問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ?   作:ほにゃー

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第10話 目指すは最強コミュニティだそうですよ?

    ~~~~~~~~~~~~~~~~昔の話~~~~~~~~~~~~~~~

 

「どうした、修也つまらないか?」

「いや、別につまらなくねーよ。ただ、親父にこんな美術品の良さが分かるのかって思っていただけだ」

「おいおい、それはねーぞ。こう見えて俺には彫刻家の親友がいる。そいつに美術の感性を磨いてもらったからな」

「へ~、ならこの絵に含まれる意図とか分かるのかよ?」

「ああ、これか。こいつはな、ただの静物画じゃない。描かれているモチーフにそれぞれ比喩的な意味がある。ナイフは「武力」、宝石は「富」、楽器は「人生」。そして、手前の骸骨はそれらすべては死んでしまえば無価値で刹那的な虚しい物に過ぎないという事を示唆している。まるで、悪魔の肖像だな」

 

    ~~~~~~~~~~~~~~~~終了~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて皆さん!いよいよゲームも大詰めです!相手は取り込まれたコミュニティの方々!迂闊に手を出せない以上作戦会議を行うべきで…ってやっぱりガンガン行ってるー!!!」

「こんな大混戦じゃ策なんて通用しないわよ!」

「口より体を動かしたい!」

「俺だけ戦って無いから思いっきり暴れさせてくれ!」

「せっかく戦闘解禁されたのだ!暴れさせんかー!!」

誰も黒ウサギの言うことを聞こうとしない。

俺もだが。そんな俺達に黒ウサギは

「うう、そうして皆さんはそうやっていつも…黒ウサギの言うことを聞いてくれないのですかー!ええい、憂さ晴らしキック!ストレス発散パンチ!」

とうとう黒ウサギも実力行使に出る。

「おーおー、いい感じに盛り上がって来たじゃねぇーか!」

「君も余裕かましてる場合ジャ無いと思うよー?こっちは総動員なンだカラね!他のコミュニティの連中にケガをさせレば後が厄介!いくら破天荒ナ君デモ…こノ人数を上手くあしらい切レるかなァ!」

グロピエロの合図と共に行方不明者が一斉に襲い掛かってくる。

「やれやれ、やるか?十六夜」

「当たり前だろ!」

「だな!」

十六夜が拳を構え、俺も腰を落として構える。

 

 

 

 

 

   ~~~~~~~~~~~~~~~~その頃外では~~~~~~~~~~~~~~~

「一体どうしちゃったのかなフェルナさん。急に座り込んで動かなくなっちゃったよ」

「ほうっておけ。こいつはおそらく魔王の残党だ。“トリックスター”と聞いて思い出した。この広いコミュニティじゃ、一口に娯楽コミュニティと言っても千差万別だが、中でもおかしな連中ばかりが集まる魔王の一座があったと。そいつらは公演中に観客を巻き込み、あらゆるギフトゲームを強いたが団長のひょうきんな性格もあって訪れた町はそれなりに活気が付いたらしい。悪さはしてもユーモラスで明るいサーカスコミュニティ。魔王にしては異色だと話題になりもしたそうだが、それはもう昔の話。コミュニティ“トリックスター”はとうの昔に滅びたと聞いて」

 

ド ゴ ォ ォ

 

「テントが爆発した!?今度は何が起きて!?」

「おい、見ろ!あれは……」

 

   ~~~~~~~~~~~~~~~~終了~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

「十六夜さん、修也さん!」

声がする方を向くとそこにはジンとレティシアがいた。

「あ?なんだ、御チビに吸血ロリじゃないか」

「一体また何を派手にやらかしてるんだ貴様らは!」

いや、俺に言われても………

「細かい話は後だ!お前らも祭りに参加してこいよ!」

「祭りって…………大乱闘じゃないですか!!」

ジンの叫びを無視して十六夜はグロピエロに体を向ける。

「雑魚共ついでに天幕吹き飛ばしせて爽快だったぜ。それと“強きを挫き弱気も挫く”が俺の座右の銘なんでな」

「ちなみに俺は“やられてもやられなくても三倍返し”がモットーだ」

「アハハハハ、驚いタな。年季は入ってもテモかナリ頑丈な天幕だったンだけどナァ

「ダメじゃないですか十六夜さん、修也さん!皆様をなるべく無傷で返してあげなければ黒ウサギたちの責任に………ってあれ!?ジン坊ちゃんにレティシア様ではないですか!」

「黒ウサギ!よかった無事だったみた…」

「みん な」

ん?あれはフェルナ?

「さーかす に いかない?」

「フェルナさん!?どうしたんですか!?」

「チケットを てにいれることが できたから ぜひ みんな にと おもって」

「フェルナさん…あ…貴女は…人…形…」

おい、マジかよ………

「危ない!黒ウサギ」

軽くショックを受けてると十六夜が急に黒ウサギのウサ耳を掴み投げ飛ばした。

「ふー間一髪だったぜ」

「ありがとうございます!でも、助け方が凄くぞんざいです!」

凄い助け方だな。

「ネーネー君達、ヨソ見してる場合カナァ。油断しテると潰シちゃうよ?」

「うわわわわ、もう何がなんだか、あの方は一体何なのですか!?」

「あれとなら黒ウサギが居ぬ間に一戦交えとる!正体が分かっているであろう。なぜさっさと倒さんのだ!」

「いや、あいつ事態を潰すのは簡単だが思ったより根が広く張られてるみたいでな、それを一気に片付けねえと。つーわけで手伝え白夜叉。この街ぶっ壊すぞ!」

なるほど、そう来るか………

「ほほーう!街をか。随分と大きく出たな!合点承知之助!」

「オイ、それ死語だぜロリババァ!」

「和気藹々と何をとんでもないことぬかしておりますか!レティシア様からも何か言ってやってください!あの人達無茶苦茶ですよ!?」

「良いのではないか?私はジンと避難しておく」

「こっちも大体片付いてきたしやってみたら?」

「一応何か考えがあるんでしょう」

「いいんじゃね?面白そうだし」

「お三人までー!?」

街を破壊することに賛成する俺達に黒ウサギが絶叫する。

「こらコラそんな事はさせナイよ。マナーの悪いお客サンは今すぐ退場だ!!」

「しつけぇんだよ!!」

黒ウサギを背後から襲おうとしていたグロピエロを十六夜が吹き飛ばす。

「白夜叉!また邪魔が入る前にやっちまうぞ!」

「もう仕方がない!皆さん最大限の防御を!デカイ衝撃が来ます!」

「行くぞ!」

その瞬間、紅い風が吹き荒れた。

「すごい熱風だわ!これが白夜叉の力なの!?」

「この紅い風…太陽のプロミネンス現象だってさっき言ってた」

「最高で七〇〇〇度まで操れるらしいからまだ本気じゃないぜ!それよりも見ろ」

俺が街を指差すと街の光景が熱風を浴びた所から変わっていった。

まるで絵具が剥がれ落ちていくかのように。

「元々はゴーストダウンだったこの区画を自身の力で塗装を施し生きた町に見せかけていたんだ。“虚栄(ヴァニタス)”おそらくそれが奴の正体だ」

「ヴァニタス?」

「旧約聖書「コへレットの書」の虚無を表す一説に由来した絵画様式のことだな」

「ああ、奴はその作品群から悪魔として箱庭に生まれこの滅びたコミュニティに居付き

あたかもまだ栄えてるように絵具で飾り立て仮初の繁栄で人々を町に誘い込んでいたんだ」

「よく気付いたわね」

「さっきあれだけ騒いでも人っ子一人現れないのを見れば定住している奴はいないと分かる」

「つまり黒ウサギ達が戦った団員も皆再現された物!?一体何のためにそんなことを…」

「それを頼んだ奴がいたんだろう。おそらく………」

俺はゆっくりと歩きもう動かなくなったフェルナの元に行く。

「とうに滅びてしまったコミュニティの役目を未だ果たそうと悪魔と手を組んでまで言葉巧みに人を誘い込み手段も選ばず、まだこの世界にあろとした」

動かなくなった人形を拾い俺はそっとギフトカードにしまった。

このままじゃ、可哀想だもんな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かつて滅ぼされた魔王の遺留品…か。あの移動式テントもマリオネットもよくあれほど長く稼働できたものだな。限界が来ていたとはいえ大したものだ」

「なんだが切ない話よね。あの子もあちこちで今回と同じことを繰り返していたんですって?」

「そふみたひ。解放された人達は北や南のコミュニティばかりだったひね」

「サーカスの仲間がいなくなって自分一人が寂しかったんだろうな。後耀、食べながら話さない」

「全くとんでもねえ寂しがり屋がいたもんだぜ。なぁ、黒ウサギ」

「そうですね。………なんで黒ウサギだけはんぺんなのでしょうか?」

「「「「心配かけたペナルティ」」」」

口を揃えて黒ウサギに文句を言う。

「今回は私達が散々迷惑かけられたもの」

「揚句敵にも回りだすし」

「途中から本気で勝とうとするし」

「この“箱庭の貴族(迷)”」

「無駄に正論でつっ込み返せない!」

俺達からの罵詈雑言に黒ウサギは黙り込む。

「まあまあ、野菜串もあるから…ほら、畑で採れた人参だよ」

「ジン坊ちゃん、大丈夫ですよ。やはりここは皆様に力を付けて貰うことにします。今回の件で改めて実感したんですやはりコミュニティが廃れてしまうのは大変寂しい事だと……」

「そうだね…僕達もあのサーカスと同じ憂目にあってたかもしれないし……」

「まだ問題は多々ありますがやはり御四人様をお呼びして正解でした。この調子で皆様と共にどんどんコミュニティを大きくしてまいりましょう!」

はしゃぐ黒ウサギに十六夜は静かに告げる。

「何ぬかしてるんだ黒ウサギ。コミュニティを大きく?そんな事約束した覚えなんてねえぞ」

「え…?え…?でも十六夜さ…」

黒ウサギが焦っていると十六夜は食べ終えた串を地面に突き刺す。

「魔王を倒して目指すは最強コミュニティ!!俺達をよんだからにはこれくらい豪語してみせろよな!」

十六夜の言葉に俺達は無言で頷く。

黒ウサギは目に涙を浮かべ笑顔になる。

「皆さん…黒ウサギは…黒ウサギは…感激いたしましああぁぁぁぁ!?」

そして、黒ウサギは地面に掘った穴に落ちる。

「やったぜ!上げて落とす作戦大・成・功!」

「これで今回の件はチャラね」

「ラビュリントスの時から学習してないね」

「流石“箱庭の貴族(馬)”だな」

「「「違いない!」」」

黒ウサギをからかい四人で大爆笑。

「いい加減にしてください!この…問題児様方アアアッ!」

「待ってほんのジョークよジョーク!」

「お肉上げるから」

「ほらウサギ肉」

「落ちるときスカートがいい所までめくれ」

「やかましいのですよー!!」

黒ウサギの絶叫とハリセンで叩く音がこだました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ~~~~~~~~~~~~~~~おまけ~~~~~~~~~~~~~~~

「というワケで新しい仲間だ!」

「フェルナ―ン」

「「「「「「どういうワケ?」」」」」」

簡潔に言うと俺は動かなくなったフェルナを回収し、それを“ペルセウス”に持って行った。

“ペルセウス”は“オリュンポス十二神”が一柱“鍛冶神・へパイストス”から神格を授かっているらしく恩恵付与や霊石類の錬成は得意らしい。

そこで、“ペルセウス”と力を合わせフェルナをもう一度動けるようにしたのだ。

「記憶は無いし、言葉も「フェルナ―ン」しか言えない。体も人形サイズだから戦闘能力もそこまで高いとは言えない」

「なら、どうしてもう一度動けるようにしたの?」

耀の質問に俺は頬を掻きながら答える。

「なんかさ、可哀想だったからさ、居場所を上げたいと思ったんだよ。それに、一人は寂しいからな」

「フェルナン?」

優しくフェルナの頭を撫でるとフェルナは不思議そうにこっちを見てくる。

「ジン、どうかフェルナをコミュニティに入れてやってくれないか?基本的には俺のギフトとなるから入れてくれってのもおかしいがフェルナをコミュニティの一員として認めてくれないか?いや、認めてくれ!頼む!」

頭を下げジンにお願いする。

「いいですよ。フェルナさんを“ノーネーム”の一員として迎え入れます。皆さんもそれでいいですか?」

「俺はいいぜ。動く人形なんておもしれぇしな」

「私もいいわよ」

「私も」

「YES!黒ウサギも大歓迎なのですよ!」

「皆………ありがとう」

こうして俺達のコミュニティに新たな仲間が加わった

 


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