問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ?   作:ほにゃー

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そう……巨龍召喚
第1話 収穫祭があるそうですよ?


ペストとの戦いから一ヵ月。

俺達は現在本拠の大広間に集まっている。

長机の上座からジン、俺、十六夜、飛鳥、耀、黒ウサギ、レティシア、リリの順番で座っている。

“ノーネーム”では会議の際、コミュニティの席次順なのが礼式らしく、俺が次席に座っているのは“ペルセウス”戦での活躍、ヴェーザーの撃破、新たな仲間(フェルナ)を捕まえたなどから次席が妥当だろうと満場一致で決まった。

「なぁ、十六夜変わってくれ。やっぱり俺がここにいるのはおかしい気がする」

「何言ってるんだよ。お前が座らなきゃ誰が座るんだよ?」

「お前」

「寝言は寝てから言え」

笑いながら十六夜は俺に指を指す。

「いいか?“ペルセウス”戦での活躍はそのままレティシア奪還に繋がる。お前が勝ったからレティシアを取り戻すことができた。神格を持ったヴェーザーを倒したことで俺達“ノーネーム”の知名度も上がった。フェルナは…………まぁ、コミュニティの人手が増えたってところだ。それ以外にもお前がコミュニティにしたことを数え上げればきりがないぜ。これでもまだ、次席がふさわしくないって言うのか?」

「十六夜君の言う通りよ。修也君はコミュニティの為によく働いてくれてるわ。それこそ、感謝してもしきれないぐらいにね」

「だから、修也には次席がふさわしい」

「YES!修也さんはもっと堂々と胸を張ってもよろしいのですよ!」

そこまで言うか。

まぁ、そこまで言うなら仕方がない。

次席に居てやるよ。

「それより、ジン。お前緊張し過ぎじゃない?」

「あ、当たり前ですよ。だってここは旗本の席なんですから」

コミュニティのリーダーであるジンが旗本の席に座るのは当たり前のことだ。

しかし、ジン本人は特に戦果を上げてないと思っており旗本の席に座ることに引け目を感じてるらしい。

「ジン、俺達“ノーネーム”はジンがあっての“ノーネーム”だ。俺達の戦果は全てジンの名前に集約され広まる。これはお前の戦果だ。それに、ペストとの交渉や、ステンドグラス捜索の時には随分活躍したんだろ。それこそ、俺達の戦果なんかよりも凄いじゃないか。これは過大評価じゃない。正当な評価だ。だから、お前はそこの席に座る資格はあるし、お前にしか座ることは許されない。いいな?」

「修也さん…………はい!分かりました!」

「よし、その意気だ!」

俺はジンの肩を叩き軽く元気付ける。

「それでは、今日皆さんに集まって貰ったのはほかでもありません。ここ一ヵ月でコミュニティに届いたギフトゲームの招待状は全て僕の名前宛となっています。これは皆さんのお陰です。まず、そのお礼を申し上げます」

ジンは頭を下げ礼を言う。

「そして、招待状三枚の内一枚は貴賓客としての招待状です。“ノーネーム”としては破格の待遇です」

そりゃ、凄い。

「それで?今日集まった理由はその招待状に付いての話かしら?」

「それもありますが、その前にコミュニティの現状をお伝えしたいと思っています。・・・黒ウサギ、リリ。報告をお願い」

「あ、はい」

そう言ってリリは割烹着の裾を整えて立ち上がる

「えっと、備蓄に関しては問題ありません。最低限の生活を営むだけなら二年は持ちます」

「へえー、なんで急に」

「黒死斑の魔王が推定五桁の魔王に認定されて規定報酬の桁が跳ね上がったと白夜叉様が言ってました。それと、修也様がこの前参加したコミュニティ“インフォーマント”で行ったギフトゲーム“開かずの金庫”をクリアした報酬が予想以上に多かったのもあります。これでしばらくみんなお腹一杯食べられます」

リリが嬉しそうに狐耳と尻尾を振りながら笑う

「こら、リリ。はしたないぞ」

「あう・・・」

レティシアに怒られ耳と尻尾をしゅんとさせる。

「まぁまぁ、いいじゃんかよ。そんなに喜んでくれればこっちとしても頑張ったかいがあったってもんだ。それで、報告は以上か?」

「あ、いえ。五桁の魔王を倒す為に依頼以上の成果を上げた十六夜様達には金銭とは別途にギフトを授かることになりました」

「あら、それは本当?」

「YES!それについては後から通達があるのでワクワクしながら待ちましょう」

どんなギフトかは分からないか魔王を倒した報酬なら結構面白いものだろう。

「それではリリ。農園の復興状態を」

ジンがリリに話を振ると、目を輝かせ話始めた。

「は、はい!農園の土壌はメルンとディーンの働きのおかげで全体の四分の一はすでに使える状態です。これでコミュニティ内のご飯を確保するのに十二分の土地が用意できました。田園に整備するにはもうちょっとかかりそうですけど、根菜類などを植えれば数か月後には期待が出来ると思います」

はしゃぐリリを見て、飛鳥が得意そうに言う

「メルンとディーンが休まず頑張ってくれたんだから当然よ」

ふふんと、笑う飛鳥

「特にディーンは働き者で飛鳥さんがゲームに出場しているとき以外はずっと土地の整備をしてくれて、メルンが分解した廃材や若木なんかも休まず混ぜてくれて本当に助かりました!」

「喜んでもらえたようで何よりよ」

「人使いが荒いともいうけどな」

なんで十六夜はここで空気を悪くするかな。

「そ、そこで今回の本題なんですが農園区に特殊栽培の特区を設けて、霊樹や霊草を栽培しようと思うんです。」

「マンドラゴラとか?」

「マンドレイクとか?」

「マンイーターとか?」

「アルウラネとか?」

何か知らんけどマンドレイクの亜種ってきいたな。

「YES!って最後の二つおかしいですよね!?マンイーターなんて子供たちには危険ですしアルウラネなんて教育上良くないですよ!それにマンドレイクやマンドラゴラみたいな超危険即死植物も黒ウサギ的にアウトです!」

「「「「じゃあ妥協してラビットイーターで」」」」

「何ですか!その黒ウサギを狙ったダイレクトな嫌がらせは!!」

黒ウサギはほっといて十六夜にアルウラネについて聞いてみると人を誘惑し、その精を(ウフフな事だったり、またはバリバリと)食らうことで生きるとされる植物らしい。

知らないのに言うんじゃなかった。

救いとしては耀と飛鳥がアルウラネについて知らなかったことだな。

「つまり主達には農園に相応しい牧畜や苗を手に入れてきて欲しいのだ」

レティシアの言葉に振り返る。

「でも、霊草や霊樹なんかどこで手に入るんだ?」

「実は南の“龍角を持つ鷲獅子”(ドラコ・グライフ)連盟から収穫祭の招待状が届いているのだ。連盟主催ということもあり、種牛や珍しい苗を賭けるものも出るはずだ」

なるほどね。

そのゲームに参加して苗やら種をゲットするってことか。

「しかも今回は前夜祭からの参加を求められ、旅費と宿泊費は主催者が全て請け負うというVIP待遇。場所も境界壁にも負けない美しい河川の舞台“アンダーウッドの大瀑布”。皆さんが喜ぶこと間違いなしです!」

黒ウサギが自信満々で答える

そこでジンがわざとらしく咳をする。

「この収穫祭は前夜祭を入れると二十五日間にもなります。最後まで参加したいのですが長期間主力が居なくなるのはよくありません。なのでレティシアさんと共に一人は残って・・・」

「「「嫌だ」」」

十六夜、飛鳥、耀の三人は即答だった。

まぁ、この三人ならそう言うだろ。

「ジン、俺が残ってもいいが……」

まぁ、ここは三人に譲るか。

俺はもう十分働いたし。

「いえ、修也さんには前夜祭を含めて最後まで参加してもらいます」

「は?」

なんで、俺だけ?

他の三人も何故?と言った顔になってる。

「実は“主催者”側からの要望でクルーエ=ドラクレア様の御子息である修也さんに是非来てほしいとのことだそうです。なんでも、“主催者”はかつてクルーエ様に命を救われたとのことで、そのお礼を申し上げたいとか。それと、ゲストとして参加もして欲しいとか」

本当に親父って凄いな。

向うじゃいつも工場で働いてた冴えない親父だったのに。

「じゃあ、修也は最後まで参加するんだ…」

「はい、で、残りの皆さん何ですが、日数を絞るというのはどうでしょう?」

「日数を絞る?」

「はい、前夜祭を二人、オープニングセレモニーから一週間を全員で、残りの日数を二人と。こんな感じです」

なるほど、確かにいいアイディアだが、

「それだと一人最後まで参加できることになるよね?それはどうするの?」

そう、それが問題だ。

本来なら席次順で十六夜になるはずだが、それじゃあ納得しないよな。

ジンも同じ考えらしく悩んでいる。

「そうだ。なら、ゲームで決めるってのはどうだ?」

「「「「ゲーム?」」」」

十六夜、飛鳥、耀、ジンの四人が俺の提案を聞き返す。

「今日から前夜祭までの期間で一番多くコミュニティに貢献できた奴が最後まで参加。後の二人はじゃんけんかなんかで前夜祭から参加かオープニングセレモニーからの参加かを決める。どうだ?」

「お、いいじぇねえか!面白そうだぜ!」

「いいわ。それで行きましょう!」

「うん。………絶対に負けない」

さて、誰か勝つか…………

まぁ、十六夜な気がするが………

 


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