つよきす 愛羅武勇伝   作:神無鴇人

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変幻自在!亜空と影の脅威!!(中編)

レオSIDE

 

 乙女さんの戦いが一段落し、今度は俺の戦い。

相手は『鳥人』と呼ばれる小野寺拓己、どれほどの実力かは分からないが少なくとも山城と同等は間違いない。

チッ……一回戦から面倒なのと当たったもんだ。燃える展開だけどな。

 

「…………」

 

「…………」

 

 お互いに構えてジリジリと距離を詰めていく。

 

(なんだコイツの構え方、山城と似ている。コイツも骨法の使い手か?)

 

 小野寺の構えは多少違うものの山城とほぼ同じ。違いがあるとすれば攻撃に重点が置かれている事ぐらいだ。

 

「行くぞ!!」

 

 最初に仕掛けてきたのは相手側からだ。気を纏った手刀を繰り出してきやがった。

 

「っ!?」

 

 紙一重でこれを回避。しかし胴衣を掠めて胴衣がスッパリと切り裂かれる。

なんて切れ味だ……っていうか。

 

「テメェ!折角の乙女さんとのペアルックを!!特注で高かったんだぞ!!」

 

「知るか!もう一発喰らいやがれ!!《ベルリンの赤い雨!!》」

 

 再び手刀で襲い掛かってくる小野寺。だが……

 

「同じ技が二度も通用するかぁ!!《修羅旋風拳!!》」

 

 一回喰らえば相手の攻撃スピードは大体分かる。コイツの攻撃スピードも結構速いが俺ほどじゃない!!

ならばコイツと同時に攻撃を繰り出せば俺の方の分がある!!

 

「グハッ!」

 

 予想は的中し俺の拳の方が僅かに早く小野寺の顔面を捉え、小野寺を吹っ飛ばした。

 

「もう一発喰らいやがれ!!」

 

 吹っ飛ぶ小野寺を追いかけるように接近し更に追い討ちを狙う。しかし……

 

「《スペースファルコン!!》」

 

「な!?フゲッ!!」

 

 床に激突する寸前、小野寺はくるりと一回転して一瞬の内に体勢を整え、カンガルーキックを放ってきた。

 

「まだまだ行くぜ!!」

 

 直後に小野寺はロープを踏み台に高く跳躍し俺目掛けて急降下してくる。

クソが!迎撃してやるぜ!!

 

「(ニヤッ)甘いんだよ!」

 

「!?」

 

 落下してくる小野寺目掛けて繰り出した俺の拳は小野寺に受け止められた。

だが驚くのはそこではない。小野寺は俺の拳を掴み、そのまま逆立ちしているのだ。

こんな芸当を可能にするにはずば抜けた身軽さとバランス感覚が要求される。正直言って俺や大和でもこれは真似出来ない。

 

「クソッ!」

 

 急いで掴まれた拳を振り解こうとするが小野寺は素早く掴んでいた拳を離し、今度は俺の頭の上に両手で着地する。

 

「スピードじゃともかく、身軽さは俺の勝ちのようだな。《ハンブルグの黒い霧!!》」

 

「グアァッ!!!」

 

 そのまま顔面にドロップキックを叩き込まれた。

 

「お寝んねするのはまだ早いぜ!!」

 

 俺が倒れるよりも早く小野寺は俺に飛びつき、俺の体に脚を絡めてそのままぐるぐるとポールダンスの様に回転していく。

 

「人間ポールダンスだ!!」

 

「うおぉぉ!?」

 

 そのまま凄まじい遠心力で回転を続け、俺は頭を両脚で挟まれた状態で投げ飛ばされた。

だが……!!

 

「この程度で、終われるかよ!《気掌旋風波!!》」

 

 体勢なんか気にせず旋風波を撃ち出す。ただし狙いは小野寺じゃない、その反対方向だ!

 

「!?」

 

「喰らいやがれ!!」

 

 ロケット噴射の要領で俺は小野寺目掛けて吹っ飛び、そのまま相手の腹に肘鉄を叩き込む!

 

「グオォッ!!!」

 

 思わぬ一撃に苦悶の表情を浮かべる小野寺。だがこれだけじゃ終わらない!

すぐさま小野寺の背後に回りこんで頭部を掴んで延髄に膝を押し当て、そのまま床に叩きつける!!

 

「さっきのお返しだ!《カーフ・ブランディング!!》」

 

「グゲァァッ!!!!」

 

 よっしゃ!完全に決まった!!こりゃもうKO……

 

「野郎……ふざけやがって……!」

 

 ……なワケ無いか。この程度でKO出来りゃ苦労は無いし。

さ~て、仕切り直しといくか!!

 

 

 

スバルSIDE

 

 レオ達の戦いが白熱するなか、俺達竜命館の面々もレオ達の戦いに見入っていた。

 

「凄い……鉄先輩や対馬を相手に互角だなんて」

 

「しかも、あのスピード最速のレオが身軽さで翻弄されるなんてボク初めて見たよ」

 

 確かにあの小野寺とかいう奴の身軽さは尋常じゃない。

だがジャンプ力では負けててもスピードではレオも負けてない筈だ。

 

「おいフカヒレ、レオが戦ってんのにお前何携帯弄ってんだよ!」

 

 カニがフカヒレに怒鳴る。レオが戦い始めてからフカヒレは携帯とにらめっこを続けてやがる。

 

「いや、レオが戦ってるあの小野寺って奴さ、俺聞いた事あるんだよ。それを調べてて……あ、出たぞ!!」

 

 対戦相手のデータが出たらしく、俺達はフカヒレの携帯端末を凝視する。

 

小野寺拓己

年齢・18歳

格闘スタイル・骨法+レスリング

上妻地下闘技場ミドル級チャンピオン

凄まじいジャンプ力とバランス感覚を持つ事から『鳥人』の異名を取るファイター。

また、亜空間殺法と呼ばれる謎の格闘術を使うとも言われている。

備考・霧島重工の次女と交際中との噂あり。

 

「鳥人……それに亜空間殺法ってなに?」

 

「俺達に聞かれても困る」

 

 近衛の言葉にとりあえず突っ込む。まぁ、思わず訊ねてしまうのも無理は無いがな。

 

「な、何だと!!霧島重工って言えば日本有数の大企業じゃねぇか!!その令嬢と付き合ってるなんて……許せん!!レオォーーーー!!殺れぇぇーーーー!!!ぶっ殺せぇぇーーーーーーーーー!!!!!」

 

「オメーが死んでろ!!」

 

「もんぎゃぁぁーーーーーーーー!!!!」

 

 また始まったよフカヒレの悪ノリが……とりあえずカニが蹴っ飛ばしてくれたから良いものの…………フカヒレよ、そんなんだからお前は万年ギャグキャラなんて言われるんだぞ…………。

 

 

 

NO SIDE

 

 前哨戦を終え、再び構え合うレオと拓己。その姿には先程以上に気が漲っている。

 

「…………」

 

「…………」

 

 両者無言のまま静かににじり寄る。

 

「「……ハァアアアアアアッ!!!」」

 

 そして同時に眼を”カッ”と見開き、お互いに殴りかかる。

 

「うぉおおおおおおおおおお!!!!」

 

「だぁああああああああああ!!!!」

 

 超スピードでの拳の弾幕がぶつかり合う。

この状態に持ち込まれれば物を言うのは純粋なパンチ力とラッシュの速さだ。

 

「もらったぁ!!」

 

「グァ!」

 

 軍配が上がったのはレオ、パワーは互角ながらスピードではやはりレオが勝っていた。

渾身のパンチが拓己に叩き込まれ、拓己は後方へと弾き飛ばされる。

 

「クッ……まだだ!!」

 

 しかしすぐさま拓己は体勢を立て直し、リングロープの反動を利用し宙高く跳躍した。

 

(た、高い!なんてジャンプ力だ!?)

 

「俺が何故『鳥人』と呼ばれるか……その訳を教えてやるよ。行くぜ!!」

 

 そのまま拓己は急降下。凄まじい落下スピードでレオ目掛けてドロップキックを放つ。

 

「ッ!!」

 

 だがレオも持ち前のスピードと反射神経を活かし、これを紙一重で回避する。

しかし、これだけで終わる拓己ではない。

 

「まだまだぁ!!」

 

「な!?グアァ!!」

 

 突如拓己は体を上下反転させ、両手で着地すると同時にレオ目掛けて再びドロップキックを繰り出したのだ。

さすがにレオも続けざまにこられては反応もわずかに遅くなってしまい、二撃目をモロに喰らってしまう。

 

「お楽しみはこれからだぜ!《スペースラッシュ!!》」

 

「グァァッ!!」

 

 続けざまに三発、四発と四方八方からのドロップキックの連打がレオを襲い、立て続けにレオを蹴り飛ばす。

このような芸当を可能にしているのは拓己の並外れた身軽さとバランス感覚による機動力。そして着地から攻撃へ繋げる対応の素早さがあってこそ出来るものと言える。

これこそがまさしく彼が『鳥人』と呼ばれる所以なのだ。

 

「トドメだぁ!!」

 

 フィニッシュとばかりに上空から猛スピードでのドロップキックがレオの顔面目掛けて迫り来る!

 

「クソ……好き勝手やりやがって」

 

 ダメージを受けた体に鞭打ち、レオは己の右腕に力を集中させる。

 

(またあの竜巻を出す技か。だが無駄だ!いくら威力があろうと所詮は一直線に竜巻を飛ばす技、攻撃を中断して避けるのは容易い!!)

 

 拓己の予測は半分的中していた。

たしかにレオが出そうとしているのは『気掌旋風波』である。しかし、拓己が読み違えたもう半分はある意味致命的なミスだった。

 

「《旋風散波弾(せんぷうさんはだん)!!》」

 

 レオの拳から放たれた竜巻。だがそれは一本ではなく五本に拡散したものだ!!

 

「な!?うぉああああああっ!!!!」

 

 予想外の竜巻の多さに拓己は成す術なく飲み込まれ、体勢を崩してしまう。

そしてそこを狙ってレオが一気に接近する!!

 

「喰らえぇぇーーーー!!《修羅旋風拳!!!》」

 

「ガハァッ!!!」

 

 レオの渾身のストレートが拓己の顔面に叩き込まれる。そしてそのままレオは両手に気を集中させる。

 

「ダメ押しにもう一発喰らっとけ!!《メガスマッシュ!!》」

 

追撃の気弾が零距離から拓己の体に撃ち込まれ、拓己はリングへとまっ逆さまに落下していく。

 

 

『ズガァァァァン!!!!』

 

 

 轟音と共にリングに煙が舞う。

誰もがこの時レオの勝利を確信し、リング上にはKOされた拓己の姿があると思っていた。

 

しかし……。

 

「!?……い、いない!?」

 

 拓己の姿はリングに無かった。

 

「ど、何処に行ったんだ?」

 

 コーナーポストでレオの戦いを見守っていた乙女も突然姿を消した拓己に戸惑い、拓己の姿を探そうとしているがまるで見つからない。

気配を探ろうにもその気配すら感じられないのだ。

 

 

(拓己の奴、遂に『アレ』を使ったか。これは俺も動く必要があるな)

 

 レオ達が戸惑うなか、拓己のパートナーである優一は不敵な笑みを浮かべ、静かにその場を静観していた。

 

(見せてやるぜ、俺達の亜空間コンビネーションをな!!)

 

 

 

 突如消え失せた拓己の行方は?そして優一の言う亜空間コンビネーションとは……。

 

 


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