NARUTO~行商人珍道中~   作:fall

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NARUTO~行商人珍道中~

 

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 アイテム、とは主にアニメやゲーム等の創作物に登場する便利なお助け道具のことであると俺は思う。

 ジャパニメーションで例えるとするならば、みんな大好きな二十二世紀の未来からやってきたという青タヌキのアレコレ。

 ポケットサイズに収縮・収納可能なモンスターを育成&バトルなんかしちゃう人々のアレソレ。

RPGなら回復ポーションだとかと言ったところか。

 

 さて、どうしてアイテムについて俺が講釈垂れているのかというとだ。

 

 所謂≪テンプレ≫というものに俺も運良く?悪く?当たってしまったからだ。テンプレ、テンプレートと呼称されるそれは簡潔に行ってしまえば、理由付けや説明が面倒な事柄を原本として誰でも使えるように簡略化したモノである。

 この場合で言えば、≪神様転生≫に当たる。

 

『私のミスで~云々、あなたは本当は死ぬはずじゃなかったんです~記憶の持ち越しと能力一つ差し上げますから転生してください。』

 

 なんて出会って即座に詰め寄られ、願いを叶えて差し上げるのでさっさと決めてくださいハリーハリーハリーてな感じでお前本当に反省してんのか?と問いただしたい位に捲し立てられるしだい。

 

 余り刺激しないほうが得策だと過去の教訓を糧にして、早々に願いを叶えてもらい深く関わり合いにならぬようにするべきだと思い至り、何を願おうかと思案していた所、超弩級の爆弾が落とされたのである。

 

 

 

 

――――曰く、転生先はNARUTOの平行世界である。と

 

 

 

 

 知らない人はおそらくいないと思うが敢えて言っておこう。NARUTOとは週刊少年ジャンプという漫画雑誌において連載されている世界中で人気の漫画なのだと。

 

 主人公を始めとする忍者達のド派手なハチャメチャ忍術のオンパレードが売りの作品でお前ら忍べよと突っ込みが入るほど忍ばない忍者たちの物語。

 

 

 

 ちなみにだが、俺はこの作品をほぼゲームでしか知らない。昔は立ち読みやらしていたのだが、職に就いてからというもの全くと言っていいほど時間が取れず読むことは終ぞなかった。もうそろそろ最終回が近いと友人から聞き及んでいる。

 

 任天堂のゲームボーイアドバンスにて登場したナルトRPGという作品並びに同ゲーム会社の後継機であるディーエス通称DSにて発売されたナルトRPG2を友人から借りてプレイした程度の知識しか持っていないのだ。

 

 確か3までは発売していた気がするのだが、どうやら友人はその際に金がなく買えなかったようで(加えて原作との内容にあまり関わらないオリジナル作品だったもよう)俺もプレイすることなく今に至る。

 

 というわけで、俺はナルトの世界に転生させられるとなると、非常に不味いことになるというのがよくご理解いただけるかと思う。

 

 小学校(アカデミー)を卒業した程度のガキでさえ、忍術なんていう常識外の災害を引き起こす力を持つ世界だ。一般ぴーぽーである俺が下手な能力を持って転生若しくはトリップでもしてみろ、あっという間に殺されてBADEND確定じゃないか。

 

 そうじゃなくても、チャクラや印を組まずに炎やら雷やら出してみれば、血継限界やら特殊な事例だとか言われて保護という名のモルモットコースへ一直線。

 

……ダメだ。どう足掻いても絶望的じゃないか。

 

 というか、さっきから『ねぇねぇ~早く決めないとそのまま送り出しちゃうよ~早く早く~』なんて言ってくるクソ女が物っ凄く鬱陶しい。

 こちとら、命が掛かっとんじゃ黙っとれと言いたい。しかし、どうしたものか。

 

 

 

 うーむ、反則染みたものは恐らくバレれれば排斥オアモルモットでBAD行きだからそれ程目立たなくて地味、尚且つ使えるものを選択しなければ。

 

……となると、忍術に近しいものか便利なお助けアイテム、もしくは助っ人辺りが無難な感じになるのかな。

 

 忍術や別作品の技もやめておこうと思う。俺にあんな高速で指動かすとか無理そうだし。そもそも下手に忍術なんて使える事が分かったら忍者に勧誘されて任務とかさせられるだろう。人とか動物とか殺したくないからパス。というか断固拒否する。害ある獣ならともかく人間相手に剣やら不思議能力を向けるとかどう考えても無理だ。

 

 

 次にアイテムだがこれは多分一番まともで有用な物だと思う。青タヌキの未来道具とか、ゲームのアイテムとか使えれば、例え殺し合いとか戦争に巻き込まれても倒したりする事はできずとも逃げるだけならできるはずだ。

 

 ただ、問題点を挙げるとするならば重量とか数量等の持ち運び関係とあの女から許可が下りるアイテムが分からない事だ。保留だな。

 

 

 最後に助っ人、これは言わずともわかると思うが文字通り助っ人を着けて貰うという案である。ナルトの世界は極めて危険である。主人公たちの裏側や彼らの道中にも人は簡単に死んでいくだろう。

 

 それこそ、雑草を切り取るよりも簡単にだ。そこで、心強い味方である助っ人の登場である。彼、もしくは彼女の戦闘力に期待して自分はそれに護ってもらう……情けないな、でも俺が生き残るには必要だ。

 

 これにも当然問題がある。彼、彼女の戦闘能力がどれほどのものかは素人である俺には分からないといった点だ。例えば、俺(数回程度の殴り合いの喧嘩しかしていない素人)と手合せをして助っ人が圧勝したとしても本来の仮想敵は忍術なんて言う超常現象を意図も容易く引き起こせるびっくり人間の集まりで囲まれて叩かれたらその時点で詰んでしまう。

 

 加えて、相性の問題もある。彼らの性格や趣向が合わなければ見捨てられるか殺される可能性もある。

 見捨てられれば、防衛手段の無い俺は路頭に迷い獣等に襲われるかして野垂れ死ぬし、殺そうと思われてしまったのならばこれまた死ぬ。

リスクがデカ過ぎる。

 

 

 つまり、残された道はただ一つ、アイテムの使用許可をもぎ取ることである。出来れば、使用回数、使用個数を無限に近しい物にしたいところ。

 これが出来れば、アイテムを売りさばいて安全に豪遊もできるやもしれん。何よりも先ず第一に生き残らなければ苦楽をすることさえ出来ないのだから。

 

 

 

 

――――そうと決まれば交渉開始だッ

 

 

 

 

 

 

 

『ぇ?何決まったの?なら早く言ってよ、アタシも時間無いからさぁ一つだけなら何でもいいよ~え?そんなんで良いの?もっと、凄いのでもいいんだよ?へーそうなの、んじゃそれで、あ?なに?使用数増やしてほしい?あ~ハイハイじゃあメンドくさいから無限でいいよね?ハイ決まりッ!んじゃ、精々頑張って~』

 

 

 化けの皮が剥がれてんぞと突っ込みたい気持ちを抑え込みつつ要望を言ってみた結果、あっさりと決まってしまい拍子抜けである。交渉だー何だかんだと無い頭こねくり回して考えた案が無駄になってしまったりしたが、それはまぁいい。

 これで、俺の身の安全は確保されたも同義……どんな手を使ってでも俺は生き残ってやる。

 

 

『それじゃあ、良い次生を~あでゅ~』

 

 へらへらと笑いながら手を振る女に最後までふざけた奴だったと記憶に留める。次第に意識が薄れていく感覚がしはじめ俺はそれに誘われる様に意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 女がただ笑っているのではなく、俺を嘲笑っていた事など露程も知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 フッと夢から覚めるように意識が浮上するのを感じ、瞼を開き辺りを見回す。

 

 

 ジメッとした嫌な温度にシトシトと降る雨、見渡す限りに木々が生い茂っている事から此処が湿地帯に有る森を連想させる。

 

「ふぅ……なぜこんな所に転移させたのかはわからないが、とりあえず状況確認だ。」

 

 体をあちこち触診したが、いつもの通りだと自己診断を終えるとスーツの胸ポケットに違和感を感じた。

 

 ポケットに手を突っ込み引き出す。出てきたものは四等分の歪な形に折られた茶封筒。なんだこれは、と警戒をしつつ恐る恐る中身を取り出す。

 

「これは、手紙?」

 

 茶封筒から取り出したものはA4サイズの紙が数枚に女性特有の丸まった文字が書かれた手紙だった。

 

 手紙の内容を簡略化するとすれば、『付ける筈の能力を間違えちゃった。許してね☆』という一文のみである。季節の挨拶から始まって一体どうしてしまったのかと思ったらこれだよ。

 

 で、俺が貰うはずだった≪お助けアイテム≫は大幅に弱体化?して、ゲームの作品である≪ナルトRPG≫シリーズのアイテムを無制限で使用できるという能力へと変貌したのである。

 正直に言って、青タヌキの未来道具や別RPGの霊薬等が使えないことは痛手である、がそれでも一応俺が望んだ≪アイテムの無制限使用権≫は失効されていないので何とかなると思う。

 

 A4の紙には能力の使い方が事細かく記載されおり、これらすべてを頭に叩き込まなければならないとなると若干頭が痛い。

 

 

 とりあえず、一度試してみるかと安易に考えてしまったことをあとで後悔することになるとは思いもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「腹減ってるから《おむすび》でいいや、《出てこいおむすび》」

 

 アイテムをストレージから出すには声に出さなければならない、というのが第一の制約だ。

 

 俺の掌にぼふんっという音と同時に白煙が発生し、煙が晴れるとそこにはおむすびが鎮座していた。

「おおっ!出てきた出てきたっ」

 興奮も冷めやらぬといった様子ではしゃぐ俺(三十路手前)は周囲から見たら奇人変人のたぐいだと思われることだろう。

 

「おかかだったかぁ……あまり好きじゃないけど、味もちゃんとするし成功と言っていいな」

 

 食べ物の次は攻撃系統の道具だな、と気合を入れる。

 

 

「≪来いっ!水とんの巻物≫」

 

 先ほどと同じように手のひらに水色の巻物が現れる。さて、どれほどの効力を発揮するのやら、わくわくするなぁ。

 あぁ、でももし威力が高すぎて危険になった場合を考えてっと「≪変わり身の巻物≫」

 取り出した変わり身の巻物をひも解く、すると巻物から白煙が立ち上り俺を包む。気が付くと俺は先ほど居た場所から三十メートル程度離れた位置に佇んでいた。

 なるほど、こうなる訳かと納得しもう一巻変わり身の巻物を取り出すと今度こそ水とんの巻物を開く

 

 

 

――――ズゴゴゴゴゴゴゴ

 

 巻物から大量の水が、というか波が垂れ流しにされる。……これは不味いっ、急ぎ変わり身の巻物を開き自身と丸太を入れ替え離脱を図る。

 

 しかし、問屋は降ろさなかった。巻物から出る水の量は刻一刻と増え続けどんどんと辺りを侵食していく。

 

 

 巻物ってこんなに効力無かったはずだ、俺が知っている巻物は精々水球が勢いよく飛んでいく位のものなんだが……ん?何々、『流石に可哀想かなぁっと思ってアイテムの効力は3倍増しにしといたよっ!感謝してね☆』イラン事すんじゃねぇよっ!つか、これどうすりゃ止まるんだよ。

 

 

「戻れっカムバックっ≪回収≫っ戻ってこーい、ばっちこーい……は違うか」

 

 手当たり次第に戻ってくるよう声に出して言う。どれが当ただったのかは分からかったが無事に水とんの巻物は手のひらに収まった。要練習の必要ありだな。

 

 ふぅ……これ、多分≪水とんの術・参の巻≫位の威力と範囲があるんじゃなかろうか。

≪火とんの巻物≫や≪雷とんの巻物≫じゃなくて良かったよ。危うく大惨事になるところだ。

 使い時と使い道がかなり狭まった気がするが、戦闘において主戦力級になることは確かだ。この分だと武器やら防具やらも大変なことになっているやもしれん。

 

 先が思いやられるぜ……あぁ、そういえば基礎力を上げるカンポウ丸なんてのも有ったな。あれらの効果も三倍となるとかなりチートな能力であると言えるな。

 

 加えて、相手の行動を阻害する≪ふういん玉≫や≪まきびし≫、≪よわき玉≫なんて使ったらと思うと胃がとても痛い。

 

 

 衣と食は何とか成るが、住居の問題があることを不意に思い出した。近くに街や村が有れば良いんだが、流石に日も暮れてきたし、これから移動するというのも危険だ。今日はというか暫くの間野宿生活かな?しかし、屋根がないと流石に困るな。

 

 うん、アノ手を使おう。先ず≪門ばんのぼう≫と≪四代目のマント≫そして≪鉄くさり≫を取り出す。次いで、手ごろな高さに生えている木々を探す。枝と枝との間に門ばんのぼうを幾本も掛けてマントを数枚乗せる、これだけでは風が吹いてしまえば飛ばされてしまうので鎖鎌である鉄くさりを使って固定化。上はとりあえずこんな物でいいやと問題点が起きるまで放置することに。

 

 続いて側面。風はそこまで強くはないが如何せん霧が有って視界が悪い。それにこれ以上濡れて風邪でもひいたら洒落にならない。と言うわけで早急に壁を作らなければならない。 

 

 先ほどと同じく棒とマント、鎖そして布止めとして≪千本≫を用意する。複数の棒を固めて地面に差し、鎖で近くの木に巻き付け固定。これを屋根と一体になるよう四方同様に行う。多少棒の長さが足りず隙間が出来たが壁と同様に複数枚を千本で纏めたマントを垂れ幕の様に掛けて補う。

 千本の針がむき出しなのは安全性に掛けるため≪ちぎれたページ≫を重ねて千本に刺し針がむき出しにならぬよう埋めた。

 

 うし、このくらいで大丈夫だろう。最後に地べたで眠るのは嫌だったので再びマントを複数枚取り出し地面から五センチ位の余裕を持たせるようにして敷き詰める。

 

 初めて作った簡易テント。所々歪で不格好ではあるが我ながらに上出来だと思う。外見などこの際気にして等居られない。何時の間にやら辺りは真っ暗だ。夜の森は恐ろしいと聞きかじっているので下手に動かず、テント周りに≪起爆札≫を設置。これで漸く安心して寝ることが出来る。

 

 初めての事だらけで疲れが出たのか服を着替えるとすぐさま俺の意識は微睡みへと誘われた。明日から一体どうしようか。何て事は考えられず深い眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

 


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