問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ? 作:ほにゃー
「さて残すところあと一勝!戦況は確実にこちらの有利でございます!見た所そちらのコミュニティでまともに戦えそうなのは団長さん一人のみ!対してこちらにはまだまだ余力があります!つまりどう転んでも圧勝必死!これも我が“新生ノーネーム”の圧倒的パワーと黒ウサギの優秀さを持ってすれば当然の結果なのですよ!」
やたらとドヤ顔で言う黒ウサギ。
てか、お前何かした?
調子に乗って勝ちに行こうとするわ、なんかこの結果を自分の手柄のように言うわ、敵に捕まるわ、どうみても優秀じゃないよな。
そんな黒ウサギに団長は
「………せやな」
ふっと笑い小馬鹿にする。
「すみません…今回対して活躍してないのに調子乗っちゃってすいません…」
結局返り討ちに遭い落ち込む黒ウサギだった。
「返り討ちに遭うなら最初から威張らないの!」
「仕方がないさ、なんてったって“箱庭の貴族(笑)”なんだから」
「そうそう、“箱庭の貴族(笑)”なんだから」
「そうだ、“箱庭の貴族(笑)”だがら仕方がねぇ」
「そうね“箱庭の貴族(笑)”だものね」
「皆さま、少しは慰めて下さいよ!」
そんな黒ウサギは放っておき妙だな。
戦況はこちらが有利だが、あちらは一向に態度を崩さない。
まるで、何か策略があるかのようだ。
「団長さんがどのようなギフトかは不明ですし、油断は禁物です。ですが…次に戦うこのお方!“ノーネーム”最強問題児の十六夜さんがひと度暴れすれば…」
十六夜は黒ウサギを担ぎ上げそのまま闘技場に落とす。
「次はお前だ黒ウサギ」
「アレ―――――――――!?」
黒ウサギの絶叫が響く。
「いや、あの、ここは十六夜さんが有終の美を飾ってめでたしめでたしな流れでは!?」
「悪い!実は俺『じっとしてないと食パンしか愛せなくなってしまう病』なんだ」
「『じっとしてると髪が逆立ってしまう病』はどこにいったのですか!」
*第1話 やっぱり問題児だそうですよ?参照
「はっ、だったら白夜叉様が…」
白夜叉は壁にせんべいだものと訳が分からない文字を書き蹲っていた。
「ついにスネた!」
「つべこべ言いなさんな。一度ステージに上がってしまえば危険は不可。じっくり調教してあげようやないの。ウサギさん♡」
団長は鞭を手に悪魔のような笑みを浮かべる。
あ、この人Sだな。
黒ウサギは鞭で叩かれそうになるを避け必死に逃げ回る。
「いやぁ、中々良いいじめられっぷりだ!」
十六夜って本当にいい性格してるよな。
「十六夜君…本当に黒ウサギで大丈夫なの?」
「少し考えがある。悪いが黒ウサギにはひと頑張りして貰うぞ」
やはり、何か考えがあったか。
「なんや、逃げてばっかで張り合いがありませんなぁ。月の兎もたいした事ないどすえ」
「すみません。心の準備も無しに放り込まれたものですから……」
「ふん、まぁ、何にしろ、ウサギさんは絶対私に勝てませんけどな。これは予言どす。こちらの攻撃を防ぐことはおろか、私にダメージを与えることもできずに負ける」
団長の言葉に黒ウサギは力無く笑う。
「あ、あはは…なんとも見事な予言ですが………随分とナメられたものですね!!」
髪の色を桜色に染め“叙事詩・マハーバーラタの紙片”からインドラの槍を召喚した。
そのまま一気に間合いを詰めそして団長の顎を槍で撃ち抜く。
「よしっ!手応えあり!」
黒ウサギの槍は見事に団長にあたりダメージを与えた。
与えたはずだった。
しかし、何故か団長は無傷で黒ウサギは全身を切り裂かれてた。
「へ…?」
「「黒ウサギ!?」」
「あ、あれ…なんで…いつの間に…?あ、ああああ……ああああああ!!」
「ほら、言った通りやろ?あんたは私に勝たれへんて」
予想外のことが起き黒ウサギはちょっとした切り傷でもその場に蹲まってしまった。
まずいな。
ダメージより精神的に耐えられなくなるかもしれん。
「ウソでしょ…団長は無傷だわ!あの黒ウサギにどうやって……」
俺たちが驚く中十六夜は一人冷静だった。
「大丈夫だ、黒ウサギ。お前にはまだ切り札があるだろう」
「え?切り…札?」
「ああ、そうだ。お前言ってただろ。月の兎だけが受け継ぐ最強の破壊技があるってな。それを今ここで使うんだ!もちろんその威力に観客席もろとも吹き飛ぶだろうが、ここに来てるのは所詮、ゴロツキ共だ。どうなったって構うかよ!」
十六夜は観客席に聞こえるように大声で叫ぶ。
「えっと、あの、一体何の話を……」
「ハッタリだ。いいから合わせろ」
今度は黒ウサギにしか聞こえない声量で言う。
黒ウサギは取りあえず十六夜の言葉に従い立ち上がる。
「わかりました。し…死にたくない方は今すぐここから離れてください!これよ黒ウサギは二百年封じられし真の力を解放します!そのいりょくたるやもうなんというか、こう…その…えっと…ものすごいそうですよー?」
「くだくだじゃねーか」
「大根役者が…」
「?」
「演技へたくそね」
上から順に俺、十六夜、耀、飛鳥の順番での感想だった。
「おい、なんかヤバそうだぞ!」
「月の兎が本気だすってよ!」
「冗談じゃねえ巻き込まれてたまるか!」
「早く逃げろ!」
へたくそな演技だったが月の兎と言う名前の威力は凄く観客たちは我先にと逃げて行く。
「皆待ちなはれ!最後までここで観てはるんや!そんなデタラメに騙されたらいかんどす!」
ここに来て団長が取り乱した。
そして、観客がいなくなると黒ウサギの怪我も嘘のように消えていた。
「もしかして…団長さん、貴女のギフトは…人が抱くイメージの具現化ですね!」
その言葉と共に黒ウサギの背後から巨大なウサギが現れた。
なんか、おーばーかーさーまーとか言ってるんだが………
「…何、アレ?」
「あぁ、なんつーか、俺達が今頭の中で思い描いてた物…?」
あまりの光景に飛鳥はえ?何コレ?っと言った感じだし。
耀なんか口を開けて固まってるぞ。
取りあえずこれで納得がいった。
「あの団長のギフトは他人の心象を読んで現実に表す事が出来るのか」
「ああ、さっきの様に黒ウサギが傷を負う想像を誰かがすればそれが現実となる。逆に治れと思えば傷は癒える」
「そんなの何でもありじゃ…」
「但し、多数派の人数が同じイメージを集中させた時に限るんだろう。ここに観客を募っていたのはその為でもあったんだ」
十六夜の推理に団長は溜息を吐く。
「やれやれ、こうもあっさり仕掛けを見破られるとはなぁ………参りました」
団長は鞭を捨て前かがみになる。
まるで、サーカスの幕引きをする様な格好だ。
「“空想劇(イマジネーションズ)”初戦でウサギさんが戦った時や昼の公演でドラゴンを出した時なんかもこのギフトを発動させとりました。それにしても、まさかそっちもあないな虚言で客を散らすとは……初めから“箱庭の貴族”というブランド力を生かすつもりやったんどすな?」
「ああ…“箱庭の貴族(肉)”のな」
「また、食肉扱いですか!それより、観客の皆様は…」
「客席の出口をくぐれば元来た魔法陣の場所へ出る様になっとります…“ノーネーム”か…」
団長がそう呟き黒ウサギに手を差し出す。
「名無しにしては骨のあるコミュニティやった……久々に楽しませて貰ったどす。アンタ達ならもしかしたらこのサーカスを…………」
クソウサギと握手をすると団長の姿は消えてなくなった。
「団長が…消えた…。私達が勝ったってこと?」
「わかんない……けど…行方不明の人達がまだ見当たらない」
その瞬間、テントが揺れ始め観客席は無くなり、さっきとは違う、ボロボロのテントが現れた。
「なにこの廃墟!私達まだ誰かのイメージを見てるの!?」
「違う…きっとこれが本当の姿なんだ」
テントも誰かのイメージで綺麗に見せていたのか。
「アハハハハ!まダ戦イは終わらせナイヨー♪」
「こ…この癇に障る声は…」
「まさか…」
「まさかの…」
「そのまさかだろうな」
俺達四人は一斉にグロピエロを思い出す。
「こコで選手交代っダンチョーに代わっテ、このボクがオ相手しヨウじゃないかー!!」
「「「…………………」」」
いきなり現れた爽やかイケメン青年(笑)に女性陣は固まる。
「あの風変わりな方はお知り合いですか?」
「知らないわ。あんなスルー対象…」
「関わらないでおきたい」
「アハハハ、女性支持狙って造形変エテみたノに大不評だー」
「一回鏡見てこい。グロピエロ」
「だレがグロピエロさ!ボクの名前ハ「やっぱりまだ生きてたのかねじ切れ太!」
「人の会話ヲ遮ラないでくレるかな!それと、どさくさ二紛れて変ナあだ名をツけるやメテくれナい?ピエールだよ!」
名前が在り来たりすぎて詰まらねぇ。
「てか、猫耳少女に飛鳥のギフトを教えたのはお前だったんだな」
「まあまあ、そう目くじら立テナいでよ。気二なってるンでしょ?行方不明者がドコにいルのか?ダカラ連れて来テあげタんだヨ!」
グロピエロの後ろから沢山の人が現れる。
「あの人達が!?」
「こんなに沢山ですか!?」
見た限り五、六十人程いるな。
「オイ、白夜叉」
「なんじゃいなんじゃい、私はここでおせんべい食べるのに忙しいんじゃい」
いつまで拗ねてるんだよ。
「そいつは後にしろ!どうやらこのショーも大詰めみたいだ」
「いいヨ、いイよ。全員まトめてかかってオいで。皆でワイワイ楽シんデ拍手喝采のフィナーレとイこうじゃなイか!!」