問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ?   作:ほにゃー

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コラボ5話 黒ウサギVS八汰鴉

「耀!」

 

耀が倒れるのを見て俺は真っ先に耀に駆け寄った。

 

「耀、大丈夫か!」

 

耀を抱え、体を揺する。

 

「落ち着け、修也。どうやら気を失ってるだけだ。暫くすれば目も覚ますだろう」

 

十六夜に言われ安心する。

 

「修也、暫くの間、春日部を介抱しといてやれ」

 

「そうね。膝枕で介抱しなさい」

 

え?何で膝枕?

 

「男ならぐだぐだ言ってないでさっさと膝枕しなさい」

 

飛鳥はそう言って俺の背中を叩く。

 

「分かった。分かったから背中を叩くな」

 

正座をして、膝の上に耀の頭を置く。

 

…………なんか五月雨の視線が痛い………

 

兎「それでは第三回戦出場の方、前へ」

 

「じゃあ、僕が行きます」

 

そう言って八汰鴉が前に出る。

 

「八汰鴉か」

 

「かなり強そうだが誰が行く?」

 

十六夜の言葉に俺は考える。

 

後戦えるのは俺、十六夜、黒ウサギ。

 

向うは十六夜、五月雨が残ってる。

 

十六夜は十六夜が相手をするとして、ここで出るのは俺か黒ウサギ。

 

どちらも強い。

 

五月雨とはやってみないと分からないが、八汰鴉ならなんとか倒せると思う。

 

なら、俺が出るべきか?

 

いや、黒ウサギが五月雨に勝てるとは思えない。

 

となると向うの十六夜の相手は黒ウサギがやって、十六夜が五月雨の相手をするに変えた方がいいか?

 

「ここは黒ウサギが行きます」

 

「え?いいのか?」

 

「はい。確かにあの人は強い。それは黒ウサギにもわかります。修也さんが何を考えてるのかもわかります。ですが、私にも“箱庭の貴族”としてのプライドがあります。絶対に負けません」

 

黒ウサギは真剣な瞳で見つめてくる。

 

「分かった。なら黒ウサギにここは任せる」

 

「はい。では行ってきます!」

 

黒ウサギは小走りに中央に移動する。

 

「では、八汰鴉さん、お手柔らかにお願いします」

 

「黒ウサギ……さん、が相手?」

 

「YES!」

 

「………そうか、それじゃあよろしく」

 

「では第三回戦 黒ウサギVS八汰鴉スタートです!」

 

黒ウサギの開始の合図と共に黒ウサギは飛び出し、八汰鴉に拳を当てる。

 

そして、今度は蹴りを放ち、すかさずまた拳を放つ。

 

「黒ウサギが押してるわ!」

 

飛鳥は黒ウサギが怒涛の攻撃を繰り返し、八汰鴉に反撃をさせてないのを見て声を上げる。

 

「いや、そいつは違うぜ。お嬢様」

 

どうやら十六夜は気づいてるみたいだな。

 

「ああ、あの八汰鴉って奴、本気じゃない」

 

「おまけに黒ウサギの攻撃は全て取ってるように見えるが、あいつは全て受け流してる。ありゃ、ダメージ零だ」

 

「だが、その割にはカウンター技をする気配もないし、攻める気配もない」

 

「おそらくだが、アイツ、相手が黒ウサギだから手を足さずに黒ウサギの体力の消耗を狙ってる」

 

「でも、どうして?」

 

「こっちの黒ウサギと八汰烏は付き合ってるからな。異世界の黒ウサギとはいえ、黒ウサギとは戦いたくないんだろう」

 

なんというか随分自分勝手な理由だな。

 

黒ウサギも薄々感づいているな。

 

そこで、黒ウサギは攻撃の手を止めて一歩下がる。

 

「どうしたんですか?」

 

「八汰烏さん、貴女は本気じゃありませんね」

 

「……はい、本気じゃありませんよ」

 

「何故です?いくら温厚な黒ウサギでも真剣勝負の場で本気で来られないのは些か不満があります」

 

「………僕は黒ウサギさんとは戦いたくない。それは異世界の黒ウサギさんでも同じです。僕は黒ウサギさんを傷つけたくない。それに、君も分かるだろ?僕と君とじゃ、実力の差がありすぎる。これ以上はいくらやっても無駄だ。大人しくここは降参してくれないか?でないと、僕も本気で行かざるを得ない」

 

そこで八汰鴉は殺気を出す。

 

飛鳥は八汰鴉の殺気にビビり足をすくめている。

 

十六夜は平然としているが冷や汗が流れている。

 

俺も、体から震えが止まらない。

 

気絶しているが耀も感じ取ったのか俺の服の裾を掴んだ。

 

「舐められたものですね」

 

見ると黒ウサギは怯まず凛と立っていた。

 

「そんなことで黒ウサギが退くとでも?大間違いです。既に私達は二敗しています。そして、ここで黒ウサギが降参したら。私達の負けは決まってしまいす。黒ウサギは必ずここで勝ち、十六夜さんと修也さんという希望に繋げなくてはなりません。なにより、“箱庭の貴族”としてここまで舐められるのは気分が悪いです。黒ウサギを過小評価しないでください」

 

いつになくやる気に満ち溢れている。

 

一体どうしたんだ?

 

「………そうか、なら、本気で行くよ!」

 

するとその瞬間、八汰鴉の姿が変わった。

 

背中には片翼だけで八汰鴉の身長と同じぐらいの長さの羽が生えた。

 

「僕は中国の怪鳥“鳩(ぜん)”の血を引くハイブリットの幻獣なんだ」

 

そう言って翼を振るうと、羽が舞い散る。

 

黒ウサギは直ぐに動き、羽を回避する。

 

だが、一歩間に合わなく、体に羽が触れる。

 

「触れたね。今のは遅効性の麻痺毒。直に君は動けなくなる。そして、その毒は動けば動くほど毒の周りも早くなる」

 

まずい。

 

八汰鴉と黒ウサギを比べると力は向うが上。

 

だが、黒ウサギはそれを補うスピードがある。

 

いま、あのスピードを封じられた今、黒ウサギに撃てる手は少ない。

 

「それでも、黒ウサギは前に進みます!」

 

そう言うと黒ウサギは特攻を仕掛ける。

 

今の黒ウサギに打てる手は、“叙事詩・マハーバーラタの紙片”でインドラの槍を召喚し、倒す方法だ。

 

だが、それをするには相手の懐に潜り込まないといけない。

 

八汰鴉の反応速度を考えると、至近距離でぶつけないといけない。

 

そして、八汰鴉との距離が残り2mという所で八汰鴉は手に陽の光をを集めそれを放った。

 

そう言えば、五月雨から聞いたが八汰鴉は“神の導き手”とからしく、太陽となって神武天皇を導いた功績で“導の陽光”とか言うギフトが使えるそうだ。

 

太陽光線を放ち、周囲を照らし、光を浴びた者の行くべき未来を見せるギフトらしいが、それを応用してレーザーを撃つことや熱を操ることもできるらしい。

 

あれは太陽の光を集めてレーザーとして撃とうとしてるんだろう。

 

あれをくらったら一溜りもない。

 

(こうなれば、黒ウサギさんは太陽の鎧を出さずにはいられない。インドラの槍は勝つための布石だろうけど、自分の身を守らないといけないから太陽の鎧を出すはずだ。攻撃を防ぐために使えば、勝つのはもう無理。仮に出さなくても僕の勝ち)

 

そして、八汰鴉の放ったレーザーは、黒ウサギ目掛け飛ぶ。

 

「擬似神格解放!穿て“軍神槍・金剛杵”!」

 

なんと“擬似神格・金剛杵”の神格を解放した。

 

“アンダーウッド”で戦った時も使い、半壊状態で見つかり半泣きしてたのを覚えてる。

 

そして、またしても神格を解放するとは…………

 

それのおかげで、八汰鴉のレーザーは相殺に成功した。

 

「出でよ!インドラの槍!」

 

“叙事詩・マハーバーラタの紙片”でインドラの槍を召喚し、そして…………

 

「貫け!」

 

黒ウサギの一撃が、八汰鴉の腹に入る。

 

兎「!?八汰鴉君!?」

 

向うの黒ウサギが慌てて駆け寄る。

 

そして

 

「…八汰鴉、戦闘続行不能!黒ウサギの勝利!」

 

向うの黒ウサギがそう宣言する。

 

それと同時に大慌てて八汰鴉の手当てを始める。

 

愛は偉大なり。

 

「皆さん!勝ちまひしゃよぉ~~」

 

最後の言葉の呂律がうまく回らず、倒れる。

 

どうやら八汰鴉の麻痺毒が聞き始めたみたいだ。

 

毒をどうにかしてもらおうにもその本人は気絶してるし、暫くはこのままか。

 




次は十六夜VS十六夜

後、次の話を含めて三話で終わる予定です。

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