問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ?   作:ほにゃー

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第6話 ギフトネームが分かるそうですよ?

「水平に廻る太陽……そうか、白夜と夜叉。あの水平廻る太陽やこの土地は、お前を表現しているってことか」

 

「如何にも。この白夜の湖畔と永遠に沈まぬ太陽。これこそ私がもつゲーム盤の一つだ」

 

こともなげにこたえる白夜叉。

 

この広大な土地がゲーム盤かよ。

 

笑えないぜ。

 

「こ、これが唯のゲーム盤!?そんなデタラメな…」

 

飛鳥も驚く。

 

「……して、おんしらの返答は?挑戦なら手慰み程度に遊んでやろう。しかし、“決闘”を望むなら……魔王として命と誇りの限り戦おうではないか」

 

白夜叉の目は怪しく輝いており、そして、言葉は威圧的だ。

 

どう見ても白夜叉との“決闘”の勝敗は一目瞭然だ。

 

俺も、耀も、飛鳥も、そして、十六夜までもが黙り込む。

 

しばらく沈黙が続き、十六夜が手を上げた。

 

「まいった。やられたよ、降参だ」

 

「ふむ?それは決闘ではなく試練を受けるということかの?」

 

「ああ、アンタの力はよくわかった。今回は試されてやるよ。魔王様」

 

プライドが高い十六夜にとって一度言った言葉を撤回するのは悔しいのだろう。

 

『試されてやる』ってのは最大限の譲歩ってところか。

 

そんな十六夜をかわいい意地の張り方だといって白夜叉は笑う。

 

「他の童たちも同じか?」

 

「……ええ、私も試されてあげてもいいわ」

 

「同じく」

 

苦虫を噛み潰したような顔で返事をする.

 

「……そこの、黒いコートを着とるおんしはどうする?」

 

その時、一瞬白夜叉の目が面白いものを見つけた子供のような目をした気がした。

 

「ああ、試されるよ。でもいつか、決闘を望むぜ」

 

「そうか」

 

白夜叉との会話を終えると黒ウサギがまた文句を言い始めた。

 

「お互い相手を選んで下さい!!それに白夜叉様が魔王だったのはもう何千年も前のことじゃないですか!!」

 

「なに?じゃあ元魔王様ってことか?」

 

「はてさてどうだったかな?」

 

元魔王か。

 

ということは今の姿は仮の姿ってことか。

 

ケラケラと白夜叉が笑っていると遠くから甲高い声が聞こえた。

 

その声に耀はいち早く反応した。

 

「なに、今の鳴き声、初めて聞いた」

 

「ふむ、あやつか。おんしら三人にはうってつけかもしれんの」

 

三人?

 

一人足りないぞ。

 

「嘘っ・・・本物!?」

 

耀が歓喜と驚愕に溢れた声を上げたので何事かと思い顔を上げると

 

「こりゃ、すげぇー」

 

そこには、鷲の翼と獅子の下半身を持った幻獣。

 

グリフォンがいた。

 

「如何にも。こやつこそ鳥の王にして獣の王――――グリフォンだ」

 

白夜叉がグリフォンを手招きするとグリフォンは白夜叉に近づき深く頭を下げた。

 

「さて、肝心のギフトゲームだがの、こんなゲームはどうじゃ?」

 

白夜叉が考えたギフトゲームはこれだった。

 

『ギフトゲーム名:“鷲獅子の手綱”

 プレイヤー一覧 逆廻 十六夜

          久遠 飛鳥

          春日部 耀

・クリア条件 グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う。

・クリア方法 “力”“知恵”“勇気”の何れかでグリフォンに認められる。

・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、

ギフトゲームを開催します。

                            “サウザンドアイズ”印』

 

ちょっと待て。

 

「おい、白夜叉。俺の名前が無いぞ」

 

「おんしには別のギフトゲームを用意する。そこでゆっくりと見学でもしとれ」

 

白夜叉の言葉に従い見学に徹する。

 

てか、あの時一人足りなかったのはこういうことか。

 

「それで、誰がこの試練に挑戦をする?」

 

「私がやる」

 

『お、お嬢・・・・大丈夫か?なんや獅子の旦那より遥かに怖そうやしデカイけど』

 

「自信があるようだがこれは結構な難物だぞ?失敗すれば大怪我ではすまんが」

 

「大丈夫、問題無い」

 

耀の目にはグリフォンへの恐れもないし、ましてや勝利を確信している目でもない。

 

まるで、長年探していた宝物を見つけた子供のようにキラキラと輝いている。

 

「OK。先手は譲ってやる。失敗するなよ」

 

「気を付けてね、春日部さん」

 

「うん、頑張る」

 

呆れたような笑みを浮かべ十六夜と飛鳥は耀を応援する。

 

「耀」

 

「うん?」

 

「このコート貸すぜ。流石にその恰好で山頂付近は寒すぎる」

 

「ありがとう」

 

耀にお気に入りのコートを渡し離れる。

 

耀は俺のコートを羽織、グリフォンに近づく。

 

「えっと初めまして、春日部耀です」

 

『!?………我らの言葉を解するか、娘よ』

 

グリフォンの声が聞こえた。

 

どうやら幻獣の声も聞こえるらしい。

 

「私と誇りを賭けて勝負しませんか?」

 

『何?』

 

「この地平を大きく一周する間に背に乗った私を振るい落せば貴方の勝ち、落とせなければ私の勝ち……どうかな?」

 

『確かに娘一人振るい落せないならば私の名誉は失墜するだろう。では娘よ誇りの対価としてお前は何を賭す?』

 

グリフォンは如何わしげに大きく鼻を鳴らして尊大に問い返す。

 

「命を賭けます」

 

即答だった。

 

耀の突拍子もない返答に黒ウサギと飛鳥から驚きの声が上がる。

 

「か、春日部さん、本気なの!?」

 

「だ、駄目です!!」

 

「貴方は誇りを賭ける。私は命を賭ける。もし、転落して生きていても私は貴方の晩御飯になります。それじゃ駄目かな?」

 

『………ふむ』

 

グリフォンは少し考える。

 

耀の提案に黒ウサギと飛鳥はますます驚く。

 

「双方、下がらんか。これはあの娘から切り出した試練だぞ」

 

「ああ。無粋なことはやめとけ」

 

白夜叉と十六夜が二人を制する。

 

「そういう問題ではありません!同士にこんな分の悪いゲームをさせるわけには」

 

「おい、黒ウサギ。少し黙ってろ」

 

「しゅ、修也さん!このゲームは一歩間違えれば耀さんが死んでしまうんですよ!そうなってはからでは遅いんですよ!」

 

「同士だってんなら耀を信じてやれ。信じてやることが同士への態度だ。それ以外の態度は相手を信頼してないってことだ。同士だと思ってんなら信じてやれ」

 

俺の言葉に黒ウサギは、渋々と納得して下がる。

 

 

耀は、グリフォンに跨り手綱を握っていた。

 

「始める前に一言だげ………私、貴方の背中に跨るのが夢の一つだったんだ」

 

『――――――そうか』

 

そして、ゲームが始まった。

 

なるほど。

 

一瞬見えたが、グリフォンは翼で飛ぶんじゃないんだな。

 

脚で空を踏みしめるように飛んでいる。

 

旋風を操るギフトか。

 

グリフォンが山を迂回し、戻ってきた。

 

「戻ってきました!」

 

「後、もう少し……」

 

そいて、グリフォンはゴールをした。

 

耀を乗せて。

 

「ゴールです!」

 

「春日部さんの勝ちだわ!」

 

だが、ゴールした瞬間、手綱を離してしまい、耀は慣性にのまま落ちていく。

 

『何!?』

 

「春日部さん!?」

 

助けに行こうとした黒ウサギを十六夜が掴む。

 

「は、離し――」

 

「待て!まだ終わってない!」

 

十六夜の言う通りまだ終わっていなかった。

 

耀の体は次第にゆっくりと落ち始め、

 

最後は空から見えない階段を使って降りて来る感じだった。

 

耀のギフトは動物との対話意外にその動物の特性を貰うことができるのか。

 

だが、疲労していたのか、まだ、慣れていないのかバランスを崩し、

 

また落ち始めた。

 

地上まで高さは約10m。

 

間に合う。

 

黒ウサギや飛鳥が慌てる中俺は冷静に駆け出し、背中から黒い翼を出し飛んだ。

 

「へ~」

 

「なんと!?」

 

「「はっ?」」

 

上から十六夜、白夜叉、黒ウサギと飛鳥だ。

 

落ちる耀に向かいお姫様抱っこで受け止める。

 

「大丈夫か?」

 

「う、うん……ありがとう」

 

地面に降り立つと三毛猫が駆け出して飛びついてきた。

 

『お嬢!怪我はないか!?』

 

「大丈夫。修也のコートのお陰で平気だよ」

 

『小僧!恩にきるで!』

 

「気にすんなよ」

 

耀からコートを返してもらうと十六夜が近づいてきた。

 

「やっぱりな。お前のギフトって、他の生き物の特性を手に入れる類だったんだな」

 

十六夜が笑みを浮かべながら耀に言う。

 

軽薄な笑みに、むっとしたような声音で耀が返す。

 

「……違う。これは友達になった証。けど、いつから知ってたの?」

 

「ただの推測。お前、黒ウサギと出会った時に“風上に立たれたら分かる”とか言ってたろ。そんな芸当は人間にはできない。だから春日部のギフトは他種とコミュニケーションをとるわけじゃなく、他種のギフトを何らかの形で手に入れたんじゃないか……と推察したんだが、それだけじゃなさそうだな。あの速度で耐えられる生物は地球上にいないだろうし?」

 

『見事。お前が得たギフトは、私に勝利した証として使って欲しい』

 

「うん。大事にする」

 

「いやはや大したものだ。このゲームはおんしの勝利だの。……ところで、おんしの持つギ

フトだが。それは先天性か?」

 

「違う。父さんに貰った木彫りのおかげで話せるようになった」

 

「木彫り?」

 

首を傾げる白夜叉に三毛猫が説明する。

 

『お嬢の親父さんは彫刻家やっとります。親父さんの作品でワシらとお嬢は話せるんや』

 

「ほほう………彫刻家の父か。よかったらその木彫りというのを見せてくれんか?」

 

頷いた耀は、ペンダントにしていた丸い木彫り細工を取り出し、白夜叉に差し出す。

 

白夜叉は渡された手の平大の木彫りを見つめて、急に顔を顰めた。

 

十六夜、飛鳥もその隣から木彫りを覗き込む。

 

「複雑な模様ね。何か意味があるの?」

 

「意味はあるけど知らない。昔教えてもらったけど忘れた」

 

「………これは」

 

木彫りは中心の空白を目指して幾何学線が延びるというもの。

 

白夜叉だけでなく、十六夜、黒ウサギも鑑定に参加する。

 

正直俺にはさっぱりだ.

 

表と裏を何度も見直し、表面にある幾何学線を指でなぞる。

 

黒ウサギは首を傾げて耀に問う。

 

「材質は楠の神木……? 神格は残っていないようですが……この中心を目指す幾

何学線……そして中心に円状の空白……もしかしてお父様の知り合いには生物学者

がおられるのでは?」

 

「うん。私の母さんがそうだった」

 

「生物学者ってことは、やっぱりこの図形は系統樹を表しているのか白夜叉?」

 

「おそらくの……ならこの図形はこうで……この円形が収束するのは……いや、これは……これは、凄い! 本当に凄いぞ娘!! 本当に人造ならばおんしの父は神代の大天才だ! まさか人の手で独自の系統樹を完成させ、しかもギフトとして確立させてしまうとは! これは正真正銘“生命の目録”と称して過言ない名品だ!」

 

「系統樹って、生物の発祥と進化の系譜とかを示すアレ?でも母さんが作った系統樹の図は、もっと樹の形をしていたと思うけど」

 

「うむ、それはおんしの父が表現したいモノのセンスが成す業よ。この木彫りをわざわざ円形にしたのは生命の流転、輪廻を表現したもの。再生と滅び、輪廻を繰り返す生命の系譜が進化を遂げて進む円の中心、すなわち世界の中心を目指して進む様を表現している。中心が空白なのは、流転する世界の中心だからか、世界の完成が未だに視えぬからか、それともこの作品そのものが未完成の作品だからか」

 

白夜叉の興奮具合が半端ないな。

 

そんなに凄いんだな。

 

「うぬぬ、凄い。凄いぞ。久しく想像力が刺激されとるぞ! 実にアーティスティックだ!おんしさえよければ私が買い取りたいぐらいだの!」

 

「それはダメだろ」

 

白夜叉の手から耀のペンダントを奪い取り耀に渡す。

 

「それじゃあ、次は俺だな」

 

「ああ、その通りだ。内容はコレだ」

 

 

 

『ギフトゲーム名:必勝の一撃

プレイヤー一覧:月三波・クルーエ・修也

・クリア条件 白夜叉に一撃を与える

・クリア方法 ギフトを使用し、ホストに一撃与える。

・敗北条件  降参かプレイヤーが上記の勝利条件を満たせなかった場合

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、

ギフトゲームを開催します。

                            “サウザンドアイズ”印』』

 

そう来るか。

 

正直面倒だな。

 

「さぁ、おんしの力見せて貰おうかの」

 

白夜叉は不敵に笑う。

 

仕方がない。

 

やるか。

 

「誰か少し手伝ってくれないか?」

 

十六夜たちに顔を向け聞く。

 

「私が手伝う」

 

耀が手を上げてくれた。

 

「ありがとな」

 

「コートと助けてくれたお礼」

 

そう言って耀は近づいてくる。

 

「耀………ゴメン」

 

「え?」

 

耀に謝り、そして、耀の首筋に牙を立てる。

 

「「「は!?」」」

 

これには十六夜も驚き目を見開いている。

 

だが、そんなことどうでもいい。

 

そのまま、牙であけた傷口から血を吸う。

 

「あ………っん!」

 

耀は頬を真っ赤にし、羞恥と変な感覚を堪えている。

 

そろそろか。

 

傷口から口を離し、最後に傷を一舐めする。

 

「あひゃ!?」

 

首筋を舐められ耀が変な声をだす。

 

舐められた傷口は見る見ると塞がった。

 

「言っただろ。ゴメンって」

 

「!?…………ふっ!!」

 

耀が拳を握り俺の頬を殴る。

 

かなり痛いな。

 

「……ごめんなさい」

 

「今度、埋め合わせしてもらうから」

 

そう言って耀は飛鳥の隣に戻る。

 

「さてと、準備はいいぜ。白夜叉」

 

「やはり、おんし………よかろう。ではギフトゲーム、スタートだ」

 

その瞬間、俺は白夜叉の目の前に立ち、拳を前に突き出した。

 

だが、拳は空を切った。

 

「中々のスピードと威力のある拳じゃの」

 

「あんたこそ、早すぎるぜ」

 

後ろに立っている白夜叉に今度は後ろを見ずに蹴る。

 

だが、それも交わされる。

 

「フッフッフッ、ハッハッハ、アーハッハッハ素晴らしいぞ、小僧、いや、修也!誇れ、私をここまで楽しませてくれたのはおんしが久々じゃ。それに敬意を称し、少しばかし本気でいこう」

 

そう言うと、白夜叉はどこからとなく白い槍を出した。

 

「来い!!修也!!元魔王、白夜叉が相手を致す!」

 

槍を片手に白夜叉が構える」。

 

俺も足を折り、そしてばねのように走り出す。

 

「いくぞ!白夜叉!」

 

 

 

もはや、挑戦ではなく決闘並だった。

 

あれから30分程経ち、白夜叉に隙を見つけ、

 

そこを狙い勝利した。

 

今、思うとあの隙はわざとにも思える。

 

「よくやった。褒めてやろう」

 

「とにかく俺もクリアだな」

 

「そうじゃ、勝利の褒美にこの槍をやろう。名は『白牙槍』材質は“金剛鉄”。昔、ある鍛冶職人が友情の証として作ったものだが、おんしが、持つ方がよかろう」

 

「いいのか?大事なものなんだろ?」

 

「良き武具は良き使用者が使ってこそ価値がある。その槍はおんしにこそ相応しかろう」

 

「そうか。なら、遠慮なく頂こう」

 

白夜叉から槍を受け取ると黒ウサギが驚きだした。

 

「どういうことですか!?先ほどのギフトはまるで吸血鬼のようですし、修也さんは吸血鬼なのですか!?それと、白夜叉様、金剛鉄の槍をそんな簡単にあげるとは何をお考えですか!?金剛鉄の価値は知ってますよね!?」

 

「少し静かにしろ。その槍は私のだ。どうするかは、私の自由だ。修也の力は、修也がおしえるだろう。それより、グリフォンの試練と私の試練を受けて見事クリアしたおんし達に“恩恵”を与える。ちょいと贅沢な代物だが、コミュニティ復興の前祝いとしては丁度好かろう。」

 

そう言って手をたたくと俺たちの前に四枚のカードが現れた。

 

十六夜はコバルトブルーで飛鳥はワインレッド、耀はパールエメラルド、俺はミッドナイトブルーのカードだ。

 

それぞれのカードに

 

逆廻十六夜・ギフトネーム“正体不明(コード・アンノウン)

 

久遠飛鳥・ギフトネーム“威光”

 

春日部耀・ギフトネーム“生命の樹(ゲノム・ツリー)”“ノーフォーマー”

 

月三波・クルーエ・修也

 

ギフトネーム“忠義の吸血騎士(ロード・オブ・ヴァンパイアナイト)

 

と書かれている。

 

てか、このカードはなんだ?

 

気になっていると黒ウサギがまた声を上げて驚く。

 

「ギフトカード!」

 

「お中元?」

 

「お歳暮?」

 

「お年玉?」

 

「商品券?」

 

「ち、違います!というかなんで皆さんそんなに息が会っているのです!?このギフトカードは顕現しているギフトを収納できる超高価なカードですよ!耀さんの“生命の目録”や修也さんの“白牙槍”だって収納可能で、それも好きな時に顕現できるのですよ!」

 

「つまり素敵アイテムってことでオッケーか?」

 

「だからなんで適当に聞き流すんですか!あーもうそうです、超素敵アイテムなんです!」

 

もう投げやり気味に文句を言う黒ウサギだった。

 

「我らの双女神の紋のように、本来はコミュニティの名と旗印も記されるのだが、おんしらは”ノー

ネーム”だからの。少々味気ない絵になっているが、文句は黒ウサギに言ってくれ」

 

「ふぅん………もしかして水樹って奴も収納できるのか?」

 

十六夜は黒ウサギの持つ水樹にカードを向ける。

 

すると水樹は光の粒子となってカードの中に呑み込まれた。

 

見ると十六夜のカードは溢れるほどの水を生み出す樹の絵が差し込まれ、

 

ギフト欄の“正体不明”の下に“水樹”の名前が並んでいる。

 

俺も試しに白牙槍にカードを向けると槍が粒子になり

 

忠義の吸血騎士(ロード・オブ・ヴァンパイアナイト)”の下に“白牙槍”と書かれた。

 

へぇ~、面白いな。

 

「おお?これ面白いな。もしかしてこのまま水を出せるのか?」

 

「出せるとも。試すか?」

 

「だ、駄目です!水の無駄遣い反対!その水はコミュニティのために使ってください!」

 

 

チッ、とつまらなそうに舌打ちする十六夜。

 

黒ウサギはまだ安心できないような顔でハラハラと十六夜を監視している。

 

「そのギフトカードは、正式名称を“ラプラスの紙片”、即ち全知の一端だ。そこに刻まれるギフトネームとはおんしらの魂と繋がった”恩恵”の名称。鑑定はできずともそれを見れば大体のギフトの正体が分かるというもの」

 

なるほど。

 

これは、便利だな。

 

「へえ?じゃあ俺のはレアケースなわけだ?」

 

十六夜のカードには“正体不明”の文字。

 

何これ?

 

白夜叉は驚き十六夜のギフトカードを取り上げる。

 

「もしかしてバグか?」

 

「いいやありえん、全知である“ラプラスの紙片”がエラーを起こすはずなど」

 

「何にせよ、鑑定は出来なかったってことだろ。俺的にはこの方がありがたいさ」

 

十六夜がカードを取り上げる。

 

だが、白夜叉は納得できないように怪訝な瞳で十六夜を睨む。

 

それほどギフトネームがありえないことなのか。

 

十六夜の能力はギフトの無効か?

 

いや、最初に小石を投げたときの威力を考えると普通の人間が出せる威力を超えてる。

 

あれもギフトだとすると矛盾が起きる。

 

まさしく、正体不明だな。

 

 

 

 

 

「今日はありがとう。また遊んでくれると嬉しい」

 

「あら、駄目よ春日部さん。次に挑戦するときは対等の条件で挑むものだもの」

 

「ああ。吐いた唾を飲み込むなんて、格好付かねえからな。次は渾身の大舞台で挑むぜ」

 

「いつか、本気のアンタと戦って正々堂々と俺たちが東側最強を証明してやるよ」

 

「ふふ、よかろう。楽しみにしておけ。………ところで」

 

白夜叉は微笑を浮かべるがスっと真剣な表情で俺達を見てくる。

 

「今さらだが、一つだけ聞かせてくれ。おんしらは自分達のコミュニティがどういう状況にあるか、

よく理解しているか?」

 

「ああ、名前と旗の話か?それなら聞いたぜ」

 

「なら、“魔王”と戦わねばならんことも?」

 

「聞いてるわよ」

 

「………では、おんしらは全てを承知の上で黒ウサギのコミュニティに加入するのだな?」

 

横目で黒ウサギがを見てみると黒ウサギの目は俺達から視線をそらしていた。

 

「そうよ。打倒魔王なんてカッコいいじゃない」

 

「“カッコいい”で済む話ではないのだがの………全く、若さゆえなのか。無謀というか、勇敢というか。まあ、魔王がどういうものかはコミュニティに帰ればわかるだろ。それでも魔王と戦う事を望むというなら止めんが………そこの娘二人。おんしらは確実に死ぬぞ。」

 

予言をするかのように言う。

 

サウザンドアイズは特殊な瞳のギフトを所有する奴がいるコミュニティらしいからな

 

信憑性抜群だな。

 

「魔王の前に様々なギフトゲームに挑んで力を付けろ。小僧と修也はともかく、おんしら二人の力で魔王のゲームは生き残れん。嵐に巻き込まれた虫が無様に弄ばれて死ぬ様は、いつ見ても悲しいものだ。」

 

「……ご忠告ありがとう。肝に銘じておくわ。次は貴女の本気のゲームに挑みに行くから、覚悟しておきなさい」

 

「ふふ、望むところだ私は三三四五外門に本拠を構えておる。いつでも遊びに来い。………ただし、黒ウサギをチップに賭けてもらうがの」

 

「嫌です!」

 

黒ウサギが即答する。

 

………黒ウサギをチップに白夜叉に挑めば凄いものが手に入りそうだな。

 

「つれない事を言うなよぅ。私のコミュニティに所属すれば生涯を遊んで暮らせると保証するぞ?三

食首輪付きの個室も用意するし」

 

それ………ペット扱いだな。

 

「三食首輪付きってソレもう明らかにペット扱いですから!」


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