問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ?   作:ほにゃー

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第8話 黒いグリフォンだそうですよ?

「ん、ああ、………!!はあ、はあ…………此処、は?」

 

灯りが無い薄暗い部屋、石造りの独特なにおい。

 

懐かしい感じがする。

 

あたりを見渡し、頭上に敷き詰められた煌びやかな水晶を見て悟った。

 

「此処は、黄道の玉座!?何で此処に」

 

「気がついたか?」

 

声に気がづき周囲を見渡すと、其処には修也に耀、ジャック、ガロロ、ネズがいた。

 

 

レティシアSIDE END

 

 

 

 

 

 

 

修也SIDE

 

「修也、耀、ジャック、それにガロロとネズまで」

 

「久しぶりだナ、レティちゃん」

 

「二十年ぶりぐらいか?」

 

ネズさんはニヤリと、ガロロさんは健康そうな歯並びを見せて笑う。

 

レティシアは自分が玉座に鎖で繋がれてるのに気付くとすべてを理解したような顔をした。

 

「そうか、私は再び、魔王になったのか…………」

 

「でも、驚いたぜ、金糸雀の姉御は『“魔王ドラキュラ”を倒してきたぜ!』とか言うから、てっきりアンタを隷属させたもんだと思ってたぜ」

 

「諸事情があってな。金糸雀はゲームクリアではなくゲームの無期限中断の条件をクリアして、私をゲームから切り離したんだ」

 

なるほど、その金糸雀さんにどんな事情があったかは知らんが、ゲーム自体はクリアしてないから、正式に隷属させられたわけじゃないんだな。

 

「そうだったのか…………それで、金糸雀の姉御は?やっぱり三年前から行方不明か?」

 

「あ、ああ、だがアイツの事だ。何処かでのらりくらりとしているに違いない」

 

今、一瞬だけレティシアの表情が曇った気がしたが、気のせいか…………

 

「それはそうと、お前たちはここで何を」

 

「決まってるダロ。ゲームをクリアしに来たのサ」

 

「うん。でも、解けたのは第三勝利条件だけだけど」

 

それだけ言うと、耀は玉座の周囲を探る。

 

俺も部屋の壁を手探りで調べる。

 

すると、何かの窪みを押すような音が聞こえた。

 

「耀、あったぞ!ここの方角は………処女宮か!」

 

「はい、修也!」

 

「よし、後はここから十二等分していけば」

 

正座が刻まれた欠片を填めていく。

 

 

「それは、私達の神殿に安置されていたものじゃないか。一体何を………」

 

「レティシアはゲーム内容を知ってるんじゃないの?」

 

「このゲームは他人に任せて作らせたものでな。本来の“主催者権限”とはかけ離れているんだ」

 

「となると、この部屋の仕掛けはゲームとは無関係なんだな」

 

そう言って欠片をまた填める。

 

「レティシア、このお城って世界の周りをぐるぐると回るお城だったんじゃないの?」

 

欠片を填めるのを一度手を止めて耀がレティシアに聞く。

 

「あ、ああ、吸血鬼は世界の系統樹が乱れぬように監視する種族だったからな。吸血行為による種族変化もその名残だ」

 

「監視衛星だったのか、それは分からなかったぜ」

 

そう言って欠片を填める作業を再び再開する。

 

「今填めこんでるのは吸血鬼の城が正しく飛ぶ為に使っていたと思われるもの」

 

「そして、“砕かれた星空”の二つ目の解答。それがこの“天球儀”の欠片だ」

 

SUN SYNCHRONOUS ORBITは太陽同期軌道と言う言葉に変換される。

 

この言葉から“獣の帯”は“獣帯”という解釈になる。

 

これらのことから連想されるのは“砕かれた星空”の第一解釈。

 

即ち“黄道の十二宮”と天体分割法だ。

 

すると“砕かれた星空を捧げる”は“黄道の十二宮を捧げる”になる。

 

しかし、これだと意味が分からない。

 

そこで、The PIED PIPER of HAMELINの応用だ。

 

The PIED PIPER of HAMELINでは“偽りの伝承”と“真実の伝承”が“砕き、掲げる”ことが出来る物だった。

 

“砕かれた星空”は“砕き、捧げる”ことが出来る星空が描かれたもの。

 

つまり、天球儀という解答になる。

 

「素晴らしい!素晴らしいぞ、二人とも!」

 

レティシアは声を上げて褒めてくる。

 

耀は恥ずかしそうに頭を掻き最後の一つを取り出した。

 

「これが、最後の欠片」

 

「これで、ゲームクリアだ」

 

最後の欠片を壁の仕掛けに填め込むとガコン!と何かが動く音がした。

 

そして

 

「………………………………………………………………………………………………あれ?」

 

何も起きなかった。

 

耀の顔から血の気が引いて行くのが分かった。

 

俺もかなり焦っている。

 

「………始まった」

 

レティシアがそう呟いた。

 

「ゲームが再開された!私が巨龍を押さえているうちに、勝利条件を完成させろ!!

でないと、私が………“アンダーウッド”を………」

 

『GYEEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaEEEEEEEEEEEEEYYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaa!!!』

 

巨龍の雄叫びと、稲光が差し込んだ。

 

「今の雄叫び、まさか!」

 

「本当にゲームが再開されたって言うのカ!?」

 

「でもどうして!?まだ休戦期間のはず!主催者は不可侵のはず―――」

 

その時、耀が言葉を切った。

 

「まさか……ゲームをクリアしようとして、休戦期間が強制終了させられた?私のせいで…………私が間違ったせいで、巨龍が……………」

 

「違う!お前たちの推論は正しい!だからこそ、ゲームが再開された!クリアに近づいたからこそ、ゲームが再開されたんだ!」

 

「それって、どういう」

 

「何かが足りないんだ!完成した解答に至る為のなにかが」

 

その言葉に耀は気合を入れるかのように頬を叩く。

 

ガロロさんから“契約書類”を受け取り、内容を読む。

 

「わかるか?」

 

「……………」

 

無言だった。

 

どうやら、分からないらしい。

 

「大丈夫だ。冷静になればきっと解ける。嬢ちゃんにはゲームを理解する才能がある。俺が保障する。だから諦めるな……」

 

ガロロさんは耀の肩を強く握りしめて激励した。

 

だが、それが逆に耀へのプレッシャーになってしまった。

 

俺もできる限り考える。

 

“獣の帯”、“砕かれた星空”、“捧げよ”の解釈。

 

ここまではあっている。

 

何かが足りない。

 

それが分からない。

 

「落ち着け、春日部耀!!!! それでもお前は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春日部孝明の娘かッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?………………ガロロさん?」

 

「お前の親父さんのことはよく知ってる!俺だけじゃねぇ!そうだろ、レティシア?」

 

「コウメイ………その春日部孝明とは・・・・・・あの、コウメイのことか?」

 

「そうか、アンタは彫刻家としての名前しか知らないんだったな。いいか、耀お嬢ちゃん。お前の親父さんは凄かったんだ。俺は何度もアイツとクルーエに命を助けられた。俺だけじゃない。十年前“アンダーウッド”をクルーエと共に魔王から救ったのもお前の親父さんだ!」

 

「………嘘」

 

「嘘じゃねぇ!なんなら、俺の家にある肖像画を穴が開くまで見ろ。

アイツは野暮ったいボロボロの服を好む彫刻家で、言葉数が少なく、不器用で、都合が悪いことは小声で話して、羨ましいぐらいに見事な体躯と整った顔で、ムッツリの色男で…………………仲間の為に力を発揮できる、素晴らしい男だ。

自信を持て、春日部耀!お前には、頼れる相棒がついてるだろ!」

 

え?相棒?

 

どういう事だ?

 

耀も訳が分からないと言った顔をしてる。

 

「相棒って………」

 

「小僧の事だ!」

 

え、俺!?

 

「昔、クルーエと孝明は最強のコンビだった。あの二人が一度組んで戦えばほとんどの魔王のギフトゲームにだって勝てると言われてたんだ。

そして、俺はここまでのお前たちの行動を見て確信した。

お前たち二人はクルーエと孝明のコンビに負けず劣らずの最強コンビだ」

 

ガロロさんは口調を強くして言う。

 

「クルーエの子と孝明の子がこんなチンケなゲームがクリアできないわけがねぇ!お前たちならきっと出来る!俺は、そう信じるぜ!」

 

………………ここまで言われて何もしない奴は酷い奴だよな。

 

「………耀。もう一度内容を読もう。何処かにヒントがあるかもしれない」

 

「修也……………うん!」

 

耀と一緒に“契約書類”を穴が開くほど読む。

 

一字一句、丁寧に何度も脳内で咀嚼する。

 

「「――――――――――――――――――――――正された、獣の帯?」」

 

耀と同時に気付く。

 

「そうか!正された獣の帯だ!正されたってことは誤りがあったってこと、これが第三勝利条件にかかる言葉なら“獣の帯”もしくは“黄道の十二宮”、ううん、もしかしたら、天体分割法そのものに誤りがあったんじゃ!」

 

「耀!予想通りだ!蠍座と射手座が繋がらない!太陽の軌道上にある正座は十二個じゃなくて十三個だ!」

 

すぐにキリノたちが持ってきた欠片の中から蠍座と射手座の間の星座を探す。

 

だが、見つからない。

 

「皆!蠍座と射手座の間にある正座を探して!」

 

「城下街は天球儀に沿って作ってあるとすれば蠍座と射手座があった神殿の中間地点に『其処までだ、小僧!』

 

玉座の窓を破り何かが乱入してきた。

 

その何かは俺に向かって突進してきて俺はすぐに白牙槍で受け止めた。

 

が、白牙槍が耐え切れず、真ん中から二つに折れてしまった。

 

そして、俺は勢いよく吹き飛ばされた。

 

壁に叩き付けられて意識が飛びそうになった瞬間、俺が見たのは黒いグリフォンと、その胸に刻まれた“生命の目録”だった


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