問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ?   作:ほにゃー

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第10話 大勝利宣言だそうですよ?

グライアを倒した後、耀はいきなり倒れた。

 

慌てて火傷を負ってない左手で受け止める。

 

どうやら、気絶してるだけの様だ。

 

「おい、こりゃどうゆう状況だ?」

 

振り返るとそこには十六夜が居た。

 

どういうわけか、全身ボロボロで左肩は怪我をしている。

 

「当たりは黒焦げてるのにお前たちの所は焦げてない。どんなことしたらこうなるんだよ?」

 

「そう言うお前はボロボロだな。お前が怪我するなんてどんな奴にやられたんだよ?」

 

お互い軽く笑い、再開を喜ぶ。

 

「それより十六夜。お前に言うことが」

 

「ああ、ゲームクリアに必要な天球儀の欠片の事だろ」

 

「知ってたのか?」

 

「ここに来る前に捕まった奴等から話を聞いた。そんで、必要な欠片はこれだろ」

 

そう言って十六夜は俺に蛇使い座の欠片を見せた。

 

「やっぱりそれだったか」

 

「黄道上にありながら黄道十二星座に含まれない正座。お前も気づいてたんだな」

 

「ああ、だがうっかりそのことを忘れちまってな。お陰でゲームの休戦期間を強制終了さえちまった」

 

「ま、あんな状況じゃ焦っても仕方がねぇよ」

 

そう言って十六夜はレティシアがいる古城に向かう。

 

俺も耀を背中に抱え後を追う。

 

暫くすると耀が目を覚ました。

 

「………あれ?」

 

「目が覚めたか?」

 

「修也………私、一体何が………」

 

「お前、グライアを倒した後そのまま気を失ったんだよ」

 

「そっか………」

 

そう言うと後は何も言わずに黙る。

 

「あ!」

 

「どうした?」

 

耀がいきなり声を上げる。

 

「ヘッドホン………ない」

 

そう言えばなくなってるな。

 

もしかして戦闘してる時にどっか落としたか、最悪、戦闘で壊れたのどちらかだな。

 

「とにかく、ヘッドホンは後回しだ。レティシアの所に向かおう」

 

「………うん」

 

落ち込んでいる耀を気にしつつも玉座へと向かう。

 

「お、来たか」

 

玉座のある部屋には十六夜以外にガロロさんやジャック、ネズさんなどが居た。

 

「全員揃ったし、レティシア、一つ教えろ」

 

十六夜は玉座に居るレティシアに顔を向ける。

 

「外の巨龍はお前自身じゃないのか?」

 

十六夜の言葉に全員が沈黙する。

 

「……ああ、その通りだ。だが、安心しろ。勝利条件を満たせば巨龍は消え、私も無力化される。それで、ゲームセットだ」

 

「………信じていいんだな」

 

十六夜の言葉にレティシアは頷いて答える。

 

十六夜が最後の欠片を壁の窪みにはめると“契約書類”に勝利宣言がされた。

 

『ギフトゲーム名“SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING”

 

勝者 参加者側コミュニティ “ノーネーム”

敗者 主催者側コミュニティ “     ”

 

*上記の結果をもちまして、今ゲームは終了とします

尚、第三勝利条件達成に伴って十二分後、大天幕の開放を行います

 それまではロスタイムとさせていただきますので、何卒ご了承ください

 夜行種の死の恐れがありますので七七五九一七五外門より退避してください

 

                           参加者の皆様お疲れ様でした』

 

“契約書類”書かれた文を読んで俺はレティシアの方を向いた。

 

「レティシア、これはどういうことだ?」

 

「………そこに書いてある通りだ十二分後、大天幕は開放され太陽の光が降り注ぐ。

その光で巨龍は太陽の軌道へと姿を消すはずだ」

 

「レティシアはどうなるの?」

 

耀がそう聞くと、レティシアは苦い顔をする

 

そして懺悔するように呟いた

 

「……死ぬ、だろうな。龍の媒介は私だ。それにこの玉座の上にあるのは水晶体だから太陽が直射されることは間違いないだろう」

 

「だ、だって無力化されるだけだって……」

 

「あれは嘘だ」

 

耀がレティシアの胸ぐらを掴もうとしたがその手はレティシアの体をすり抜けた。

 

「ど、どうして………」

 

「言っただろ?龍の媒介は私だ。此処にいる私はいわば精神体のようなものだ。本来なら私に触れると影が襲ってくるのだが……やはり十六夜が倒したらしい」

 

レティシアは苦笑しながら十六夜を見るが、十六夜は目を細めてそっぽを向く

 

「三人とも、辛い役目を騙すように押し付けてしまってすまない。しかしわかってくれ。私はもう二度と同志を死なせたくないのだ」

 

懇願するように俺たちを見つめてくるレティシアを俺は一瞥する。

 

「レティシア、お前の気持ちは理解した」

 

俺の言葉にレティシアは安堵の表情をする。

 

「すまない、修也。“ノーネーム”を頼むぞ」

 

「は?何言ってるんだよ?」

 

「え?」

 

俺の言った言葉が予想外だったのかレティシアは目を見開いていた。

 

「理解はした。だが、納得はしていない」

 

「な!?」

 

「もう二度と同士を殺したくないレティシアの気持ちは理解できる。だがな、お前が死んだら残された連中はどうなるんだよ?」

 

レティシアが何か言いたそうだがそのまま話し続ける。

 

「皆が必死になってゲームをクリアしたのだってまた皆で一緒に笑い合うためだ。それなのに、お前は死ぬっていうのか?それで、お前はいいのか?もう、皆と会えなくなって、そして、皆に悲しみを与えて死んでもいいのか?」

 

「…………」

 

「なんとか言え!レティシア=ドラクレア!」

 

「私だって―――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私だってまだ生きたい!お前たちと笑い合いたい!あのコミュニティで、一緒に!だが、もう無理なんだ!もう…………無理なんだ…………」

 

泣きながらレティシアは叫んだ。

 

「なら、助けを求めろ!」

 

そんなレティシアに俺は怒鳴る。

 

「生きたいなら!一緒に笑い合いたいなら!助けを求めろ!お前が助けを、救いを求めるなら、俺たちが手を伸ばしてやる!だから、求めろ!」

 

そいて、レティシアは涙を流し、嗚咽をしながら叫ぶ。

 

「お願いだ……………私を…………私を…………助けてくれ!」

 

「よし!任せろ!」

 

振り返り、十六夜と耀を見る。

 

「十六夜、耀、お願いだ。一緒に来てくれ」

 

「それで、俺たちが断ったらどうするつもりだったんだよ?俺たちが手を伸ばしてやるってせめて俺たちの意思ぐらい聞いとけ」

 

そうは言うが十六夜は笑っていた。

 

「さっさと巨龍をぶっ倒そうぜ!」

 

「必ず倒して、皆で帰ろう」

 

二人の決意は固まっていた。

 

それでこそ、俺たち“ノーネーム”だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「巨龍は十六夜に任せる。耀は十六夜を巨龍のところまで運んでもらう」

 

「修也はどうするの?」

 

「俺は巨龍を僅かの間だが、抑える」

 

「どうやってだ?」

 

「俺のギフトが血での攻防と幻獣の血で強化するだけじゃないんだよ。ちょっとした奥の手を使う」

 

俺は自信満々に答える。

 

「そうかい、なら俺もそれに見合うだけのことをしてやるよ」

 

「なら、私もいいもの見せる」

 

そう言って耀は“生命の目録”を変形させ、ブーツに銀の装甲を纏った。

 

「おぉ、滅茶苦茶かっこいいじゃないか!」

 

「へぇ~、こりゃ凄い。いかしてるな」

 

「ありがとう」

 

これで準備は整った。

 

「よし、行くぞ」

 

耀は十六夜を抱えて飛び上がった。

 

俺も翼をだし、巨龍に向かう。

 

巨龍は“アンダーウッド”に突進をしようとしていた。

 

そして、巨龍の前には巨大化したディーンがいた。

 

飛鳥か…………

 

なら手伝ってもらうか。

 

『飛鳥、聞こえるか!?』

 

『え!?この声、修也君!?』

 

『説明は後だ!今から俺が巨龍を一時的に抑える。抑えたら遠慮せずにディーンで殴りつけろ!』

 

『分かったわ!思いっきりやるわ!』

 

これで、よし。

 

それじゃあ、やるか。

 

「血の共鳴(ブラッティ・シンクロ)!」

 

その瞬間、俺の視界が変わった。

 

視界には目の前に迫る巨大なディーンだ。

 

そして、俺は頭の中で動きを止めるように指令を出す。

 

すると動きが鈍りだんだんと動かなくなった。

 

そこにディーンが拳を振り上げ、下すのが見えた。

 

血の共鳴(ブラッティ・シンクロ)

 

俺が対象とした生物の血と共鳴し、その生物の意識を乗っ取る技だ。

 

この技を使うと相手のありとあらゆる感覚を共有することができる。

 

この技を応用すればさっきみたいに相手との会話もできる。

 

ちなみに相手との感覚の共有ということは

 

「ぐはぁ!」

 

殴られた痛みも共有してしまう。

 

更に言えば、この技はどんな生物にでも聞くとは限らない。

 

相手が自分よりも霊格が上なら共鳴はできない。

 

仮に共鳴できても相手からの反発で精神にダメージが来る。

 

巨龍は俺よりも霊格は上。

 

そのため今俺は、精神的にかなりきつい。

 

だが、やることはやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 十 六 夜 ! や れ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 見 つ け た ぞ ! 十 三 番 目 の 太 陽 ! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十六夜が放った光の柱は巨龍の心臓を打ち抜き、倒す。

 

心臓から零れ落ちたレティシアを耀が抱き留めてる。

 

太陽の光が当たらないようにレティシアにコートを被せる。

 

いつの間にか、“ノーネーム”の問題児たちが集結していた。

 

俺たちは互いに顔を見合わせそして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「 大 勝 利 ― ! ! 」」」」

 

 

 

 

高らかに大勝利を宣言し、ハイタッチをした。

 




次回はエピローグ

さて、修也と耀をくっつけるかくっつけないか悩むなぁ………

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