問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ?   作:ほにゃー

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第12話 少女たちの恩返しだそうですよ?

『皆さん、見えてきました!トップは“ウィル・オ・ウィスプ”のフェイス・レス!二番手は“ノーネーム”のフェルナ!サポーターのコッペリアも健在です!』

 

“ヒッポカンプの騎手”最終局面。

 

現在、フェイス・レスの後ろをフェルナたちは一定の距離を保ちながら後を追っていた。

 

これ以上フェイス・レスに近づけば、蛇腹剣が水着を脱がしに来る。

 

そのため、これ以上近づくことが出来ない。

 

「このままじゃ追いつけないよ!」

 

フェルナは声を上げコッペリアに言う。

 

「ですが、これ以上近づけばあの剣の餌食になります」

 

コッペリアは、起きてしまう危険を考え、フェルナが前に出るのを止める。

 

せめて、修也か耀のどちらかが居てくれればフェイス・レスを抑え、その隙に通り抜けることもできるだろう。

 

そのどちらもいない状況では、コッペリアが抑えるしかない。

 

だが、コッペリアの力量ではフェイスと戦うことはおろか、足止めする事すら難しい。

 

「お姉ちゃん、このまま突っ切るから援護お願い!」

 

ちなみに、フェルナはコッペリアの事をお姉ちゃんと言って慕っている。

 

「ダメです!それじゃあ、貴女が大変な事に」

 

「それでもやる!ご主人様は私達に頼んだって言ったんだもん!だったら、私はそれに応える!それが、私を助けてくれたご主人様への恩返しだから!」

 

「…………分かりました、私もマスターへの恩があります。やるからには全力で行きます!」

 

そう言うと、コッペリアはフェイス・レスに一気に向かう。

 

フェイス・レスは焦ることなく、蛇腹剣を抜きコッペリアの水着を脱がしにかかる。

 

「“踊る人形撃 第四幕 衝劇”」

 

コッペリアが掌から衝撃波を放ち、水着を斬ろうとしていた蛇腹剣を弾く。

 

弾かれると思っていなかったフェイス・レスは驚きの表情を僅かにするが、すぐに気を引き締め、剣を構える。

 

「水着を斬りに来ると分かっていれば、防御はたやすいです!」

 

衝撃波を防御に使うと、素早く銀色の剣を生み出し、斬り掛かる。

 

フェイス・レスは蛇腹剣を剛槍に換装し、切り結ぶ。

 

コッペリアは槍の特性を考え、フェイス・レスの懐に潜り込む。

 

フェイス・レスは、ヒッポカンプの上なので自由に動けない。

 

だが、コッペリアは空を飛べるので上下左右から攻撃を繰り出す。

 

その隙に、フェルナはヒッポカンプで脇をすり抜ける。

 

後は、フェイス・レスの間合いを抜けば、全速力でゴールするだけだ。

 

そのことで、コッペリアは安堵してしまった。

 

「甘いですね」

 

フェイス・レスは、持っていた剛槍を捨て、コッペリアの足を掴む。

 

「しまっ!」

 

最後の言葉を言う間もなく、コッペリアは水面に叩き付けられる。

 

一方、フェルナはまだ、間合いの中に居た。

 

「幼子の水着を抜かすのは忍びありません。ですから、落ちてもらいます」

 

そして、今度は弓を取り出す。

 

不安な足場で弓を構え、矢を放つ。

 

鏃の部分は斬り落とされ、代わりに黒いゴムが付けられ当たっても死なない様になっている。

 

放たれた矢は、目にも止まらぬ速さでフェルナに向かう。

 

背後から来る矢の威圧を感じフェルナは振り返る。

 

そして、矢はフェルナの側頭部に当たる。

 

それによりフェルナは一瞬気を失う。

 

持っていた手綱の手も緩み、離してしまう。

 

「フェルナ!」

 

コッペリアが声を上げる。

 

「………ま」

 

その時、フェルナが声を上げた。

 

緩めた手で、離れそうにな手綱を強く握りしめる。

 

「負けるもんかッ!」

 

フェルナは上半身の力だけで起き上がり、体勢を立て直す。

 

「な!?」

 

あの状況から起き上がれると思っていなかったフェイス・レスは驚き、声を上げた。

 

だが、距離はまだ十分に追いつける距離だった。

 

すぐにヒッポカンプを走らせようとすると、奇怪な人形が数体、ヒッポカンプの走行を妨害する。

 

フェルナは、駆け抜けながら、“操り人形作成”で、人形を作りだし足止めにしていたのだ。

 

剣を抜き、人形を破壊している間にも、フェルナとの距離はどんどん広がる。

 

全て壊す頃には、もう追いつけないほどに距離があった。

 

「くっ!」

 

それでも、騎士として、プレイヤーとして最後まで死力を尽くし駆ける。

 

だが、勝敗は決した。

 

「私たちの勝ちだ!」

 

フェルナが高らかに勝利宣言をし、フェルナはゴールする。

 

“ヒッポカンプの騎手”をトップでゴールしたフェルナに、観客は喝采を送った。

 

こうして、収穫祭で一番大きなギフトゲーム、“ヒッポカンプの騎手”は“ノーネーム”の勝利で幕を閉じた。

 




次回、エピローグにて、蒼海の覇者は終了となります。

そして、修也と耀の関係に変化が!

それでは、次回もお楽しみに

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