問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ?   作:ほにゃー

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第9話 修也VS蛟劉だそうですよ?

どうも違和感を感じていたが、どうやら正しかったらしい。

 

俺が作った近道を通り、樹海を抜け、山河に着くと妙な匂いを感じた。

 

俺の気のせいだと思っていたが、気のせいではなかった。

 

「まさか、山頂に海があるとはな」

 

目の前に広がる大海原に俺は驚く。

 

以前食べた魚が鯵に近い姿から、上流で海水と混流してるのかと思っていたが、まさか、山頂の海から流れてるとは思わなかった。

 

「マスター、あれが海樹です」

 

コッペリアが指さす方には、様々な樹が海面に立っていた。

 

「てことは、あの赤い果実が海樹の果実か」

 

海樹に近づき、身をいくつか取って袋に詰める。

 

「よし、後は山河の流れに沿って降りればいいだろう。だが」

 

「マスター、彼女が来ました」

 

コッペリアも気配を感じたらしく、そちらを見ると、フェイスが別ルートから山頂に上がって来た。

 

「やはり辿り着いたのは貴方たちだけでしたか」

 

そう言うとフェイスは蛇腹剣を抜き、一瞬で海樹の果実を袋に詰める。

 

これで俺たちとのアドバンテージはなくなった。

 

俺は白牙槍を握り締め、構える。

 

フェイスも蛇腹剣の柄を捻って刀身の仕込みを解く。

 

手綱を握り締め、互いに走り出すきっかけを探る。

 

その時異変が起きた。

 

足場が揺れ始め、波風が強くなり始めた。

 

「まさか、こんなお遊びのようなゲームで、動くのですか?“枯れ木の流木”と揶揄された男が………!」

 

フェイスがうわ言のように呟く。

 

すると、滝から巨大な水柱が上がり。その水柱にヒッポカンプと騎手がいた。

 

まさか、滝の流れを逆流させてここまで登って来たのか?

 

「いやぁ、参った参った!寝坊したらこんな時間になってしもうた。無理矢理ねじ込んでもらったのに白夜王には悪いことしてもうたな」

 

胡散臭い関西弁を話してるが、昨夜までの雰囲気がまったく感じらない。

 

最後の参加者の蛟劉こと蛟魔王が水にぬれた髪を掻き上げながら現れた。

 

「でもよかった。君らがこんなところでトロトロしてたおかげで、簡単に追いつけたわ。これなら、優勝も容易そうやな」

 

この自信と覇気、昨日とは別人みたいだな。

 

「フェルナ、コッペリア行け。俺が食い止める」

 

「……分かりました。マスター、御武運をお祈りします」

 

「コッペリアさん、ご主人様を置いてくんですか!?」

 

「フェルナ、マスターは私達に行けと命じた。なら、眷属であるあたしたちはその命に従う義務がある」

 

「でも……」

 

「マスターを信じましょう。マスターがこの程度の輩にやられはしないと」

 

「……はい!」

 

そう言ってフェルナとコッペリアはこの場をは離れようとする。

 

「君ら、色々相談してるとこ悪いけど、時間かけすぎで。おかげでこっちの準備が整ってもうたやないか」

 

蛟劉が右腕を掲げると、先程よりも強い地鳴りが響いた。

 

そして、巨大な津波が押し寄せてきた。

 

覆海海大聖の名は伊達じゃないな!

 

「フェルナ、コッペリア逃げろ!このままじゃゲームオーバーだ!」

 

水中に落ちたものは落馬扱いで失格。

 

このままじゃ、津波に巻き込まれて失格になる。

 

そんな中、フェイスは騎馬を走らせ、100mはある高さの滝から飛び降りた。

 

「フェルナ、私達も飛び込みますよ」

 

「はい!」

 

二人はそのまま走り出し、滝へと向かう。

 

あの滝から落ちるなんて自殺行為だ。

 

仮に助かったとしても、ゲームオーバーになるかもしれない。

 

だが

 

「二人とも、後は頼んだぞ!」

 

あの二人なら大丈夫だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

滝から飛び降りたフェイスレスは水面に着地する瞬間、二本の剛槍を取り出し、水面にぶつけ、落下の衝撃を完全に殺すことで、無事飛び降りることに成功した。

 

そして、フェルナはというと

 

「うりゃ――!!」

 

“操りの糸”を使い、水中に居た水霊馬を引きずり出し、それを足場にして降りることに成功した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せいっ!」

 

襲ってくる巨大な津波に向け、白牙槍を振り下ろす。

 

振り下ろされた衝撃で津波に亀裂が入り、二つに分かれる。

 

「流石や」

 

「お前もな。これだけの津波を起こせるなんて流石は覆海大聖だな」

 

「お褒め与り、光栄やね」

 

他害ににやりと笑い、蛟劉は騎馬から降りた。

 

「降り立って事は相手になってくれるんだな」

 

「ああ、白夜王に頼まれて参加したゲームやけど、君とも戦いたいと思っとたんよ」

 

「俺と戦いたいとか余裕だな。このままじゃ、フェルナたちが先にゴールするぜ」

 

「安心し。あの程度なら、すぐにでも追いつける」

 

「なら、尚更止めないとな!」

 

拳を握り走り出す。

 

蛟劉は腰に曲刀を差しているが抜く気配が無い。

 

肉弾戦で戦おうってか。

 

一気に距離を詰め、拳を顔面に向けて放つ。

 

蛟劉は片手を出し、受け止めようとする。

 

だが、次の瞬間、顔に焦りの色が現れ、受け止めようとせず、両腕をクロスさせて防御した。

 

俺の拳が当たると、蛟劉は勢いよく後ろに吹き飛ぶ。

 

「危なかったわ。後一秒でも防御が間に合わんかったら、君の勝ちやったね」

 

「良く言うぜ。あの僅かな時間でコレを見て、その力を測り、尚且つ防御まで行う。いい目してるじゃねぇか」

 

そう言って俺は自分の両腕を見せびらかすように出す。

 

俺の腕はルビーのようなもので覆われている。

 

これは俺の両腕を斬り、吸血鬼の血で俺の腕を覆ったものだ。

 

吸血鬼の力で俺の筋肉を強化させ、元々ある俺のスペックに力を上乗せさせる。

 

さらに、血の力を解放し、それを宿らせることで強力な力を生み出す。

 

手の先が鋭利な爪の様になっているし、グリムゾン・クローとでも名付けるか。

 

「それかっこええな」

 

「これの良さがわかるとは、やっぱお前とはいい酒が飲めそうだ」

 

「酒は二十歳からやで」

 

「こちとら、義務教育時代から飲ませられてたんだ。いまさら関係ないだろ」

 

「ぎむきょういく?」

 

「いや、忘れてくれ。要するに、ガキの頃から飲んでるから気にするな」

 

「さよか」

 

蛟劉は一息つくと、俺を見ながら言う。

 

「久しぶりや。こんな気分は、もう我慢できひん。死ぬなよ」

 

蛟劉は海流を操り、俺の懐に入る。

 

そして、ねじり込むように掌底を俺の胸に当てる。

 

血流が逆流する程の嘔吐感を感じながらも、それに耐え、拳を蛟劉の死角となってる左側から殴りつける。

 

だが、蛟劉はそれを片手で受け流し、躱す。

 

しかし、俺は攻撃の手を止めずに蹴りを放ち、蛟劉の腹に当てる。

 

「いい掌底だ。内臓が潰れるかと思ったぜ」

 

「今の一撃受けて、反撃してくるとは驚きや。今の一撃、君の意識を刈り取るつもりやったんやで」

 

「吸血鬼舐めんなよ」

 

互いに一歩も譲らずに、睨み合い、出方を伺う。

 

「いい殺気や。心地良いで」

 

「そう言える奴なんて、そうそういねえだろうな」

 

「せやろうね」

 

そう言うと、同時に動き出し、拳をぶつけ合っていた。

 

「悪いが、ここから先は絶対に通さねえ」

 

「僕も、やらないといけんことがある。是が非でもそこは通さしてもらう」

 

互いに反発し合うように離れ、再び走り出す。

 

「行くぜ、蛟魔王!」

 

「来い、修也!」

 




報告

活動報告でも言いましたが、タイトル変更しました。

次回、十六夜SIDEの話になります。

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