問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ? 作:ほにゃー
退廃の風
“徘徊する終末論(ラスト・デカダンス)”
“最果ての暴君(グリード・クラウン)”
“共食い魔王”
神仏、生命、星々の輝きを食らう生粋の魔王
風に触れた瞬間、恩恵は有無を言わさず食い殺され、霊格をすりつぶされてしまう。
以上が白雪姫から聞いた話だ。
どうやらあの風は思ってたより危険な存在らしい。
そして、今俺達は主賓室で十六夜とガロロさんを交え琴の顛末を話した。
話をした後、ガロロさんは厳しい表情をして、低いうなり声を上げた。
「今すぐその人形を屋敷に返してこい」
ガロロさんはそう決断を下した。
「そ、そんな!今あの館に戻ったらコッペちゃんが危険です!」
「だろうな。だが、このままじゃ“アンダーウッド”全域に危険が及ぶ。しかも相手は“退廃の風”倒すことが不可能とされてる怪物を相手にどうするっていうんだい?」
「そ、それは………」
反論しようとしたリリだが、結局はなにもできずに二尾を萎れさせる。
「なぁ、本当に“退廃の風”を追い返す方法は無いのか?」
俺の問いに白雪姫が口を開く。
「厳密に言えば追い返す方法はある」
「ほ、本当ですか!?」
「……修也よ、お前はあの風の色を覚えているか?」
「色?確か鈍色だったが」
「“退廃の風”はその色で桁数が変わる。黒が最も強く、白が最も弱い。あれは、五桁に該当するとみていい。“退廃の風”を追い返すには“該当する階層以上の旗印が必要”だ」
「要するに、あの“退廃の風”を追い返すには五桁以上のコミュニティの旗印が必要だってことか」
「ああ」
俺達“ノーネーム”には五桁のコミュニティに旗印を貸してもらうほどのコネクションはない。
ネズさんの所は七桁、ルイオスの所も今じゃ、五桁から六桁に下がってるし………
「どうにも……ならないんですか?」
リリはすがるように俺達を見つめてくる。
「………ゲームをクリアする」
俺は呟くように言う。
「ガロロさん、あの“退廃の風”はゲームのロジックで呼び出されたってことであってるよな?」
「………ああ、今回のケースは間違いなくそのケースだ」
「よし、じゃあ、飛鳥。ディーンはまだ持ってるか?」
「ええ。でも、片腕がまだ損壊してるから戦闘に出すには」
「いや、戦闘に出す必要は無い。あとは………」
俺はコッペリアの方を向く。
コッペリアは下を俯いたままだ。
俺はコッペリアに近づき、腰を下ろして顔を下から覗きこむようにみる。
「コッペリア。話を聞いてたか?今、お前さんの処遇について話してるんだが」
「そんなこと、話し合うまでもありません。私が追憶の檻へと帰れば済む事です」
「……確かにそれが一番安全な方法だ。だけどな、それだとリリは納得できないし、俺も納得できない」
「しかし、ゲームをクリアするなんて不可能です!それは“わたし”を完成させること!今まで幾百幾千の研究者が挑み、到達できなかった。“わたし”は人類が最後に夢見た幻想―――」
「第三永久機関、だろ?」
俺の解答にコッペリアは目を見開き絶句し、十六夜は不敵に笑み、耀と飛鳥は驚いていた。
「あ、あら?」
「……このゲームって第三永久機関が答えじゃないの?」
「違ぇよ。これは第三永久機関を完成させるまでが解答だだからこそ解答の無い……越えられない試練、“パラドックスゲーム”って訳さ」
二人の疑問に十六夜は答える。
やはり十六夜も解答に気付いてたか。
「そう……貴方たちは2000年代から召喚されたのですね。ならば知ってるでしょう?永久機関と言う、人類の夢の末路を」
「……ああ」
第三永久機関とは、文字通り、永久に動き続ける機関の事だ。
だが、これは熱力学、エントロピーの増大測が確立されたことで実現不可能とされた。
「栄光と言う輝きの残滓……それが“わたし”の正体。“わたし”は存在そのものがパラドックス。存在することを前提に永久機関の名前を与えられ、試練の恩恵として用意されながら、決して到達できない存在。“退廃の風”を止めるにはゲームをクリアし、永久機関の輝きを得るしか」
「だから、その輝きを与えるのさ」
コッペリアは再び絶句した。
「ここをどこの世界と思ってる?修羅神仏が集う神々の箱庭。人類の力では永久機関は完成しなかった。だが、恩恵を使えばそれらしい形に生まれ変わることは出来る」
そして、俺はギフトカードから一つの機械を取り出した。
「そのための布石はここにある。それに、ここで挫けちまえば、親父の名に傷がつく。それは、息子としては絶対に嫌なんでね」
俺は腕を組み、コッペリアに宣言した。
「今日からお前は永久機関コッペリアじゃない。俺達“ノーネーム”が造る新たな存在―――――――神造永久機関コッペリアだ」
決めました。
タグに十六夜×飛鳥を追加します。
追加するのは飛鳥に十六夜のフラグを建ててからにします。
では、次回もお楽しみに