レオSIDE
予選が終了し、本戦に出場する8チームが決定。
本戦開始を前にして組み合わせの抽選とチーム名の登録が行われようとしていた。
「チーム名……考えてなかった」
「ああ……すっかり忘れていたな」
チーム名を考えるのを完全に忘れ去っていた俺達は今更になって考えている。
「どうする?もう時間が無いぞ………そうだ!ヴァルキリーズというのはどうだ?私の名前乙女だし」
「いや、戦乙女(ヴァルキリー)って俺男だから!!」
どうやら乙女さんにネーミングセンスを期待するだけ無駄らしい。
「そ、そうか……なら…………ダメだ、思い浮かばん!!レオ、お前は何か無いのか!?」
え、俺?そうだなぁ……俺の名前と……乙女さんの刀で…………。
「え〜と、じゃあ……獅子蝶々とか?」
「…………」
俺の答えに乙女さんは呆然としている。そんなにダメだったか?
「良い……凄く良いぞ!!」
大ウケだったようだ。
何とかチーム名が決まった俺達は急いで登録し終え、ようやく抽選会となった。
「えー、それではAブロックから順に係員の指示に従ってくじを引いてください」
係員に促され順番にくじを引いていく。俺達の引いた番号は8……第4試合って事か……。
NO SIDE
「ただいま組み合わせが決定しました!電光掲示板をご覧ください!」
くじ引きが終了し、電光掲示板にトーナメント表が映し出される。
組み合わせは以下の通り。
第一試合 ザ・リバーシブル(上杉錬&大倉弘之)VSハイペリオンギャルズ(日上順子&冬島香苗)
「女二人が相手とは、フカヒレに恨まれそうだな」
「ま、ウォーミングアップにゃ丁度良いだろ」
「チッ、鉄と決着つけたかったのに……」
「結構いい男じゃん、虐め甲斐がありそう」
第二試合 エスズキングダム(霧夜エリカ&直江大和)VSサラマンダーボーイズ(柊空也&鹿島ゆうじ)
「中性的な顔つき二人でしかも片方はショタ!小説(BL)の良いネタになりそう」
「ケケケケ…………」
「まさか大和と当たるとはな……師匠から因縁まで受け継いじまったか?」
「何か……あの金髪の人、僕達の事変な目で見てるような……」
第三試合 ビッグ・ジャガーズ(士慢力&半田紗武巣)VSウォーリアーズ(橘瀬麗武&羽丘ふぶき)
「ヘッ!体格差で捻り潰してやるぜ!」
「いや、この大会では体格差なんて大してアテにならんと思うが……」
「フン、1回戦など眼中にない、本命は次の戦いだ」
「あ〜あ、歯応えのなさそうな連中」
第四試合 D&Iハリケーンズ(小野寺拓己&山城優一)VS獅子蝶々(対馬レオ&鉄乙女)
「なかなか手強そうな相手だな、予選なんかよりずっと楽しめそうだぜ」
「ああ、1回戦早々面白くなりそうだ」
「村田達の仇を討ちたいってワケじゃないけど……」
「竜命館の生徒として黒星はきっちり返上しないとな!」
『それではこれより、1回戦第1試合を行います。出場選手以外は控室の方へお下がりください』
アナウンスの案内に錬達を4人を除いた選手達はその場を後にする。
「試合は通常のタッチ形式のタッグマッチ。カットは5カウント以内で。ダウン10カウントでKOとなりKO判定が出た選手はリングから退場となります。チームメンバーのどちらかがKOとなった時点で決着です。リング外に出て20カウント、もしくは降参(ギブアップ)の場合も同様です。よろしいですね?」
審判員のルール確認に錬、弘之、日上、冬島の4人全員が頷き、それを見た審判は表情を引き締めて運営側に合図を送った。
「さてと、どっちが行く?」
「俺に任せな。俺は喧嘩売ってくる奴は老若男女(恋人と友達は除く)区別しねぇ」
リバーシブルの一番手は大倉弘之で決定。
「よーし、じゃあまず私が……」
「ダ〜メ、私から出る」
先陣を切ろうとした順子だったが香苗に肩を掴まれて止められる。
「ちょっ、何で!?」
「はっきり言うけど、順子じゃあの二人の相手は無理。多分あの二人……いや、本戦に出てる殆どの連中がアンタが戦いたがってる鉄って娘とほぼ同等ね。」
「嘘でしょ!?」
香苗の推測に順子は驚愕の表情を浮かべる。
順子も拳法部の一員として鉄乙女の桁外れな戦闘力は良く知っている。
そんな実力を持つ者が多数出ているなど俄には信じられない事だ。
「だから私が行くわ。順子、アンタはサポートしなさい」
それだけ言うと香苗はロープを飛び越えてリングに立つ。
(それにああいう不良っぽいイケメン、屈服させて跪かせたいし♪)
という本音があったのは秘密である。
冬島香苗……実は根っからの女王様気質のSである。
『それでは第1試合、ザ・リバーシブルVSハイペリオンギャルズ……試合開始!!』
実況のアナウンスがそう告げた直後に、試合開始のゴングが鳴り響いた。
弘之SIDE
「さ〜て、久々の公式戦だ。楽しませてもらうとするか」
意気揚々と俺は相手を見据えて構える。それに応えるように相手の冬島も構えるが……。
(?……何だ?コイツの構え)
一目で分かるほどに冬島の構え方はレオにそっくりだ。
「行くわよ……《メガスマッシュ!!》」
「!?」
思わぬ行動に一瞬面食らってしまった。
メガスマッシュはレオが使う技……なのに何故コイツが?
「クッ!」
多少反応が遅れながらも何とか気弾を回避。
しかしそこを狙って冬島は飛び掛ってくる。
「まだまだ!《ムササビの舞》」
「うおっ!?」
これはKOF常連の不知火舞の技!?
「貰った!!《飛燕疾風脚!!》」
回避した隙を突かれて今度は極限流の技が俺に迫ってくる。
「クソが!!」
避ける暇が無いからすかさずガードして受け止めて弾き返す………………ん?
「驚いてるようね。私が色んな流派の技を使う事に。私はね、他人が使った技を見抜いて真似るのが得意なの。大概の技は一度直接見ればその技のコツ、タイミング、角度も簡単に見抜けるってワケ」
聞いてもいないのに勝手に解説を始めやがった。自己顕示欲が強い女だな……。
「今出した技も過去のKOFの映像や竜命館の体育武道祭で見て覚えた技よ」
「なるほどな、『千の技を持つ女』ってのを繁華街で聞いた事があるが、お前の事か」
「そうよ、ビビっちゃった?」
「いや、全然……むしろ拍子抜けだ」
俺の台詞に冬島の表情が一瞬固まり、こめかみがピクリと動いた。分かりやすい奴。
「拍子抜け?面白くない冗談ね」
「冗談かどうか試してみるか?ほら、来いよ。大技出してみろや」
「跪かせてあげようと思ってたけど…………そんなにご所望なら望み通りボロ雑巾にしてあげるわ!!《爪嵐撃!!!!》」
挑発に乗って錐揉み回転しながら突っ込んでくる冬島。
なるほど、レオの彼女が体育武道祭で出した必殺技か、良いチョイスだ。だがなぁ……。
「《ハリケーンアッパー!!》」
向かってくる冬島に竜巻を飛ばして迎え撃つ!!
「そんな竜ま……え?キャアアアアア!!」
威勢良く突っ込んだ割りにあっさりと冬島は吹っ飛ばされる。
ま、当然か。この程度の実力じゃな。
「な、何で?この技は対馬レオの爆風障壁も(完全ではないとはいえ)突き破った技なのに……」
「まだ解らねぇのか?お前の技を盗む観察力とテクニックは一級品かもな。だがどんな強力な技だろうとそれを使う人間に実力が伴ってなけりゃただの劣化コピー、オリジナルには到底及ばない。要するにお前は技だけの器用貧乏なんだよ!!見て呉れだけで中身が伴わないハリボテ技なんかじゃ俺は倒せないぜ!!」
「ば、馬鹿にするなぁぁーーーー!!!!」
俺の言葉に図星を指されてキレた(というか現実逃避しただけ)冬島は拳に気を集中させて襲い掛かってくる。
「ぶっ殺す!!《真空鉄砕拳!!!!》」
「馬鹿が……オラァ!!!!」
繰り出される拳に俺は自らの鉄拳を見舞った。
「(ニヤリ)……手応えありだ」
「グ……ギャアアアアアアアッ!!!!」
俺のパンチで冬島の指の骨は折れ、冬島はその強烈な痛みにのた打ち回る。
「じゅ、順子………た、助けに……来なさいよ」
冬島からの要請に今まで呆然と俺達を見ていた冬島の相棒の日上がリングに入ってくる。しかし……
「おっと、そうはいかねぇぜ」
即座に錬がカットに入る。日上も応戦しようとするが実力差が如実に出て攻撃は一切当たらず、逆にみぞおちに錬の膝蹴り(たぶん手加減してる)が入る。
「グゥッ……!」
「弘之!アレやるぞ!!」
「おう!!」
蹲る日上を余所に錬は合図送り、俺達はリング中央にお互いの相手を投げ飛ばす。そして……
「「せーの!!」」
俺のラリアートと錬のレッグラリアートによる挟み撃ちが冬島と日上の首下にぶち込まれた!
変形型だがクロスボンバーの完成だ!!
「がぁっ……」
「うぐぁ……」
クロスボンバーをもろに喰らった冬島と日上はそのままダウン。
直後に試合終了のゴングが鳴り響いた。
NO SIDE
『つ、強い!!強すぎる!!予選で他チームを圧倒していたハイペリオンギャルズが手も足も出ずに敗北!!強すぎるぞザ・リバーシブル!!!!』
決着を告げるゴングが鳴り響く中、錬達の驚異的な強さを目の当たりにした者達の歓声が響き渡った。
○ザ・リバーシブル―ハイペリオンギャルズ●
決まり手、変形クロスボンバー
レオSIDE
選手用観戦室
錬、それに大倉先輩……。
「強くなってるな……以前よりずっと」
「ああ……」
相手は技に溺れていた所があるとはいえ俺や乙女さんの技を真似できるほどの力量はあった筈……それをああも簡単に……。
「でも勝って当然でしょ。あの冬島って娘なら私でも勝てない事もなさそうだし」
「何よりあの女、S属性として失格。ドSはドSとして振舞いたいからこそ日々の精進を怠ってはならない……それを怠る奴にSの資格は無い」
ドSコンビからは酷評されてるハイペリオンギャルズ。
つーか大和、お前Sに一家言持ってたんだな……。
「さーて、次は俺達だな。ゆうじ、準備しに行くぞ」
「ハイ!!」
そう言って空也達は控え室へ向かう。
「私達も準備しましょうか。一筋縄じゃいきそうにない相手だし」
「OK、久々に大暴れできそうだ……ケケケケ」
姫と大和も立ち上がり、観戦室を後にした。
技のキレ抜群の空也と実力未知数のゆうじのサラマンダーボーイズ。
飛猿軍師の異名を持つ大和と竜命館きっての天才頭脳を持つ姫のエスズキングダム
どっちが勝つにしても凄い戦いになりそうだ。