問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ?   作:ほにゃー

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第3話 第三幻想種だそうですよ?

最近の私はどうもおかしい。

 

異世界の“ノーネーム”に行ってからずっと十六夜君のことを意識してしまってる。

 

始めは異世界の私と十六夜君の関係に戸惑ってしまい、それで意識してるだけだと思った。

 

でも、あれから私は十六夜君のことを目で追ってしまってる。

 

十六夜君の声が聞こえた気がして思わず振り返ってしまう。

 

気が付くと十六夜君を捜してしまう。

 

十六夜君と話してると楽しい。

 

十六夜君が黒ウサギと一緒に居るのを見てモヤモヤしてしまう。

 

これだけで嫌でもわかる。

 

私は十六夜君が―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツ

 

“六本傷”主催 立食会場

 

その光景に俺は唖然とした。

 

耀の恐ろしい食欲に。

 

いや、知ってたけどさ、まさか、ここまでとは………………

 

会場に居た人たち全員が、押し黙ってしまうほど耀の食べっぷりは凄かった。

 

だが、品無く食べてる訳で無く、ちゃんとナイフとフォークを使ってる。

 

皿を口元に寄せて食べてる訳でもない。

 

それなのに、皿からは料理が次々と消えてってる。

 

「ば、バカな!?食べるスピードが尋常じゃねえ!」

 

「まさか、収納する類のギフトを!?」

 

「いいや、そんな小細工じゃねえ!単に噛んで飲むのが早いんだッ!!」

 

絶句する料理人。

 

息を呑む観衆たち。

 

変わらず食べ続ける耀。

 

「目視すらできないほどの光速の、大食漢だと!?」

 

「おもしろいじゃねえか!」

 

「応さ!十年前の二人の英雄を思い出させてくれる戦士だ!野郎ども!食糧庫からありったけ持ってこい!全面戦争だああああああ!!」

 

周りの声によって耀はゆっくり食べるのを止めた。

 

遠慮なしに、食べるスピードを速め、鍋に火が点くより、鍋に熱が伝わるより、刃が肉を斬るよりも速く食べる。

 

明らかに全員が徹夜明けの会議のノリだ。

 

だが、ここでツッコミを入れてしまえば、耀と料理人たちはただの痛い人になってしまう。

 

リリとフェルナ、コッペリアも空気を読んで、応援してる。

 

「…………フン。なんだ、この馬鹿騒ぎは。“名無し”の屑が、意地汚く食事をしているだけではないか」

 

行き成り、会場に冷めた声が響いた。

 

「連中はアレですよ。巨龍を倒して持て囃されている猿共ですよ」

 

「ああ、例の小僧のコミュニティか。…………なるほど、普段から残飯を漁っていそうな、貧相な身形だ」

 

「“名無し”である以上、一次の栄光ですからな。収穫祭が終わる頃には皆、奴等の事など忘れております」

 

「所詮、屑は屑。如何なる功績を積み上げても“名無し”の旗に降り注ぐ栄光オナ祖ありはしないのだから」

 

「そんなことありません!!」

 

リリが叫びに観衆の視線が一斉に集まった。

 

「なんだ、この狐の娘は?」

 

「私は『ノーネーム』の同士です!貴方の侮蔑の言葉、確かにこの耳で聞きました!直ちに訂正と謝罪を申し入れます!」

 

「ふむ。君の身分は分かった。しかし、君はこの方が誰だか分かってるのか?この御方は二翼のコミュニティのリーダーにして幻獣ヒッポグリフのグリフィス様ですよ?」

 

相手が誰かと分かるとリリは一瞬たじろぐ。

 

だが、そんなリリを支えるかのようにコッペリアが前に出た。

 

「そんなこと関係ありません。謝罪を要求しているのは私達です」

 

「ふん、“名無し”如きに頭を下げていてはコミュニティの品が落ちてしまうわ」

 

「子供に喧嘩仕掛けるコミュニティの品なんて高が知れてるよ!」

 

フェルナも負けじと怒鳴る。

 

「貴様!分を弁えろ!グリフィス様は次期“龍角を持つ鷲獅子”連盟の長になられるお方!南の“階層支配者”だぞ!」

 

「ちょっと待て。それはどういうことだ?」

 

取り巻きの言葉に俺は思わず反応した。

 

隣では耀も同じような反応をしている。

 

「あの女は龍角を負ったことで霊格が縮小し、力を上手く使いこなせなくなった。実力を見込まれて議長に推薦されたのだから、失えば退陣するのが道理だろ?」

 

「……それ、本当?」

 

「何なら本人に聞いてみると言い。龍種としての誇りを無くし、栄光の未来を手折った、愚かな女にな」

 

グリフィスの、そして、取り巻きの品の無い下卑た笑い声。

 

それがたまらなく不愉快で堪らなかった。

 

「………訂正しろ」

 

「何?」

 

「サラが龍角を折ったのは、“アンダーウッド”を、仲間を守る為、霊格が縮小するのを覚悟の上だった。お前にその覚悟はあるのか?あるわけないよな。血筋のみが取り柄の三下にはな」

 

「小僧。貴様いい」

 

加減にしろっと言う前に取り巻きの男は空高く飛んでいた。

 

耀が光翼馬のブーツで取り巻きの男の腹部に輝く風を叩き込んだからだ。

 

「助けはいらないぞ」

 

「助けたんじゃない。私もムカついた」

 

「そうか」

 

その時、別の取り巻きの男が襲い掛かって来た。

 

振り下ろされた角材を片手で掴み、砕く。

 

そして、素早く男の背後を取り、首に牙を突き立てる。

 

なるべく派手に血を吸う音を出し、吸い終わるとそのまま軽く蹴り飛ばし、地面に放り出す。

 

「…………鷲獅子と、光翼馬のギフトに……………“箱庭の騎士”、だと………!?」

 

残りの取り巻きは顔面蒼白にし、後ずさりする。

 

「もう一度だけ言う」

 

「私からも一言」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「訂正しろ」」

 

最後通牒だと言わんばかりに、俺は言葉と視線に殺気を込め、耀は光り輝く旋風を掌で圧縮させる。

 

だがグリフィスは俺たちを前にしても余裕の笑みを崩さなかった。

 

「……ふん そういえばもう一匹 馬鹿なまねをして誇りを手折ったものがいたな 奴は元気にしているか? “名無し”の猿を助けるために鷲獅子の翼を失い 愚かで陳腐な姿となった我が愚弟は!!」

 

俺は愕然とした。

 

あの高潔なグリーに、こんな屑にも劣る兄がいるとは思わなかった。

 

その隙にグリフィスは距離を取り、人化の術を解いた。

 

『思い知るがいい!まがい物の小娘に誇りを捨てた愚かな吸血鬼!このグリフィス=グライフこそ第三幻想種―――“鷲獅子”と“龍馬”の力を持つ、最高決闘の混血だと!!』

 

雄叫びと共に、稲妻と旋風が吹き乱れる。

 

耀を突き飛ばす形で、後ろに下がらせ、白牙槍を構える。

 

「来る!」

 

決戦を覚悟し、戦おうとした瞬間

 

「そこまでや」

 

男の声が聞こえたと思ったら、俺の意識はそこで消えた。

 




現段階で、修也がクルーエの息子だと言うことを知ってるのは“龍角を持つ鷲獅子”連盟ではサラとガロロしか知りません。

まだ紹介していないからです。

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