問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ?   作:ほにゃー

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第7話 選手交代だそうですよ?

“ヒッポカンプの騎手”が始まるまで後三十分。

 

俺達は必死に“アンダーウッド”を走っていた。

 

「くそ!飛鳥の奴、何処だ!」

 

そう、飛鳥が消えた。

 

消えたことが知ったのは、約三十分前の事。

 

十六夜が言うには、外に出て、テントに戻ってくるまでの僅か十分足らずで飛鳥が消えたとのことだ。

 

トイレか何かだと思い、暫く待ってみたが、開始時間が迫ってるにも関わらず飛鳥は戻ってこなかった。

 

そこで一度、全員で参加者待機場所からなるべく離れずに飛鳥の捜索をすることになった。

 

だが、まだ見つからない。

 

待機テントに戻ると、耀、十六夜、黒ウサギ、ジン、フェルナとコッペリアが戻っていた。

 

「おい、見つかったか!」

 

「ううん、見つからなかった」

 

「俺もだ」

 

「私も、箱庭の中枢に問い合わせてみたのですが、分かりませんでした。こんなこと、有り得ません」

 

「僕も聞いて回りましたけど、誰も飛鳥さんを見なかったそうです」

 

「私達も飛鳥さんを見た人はいないって」

 

「同じくです」

 

どういう事だ?

 

飛鳥は“アンダーウッド”をディーンを使って守った。

 

それを多くの奴等が見ている。

 

だから、飛鳥を見れば覚えていてもおかしくないはずだ。

 

それなのに、誰一人として覚えてないなんて……………

 

「俺のせいだ。あの時、俺がお嬢様の傍を離れなければ…………」

 

十六夜が悔しそうに拳を握る。

 

「十六夜、何もお前のせいじゃない。そう気に病むな」

 

「だが、事実だろ!俺さえお嬢様から離れなければ、こんな事態にならなかった!全部俺のせいだ!」

 

いつもの十六夜らしくない。

 

普段なら、こんな時でも冷静に状況を判断し推理して、状況を覆す奴なのに。

 

一体どうしたんだ?

 

「オイ、シュウ坊!」

 

急にネズさんが走りながら俺の背中に声を掛ける。

 

「ネズさん、どうしたんですか?」

 

「やばいゾ。シュウ坊の所の赤いドレスのお嬢様、“二翼”の連中が連れ去っちまったぞ!」

 

「んだと!」

 

俺が声を上げる前に、十六夜が声を上げ、ネズさんに近づく。

 

「お前、お嬢様が連れ去られるのを黙って見てたのかよ!」

 

「しょ、しょうがないダロ!オイラは戦闘は無理デ、情報収集と逃げ足しか自信ないんダ!だから、この情報をシュウ坊たちに」

 

「早く言え!あの馬肉共は、何処にお嬢様を」

 

「十六夜」

 

「んだよ!今、」

 

そこまで言うと十六夜は黙った。

 

いや、黙らせた。

 

俺が一発頬に拳を叩き込んだからだ。

 

十六夜は吹っ飛ばされ、近くのテントを巻き込んで倒れた。

 

「ッ痛!テメェ、修也!何しやがる!」

 

「少し落ち着け。いつものお前らしくないぞ」

 

「落ち着けだと!お嬢様が馬肉共に誘拐されたんだぞ!それなのに落ち着いていられるか!」

 

「そこがお前らしくないんだよ!」

 

十六夜の胸倉を掴み、持ち上げる。

 

「いつものお前なら、どんな時でも冷静に状況を判断し推理して、状況を覆す。なのに、今のお前は冷静の欠片もない。そんな状態じゃ、ないもできないだろ」

 

「………すまねぇ。冷静じゃなかった」

 

十六夜は、申し訳なさそうに俯いて誤って来た

 

十六夜を地面に下ろしネズさんの方を向く。

 

「ネズさん、取りあえず情報をくれ」

 

「あ、ああ。オイラの所の同士に尾行させた情報によると、ドレスのお嬢ちゃんは、“アンダーウッド”の収穫祭に使う備品を置いてある倉庫に連れ込まれたそうダ。見張りに二人、中には推定で十人は居るはずだ」

 

「そうか…………十六夜」

 

「……なんだよ?」

 

「飛鳥を助けに行け」

 

「!………だが、俺には」

 

「その資格が無いってか?そんなわけないぜ。きっと飛鳥はお前の事を待ってる。行ってやれ」

 

「……修也」

 

「必ず、揃って無事に戻ってこいよ」

 

「……おうよ!」

 

十六夜はいつもの笑み浮かべ掌を拳で叩いた。

 

「ま、待って下さい!飛鳥さんが居ないのもそうですが、十六夜さんまで抜ければゲームへの参加が」

 

「黒ウサギ、控えメンバーの事忘れてないか?」

 

「え?い、いえ、覚えてますよ。ですが、私たちのコミュニティには、控えになるメンバーは」

 

「いるだろ。ここに」

 

そう言って俺はフェルナとコッペリアの肩を叩く。

 

「「え?」」

 

「万が一のことを考えて、この二人を控えの選手として登録しといた。飛鳥と十六夜の代わりに出てもらう」

 

「で、ですが、それは無茶かと」

 

「黒ウサギ、俺とコイツらを信じてくれ」

 

俺は黒ウサギの眼を見つめる。

 

「く、黒ウサギさん!私、どこまで出来るかわからないけど、やらせてください!」

 

「やるからには尽力を尽くします!」

 

フェルナとコッペリアは任せてくれと言わんばかりに胸を張る。

 

「……分かりました!皆様を信じます!」

 

「よし!ネズさん、十六夜を案内してやってくれ」

 

「任せナ!付いてきな、金髪の兄チャン!」

 

「おう!」

 

十六夜はネズさんと共に飛鳥救出に向かった。

 

「フェルナは飛鳥の代わりとして騎手を頼む。コッペリアは俺たちとフェルナの護衛だ」

 

「分かりました」

 

「承知しました」

 

「黒ウサギは審判ですので、申し訳ありませんが、舞台から応援します」

 

「皆さん、くれぐれも気を付けてください」

 

「ああ…………よし、十六夜と飛鳥の分まで、絶対に優勝するぞ!」

 

「「「おおー!」」」

 


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