問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ?   作:ほにゃー

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今回は100話記念と言うことで、一つ特別篇と言うことで作りました。

この話は本編とはまったく関係ないIFストーリーとなります。

お題は『もし、レティシアがヒロインだったら』です。


特別編  吸血姫の恋

「……………」

 

「ちょっと、レティシア。大丈夫?」

 

「うん?……ああ、大丈夫だ」

 

「そうは言うが、先程から同じ皿を三十分も拭いておられるぞ」

 

「……ああ、そうだったか」

 

どこか上の空でレティシアは吹き続けてピカピカとなった皿を置き、別の皿を取る。

 

既に拭き終った皿を。

 

「レティシア、それも拭き終ってる」

 

「……ああ、そうだったか」

 

やはり上の空で仕事を始めるレティシアだった。

 

その様子がいつもと違うことにペストと白雪姫は気が付いていた。

 

いや、正確には随分前から様子は違っていた。

 

一週間ほど前からレティシアの様子はおかしかった。

 

料理をすれば塩と砂糖を間違えるから始まり、ウーロン茶とめんつゆを間違えて出す。

 

その結果、飲んだ十六夜は盛大に吹き出していた。

 

掃除をすれば、花瓶やら窓やらを割り、洗濯をすれば洗ってはいけないものまで洗う。

 

いや、最近のレティシアは様子がおかしいと言うより、むしろポンコツになっている。

 

これ以上メイド業務に支障が出るのは困るのでペストはある行動に出た。

 

「というわけだから、アンタ達にそれとなくレティシアから事情を聞き出してほしいの」

 

ペストは“ノーネーム”の主力である十六夜、飛鳥、耀、修也、そして、昔からの馴染みである黒ウサギ、ジンに頼むことにした。

 

「流石にこれ以上メイド長がポンコツになり過ぎるとコミュニティ全体に影響が出かねないわ。かと言って、私達が聞くとメイド長の威厳もあるから、聞いても教えてくれない可能性がある。だから、貴方たちに聞いて欲しいの」

 

黒ウサギとジンはレティシアの行動がおかしいのは気づいていたので快く承諾してくれた。

 

問題児たちも、レティシアの行動に気が付いていたし、ペストの言い分は一理あると思い承諾した。

 

そして、承諾すると同時に、メイドとしての貫録が染みついてるなっとも思った。

 

 

 

 

 

一番手 ジン=ラッセル

 

「レティシアさん」

 

ジンは廊下をモップで掃除してるレティシアに声を掛ける。

 

「ん?ああ、ジンか。どうした?」

 

「最近仕事でミスが多いとペストから聞いたんです」

 

「そうか。それはすまなかった。以後気を付ける」

 

「いえ、それはいいですよ。ただ、お疲れなら仕事の方を休んでもいいですよ。一日ぐらいならペストと白雪姫の二人でなんとかなりますし、それに、黒ウサギや僕もできるだけの事はしますから」

 

「そうか。だが、心配はいらない。私は大丈夫だ」

 

そう言ってレティシアはバケツを持ち上げ、移動をする。

 

その際、何もない所でつまずき、バケツを引っくり返し、雑巾で廊下を拭いていた。

 

一番手 ジン=ラッセル 敗北

 

 

 

二番手 黒ウサギ

 

黒ウサギは厨房で料理をしているレティシアに声を掛けた。

 

「レティシア様」

 

「黒ウサギ。待っていてくれ。もう少しで味噌汁が完成する。そしてら、昼食だ」

 

「あの、それはいいのですが……お体の方はよろしいですか?」

 

「そうか、ジンだけでなく黒ウサギにまで心配を掛けていたか。ジンにも言ったが、私は大丈夫だ。心配をかけてすまなかった」

 

「………レティシア様。そのお鍋、ワカメと豆腐以外入ってませんよ」

 

「あ……味噌と出汁を忘れていた」

 

二番手 黒ウサギ 敗北

 

 

 

三番手 飛鳥&耀

 

飛鳥と耀の二人は休憩中のレティシアに話し掛けた。

 

レティシアは椅子に座り本を読んでいた。

 

本を逆さまにした状態で。

 

本も、読んでいると言うより、ページだけをただ捲っているだけだ。

 

「レティシア、ちょっといいかしら?」

 

「ここ、座るね」

 

「飛鳥、それに耀。………今日は、よく話掛けられるな。二人も私の心配か?」

 

「ええ、早い話そうね」

 

「なにか悩みあるなら相談のるよ?」

 

「こんなに心配されて私も幸せ者だな。だが、私は大丈夫だ。心配してくれてありがとう」

 

本を閉じレティシアは立ち上がる。

 

「折角だ、お茶とお茶請けのお菓子でも持ってこよう」

 

そう言って持ってきたケーキと紅茶を途中で転んだことで、盛大にぶちまけていた。

 

ケーキは耀が空中でキャッチもとい食べたが、紅茶は偶然通りかかっていた黒ウサギの頭にかかった。

 

三番手 飛鳥&耀 敗北

 

 

 

四番手 十六夜

 

「修也、行って来い」

 

「は?次はお前の番だろ?」

 

「俺よりお前の方が適任だ。なんせ、従弟だからな」

 

「いや、そうだが」

 

「他人には話せない事でも身内になら話せることもあるはずだ。ほら、行ってこい」

 

十六夜に背中を押される形で修也はレティシアの下へ向かう。

 

その時、修也は気づかなかった。

 

十六夜の顔がこれまでにないぐらいに笑っていたことを。

 

 

 

四番手 修也に変更

 

レティシアは昼食に使った皿を洗い、拭いてる最中だった。

 

それを気にせず修也はレティシアの背後から声を掛ける。

 

「レティシア」

 

バリンッ!!

 

すると、レティシアは声に驚いたのか、皿を握り潰し砕いた。

 

「しゅ、修也!?」

 

レティシアは後ろを振り向き、驚く。

 

「お、おいおい、皿割れちまったぞ」

 

「あ、ああ、お前の声に驚いてな」

 

「そうか、悪かった。行き成り背後から声掛けたりして」

 

「い、いや、気にするな」

 

そう言ってレティシアはそっぽを向く。

 

その時、修也はレティシアの顔が赤くなっていることに気付いた。

 

「レティシア、顔赤いぞ、熱でもあるのか?」

 

レティシアに近づき、修也は手をおでこに当たる。

 

「ひうっ!?」

 

「熱いな。やっぱり熱があるんじゃないか」

 

そう言う修也を余所にレティシアの顔はどんどん赤くなる。

 

「あれ?なんか、さっきより熱い気が……」

 

「さ、触るな!!」

 

レティシアは行き成り足を振り上げ、修也の股に当たる。

 

「ぐほっ!?」

 

修也は股を抑え、蹲る。

 

口から泡を吹き出し、白目を剥きながら。

 

「修也の………バカァァァァァァァ!!」

 

レティシアはその場から全力疾走で走り離脱した。

 

 

 

 

修也の下から全力で逃げ出したレティシアはというと、自室の隅っこで体育座りをし、自分の仕出かしたことを後悔している。

 

そんな情けないメイド長を見ながらペストは溜息を吐く。

 

「まったく、自分を心配してくれる従弟に向かって股蹴りするとか何考えてるのよ?」

 

「ふ、ふふふ……私は……もう、自分で何がしたいのかすら分からない。もう、全てが嫌になった。こんなメイド長でごめんなさい。これからは箱庭の騎士(笑)とでも呼んでくれ。ああ…………貝になりたい」

 

とうとう自虐し始めるレティシアにペストは再び溜息を吐く。

 

「いくら好きになったからって、動揺し過ぎでしょう」

 

「…………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はああああああああああああああああああああああああああ!?」

 

「大声出さないでよ。うるさいわ」

 

「お、おま、な、何言ってんだ!?」

 

若干キャラが崩壊気味になりながらペストの肩を掴みがっくんがっくんと揺らすレティシアだった。

 

「ちょ、ちょっと!落ち着きなさいよ!」

 

「なんで私が修也の事を好きにならないといけないんだ!?」

 

「は?好きだから、あんなに動揺してるんでしょ?」

 

「違う!」

 

そう言うレティシアだったが、顔だけでなく耳、首まで真っ赤にしており、説得力が無かった。

「大体、何故修也が好きになる!?私達は従姉弟だぞ!?それに、私から見れば修也はまだ子供だ!それに年齢もかなり離れている!血縁関係の事もそうだが、色々問題あるだろ!そりゃ、修也は叔父上に似てカッコいいし、イケメンだ!モテるだろう!それに、私の初恋の相手は叔父上だからな!そして、親の七光りなどにも頼らず、さらに、英雄の息子であること理由に威張ったり、他人を見下したりもしない!頭の回転も良いし、知識もある!力も強いが、何より心がとくに強い!“ペルセウス”の時だって、ガルドとのギフトゲームで怪我をし、病み上がりでありながら私を助けるために立ち上がってくれた!本当にいい男だ!従姉弟でなければ、思いっきりアプローチしたさ!」

 

「…………ふ~ん。要するに、好きなんじゃない」

 

「違うもん!」

 

若干どころか完全にキャラが壊れ出したレティシアだった。

 

「……分かったわ。貴方はあの男が好きじゃない」

 

「そうだ!」

 

「じゃあ、私がアプローチしてもいいわよね?」

 

「え?」

 

ペストの発言にレティシアは固まる。

 

「アイツ、結構いい男だし、それに、英雄の息子って箔もいいわ。私の伴侶にしてもいいかも」

 

レティシアに顔を向けずに、ペストは明後日の方を見ながら言う。

 

レティシアはというと、動揺が見え隠れしながら体を震わせる。

 

「決めたわ。さっそくアプローチしてくる」

 

「だ、ダメだ!」

 

レティシアは声を上げ、ペストの服の袖を掴む。

 

「どうして?貴女はアイツが好きじゃない。なら、どうしようか私の勝手じゃない」

 

「そ、それは……私が……アイツの従姉だから」

 

「だから?貴女が従姉だからって、アイツの恋愛事情には関係ないでしょ」

 

レティシアの手を振り払い、部屋を出て行こう扉に手を掛ける。

 

「ああ、その通りだ!」

 

すると、レティシアは大声を上げて、ペストの動きを止める。

 

「私は修也が好きだ!好きになった!従姉弟だとか、血縁だとか、年齢だとか関係ない!私は、修也の事が大好きだ!」

 

レティシアは顔を今までにないぐらいに真っ赤にして、腕を組み、胸を張って言った。

 

その行動にペストは唖然とした。

 

レティシアはというと、言ってやったぞっと言いたげな表情をしている。

 

「………はぁ~、最初からそう素直になりなさいよ」

 

そう言ってペストはドアノブを回し、勢いよく扉を開ける。

 

そこには、聞き耳を立てていたらしい修也が居た。

 

まさかいるとは思っていなかったレティシアは表情を固まらせていた。

 

「はい、後は本人同士で話し合いなさい」

 

軽く修也の背中を叩きペストは廊下を歩き、その場を離れる。

 

「「………………」」

 

互いに一言も話さず、沈黙だけが流れる。

 

「しゅ……修也」

 

「お……おう」

 

先に沈黙を破ったのはレティシアだった。

 

「さ……さっきのことだが………私は本気だ。私は、お前が好きだ」

 

レティシアは俯き、話す。

 

「………お前の返事を聞かせてほしい」

 

レティシアは顔を上げ、羞恥と緊張、不安と言った表情で修也を見つめる。

 

「………お、俺は」

 

修也は頬を赤く染めながらも言葉を続ける。

 

そして、その答えは………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~十年後~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

「ふぅ。今日の仕事はこれで終わりだな」

 

レティシアはいつもの業務を終わらせ一息つく。

 

すると、背後から二つの足音が聞こえる。

 

「母様―――――!」

 

「母上―――――!」

 

一人は銀髪にレティシアと同じぐらいの長髪の女の子。

 

もう一人は金髪の男の子だ。

 

「詩音、零夜」

 

「ただいま、母様!」

 

詩音と呼ばれた女の子は勢いよくレティシアに抱き付くと、元気いっぱいの笑顔を浮かべる。

 

「母上、只今帰りました」

 

零夜と呼ばれた男の子は息を切らしながらも、礼儀正しく言う。

 

「ああ、おかえり。疲れただろ。手を洗っておやつにしよう」

 

「「はーい!」」

 

二人は元気に返事をして走りながら館へと向かう。

 

そんな我が子を見ながらレティシアは微笑を浮かべた。

 

その時、レティシアの背後に誰かが立っていた。

 

身長は十年前より伸び、大人としての風格が出ており、何処かとある吸血鬼の神と呼ばれた男と同じ雰囲気を纏っていた。

 

その男の姿を見るとレティシアは先程より一層喜びの表情を浮かべる。

 

男もそんなレティシアの笑顔を見て、無意識のうちに笑みを浮かべる。

 

「ただいま、レティシア」

 

「おかえり、修也」

 

二人は人目も憚らず抱き合う。

 

そして、どちらからともなく唇を重ねた。

 




これを書いてる間、レティシアがヒロインでもよかったのではっと思いました。

この物語が終わったら、書いてみようかな…………

では、次回からオリジナルストーリーの続きを書きます。

次回はプロローグ③です。

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