問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ? 作:ほにゃー
館に着くと、何故か巨大なクレーターが出来上がっていた。
「十六夜、俺は時間稼ぎをお願いしただけで、なにも町を破壊しろとは言ってないが?」
「こうするしか、方法はなかったんだよ。それより、できたんだな?」
「ああ、役者は揃った」
そう言って俺は上空を見る。
そしてのその先には翠色の髪と蒼い瞳の人形コッペリアがいた。
「お待たせしてすみません。施術は無事終わりました。そして」
コッペリアは一枚の“契約書類”を取り出す。
そして、“契約書類意”は一枚の大きな旗になった。
真っ赤な生地に、重なり合う歯車と幻想をはらんだ蕾が刻まれている。
コミュニティ“ラスト・エンブリオ”の旗印だ。
「ゲームクリアです。“退廃の風”よ。もはや貴方では私を滅ぼせない。去りなさい“わたし”の終わらない夢、“パラドックスゲーム”は終了しました。これ以上の限界は契約違反に該当します。そうなれば如何に不倒の魔王といえど、箱庭から追放されるのを逃れられません」
凛とした声で告げるコッペリア。
だが、退廃の風は去ろうとしない。
確かにこの輝きはお前にはご馳走だな。
だが
「いい加減にしろよ。退廃の風。それ以上我儘を言うってんならことらも相応の態度を取るぜ」
十六夜が前に出て、右手から極光を放った。
十六夜から放たれた極光は夜の都市を照らした。
だが、退廃の風は光にかき乱されながらも気配を衰えはしなかった。
むしろ、徐々に歓喜を帯びてる気がした。
その時、一瞬笑みのようなものが見えた気がした。
そして、退廃の風は、傍聴したかと思うと、一直線に箱庭の中心、世界軸へと駆けた。
「………一件落着、かな?」
「………そう、かな?」
俺の隣で耀が相槌を打つ。
十六夜は“ラスト・エンブリオ”の旗印を見上げている。
遠くから白雪姫とリリがやって来た。
「皆様、ご無事ですが!?」
「おう、こっちは無事だ」
そう言って十六夜は手を広げる。
「さて、祝勝会代わりに、パンプキンキッシュでも食うか」
全員で主賓室に集まり、十六夜作のパンプキンキッシュを食べることとなった。
リリはこの前とは違って嬉しそうにしている。
切り分けられたパンプキンキッシュが目の前にお変えると同時に、隣に居たコッペリアが話しかけてきた。
「あの、少しよろしいでしょうか?」
「どうした?」
「私がこうして、この場で皆さんと食卓を囲めるのも、全ては貴方のおかげです。ありがとうございます」
「俺だけの力じゃない。リリも耀も、十六夜、飛鳥、ジャック、白雪姫。皆が頑張った。俺だけ特別に言われることは何もしてないよ」
「そうですか。……………一つ思い出したことがあります」
コッペリアは何かを語りだした。
「はるか昔に、一人の男性が私の為にギフトゲームをクリアしようとしました。でも、彼は結局クリアできませんでした。でも、彼はこういいました。」
『いつの日か必ず君をここから救ってくれる人が来る』
「その言葉通り、私を救ってくれた人がいました。貴方たちです。そして、その男性は……………貴方の御父上です」
やっぱり親父か。
まぁ、予想はしてたけど………
「彼に私は恩を感じてます。彼がいたから今日があるのでしょう。その恩にも報いるためにお願いがあります」
「私を、貴方様の眷属にしてください」
いきなりのことで少し驚いた。
「駄目……でしょうか?」
コッペリアが上目づかいで見上げてくる。
「う~ん、俺はいいが、皆はどうだ?」
十六夜達に聞く。
「いいんじゃねぇか。永久機関を組み込まれた人形が仲間だなんておもしれぇ」
「私も賛成よ。ディーンを使ってまで造り上げたのよ。仲間にでもなって貰わないと」
「私も賛成。仲間が増えるのは嬉しい」
「わ、私も勿論賛成です!」
どうやら皆に異論はないらしい。
「じゃあ、これからよろしくな。コッペリア」
「ハイ、マスター」
コッペリアは嬉しそうに笑う。
こうして新しい仲間が増えた。
そして、パンプキンキッシュも全員に行き渡り、一同が手を合わせようとした。
その時
「うわああああああああああああ!!暴れマッチョだあああああああああああ!!!」
え?マジで?
俺は思わずコッペリアに聞いた。
「………おい。あの筋肉人形、ゲームの一部じゃなかったのか?」
「ご冗談を。あれは追憶に追いやられた何某かの具現です」
「なるほど、お前の同族か」
「…………面白い冗談ですね、如何にマスターといえど、その侮辱は聞き流せません」
「そりゃおもしろい。永久機関の力とやらを拝見したいと思ってたんだ。ゲームのお題は『収穫祭前夜〜マッチョ狩りハード〜』とかなんとか」
十六夜は席を立ちあがり嬉しそうにする。
「ま、まさか私達も参加しろとか?」
「せ、せめて、パンプキンキッシュを食べ終わってから」
「そんな暇はないぞ」
「その通り。それに昔の偉人は言いました」
「「“働かざる者、食うべからず”ってな」」
おまけ
「え?フェルナを強化できる?」
「はい、実は私もギフトを持っていまして。これがそのギフトです」
コッペリアが差し出した、グラスグリーンのギフトカードには“複製術”“踊る人形撃”と書かかれたギフトがあった。
「この複製術は文字通りコピーを作れます。最も品質や霊格などはオリジナルより劣ります。コレを使って私の第三永久機関をコピーすればこの子も進化するかと」
なるほど。
第三永久機関には神珍鉄が使われてるから、劣化してもそれなりの力を宿してるわけか。
それはいい。
「じゃあ、頼めるか」
「YES」
そう言うとコッペリアはギフトを発動した。
淡い青色の光が放たれ、そして、手の中にはコッペリアのと同じ永久機関があった。
「これを埋め込んで」
コッペリアが施術を行い数分後
「できました、マスター」
そういうコッペリアの近くには、リリと同じぐらいの背丈になったフェルナがいた。
「えっと、お久しぶりです」
「ああ、久しぶりだな」
「第三永久機関を埋め込んだと同時に前の記憶も蘇ったみたいです」
フェルナは、申し訳なさそうに俺を見てくる。
「あおの、私、皆さんに酷いことを………」
あの時の事を言ってるのか
*問題児たちが異世界から来るそうですよ?乙 参照
「寂しかったんだよな」
俺はフェルナを撫でながら言う。
「前のコミュニティを残したかったって気持ちは分かる。でも、団長たちはそう思ってないと思うぞ」
あの時、団長はサーカスを終わらせ、フェルナの事を俺達にお願いしたかったんだと俺は思う。
「過去を忘れろとは言わない。過去を忘れずに、前へ進む。団長たちもそう思ってるさ」
「………修也さん」
「これからは俺達“ノーネーム”がフェルナの家族だ」
「………はい!」
「改めて、よろしくなフェルナ」
「はい!ご主人様!」
フェルナが強くなった。
フェルナにもギフトを持たせます。
そしてコッペリアの“ノーネーム”加入。
原作を変えてしまった。
だが悔いはない。
次回は蒼海の覇者編、スタート!
いよいよ、修也と耀の関係が加速し、飛鳥に十六夜のフラグが、十六夜に飛鳥のフラグが!?
次回もお楽しみに!