問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ? 作:ほにゃー
ジン達と合流し、“ヒッポカンプの騎手”を始め幾つかのギフトゲームへの参加登録をした後宿舎に戻り談話室に集まった。
「しかし、思ったよりギフトゲームの数が少なかったな」
「YES!本祭が始まるまではバザーや市場が主体となります。明日は民族舞踏を行うコミュニティも出てくるはずなのです」
黒ウサギは何時になくハイテンションでウサ耳を左右に揺らす。
そういえば、最初からここに来るのが楽しみだったようだな。
耀もそれに気づき黒ウサギに質問する。
「ねえ、黒ウサギ。もしかして前々からアンダーウッドに来たかったの?」
「ええと、昔お世話になった同志が、南側の生まれだったので少し・・・」
「同志ってことは・・・」
「はい。魔王に連れ去られた一人で、幼かった黒ウサギをコミュニティに招きいれてくれた方でした」
その言葉に俺達は驚愕し顔を見合わせる。
「黒ウサギはノーネームの生まれではないの?」
「はい。黒ウサギの故郷は東の上層の“月の兎”の国だったとか。しかし、絶大な力を持つ魔王に滅ぼされ、一族は散り散りになり、一人放浪としていたところを招き入れてくれたのが今の“ノーネーム”なのです」
それって二度も故郷を魔王に滅ぼされたってことだよな。
献身的な態度も“月の兎”である以上に、その体験からきてるんだろう。
「黒ウサギは受け入れてくれた恩を返すために、ノーネームの居場所を守るのです。そして、いつの日か皆様のようなな素敵な同志が出来たと紹介したいんです」
黒ウサギは気合を入れるように両腕に力を込める。
俺は耀と飛鳥に目を合わせ小さく微笑んだ。
二人も同じように微笑む。
「そう。ならその日、とても楽しみにしてる」
「俺もだ」
「私もよ。ところでその黒ウサギの恩人ってどんな人だったの?」
飛鳥の質問に黒ウサギは少し寂しそうに、そして嬉しそうに言う。
「彼女の名前は金糸雀様。我々のコミュニティの参謀を務めた方でした」
談話室を後にした後俺はベットに寝転がった。
寝ごろがると急に眠気が襲ってきた。
『どうだ!これが俺の息子だ!』
『あら、よく似てるわね。……………可哀想に』
『どういう意味!?』
『そのまんまよ』
『――は、そう思わないよな!?』
『―――。母親の血も入ってるしそれで中和されてイケメンになるはずだ』
『――も酷い!』
『ちょっと、クルーエ。うるさいわよ。子供が起きるでしょ』
『俺のせい!?』
『クルーエ、将来俺の娘の婿にでも』
『誰がやるか!』
「何だ、今の夢?」
多分だが騒いでたのは親父だろ。
後、見事な体躯に整った顔、野暮ったいボロボロの服を着た男性と真っ白なロングコートに赤紫のキャミソール、耳に左右対称な貝殻を付けたイヤリングとヴェーブを引いたショートカットの金髪に整った小顔の女性。
あの二人は誰だ?
親父と仲が良さそうだった。
見た感じ俺の赤ん坊の時の記憶、となるとその二人は親父の友人か………
そんなことを思ってると急に部屋が揺れ始め驚く。
「な、何だ!?」
直ぐさま部屋を飛び出る、その直後俺が居た部屋が何者かによって破壊される。
後ろを向くとそこには巨大な腕があった。
「きょ、巨人……」
破壊された部屋の向うには片手に巨大な斧を持ち三〇尺はある身長の巨人が居た。
顔は仮面で隠されている。
俺はここで戦うのは不利と思い翼を出し地表に上がる。
地表ではすでに乱戦状態。
巨人の数は二〇〇ぐらいか。
巨人一人に味方が十人で防げると言ったところか。
数ならこっちが多いいが、いきなりの襲撃に全員混乱してる。
どうやら、サラは主力の巨人三体と戦って指揮がとれない。
少し離れた所でディーンが戦っている。
いくらサラでも主力三体相手にはきついはず。
スピードを上げサラが相手してる巨人の一人を蹴り飛ばす。
「しゅ、修也か!」
「サラ、こいつらは俺が相手する!お前は指揮を執れ!」
「だが、お前一人では」
「問題無い。だって……」
サラと話してる最中後ろから巨人が剣を振り下ろしてくる。
その一撃を俺は見ずにそのまま手で受け止める。
「半吸血鬼だがらな」
そのまま、片手で剣を押し返し、白牙槍を出し、一体をねじ伏せる。
「わかった!なら、ここは任せる!」
そう言うとサラは炎翼を出し、連盟の指揮を執り始める。
「来いよ。巨人共、力で勝てると思うなよ」
槍を構え迎え撃とうとすると急に何処からか琴線を弾く音が聞こえた。
すると急にあたりを濃霧が包んだ。
おまけに聴覚と嗅覚に異常を感じた。
俺は焦らずギフトカードから一本の小瓶を取り出し中の液体を飲む。
飲んでる最中、巨人の拳が飛んでくる。
ソレを躱し、そのまま飛び上がり顔を掴んで地面に叩き付ける。
その一撃で巨人は沈黙する。
そして
「お前らは吹っ飛びな」
白牙槍に風を纏わせそのまま横薙ぎに振り、吹き飛ばす。
吹き飛ばさせれた巨人は地面に倒れそこをハープーンガンで撃ち抜き倒す。
そして、今度は両手に旋風を溜めそのまま振り濃霧を吹き飛ばす。
流石に力が弱く全ての濃霧を吹き飛ばせなかった。
「それは鷲獅子のギフトですか?」
背後の声に驚き後ろを振り向く。
そこには白髪で白いスカートに白銀の鎧を身に纏い顔の上半分を白黒の舞踏家面で隠し、手に剣を携えた女性だった。
ついでにいえば髪以外は血まみれだった。
「あんたは?」
「これは申し遅れました。私はフェイス・レスと言います。以後お見知りおきを」
「俺は月三波・クルーエ・修也だ」
「クルーエ?もしや、クルーエ・ドラクレア殿の」
「息子だ」
「そうですか」
仮面の騎士もといフェイス・レスはなにか納得したように頷く。
「ところで、先程の力は鷲獅子のギフト。何故、それを?」
「さっき、鷲獅子の血を飲んだ。俺のギフトの力で幻獣の血を飲むとその幻獣の力を一時的に使用できるんだ。もっとも最近知ったことだが」
「なるほど」
それだけを言うとフェイス・レスは持っていた剣を鞘にしまう。
その直後安全を知らせる鐘が鳴った。
濃霧も他の幻獣の働きにより払われた。
「なぁ、フェイス」
「フェイス?」
「ああ、フェイス・レスって長いからな。そう呼ばせてもらうぜ。あんたと親父の関係を聞かせてほしいんだが、いいか?」
「………まぁ、いいでしょ」
取りあえずフェイスの隣に立ち、話を聞くことにした。
「なるほど。結局あんたも親父に助けられたのか」
「はい、あの時クルーエ殿が助けてくれなかったら私は今こうして生きていることはなかったでしょう」
フェイスの話を聞くとやはり、親父に命を助けられたとの話だった。
この調子だと他にも命助けた奴がいそうだな。
「それと、クルーエ殿は私に剣の稽古をつけてくれました」
「へぇ~」
「言うなればクルーエ殿は私の剣の師でしょう」
そう言うフェイスの声に少しばかり嬉しさがでていた。
そう思い地平を見ると何かがこちらに近づいてきた。
よく見るとそれは
「まずいぞ。フェイス」
「え?」
「巨人族がまた攻めてきた!」
白牙槍とハープーンガンを取り出し、翼を出して構える。
フェイスも剣を抜き構える。