つよきす 愛羅武勇伝   作:神無鴇人

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今回はTINAMIにて連載中の本郷刃さんの作品、
『SAO〜黒を冠する戦士たち〜』
通称、黒戦シリーズとのコラボ特別編・第一段です!!

また、あのゆる〜い百合アニメからあのキャラが……。


有明の戦場 黒の戦士と赤き忍

レオSIDE

 

 8月もそろそろ半ばに入る頃、

あの大会の後、俺と乙女さんは夏休みの生活を満喫していた。

昼間はデート(海水浴、釣り、映画鑑賞、縁日etc……)に行ったり、二人でまったりと過ごしたり、そして夜は……まぁ、これは言うまでもないな。

あと言っておくが、当然修行や鍛錬、学校からの宿題は疎かにしていない。

俺達みたいに格闘の世界に身を置く者は常に身体を鍛えておかないとすぐ他のライバルに抜かれちまうし、何より向上心を失ってはいけない。

宿題はアレだ。しがらみがあると乙女さんとイチャつけないし、それに乙女さんって真面目だから。

何より祈先生からの懲罰は絶対嫌だ。だってあの人涼しい顔してすっげーキツイ罰を喰らわせてくるから……。

 

「それでよぉ、最近のネトゲって大概VRMMO系のゲームが占めてるんだぜ。中でもこのALOっていうゲームは凄い人気でさぁ……」

 

「それって反射神経使うって話だが。フカヒレにはちとキツイんじゃねぇか?」

 

 今日は久しぶりにスバル達を家に呼んでいつもの面子で過ごしているが、久々に家に集まったというのに、何故か話題はネットゲームの話だったりする。

 

「へっ!なめちゃいけねぇぜ。そこら辺はシステムがフォローしてくれるから俺でも中の上には入る!!」

 

「中の上で自慢できんのか?ボクならトッププレイヤー目指すけどね」

 

 珍しくカニが正論を言う。

確かに中の上では自慢するには微妙だ。

 

「お前らはトッププレイヤーの強さを知らねぇからそんな事言えるんだよ。ALOトップに君臨してるのは“あの”キリトだぜ!!」

 

「マジかよ?あのSAO事件の……」

 

 キリト……ネトゲに詳しくない俺でも聞いたことがある。

ネットゲーム内に千単位の人間が閉じ込められたという怪事件……通称『SAO事件』の被害者であると同時に、そのゲームをクリアして事件を解決に導いたとされる『攻略組』最強の男にして、事件解決の功労者の筆頭と呼ばれるプレイヤーだ。

現実(リアル)でもとある武術の師範代を務める程の実力者という説もあるらしいが……。

 

「SAOかぁ……あの時は本当に肝が冷えたな。フカヒレがあのソフトを買う予定だったらしいけど、購入枠に入りきらなかったお陰で事件に巻き込まれずに済んでよ」

 

 あの時は皆でフカヒレの家に駆け込んだっけ……。

 

「あー、言えてる言えてる。フカヒレじゃ速攻でくたばってただろうね」

 

「流石にフカヒレでも死んでほしくはないからな」

 

「馬鹿にされてるような友愛を貰ってるような……この複雑な感情は何だ?」

 

 なんとも複雑そうな表情のフカヒレ……本当に分かりやすい男だ。

 

「ところでレオ、昨日電話で言ってた既に宿題はほぼ済ませたって本当か?」

 

 しんみりした空気を換えようと、スバルは話題を切り替えた。

 

「ああ、2、3日前に大体はな」

 

「「写させて!!」」

 

 宿題済ませたと聞いた途端カニとフカヒレはこの有様かよ。

 

「……お前ら、少しは自力でどうにかしろよコノヤロウ」

 

「ケッ!さすが乙女さんに勉強教えてもらって成績アップした対馬のダンナは言うことが違うよなぁ〜〜!!」

 

「彼女が出来た上に成績アップとか……くたばりやがれぇ〜〜!!」

 

 ……僻みは理解してやるが、負け惜しみにしか聞こえんぞ(←勝者の余裕)。

 

「蟹沢に鮫氷……他人に頼って丸写しじゃ宿題の意味がないぞ」

 

 二人に呆れながら乙女さんはお茶を持って俺の部屋に入ってくる。

 

「分からん所は私とレオで教えてやるから、自力でやれ。何なら今ココでするか?」

 

「「自宅で自力で頑張ります!!」」

 

 カニとフカヒレは逃げを選択した。

 

「そ、それより、ココにいる全員にちょっと頼みたいことがあるんだけど……」

 

 話を逸らそうとフカヒレは突然別の話題を切り出した。

 

「実は明後日のコミケなんだけど、買出し要員にどうしても人手が見つからなくてさぁ。それに、知り合いのサークルにコスプレした奴連れてくるって安受け合いしちまってさぁ。悪いけど明後日、コミケに付き合ってくれ!頼む!」

 

 フカヒレの頼みに俺達は目を丸くする。

コミケとはコミックマーケットの略称。所謂同人誌即売会だ。

コミケか、それにコスプレ……、ん?……って事は。

 

((乙女さん(レオ)のコスプレ姿が見れるという事に……))

 

 乙女さんのコスプレ……メイド服、魔法少女、巫女etc…………。

 

(レオのコスプレ……新撰組、王子様、超人レスラーetc…………)

 

「「よし、任せろ!!」」

 

 見事にハモりながら俺達は二つ返事でフカヒレの頼みを承諾したのだった。

 

 

 

NO SIDE

 

 レオ達武闘派カップルのコミケ参加が決定したその日、別の場所であるカップルにも同じような事が起きていた。

 

「で、俺達にコミケに参加してほしいと?」

 

「ああ、頼むよカズ。どうしても体力のある面子が欲しいんだ」

 

 都内のとある喫茶店にて……

二人の少年……興田真と村越駿は同じ学生服を着たカズと呼ばれた黒髪の少年に頭を下げて頼み込む。

 

「それは構わないが、何故俺だけじゃなくて明日奈まで?」

 

 黒髪の少年は首を傾げつつ問う。

黒髪の少年の名は桐ヶ谷和人……数年前から約2年間に渡って世間を騒がせた事件、通称『SAO事件』を解決に導いた功労者の筆頭とも呼べる人物……キリトその人である。

それと同時に同時に神霆流と呼ばれる流派に属する武術の師範代でもある。

そして和人が話題に出した少女は和人の恋人(婚約済)、結城明日奈……同じくSAO事件の当事者だ。

 

「そりゃ、もちろんコスプレ要員。お前も含めてな」

 

「今回のコミケはコスプレカップルコンテストと格闘イベントがあるからな」

 

 村越の言葉に和人は(二つの意味で)ピクリと動いた。

 

「ほぅ……そりゃ興味深い」

 

 そして不敵な笑みを浮かべる。

雄として彼女のコスプレ姿を拝める喜びと武門に身を置く者として戦いの場を見つけることの出来た喜びを押し隠しながら。

 

「分かった。明日奈や他のメンバーにも声は掛けておく」

 

「悪いな。恩にきるぜ」

 

 和人からの承諾の言葉に興田達は喜色を浮かべる。

一方で和人は、数日後のイベントを思い浮かべる。

 

(何だか面白そうな事が起きる予感がするな。……クク、良い対戦相手と出会えれば良いが)

 

 

 

レオSIDE

 

 フカヒレからの依頼から2日、俺達は前日の夜(早朝)の内に都内某所の漫画喫茶で時間を潰し、今は朝の4時。

 

「……そろそろ行くか」

 

「おう。乙女さん、カニ、時間だぜ」

 

「zzz……うー、もう行くの?」

 

「んっ……分かった」

 

 仮眠を取っていた乙女さんとカニを起こし、俺達は駅で始発電車に乗って有明へと向かった。

 

「しかし、こんなに朝早くか行かなくてはならんのか?開始時間は10時からだと聞いたが?」

 

「目茶苦茶並んでる人が多すぎて、悠長にしてたらとんでもない事になるんだよ。一応、同人誌を買う目的もあるからね」

 

 一応俺、カニ、スバルは以前フカヒレに付き合わされて何度かコミケに参加している。

確かにアレは相当ハードだ。夏コミだと猛暑の中で長々と行列に並ぶ必要があるから涼しい早朝の内に並んだ方がまだ利口だ。

冬なら防寒着とかでどうにかなるんだがなぁ……。

 

「ま、着けば解るよ。嫌でもね……」

 

 

 

NO SIDE

 

 灼熱の太陽光を浴び、炎天下の中レオ達対馬ファミリーはとてつもなく長い行列に並び続ける。

 

「なるほど……これは、確かにキツイな」

 

 乙女は絞り出すように声を発し、手に持ったドリンクを口に運んで水分を補給する。

 

「暑ぃ〜〜、だから行列って嫌なんだよ」

 

 カニは愚痴りながら地面に敷いたシートの上に寝そべる。

 

「耐えろ……耐えた先には宝(同人誌)の山が俺達を待っている……!!」

 

「そりゃフカヒレにとっては宝の山だろうな……」

 

 フカヒレは煩悩を糧とした忍耐力を見せ、スバルはそれに突っ込みを入れる。

 

「まったく、サークル参加の奴らが羨ましいぜ」

 

 自分達の中に誰一人として絵の描ける奴がいないのが恨めく感じる対馬ファミリーだった。

 

 

 

 

 レオ達がそんな事を考えていた頃、会場内では多くの同人サークルが準備を整えつつあった。

七森中学校ごらく部に所属する4人の少女達もそんな準備に勤しむ者達だ。

 

「結衣〜〜、そっちの椅子取って」

 

 金髪碧眼の少女、歳納京子は黒髪にショートカットの少女、船見結衣にパイプ椅子を並べるよう指示する。

 

「京子先輩、この荷物はどこに置けばいいんですか?」

 

「あ、それミラクるんのコスプレ衣装だから。大事にしといてね♪それ着てカップルコンテストに出るから」

 

「はい!!傷一つつけません!!(結衣先輩と私でカップルコンテストに出て優勝間違いなし!!)」

 

 桃色の髪をツインテールに纏めた少女、吉川ちなつは京子の言葉に『ビシィッ』という擬音が付く程に見事なフォームで敬礼する。

 

「皆〜、飲み物買って来たよ」

 

 最後に現れたのは少々他の3人と比べて薄い印象を見せる赤毛にお団子ヘアの少女、赤座あかりだ。

 

「何か作者さんに酷い事言われた気が!?」

 

「メタ発言はやめとけ。色々と危険だぜ」

 

 思わぬ間のよさを発揮したあかりの背後から一人分の人影が現れる。

黒いヘルメットとプロテクトに身を包み、顔は黒いマスクで隠した男だった。

 

「うひゃっ!?だだ、誰ですかこの戦争男は!?」

 

「そ、その声は……もしかして、大和先輩ですか!?」

 

 真っ先に男の招待に感付いたのは京子だった。

 

「ケケケ……ご名答。久しぶりだな、ごらく部のボーイズ&ガールズ諸君」

 

「いや、ボーイズって……私達女しか居ませんよ」

 

 マスクをはずして顔を出した男の正体は直江大和。

実は大和はごらく部のメンバー(ちなつ除く)と同じ小学校に通っていた時期があり、その時の後輩に当たるのだ。

(大和とあかり達の出身地などに関しては無視でお願いします。突っ込みも受け付けません)

 

「や、大和先輩……どうしてココに?」

 

「ああ、俺も今回は同人誌出す事にしてな。それで調べてみたらお前らも参加って言うから、ちょいと顔見せにな」

 

 先程までの元気溌剌な態度が急速に萎えた様に京子は腰の低い態度になるが、大和はそれを全く気にする事無く返す。

 

「きょ。京子先輩があんなにタジタジに……」

 

「大和先輩は京子にとって同世代で唯一頭の上がらない人だからな……」

 

 普段のトラブルメーカーな京子の姿しか知らないため、唖然とするちなつに結衣は説明補足する。

 

「大和お兄ちゃん、久しぶり〜〜♪」

 

 一方京子とは逆にあかりは上機嫌かつフレンドリーな態度で大和に接する。

 

「……そしてあかりは何故かあの人に懐いている。まぁ、大和先輩って根本的には良い人なんだけど」

 

「??」

 

 要領を得ない説明にちなつは顔に疑問符を浮かべる。

この疑問が解消されるのはこれから約数分後の事である。

 

「ほら、俺のサークルの新刊だ。人数分やるよ」

 

「あ、どーも。じゃあ、私の新刊と交換で……」

 

 大和から差し出された同人誌に、京子は多少緊張しつつも喜色を浮かべ、同じ部数の同人誌を交換する。

 

「悪いな。あとコレ差し入れだ。全員で食いな」

 

 ビニール袋に入った肉まんを机の上に置き、大和は立ち去っていった。

 

「……!?」

 

 去り際、密かにある人物に折り畳んだメッセージカードを手渡して……。

 

「……何か、得体の知れない人でしたね」

 

「ああ、でも悪い人じゃないよ。京子も頭は上がらないけど苦手って訳じゃないみたいだし」

 

 去って行く大和を不思議そうに眺めながらちなつは呟き、結衣はそれにやや遠慮がちに返す。

 

「そうですね。肉まんまでくれるし、結衣先輩の言う通り根は良い人なんですね」

 

 そう言ってちなつは袋に入っている肉まんを一つ取り出し、それを口に運ぶ。

 

「あ!ちなつちゃん待って!!」

 

「迂闊に食べたら……」

 

 肉まんを食べようとするちなつを止めに入る京子と結衣だが、既に遅かった……。

 

「え……ッッ!!??!?か、か…………辛いぃぃぃぃぃィィィッっぃぃ!!??!?」

 

「あーあ……遅かった」

 

「やっぱり出た。大和先輩の常套手段……あの人の差し入れには必ず一つ激辛スパイスが仕込まれているんだ。ちなつちゃんがその洗礼を受けるなんて……」

 

 やはりココでも大和のドSぶりは発揮され、悲鳴に喘ぐ哀れな少女が一人……。

 

「………大和お兄ちゃん」

 

 激辛肉まんの辛さを必死になってジュースで中和しようとするちなつを余所に、あかりは大和から受け取ったメッセージカードを真剣な表情で握り締めた。

カードに書かれた言葉はたった一言……。

 

『格闘イベント、お前が出るのを楽しみにしているぞ』

 

 

 

 

 

 

 再び場所は行列に戻り、対馬ファミリーとは少し離れた位置に陣取る男女が居た。

 

「始発で来て並んでコレだけの人数か……徹夜してる奴もいるだろうな」

 

「え?徹夜って禁止されてるんじゃないの?」

 

 朱に近い茶髪をポニーテールに纏めた寡黙な雰囲気を持つ少年、国本景一。

彼の呆れを含んだ言葉に黒髪のショートカットに眼鏡を掛けた少女が疑問を浮かべる。

景一の恋人である、朝田詩乃だ。

二人はALOにて和人(キリト)と同じギルドに属する仲間であり、景一に至っては和人の同門であり、SAOを共に戦い抜いた戦友の一人でもある。

ちなみに、景一のALO内でのキャラネームはハジメ、詩乃はシノンという名前である。

 

「徹夜だってやり方次第だからな。行列解禁の直前までどこかの喫茶店とかで時間潰してたりするとかさ」

 

「ま、結局は邪道だと思うけどな」

 

 呆れ顔を浮かべながら興田と村越は最前列を眺める。

 

「ま、じっくり待てばいい。俺達の目的はイベントの方がメインだからな」

 

 しかしそんな事はどこ吹く風と言わんばかりに、のんびりとした様子で和人は手元のサンドイッチを頬張る。

 

「和人君のコスプレ……私、コンテスト中に鼻血とか出さなきゃいいけど」

 

『ママなら大丈夫です。ママは本番に強いですから、きっとコンテストでも活躍出来る筈です』

 

 そんな和人を見つめながら栗色の挑発の少女……和人の恋人(婚約者)兼パートナー、結城明日奈(プレイヤーネーム『アスナ』)はやや心配がちに呟くが、彼女の肩に乗せたドーム型の端末『視聴覚双方向通信プローブ』から声が発せられる。

声の主は和人と明日奈の娘同然の存在であるAIの少女、ユイだ。

 

「活躍は大いに結構だが、優勝は私と詩乃が頂く」

 

「言ってくれるなぁ。俺とアスナを前によ……」

 

 景一の挑発的な言葉に和人もまた挑発的に返す。

コスプレカップルコンテスト、そして格闘イベントの開始時刻は着々と迫っている……。

 

 

 

 そして、遂にコミックマーケット開場の時が来た……!!

 

 

 

レオSIDE

 

『走らないでください!新刊の購入は一人3冊までとさせていただきます!!』

 

 開場と同時に参加者はビッグサイト内に雪崩れ込み、凄まじい人の波が一瞬にして出来上がった。

 

「のわぁぁ〜〜〜!!」

 

 悲しいかな、小柄なカニは人並みに飲み込まれてはぐれてしまった。

あとで連絡して、前以て決めておいたポイントで合流しないとな。

 

「ぬぅおおおおぉぉぉ!!!!新刊は俺の物だぁぁ〜〜〜〜!!」

 

 フカヒレの奴、凄いガッツだ……。

普段からもアレぐらいガッツ出せれば万年ネタキャラなんて言われずに済んだだろうに……。

 

「さてと……頼まれてた分はキッチリ確保しておくか」

 

「ああ、行くぞレオ!」

 

 俺と乙女さんもフカヒレに頼まれた同人誌を購入すべく人並みに突貫していった。

ちなみに、フカヒレの奴はこの手の事に関しては抜け目なく、乙女さんに頼んでいた同人誌は全て一般向けのものだったのは後に知った事である。

 

 

 

 そして約一時間後。

 

「あ゛ぁ〜〜……やっと人ごみから抜け出せた」

 

「すまんなフカヒレ。頼まれてた同人誌(もの)、少ししか手に入らなかった」

 

「いやぁ、ちょっとでも買えれば上等だ。最重要の奴はレオと乙女さんが手に入れてきてくれたから」

 

 一先ず全員集まり、俺達は壁際で一息吐く。

紙袋には購入した同人誌が何冊か入っている。

 

「それで、これからどうするんだ?まだ例のコンテストまではかなり時間があるが」

 

「フフフ……決まってるじゃあねぇか乙女さん」

 

 乙女さんの問いにフカヒレはニヤリと笑って別途に持ってきた荷物を開く。

 

「さぁ、皆の衆、更衣室へ!!コスプレパーティーの始まりじゃあぁーーーー!!」

 

 衣装を掲げながらフカヒレは高らかに宣言した。

遂にこの時が来たか……。

 

 

 

NO SIDE

 

 さて、ここで対馬ファミリーの服装を紹介しよう。

 

「俺がシャークだぁ!!」

 

 フカヒレは某野菜王子。

……と言っても、元がフカヒレなので声以外は下級兵士程度にしかならないが。

 

「おお!何コレ妖精キャラ!?可愛いボクにピッタリじゃん!!」

 

 青を貴重とした服と氷を象った羽に大はしゃぎなカニ。

確かにピッタリである。……何故ならそれは東方随一のバカキャラ、⑨(チルノ)のコスプレだから。

 

「WRYYYY!……とでも言えば良いのか?」

 

 スバルは黄色を貴重とした奇抜なファッション。

某ザ・ワールドなカリスマ吸血鬼のコスプレである。

 

(西洋風の乙女さん……有りだ!)

 

(剣士のレオもなかなか良い……!!)

 

 そしてレオのコスプレは漆黒の二刀流剣士、乙女は純白をベースに所々赤のラインが入った西洋風の女剣士……早い話がSAOでのキリトとアスナのコスプレだ。

 

「へへっ、どうだその服?特注で作って貰ったキリトとアスナの衣装だぜ」

 

 二人のコスプレにフカヒレは自慢げに胸を張る。

ある意味実在の人物のコスプレだが、キリトとアスナの名はその筋の人間なら多数の人間が知っているためか、レオ達以外にもキリト、アスナなどの有名プレイヤーのコスプレをしている者はそこそこ多い。

コスプレされている当人達がどう思っているのかは定かではないが……。

 

「SAO公式夫婦って……似合いすぎだろ」

 

「竜命館随一のバカップルに夫婦コス……何か、ココまでくると逆にムカつくよね」

 

「鮫氷、お前なかなかセンスが良いな」

 

「ああ、最高のコスプレだぜ」

 

 フカヒレにしてはかなり珍しく、大好評だった。

 

(お、俺のチョイスが大好評……今の今まで猿だのオゲチャだのと言われていたこの俺が……遂に俺の時代が来た!!)

 

 これで変な方向に調子に乗らなければ完璧なのだが……。

 

「で、次はどこ行くの?」

 

「次は……ココだ。知り合いのサークルが新刊出してるから」

 

 地図を広げてフカヒレは目的地を指差し、一同の次の行き先が決定する。

そこに大きな出会いがあるとも知らずに……。

 

 

 

 

 場所は変わってあかり、京子、結衣、ちなつの4人が運営するサークルではある来客があった。

 

「へぇ……同人アニメか。しかしよく出来てるなぁ」

 

「うん、一瞬企業が出してるのかと思ったよ」

 

 ポータブルDVDプレイヤーに映し出されるアニメを見ながら和人と明日奈は感嘆の声を上げる。

ちなみに、和人達のコスプレは以下の通り。

和人……伊達政宗(戦国BASARA)

明日奈……希月心音(逆転裁判5)

景一……石川五右衛門(ルパン三世)

詩乃……長門雪希(涼宮ハルヒの憂鬱)

興田……孫悟空(ドラゴンボール)

村越……ロックマン(初代ロックマン)

 

「これ全部個人で?」

 

「はい。監督、脚本、原画、声その他諸々……」

 

(延々と動画を書き続ける作業を手伝わされる身にもなってほしいよ……)

 

 景一の質問に魔女っ娘ミラクるんに登場するライバルキャラ、ライバるんのコスプレをした京子は喜々として答える。

一方で同じくライバるん(こちらは変身前)のコスプレをしている(させられた)結衣は内心で愚痴る。

 

「おーい!ラム子ちゃーーん!!君達の頼れるお兄さん、シャークさんが笑顔を携えてやって来t……グェッ!?」

 

 そんな中駆け込んできた某野菜人の戦闘服を着たフカヒレだったが、レオに首根っこを掴まれ、呻き声を上げた。

 

「おお、シャークさん!……もしかしてその人達が!?」

 

 フカヒレの姿に京子は喜色を浮かべて応対する。

ちなみにラム子とは京子のパンネームである。

 

「お、おい京子、あの眼鏡の人誰だよ?……って言うか、大丈夫なのこの人?色んな意味で」

 

 明らかに挙動不審なフカヒレに、コレが通常だとは知らない結衣は警戒して小声で京子に尋ねるが……。

 

「ああ、大丈夫大丈夫。変な人だけど面白いし、悪い人じゃないし。それにこの人ヘタレ属性だから」

 

 1ミクロンの遠慮もなしに京子はフカヒレの無害(?)さを語って見せた。

 

「それよりシャークさん。その人達ですよね?例の……」

 

「おうよ!この前の大会で準優勝した獅子蝶々の二人、とおまけの奴らだ!」

 

「誰がおまけじゃ!!」

 

「ギャン!?」

 

 おまけ扱いされてキレたカニのとび膝蹴りがフカヒレの顔面にクリティカルヒットした。

 

「和人君、この人達のコスプレって……」

 

「十中八九SAOの時の俺達だろうな。今に始まった話じゃないけど……(この二人は……)」

 

 一方で和人達はレオと乙女の姿をじっくりと冷静に眺める。

 

「ん?」

 

「これは……」

 

 レオ達もまた和人達の存在に気付き、常人とは違う雰囲気に興味を示す。

 

「……もしかして、対馬レオと鉄乙女さんですか?」

 

 しばらくの間を置き、和人はレオと乙女に尋ねる。

 

「ああ、そうだ。何で俺達の名を?」

 

「その筋じゃ有名ですよ。タッグ武術会の活躍を知ってる者ならば……」

 

 レオの質問に答えたのは景一だ。

その瞳には先程までとは違い、静かな闘志が見え隠れしている。

 

「知っててくれて光栄だな。だが、お前らも相当な実力と見させて貰った。やはり格闘イベントの参加者か?」

 

「ああ、俺は神霆流師範代桐ヶ谷和人。もし対戦する事になったらよろしく頼む」

 

「同じく国本景一。よろしく頼む」

 

 レオと乙女に和人と景一は笑みを浮かべて自己紹介を交わす。

明日奈と詩乃達は和人たちの思わぬ態度に目を白黒とさせている。

 

「あ、あの……レオさんに乙女さん!!」

 

 しかし、そんな何とも言いがたい雰囲気の中、京子は荷物の中から2枚の色紙を取り出してレオ達に近付き、そして……

 

「ん、どうかしたの?」

 

「わ、私この前の大会テレビで見てました!!サインください!!」

 

 そして京子はペンと色紙を突き出しながら深々と頭を下げ、サインを求めたのだった。

 

「へ?」

 

「私達のサインか?」

 

「はい!!シャークさんがお二人を連れてきてくれるって言うから、色紙(コレ)用意してたんです!!」

 

 困惑するレオ達に京子は目を輝かせる。

実はフカヒレがレオ達を誘ったのはこっちの方が主目的だったりする。

 

「まぁ、俺は良いけど」

 

「私などのサインで良いのなら、それを無碍には出来んしな」

 

 やや困惑しつつもレオと乙女はコレに快諾し、京子は念願の獅子蝶々のサインを手に入れた!!

 

「皆お待たせー」

 

「全くもう、東京に来てまでミラクるんのコスプレしなきゃいけないなんて……(だけどこれで結衣先輩とカップルコンテストに……!)」

 

 レオ達がサインを書き終えた頃、着替えに行っていたあかりとちなつも戻ってきた。

ちなみに、あかりのコスプレはミラクるんの悪役マスコットキャラ『ガンボー』の着ぐるみ(何故かお団子ヘアはそのまま)、ちなつは主人公の『ミラクるん』である。

 

「ぬおぉっ!ミラクるんそっくり!!」

 

 基がミラクるんそっくりなちなつの姿にフカヒレは真っ先に反応する。

だが、一方でレオと乙女、そして和人と景一はあかりへと視線を向ける。

 

(この娘……出来る!)

 

(力強い気を感じる。だけど……)

 

(すぐそこにいる筈なのに気配が薄い……)

 

(まるで、闇に紛れた忍のような、そんな強さを感じる)

 

 上から乙女、レオ、景一、そして和人があかりから何かの力を感じ取る。

静寂と力強さを併せ持つような、何とも形容しがたい力を……。

 

(この人達……凄く強い!戦ってなくてもコレだけのプレッシャー……一人一人が大和お兄ちゃんと互角以上なの!?)

 

 そしてそれはあかりも同じだった。

 

「……それじゃ、俺達はもう行く。次は例のイベントでな」

 

「カップルコンテストでも格闘イベントでも負ける気は無い。正々堂々とやらせてもらう」

 

 やがて和人と景一は口を開き、その場を後にする。

去り際にレオと乙女、そしてあかりにやや挑発的な視線を向けて……。

 

「ああ、望む所だ!」

 

 そしてレオと乙女もまた闘志と新たな好敵手と出会えた喜びを目に浮かべた。

彼らがこの後再会するのは、約一時間後のコスプレカップルイベントの事である。




と、いう訳でゆるゆりからごらく部のメンバーを登場させました。
しかも赤座あかり改変&魔改造、そして参戦……遂に一般アニメにまで手を伸ばしてしまった。

あと、読者の皆!オラに感想を送ってくれぇ〜〜〜〜!!

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