果、一週間もの長い期間が空いてしまった再不斬達を迅速に発見、報告をしてくれているのだから今ばかりは色々と厄介な忍識札に感謝をしている。

 

 ナズナに持たせた≪巻物間移動・瞬身の巻物≫はAの巻物と紐付けされた同一のAの巻物に長距離、短距離関わらず移動できる効力を持たせたものである。これを使い、Aを俺の元に置き、ナズナがハクを発見、目的地から少し離れた場所に新しくBの巻物を置いてAを使って俺の元に帰ってくるという方法を取った。

 

 これは、ナルトRPG内でも移動ギミックとして使われており、参考にしてやってみたら出来てしまったというレアなケースである。尚、その後分かった話ではあるが、原作主人公の父≪四代目火影・波風ミナト≫は時空間忍術と呼ばれる忍術のエキスパートで≪飛雷神の術≫と呼ばれる術を用い此れと同じ様な瞬間移動からの高速戦闘を主としていたそうだ。

 

 

 それは兎も角ナズナの報告では再不斬達は霧隠れの里に向かおうとしているとの事。命令とあらば私が首級をお持ちいたしますとまで言ってくれたが、奴には借りがある為に出来る事であれば俺自身の手で蹴りを付けたい旨を告げ、ハクの身の安全を最優先するように言い渡した。

 

 正直、奴の事を考えるだけで恐怖と怒りとで身体が震えてくるが、それは武者震いだと自身を誤魔化し、奴を倒すための策を練る。とは言え今度は此方が奇襲を掛ける番だ。

 

 

 借りを借りのままにして置く事は主義じゃない。やられたからにはやり返す。ハンムラビ法典万歳だ。この怒りを鎮めるためには、奴と決着を付けなければ収まりそうも無い。ここまでは俺自身の事情だ。そして、ここからはハクの為でもある。誰々の為という言葉は余り、使いたくは無い表現方法だが、今回ばかりは致し方ない。

 

 奴、即ち再不斬は霧隠れの里に於いてクーデターを引き起こす。しかし、計画は破綻。再不斬を含むクーデターの首謀者等は散り散りになって国外へ逃げ出すことになる。

 

 何故、その様な事を企て、協力・実行したのかまでは俺は知らないが、正直に言わせて貰うと無謀だ。数十若しくは数百の忍び対隠れ里引いては国と戦おうと言うのだ。どだい再不斬の無音殺人術(サイレントキリング)が優秀であろうと人間には限界というものがある。いつの日か返り討ちに遭うかして、その身を滅ぼすだろう。

 

 どう足掻いても、数十、数百程度の人員では小競り合いを起こす事すら不可能と言えるだろう。そも、そんな危険な行動をしようとする輩にハクの身を任せる訳にはいかない。この世界は既に、道筋から外れてしまっているのだから。不測の事態何て物はいつやって来ても可笑しくは無い。

 

 前にも言ったが、ハクには優しい光の中で生きて欲しい。いつ、この手を汚してしまうか分からない俺よりかは、木の葉辺りに式でも付けて暮して貰うのも良いかもしれない。

 

 大衆の為のヒーローではなく、彼女の為だけの仮面のヒーローに俺は成る。報われ様等と甘えた事はもう、言わない。吐かない。どれ程の汚名を受けようと、屈辱に晒されようと。俺は、決めたのだ。

 

 迷わない。逃げたりしない。敵が強かろうが。状況が絶望的だろうが。足掻いて足掻いて、足掻き続けてやる。

 

 

――――どうせ、殺し殺されたとしても万能丸が半死半生程度まで回復させてくれる。……なぁんだ。どうして俺はそんなつまらない事に躊躇していたんだろう。人を殺める事に抵抗を持っていたのだろう。

 

 

 何かが、崩れていく。壊れていく。壊してはいけない。越えていけないナニかを。しかし、それをアマミヤは思い出せない。否、思い出すことを諦めた。それはこの世界では不要だと断じた。甘さだと。弱さであると。

 

 同時、ぽっかりと空いたそこへ夢の中で溜めに溜め込んだドス黒い感情が流れ込む。倒せ、殺せ、奪え……ありとあらゆる劣情が。暗く、とても一人では抱えきれないそれがアマミヤへと一気に流れ込んでしまった。

 

「くくっ、くふふっははははっ」

 

 狂った様に笑い出すアマミヤは、正気ではなかった。それも当然。日々、日夜問わず押しつぶされそうな罪の重責が襲い、夜眠りに付けば、手出し不可能な状況化に於いて助けたいと願い続けた少女が幾度も幾度も目の前で斬殺される光景を様々と見せつけられ、終いにはその少女から恨み言を言われる始末。

 

 これで、狂わないと言える者はもはや人ではない。加えて、アマミヤには中途半端な力が有ったことも災いした。いっそ無力であれば、ハクの事も見て見ぬふりをすることも出来たであろう。しかして、彼には神を自称する女性から力を与えられてしまったのだ。使い方を誤れば世界を壊すことも可能な強力にして強大な力を。

 

 

 分不相応な力は得てして人を不幸にする。強大な力は災いを呼び起こす。強い力を持つ者同士は惹かれ合う定めにある。

 

 どれもこれも、何処かで、聞いたことの有るフレーズであるだろう。しかし、これは真実でもある。強力が故に力を自慢し、誇示すれば人は当然良い顔をしない。人とは己より優っている者に対しては往々にして、冷たい生き物だ。

 

 そうして、気に入らないものはドンドンと排除し、己の都合の良い世界を創ろうと考える。独裁の始まりである。

 

 一度、マイナスのイメージを持たれたモノはそうそう簡単にプラスには成らない。否、成れないと言った方が適切か。

 

 アマミヤの場合、不幸な事故により一度死を受けた。しかし、神によって強力な力を貰い受けトリップという形でこの世界へとやってきたのだ。そして、とんとん拍子に事が上手く運び、ハクと出会った。彼女を通してこの世界が現実のそれと変わらないことを再認識した幸せなアマミヤは絶望と出会う。

 

 幸福から、一気に奈落の底へと突き落とされた。日々、蝕まれていく心。心が壊れてしまうまでの限界は近かった。

 

「嗚呼、最高だ。今までに無いくらいの良い気分だ」

 

 抑圧された感情が反発し、頬は上気し酒にでも酔ったかの様な気分に浸る。

 

「ナズナ、奴は、再不斬は何処に居る?」

 

 スッと差し出された巻物を受け取ると満面の笑顔を浮かべ、それをひも解く。次の瞬間には白煙が立ち込め、そして消えるとアマミヤの姿は何処にもなかった。

 

 

「御武運を」

 

 一言小さく呟いたと思うとナズナもまた巻物を開くと白煙を残し、その場を去る。撫子はといえば、スヤスヤと寝息を立てながら眠り続けている様に見せかけ、巻物を開いた隙を狙ってナズナに躍りかかる。と同時に発動した瞬身の巻物に巻き込まれたのだった。

 

 こうして宿屋の一室は一夜にしてもぬけの殻となり、また街から出ていく姿を誰も見なかったことから神隠しにでも有ったのでは無いかと囁かれることになる。

 

 

 

 


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