問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ?   作:ほにゃー

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番外編 異邦人のお茶会

巨龍を倒してから一週間が経った。

 

しかし、戦いの爪痕のせいで収穫祭はすぐに再開できる状態ではなく、現在は復興作業を行っている。

 

俺達“ノーネーム”も収穫祭が早く出来るように“アンダーウッド”に残って、復興作業を手伝っている。

 

「だ、大丈夫かな………」

 

「落ち着け、十六夜も鬼じゃないんだ。ちゃんと事情を説明すれば許してくれる」

 

今、俺は十六夜の部屋の前に耀といる。

 

耀がヘッドホンの件で十六夜にどうしても謝りたいと言ってたのだが、どうも一人で行くのに勇気が出ない為、俺が付き添うことになった。

 

「おい、十六夜、入っていいか?」

 

「修也か?いいぜ、鍵は開いてるぞ」

 

扉を開けて入ると十六夜はベットの上で胡坐を掻いてた。

 

「なんだ、春日部も一緒か?………で、要件は何だ?」

 

「お前なら、もう気づいてるだろ」

 

「さて、なんのことやら?」

 

白々しく分からないふりをする。

 

耀は床に正座をして座る。

 

「えっと、十六夜のヘッドホンのことなんだけど、巨人族の襲撃の時に壊れちゃった」

 

「待て、順序が違う。持ち出した経緯を話せ」

 

十六夜も別に怒ってるわけじゃない。

 

ただ、弁明するなら順序を立てて話して欲しいんだろう。

 

耀は、ヘッドホンを三毛猫が持ち出したこと、巨人族が収穫祭に襲撃に来たこと、その時にヘッドホンが宿舎の下敷きになったことを話した。

 

「話を聞く限り、春日部に落ち度はないと思うが」

 

確かに、これは三毛猫が勝手にやったことで、耀の責任ではない。

 

ヘッドホンが壊れたことも運が悪かっただけ。

 

俺も耀にそう言ったんだが

 

「違う。責任の所在は三毛猫の飼い主の私にある。このまま話を濁すのはお互いによくない。それに、あのヘッドホンは十六夜の知人が作ったものだって聞いた。なら、尚更筋を立てないといけない」

 

こう言ってきかないんだよな。

 

「そう言う割には謝りに来るのが遅かったな」

 

「うっ」

 

「まぁ、それは仕方がないだろ。耀にも心の準備とか用意があったんだ」

 

「用意?」

 

「うん。ヘッドホンの代わりを用意したんだけどそれを無くしちゃって、それを探してたらいつ間にか一週間が経ってた。それで、結局代わりの物が用意できなかったんだけどいつまでも問題を先延ばしにするのも失礼だから埋め合わせをこの収穫祭でやろうと思ったんだけど…………どうかな?」

 

小首を傾げて十六夜の反応を見る耀。

 

十六夜はというと呆れ半分、感心半分と言った表情をしてた。

 

「別に異論はねぇよ。だけど春日部がそこまで考えていたのは驚きだ。お前ってもう少し周りを顧みない印象だったんだが」

 

「今自己改革中。新しい私に乞う御期待」

 

親指を立てて胸を張る耀を見て俺は思わず笑みが出た。

 

十六夜も同じらしく、笑っていた。

 

「それと、十六夜。ここに来たのはもう一つ用事があるんだ」

 

「うん。飛鳥とも話したんだけど………私達ってお互いの事知らなさすぎる気がして。私達ってそう言うことって、あまり話さないでしょ?」

 

「そこで、今から皆で親睦会をしようと思う」

 

「そろそろ、飛鳥が紅茶を持ってくると思うんだけど」

 

耀が口にした瞬間、扉がノックされる。

 

「三人共、話は終わった?紅茶を入れてきたから、一息つかない?」

 

「飛鳥、ナイスタイミングだ」

 

「鍵なら開いてるぜ」

 

「そう。でも、お盆で両手が塞がってるから、開けてくれないかしら?」

 

「「「嫌だッ!!!」」」

 

「そう。ありがと」

 

……………………

…………………………

 

…………………………………

 

「三人共、話は終わった?紅茶を入れてきたから、一息つかない?」

 

「飛鳥、ナイスタイミングだ」

 

「鍵なら開いてるぜ」

 

「そう。でも、お盆で両手が塞がってるから、開けてくれないかしら?」

 

「了解」

 

耀が立ち上がり扉を開ける。

 

そこには青筋を浮かべた飛鳥が居た。

 

弄るタイミングを間違えたか…………

 

耀もやってしまったっと思ったらしく扉を開けたまま固まってしまった。

 

「どうしたの春日部さん。早く道を開けて下さらない?」

 

「りょ、了解」

 

大股で部屋に入り備え付けのテーブルにお盆を置き、椅子に腰を下ろす。

 

「飛鳥も来たことだし、第一回異邦人の親睦会を開催するか」

 

「「イエーイ」」

 

棒読みで喜ぶ女性陣に、呆れる十六夜。

 

「ま、人の部屋で開催するのはいいとして、主催はそっちなんだから進行はそっちで頼むぜ」

 

「勿論。お題も決めてきたわ」

 

「うん。親睦会の第一回目のお題は」

 

「“自分御時代の生活観”だ」

 

思っていたより、実のありそうなお題に十六夜の目に好奇心の火が灯った。

 

「それじゃあ、時代順に飛鳥からだ」

 

飛鳥の話としては飛鳥の家、久遠家は日本でも五本の指に入るぐらいの規模を持った財閥だそうだ。

 

そのことに十六夜が何か気になったらしいがそれ以上何も聞かなかった。

 

十六夜の話では“アンダーウッド”並の絶景を話した。

 

どちらも、中々に興味深かった。

 

「次は修也だな」

 

「どんな話が聞けるかしら」

 

「楽しみ」

 

期待しまくりだな。

 

「でも、時間軸的に俺は十六夜より未来、耀より過去の時代だから、十六夜とかなり被る所があるんだが…………」

 

どうするか……………

 

「じゃあ、修也の母親について話せよ」

 

母さんについて?

 

「確かに、修也君のお父さんの話はよく聞くけどお母さんの話は聞かないわね」

 

「聞かせて」

 

「母さんについてね~…………これは白夜叉に聞いた話なんだが、実は母さんも箱庭出身なんだ」

 

「へ~、そんで?どんな人なんだ?」

 

「ああ、元二桁の魔王コミュニティのリーダーだったらしい」

 

「「「……………は?」」」

 

まぁ、そう言う反応するよね。

 

俺も最初聞いたときはそんな反応だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白夜叉が言うには当時、親父の名前は箱庭の上層にまで響いてたそうだ。

 

それを聞いた母さんが、「生意気なやつね。少し殺ってくる」って感じに親父の寝首を掻きに行った。

 

そして、一目惚れしたらしい。

 

それで、親父に会った瞬間告白。

 

そしたら親父が「なら、全てを捨てる覚悟はあるか?」って聞いたら「もちろんです!」って言ったんだ。

 

すると母さんは自分のコミュニティに帰ってコミュニティ解散宣言したんだ。

 

勿論、コミュニティのメンバーは猛反対、揚句母さんを殺そうとしたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、其処を修也の親父が助けたって訳か」

 

「中々のシチュエーションね」

 

「それで更に惚れるんだ」

 

「いや、逆に全員返り討ちにしたらしいぞ」

 

「「「はあああああ!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

「私とクルーエ様の愛を邪魔する者は許さない!」とか言ってコミュニティのメンバーを全員倒して、コミュニティの旗と名を捨てて親父の下に来た。

 

更に自分の持ってるギフトを全て親父に渡すこともしたそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが俺の母さんの話だな」

 

「………スゲぇー母ちゃんだな」

 

「………修也君のお父さんも凄いけどお母さんも凄い人なのね」

 

「それで、修也のお母さんは今どうしてるの?」

 

「ああ、母さんは俺を産んで間もなく死んだよ。交通事故だったらしい」

 

「あ、ごめん……」

 

「いいよ、気にしなくて」

 

耀の頭を撫でて少し落ち込んでしまった耀を慰める。

 

「そんじゃあ、俺の話はここまで。最後は耀の話だ」

 

「ああ、だが、もう夜も遅い。明日も“アンダーウッド”の復興作業もあるし、今日はここまでだ」

 

「そうね、それじゃあ最後に“春日部さんの時代の流行”を一つ話してくれないかしら」

 

「流行?服とか、靴とか?」

 

「できれば、春日部が未来人だって分かる流行が嬉しいぜ」

 

腕を組み耀は暫し考える。

 

「分かった。それじゃあ、私の時代の流行のヘッドホンを紹介します」

 

はっ?と十六夜が声を上げる。

 

「私の時代には――――――ウサミミヘッドホンが、世界的に流行ります」

 

そう言って両手でウサ耳のモノマネをした。

 

それを見て俺達は爆笑をした。

 

あの献身的な黒ウサギのシルエットが世界中に流行ってるのを想像して、そして、ウサミミヘッドホンなんてものが流行るぐらい平和な世の中を想像して。

 

俺たちの爆笑が夜の大樹に響き渡り、大河の水面を揺らし続けた。

 




次回は少し予定を変更して、違う話をします。

お楽しみに

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