PERSONA3:Reincarnation―輪廻転生― 作:かぜのこ
――僕は、こんなことがしたかったわけじゃない。
“死”が、滅びが迫る。
直に、女王の慈悲が世界を覆い尽くし、地上の生命は遍く死に絶え、滅びるだろう。
――人並みの夢だってあった。叶えたい未来だってあった。一緒に人生を歩みたい
独り、藍色の髪の少年は、絶対不可避なる“死”に立ち向かう。
まさしく孤立無援。
地上から送られていた仲間たちの声援も、今はもう聞こえない。
その双肩に
――たくさんの人と出会って、あれから初めて、前を向いて生きていこうって思えた。なのに…………。
彼は、
今まさに彼は、その一命でもって世界の人々を救おうとしている。――ゴルゴダの丘にて、磔にされた
――望んでこんな力を得たわけじゃない。願ってこんな場所に立っているんじゃない。
しかし、そうならなかった。
あるいは少年が、もっと他人に目を向けていれば、周囲の動向に気を配っていれば、流れに身を任せるだけでなければ――彼らは死ななかったかもしれない。
世界に降り注ぐ“死”を、食い止めることが出来たかもしれない。
――だけど、これが僕にしかできないことだというのなら……!!
ならば、この結果は必然。この結末が自身の無関心という“選択”によるものなら、甘んじて受け入れる他ない。
どれだけ後悔を重ねても、所詮ifはifでしかないのだから。
「■■■、ごめん――、君との約束は守れそうにないよ」
例えそれが偽善的な感傷であっても、彼にとっては紛れもない真実だった。
――契約は、すでに果たされた。
「――さよなら」
光が広がる。
それはさながら虹色に輝くオーロラのようで。
たった一人の心の海から生まれた新たなる“宇宙”の輝きが、爆発する。
こうして“死”は、再び眠りについた。
少年の生命の輝き、それそのものによって。
――――西暦二〇一〇年、一月三一日の事である。