NO SIDE
互いに小手調べを終えた大和とあかり。
先に大技を見せた大和に対抗し、今度はあかりが大技の構えを取る。
「大和兄ちゃん……大怪我しても、恨まないでよね?」
「生意気抜かすな。さっさと来いよ……」
「なら...... !」
大和の言葉に応じるようにあかりはバック宙で身を翻し、大和に向けて右腕を真っ直ぐ伸ばす。
「忍法・
伸ばした右腕、正確にはその袖口……更にはポケットや襟元から吹き出る無数の羽。
それらが渦を描くような軌道で大和へと飛んでいく。
「っ…… I ?」
気を纏って刃の如く鋭さを得た羽が大和の身体を襲い、掠めた羽が大和の肉体に無数の切傷を刻みつけていく。
「あ、あかり……こんなに強かったんだ」
「もう地味キャラって言えないかも……」
その光景に結衣とちなつは感嘆の声を漏らし、そして京子はというと。
「あかりいけぇーーっ!そのまま押し込めぇーーーっ! !」
「そのドS野郎に毎回弄られる俺達の積年の恨みを晴らしてくれ!斬り刻めぇーーーーっ!!」
フカヒレと共に興奮しながら応援し た。
「……甘いぜ! !」
だが、突如としてこれまで怯んでいた大和が動き出した。
羽の刃に傷つくのを気にせず、そのまま突っ込んできたのだ。
「っ! ?」
「この程度で俺が倒せると思ってるのか?あかりぃっ! !」
余裕の笑みさえ浮かべ、大和は鉤爪を振るいあかりに襲い掛かる。
「あぐっ!」
繰り出された鋭い一撃が右肩をかすめ、苦悶の声を上げるあかり。
更につ大和は容赦なくあかリの身体を抱え上げ、空中に放り投げる。
「華中飛猿爪!」
そして、投げ飛ばしたあかりを高速回転しながら一気に接近して追い討ちを喰らわせようとするが……。
「今さっきの、言葉の返事だけどさ……」
「ん?」
不意に口を開き、あかりは大和を見据えた。
そして右手に気を集中させたと同時に口角を吊り上げて笑う。
「あの程度で勝てるなんて思ってない……だから、こうするの!」
再びあかリの右袖口から噴き出す水鳥の羽。
ここまでは先の水鳥羽綸の術と同じ……ここであかりは新たな動きに打って出る。
右手全体に性質変化で炎と化した気を纏い 吹き荒れる羽に火を放つ!!
「奥義・
羽を導火線として炎が渦を巻き、 大和の身を包む。
更に、先の水鳥羽綸の術によって身体に張り付いた羽にも火が燃え移り、大和の全身は瞬燗に火達磨どしてしまった。
「ぐああああっ!!」
燃え盛る全身に悲鳴を上げる大和。
だがそれでもあかりは手を緩めず追撃の構えを取る。
大和の持つ智謀知略と精神力、そして狡猾さを知る彼女にとって、如何なる追撃も決してし過ぎると言う事は無い。
「くっ、クソ!」
「隙あり!!」
急いで服を剥ぎ取り上半身裸になって炎を振り払う大和。
その隙を突き、あかりは大和の背後を取って服に仕込んであったワイヤーを取り出し、大和の身体を拘束
そのまま再び上空へと大和共々跳び上がり、そして大和の身体をホールドしたまま錐揉み回転しながら落下する!
「赤座流忍体術・
凄まじい勢いのまま落下していく大和とあかり。
身を捩って必死に技から抜け出そうとする大和だが、自身を拘束する巧妙に力が入り
難く巻かれたワイヤーとあかりのパワーがそれをさせない! !
「グ…ぐっ……!」
「無駄だよ!これでトドメえっ! !」
大和の抵抗も虚しく、何とか左腕の拘束を解いたのと僅かに落下角度を変えた程度で終わり、やがて二人はリングへと落下し、大和はマットへと激突した。
「や、やったぁ!あかりの勝ちだ! !」
大技を決められた大和の姿に、あかりの親友である京子が歓声を上げ、結衣とちな
つも戦勝ムードに包まれ、
だが……
「ま、まさか……」
あかりが浮かべているのは勝利の笑みではなく、愕然とした驚きの表情だった。
「ケ、ケケッ……残念だったなあかりぃ.……! !」
不敵に笑みを浮かべて声を上げたのはK.O.必至と思われた大和だった。
その左手にはリングロープが握られている。
大和は激突の直前、ロープを掴む事で落下の衝撃を和らげていたのだ。
「耐え切ってやったぜ……お前の、
「うわっ!?」
拘束を完全に振り解き、その勢いに乗せてあかりを引き剥がす大和。
その身体にはダメージこそ少なくないものの、まだまだ戦闘には支障が無い程の気で満ちている。
「気を大量に消費した大技を以ってしても俺を倒すことは出来なかったようだな?」
「クッ……薙旋風! !」
大和の挑発に対し、あかりは苦虫を噛み潰しながらも飛び掛かり、回転蹴りを見舞おうとするが、逆に足を掴まれて阻止され、そのままマットに叩き付けられる。
「グハぁっ!」
「気を消耗しきったん状態じゃ、蹴りの威力も落ちるってもんだ。
良いか?本当の殺人技ってのは……ごういうの 言うんだ! !」
”カッ”と目を見開き、繰り出される右拳の連打。
試合前に澤永泰助を血祭りに上げた技の一つ『百裂拳』だ!
「ガッ……ハッ.…… !」
凄まじい連打に徐々にあかりの身体がマットから離れて浮かび上がる。
やがて、あかりの足とマットの距離が10cmに達しよ泌した時、大和はフィニッシュとばかりに強烈なアッパーカットを繰り出した!!
「セリャァーーーーーッ! !」
「グアァァツ!!」
強烈な一撃はあかりの身体を宙に打ち上げる。
そして息吐く間も無く大和はトドメの
「秘儀……万里の長城! !」
落下してくるあかりに対し、大和は自らもジャンプし、空中で器用にあかりの脚に自分
の脚を絡め、四の字固めの体勢に固め、そのままコーナーポストへとあかりを叩き付けた!!
「カハッ……」
搾り出すかのような声があかりの口から漏れる。
やがてあかりは大和が体勢を解化同時に力無くコーナーポストにもたれかかる様に倒れたのだった。
「そ、そこまで!勝者·直江大和! !」
◯直江大和-赤座あかり●
決まり手・万里の長城
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「係員、担架を『やめろ』……え?」
係員を呼び出そ泌する審判の肩を掴んで制上し、大和はあかりへと近付いていく。
「コイツは、俺が運ぶ」
そして、侄帆たあかりを背負い、そのままリングから降りて医務室へと歩き出した。
「ちょ、ちょっと君……無茶はやめなさい!君だってすぐに怪我の治療を……」
「ケッ!関係ねえよ、そんな事……俺はコイツの兄貴分だからな」
「ま、待って!私達も着いて行くよ!」
理屈にならない理屈と眼光で係員を黙らせ、大和は歩く。
背にはあかりを背負い、周囲には自身とあかりの身を案じるごらく部の面々に囲まれながら、妹分達と共に……。
「う…う……大和、お兄ちゃん…………」
「あんまリ 喋るな、傷が開くぞ」
やがて目を醒ましたあかりが大和に背負われながら口を開く。
その
「やっぱり強いや……大和お兄ちゃんは、本当に……」
「バカ野郎、野外試合ばっかで今日初めてリングに上がったばっかりの
「そうだね……でも、次は負けないんだから…… !」
「ケッケッケ……上等だ!」
お互いに満足気に笑い合い、
レオSIDE
大和の奴、案外良い兄貴してんだな。
「ただのサディストではないという事だな。奴も……」
完全回復した乙女さんが大和達を見詰めながら感心したように言う。
まあ、だからこそ
「いよいよ次は俺達だね……」
「ああ、勝ちに行くぞ、レオ!」
NO SIDE
「さてと、行くとするか」
「ああ、久々に血が騒ぐ」
一方で和人と景も準備を終え、いよいよリングへ上がろうとする。
「あ、和人君、ちょっと待って!」
不意に和人を彼の恋人のアスナが呼び止める。
「ユイちゃん、周りは大丈夫?」
『はい、周囲の撮影機器はこっちを向いてないですから。大丈夫ですよママ』
ユイに確認を取り、明日奈は不意に和人へと近付き……。
「んっ……」
そして、そのまま唇を重ねた。
「……頑張って」
「ああ!」
そして景一と詩乃も……。
「相変わらずだな」
「うん。……あの、景一」
和人と明日奈を呆れがちに見る景ーに対し、詩乃は物欲しそ汝目で彼を見詰める。
「珍しん、な?人前だというのに」
「……
「
そして二人も他の(バカップル同様、戦前のキスを交わした。
余談だが周囲の一般人の皆様がこの光景に砂糖を吐いたのは言うまでも無い。