問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ? 作:ほにゃー
あの親父が自分の一族の吸血鬼を皆殺しねぇ…………
どうも信じられねぇな。
親父はよく家族や親せきは大事にしろって言ってたし、何より血の繋がりを大切にしていた。
その親父が同族殺しをするとは思えない。
まぁ、それは置いといて、ガロロさんの話をまとめると、レティシアは 初代"全権階層支配者"となって、その権力と利権を手に、上層の修羅神仏に戦争をしかけ、それを阻止しようとして革命を起こした吸血鬼達と殺し合い――――その結果滅んだ。
その時に親父は多くの吸血鬼を殺したそうだ。
なんだかなぁ~、やっぱ信じられねぇよな。
そんなことを考え頭を掻きながら“契約書類”に目を落とす。
「ん?このゲームのタイトルって直訳すると太陽同期軌道だよな。要するに人工衛星のこと、いや、どちらかと言えば神造衛星か」
「うん。修也の言う通り、このゲームのタイトルが太陽同期軌道を意味するなら、このゲーム全体が“太陽”や“軌道”に関係することを示唆しているんだと思う」
なるほど。
そう言われると筋が通る。
となるとここにある“革命主導者”ってのは当時の参加者を騙すミスリードってことか。
「“太陽”と、その“軌道”に関するゲーム内容。とすれば耀お嬢ちゃんは“獣の帯”を“獣帯(ゾディアック)”として読み解いてるのかい?」
「ゾディアック?」
アーシャとキリノから疑問の声が上がる。
「“獣帯”ってのは“黄道帯”や“黄道の十二宮”の別称だ」
「“黄道の十二宮”って獅子座とか蟹座とかがある、十二の星座ですか?」
「正解ダ!そもそも十二の星座ってのは、太陽の軌道線上を三十度ずつずらし、星空の領域を分ける天球分割法で――――――天球の……分割?まさか!?」
ネズさんが何かに気付いたらしい。
俺もネズさんの言葉で気付いた。
「まさか、第三勝利条件の“砕かれた星空を集め、獣の帯を玉座に捧げよ”って“獣帯によって分割された十二の星座を集め、玉座に捧げよ”ってことか?」
「うん、多分そうだと思う……かな?」
自信が無いのか最後はトーンを下げて言った。
「スゲーな、耀!今の推理だと多くのワードと符号する!“正座を集めろ”って意味は分からないが、今後の方針を得るには十分だ!早速、他の連中にも協力してもらおう!」
そのまま俺は立ち上がり他の人たちのところに向かった。
修也SIDE END
耀 SIDE
「シュウ坊は行動が早いナ」
ネズミごとネズさんが呆れ半分、感心半分と言った感じで修也を見つめる。
「あの行動力と性格、どっかで見たことあるな…………」
急にガロロさんがそんなことを言い出した。
「それもそうでしょう。なんせ彼はクルーエ=ドラクレア殿の御子息ですから」
「何!?あの小僧がクルーエのガキだってのか!?」
ジャックの言葉にガロロさんが驚く。
「ガロロさん、修也のお父さんと知り合いなの?」
「知り合いなんてもんじゃねぇ。俺とアイツは親友なんてもんじゃ量り切れないぐらいの仲だ。それに、命だって何度も救われた。………………確かにアイツそっくりだな」
どこか懐かしむかのようにガロロさんは修也を見る。
それにつられて私も修也を見る。
“契約書類”を片手に持ち、大人たちに説明している。
話が終わると、大人たちの代表格と思わしき人と拳をぶつけて笑い合っていた。
「どんな奴共、言葉を交わし、時には拳を交わして交渉する。そして、最後は笑い合う。まったく、どこまえも似てやがるな」
そう言って僅かに微笑むガロロさん。
「ええ、クルーエ殿が蘇ったかのように思えてきますよ」
カボチャ頭を軽く叩き陽気に笑うジャック。
「蛙の子は蛙だな」
口元をニヤつかせて笑うネズさん。
その三人を見て、修也のお父さんは凄く皆から好かれているんだと分かった。
そして、修也自身も皆に好かれてる。
十六夜も、飛鳥も、黒ウサギも、ジン君も、“ノーネーム”の皆も、白夜叉も、皆が修也を好きでいる。
そして、私自身も……………………私の場合は、少し違う好きだ…………
そう思うと顔が熱くなるのが分かった。
頭を振り、邪念を振り払う。
とにかく、今はゲームクリアに向けて前を進もう。