問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ?   作:ほにゃー

48 / 106
第6話 歌姫だそうですよ?

サラは俺達の顔を一人一人確認し、最後に俺を見る。

その時、わずかに微笑んだ気がした。

「キリノ、受付ご苦労。中には私がいるからお前は遊んで来い」

「え?で、でも私が此処を離れたら挨拶に来られた参加者が」

「私が中に居ると言っただろう?それに、前夜祭から参加するコミュニティは大方揃った。お前も収穫祭を楽しんで来い」

「は、はい」

樹霊の少女もといキリノは嬉しそうな表情をし、俺達に一礼してから収穫祭に向かった。

「ようこそ、“ノーネーム”と“ウィル・オ・ウィスプ”、そしてクルーエ殿の御子息、修也殿。下層で噂になっているコミュニティを招くことが出来て私も鼻高々といったところだ」

「噂?」

「ああ、しかし立ち話も何だ。中に入れ。茶の一つでも淹れよう」

サラに招かれ俺達は貴賓室に招かれた。

「では改めて自己紹介させてもらおうか。私は“一本角”の頭首を務めるサラ=ドルトレイク。聞いた通り元“サラマンドラ”の一員である」

「じゃあ、地下都市のあの水晶の水路は」

「もちろん私が造った。しかし、あの水晶や“アンダーウッド”に使われている技術は全て私が独自に生み出したものだ。流出させたわけではない」

それを聞くとジンはほっとした顔をする。

「それでは、両コミュニティの代表者にも自己紹介を求めたいのだが……ジャック、彼女はやはり来ていないのか?」

「はい。ウィラは滅多なことでは領地から離れないので、今回は参謀の私が」

「そうか。北側の下層で最強と謳われる参加者を、是非とも招いてみたかったのだがな」

北側の下層で最強と言われる言葉に、俺は反応する。

「北側、最強?」

するとアーシャが自慢そうにツインテールを揺らした。

「当然、私たち“ウィル・オ・ウィスプ”のリーダーの事さ」

へ~、“ウィル・オ・ウィスプ”のリーダーって北側最強なんだ。

いつか、戦ったみたいな。

「それにしても、クルーエ殿の御子息の修也殿にこのような形で会えるとは思っていなかった」

「殿はよしてくれ。俺のことは修也でいい」

「そうか。では……………この度は収穫祭に特別ゲストとして参加して頂き誠にありがとうございます。“龍角を持つ鷲獅子”を代表してお礼を申し上げます」

サラは畏まったように頭を下げてくる。

「いや、そんな風に接せられるとこちらとしては結構やりづらいから、普通にしてくれるとありがたいんだが」

「分かっている。仰々しくするのはここまでだ。さすがに、私の勝手な願いで来て貰っておきながら礼の一つでも言わないのは私の義に反する。改めて、ようこそ、収穫祭へ」

そう言って手を指し伸ばしてきたので俺も招待状を送ってもらったことに礼を言い握手をする。

その時、耀は俺に対し黒いオーラを発しながら、サラの頭上にある龍角を見ていた.。

「どうした?私の角が気になるか?」

「うん。凄く立派。サンドラみたいに付け角じゃないんだね」

「ああ、コレは自前の角だ」

「でも、“一本角”のコミュニティだよね?二本あるのにいいの?」

「確かに“龍角を持つ鷲獅子”の一因は身体的特徴でコミュニティを作っている。しかし、頭に着く数字は無視しても構わない。そうでなければ四枚の翼がある種は何処も所属できないだろ?」

「あ、そっか」

「後は役割に応じて分けられるかな。“一本角”“五爪”は戦闘、“二翼”“四本足”“三本の尾”は運搬、“六本傷”は農業・商業全般。これらを総じて“龍角を持つ鷲獅子”連盟と呼ぶ」

なるほど。

何も全てのコミュニティが戦うわけじゃないのか。

「収穫祭では“六本傷”の旗を多く見かけることになるだろう。今回は南側特有の動植物をかなり仕入れたと聞いた。後ほど見に行くといい」

「特有の植物?ラビットイーターとかか?」

「まだその話を引っ張りますか!?そんな愉快に恐ろしい植物が存」

「在るぞ」

「在るんですか!?」

俺のボケにツッコミで対応する黒ウサギだったか予想外にラビットイーターは在った。

「じゃあ、ブラックラビットイーターは、」

「だからなんで黒ウサギをダイレクトに狙うのですか!?」

「在るぞ」

「在るんですか!?一体の何処のお馬鹿様がそんな対兎型最恐プラントを!?」

「発注書ならここにあるが」

サラの机の上に置いてあった発注書を黒ウサギは素早く取り内容に目を通す。

俺も横から発注書を読む

 

『対黒ウサギ型プラント:ブラック★ラビットイーター。八〇本の触手を淫靡に改造す

 

そこまで読むと黒ウサギが発注書を握り潰した。

「………フフ。名前を確かめずとも、こんなお馬鹿な犯人は世界で一人シカイナイノデスヨ」

ガクリと項垂れ、しくしくと哀しみの涙を流す黒ウサギ。

「サラ様、収穫祭にご招待いただき誠にありがとうございます。我々は今から行かねばならない場所ができたので、これにて失礼いたします」

「そ、そうか。ラビットイーターなら最下層の展示場にあるはずだ」

「ありがとうございます。それでは、また後日です!」

そう言うと黒ウサギは紙を桜色に変え、俺たち全員を掴み一目散に駆け出した。

行先は展示会場だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

展示場につくなり黒ウサギは金剛杵を取り出し稲妻をブラックラビットイーターに当て燃やした。

「なんか、勿体ないな」

「うん、勿体ない」

「勿体ないわね」

「お馬鹿言わないでください!こんな自然の摂理に反した植物は燃えて肥しになるのが一番なのでございます!」

そう言うと黒ウサギはフンッと顔を背けてしまった。

「あ、あははは、それでこれから皆さんはどうしますか?」

苦笑いをしながらジンが聞いて来る。

このまま、宿舎に戻っても暇だろうし

「折角だし日が暮れるまで収穫祭でも見ようぜ」

「賛成」

「ええ、私も賛成よ」

「なら決まりですね」

結局全員で収穫祭を見回ることになった。

しかし、急に飛鳥が

「あ、そうだわ。こんな大人数で回ったらきっと他の参加者に迷惑掛かると思うわ」

いや、大人数って五人だけなんだが。

「だから、二手に分かれましょう」

そう言うと飛鳥はジンと黒ウサギを捕まえる。

「私はジン君と黒ウサギの三人で見て回るわ。修也君は春日部さんと一緒に回りなさい」

いや、俺とジンが回った方がいいんじゃ

「それじゃあ、また後で会いましょ」

そう言うと飛鳥は普段では想像つかないスピードで走り出してしまった。

結局、俺と耀の二人が残った。

「…………行くか」

「う、うん(飛鳥………ありがとう)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、俺は耀と二人で出店を歩き回った。

しかも、全部俺の奢り。

食べ歩きをしながら、農園に使えそうな苗や種を探したり、店でアクセサリーや小物を見たり、なんか民族衣装っぽいものを耀が試着するなどをした。

民族衣装が結構、耀に似合っていて少し顔を背けてしまった。

そのことで耀に文句を言われ正直に言うと顔を真っ赤にして俯いてしまった。

正直、こっちも恥ずかしかったのだが………

「それにしても、ギフトゲームは少ないな」

「うん、殆どバザーや市場が主体だった」

「折角だし、なんかギフトゲームをしたいんだが」

辺りを見渡しギフトゲームが無いか見渡すと人だかりができてる場所を見つけた。

「あそこ、行ってみようぜ」

「うん」

人だかりに近づくと多くの人の中心に舞台があり、その中央で女性が歌を歌っていた。

 

『ギフトゲーム名:アンダーウッドの歌姫

 プレイヤー参加条件:女性のみ

 勝利条件:歌で高得点を出し上位入賞

 敗北条件:なし

 勝利報酬:上位入賞者に“六本傷”の商品券 優勝者には特別報酬有り 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、ギフトゲームを開催します。

 

                            “六本傷”印』

 

要するにカラオケ勝負か…………

でも、女性のみ。

俺は参加できないや。

「耀、やってみたら?」

「でも、私、歌ってそんなに知らない」

「まぁ、物は試しだ。やってみろよ」

「………うん、わかった」

そう言って耀は飛び入り参加受付に向かった。

 

修也SIDE END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

耀SIDE

 

どうしよう………

歌なんて本当に知らないし、歌ったことすらない。

知ってる歌なんてドラ〇もんぐらいしかない…………

とりあえず、渡された歌一覧表で何かないか探す。

ページを次々と捲り、歌を探し出す。

そして、サ行のページで一曲ある歌が目に入る。

この歌………知ってる。

何で知ったか覚えてないけど歌詞は知ってる。

振り付けも覚えてる。

これで行こう。

その歌を選択し、自分の番が来るまで何度も頭の中でその歌を反復する。

 

耀SIDE END

 

 

 

 

 

 

 

 

修也SIDE END

 

観客たちと混ざりながら次々と出てくる女性の歌を聞く。

耀の番はまだか?

『それでは、次はいよいよ最後の方です!“ノーネーム”所属、春日部耀さんです!』

司会の言葉に周りはつまらなさそうにする。

まぁ、最後が“ノーネーム”じゃ、嫌だよな。

舞台の端から耀が現れ、マイクを手に取る。

『なんでも、春日部さんは今から歌う曲を振り付けと一緒に披露してくれるそうです!これは期待できそうですね!』

司会の一言に観客も騒がなくなった。

いい仕事してるな。

『それでは、春日部耀さんで“星〇飛行”どうぞ!』

歌が流れ始めると耀は普段から想像できないぐらいの軽快に踊りだした。

歌唱力も十分にうまい。

結構うまいなぁ~。

感心しながら耀が歌うのを見続ける。

そして、サビに入る瞬間のポーズ(キラッ☆の所ですBy作者)の時何故か一瞬

ドキッとした。

それからと言うもの何故か耀の行動一つ一つに目が行ってしまい歌に全然集中できなかった。

そして、歌が終わる。

『いや~、凄かったですね!現在のトップは97、7385点。これを上回れば春日部さんの勝利です!さて、結果は』

そして、

後ろの採点掲示板が点滅し点数を出す。

『おぉ――――っと、これは!?100点!文句なし!優勝です!』

そして、耀の優勝が決まり歓声が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「修也、優勝した」

「あ、ああ、そうだな。おめでとう」

何故か目を逸らしてしまう。

「………どうしたの?」

「い、いや、なんでもない」

「………顔、赤いよ?」

「早く、ジン達と合流しようぜ!」

会話を無理やり遮り、耀の背中を押して移動する。

「う、うん、分かった」

はぁ~、どうしたんだ?

俺は…………

 




想像しよう。
星〇飛行を踊る春日部耀を

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。