問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ?   作:ほにゃー

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第7話 口汚く罵るそうですよ?

「…のう、黒ウサギよ。張り切ってキメ顔したのに舞台袖へ強制連行されるロリの気持って考えたことある?」

「YES!いじめられっ子の気持ちなら痛い程!」

「だったらあのまま私にやらせてくれた良かったであろぉぉぉ!」

素晴らしい笑顔を向ける黒ウサギに白夜叉は泣く。

「まぁ、今回の所は希望者にお任せいたしましょう。少し心配ではありますがルーキーに経験を積んで頂くのも大切でございます!というワケでファイトなのですよ!飛鳥さーん!」

「はいはい、まったく騒がしいわね」

猫耳少女との対決は飛鳥に決まった。

まぁ、本人の希望でもあるが。

確かあの少女昼の公演で剣術と軽業を使ってたな。

剣術と軽業、少し厄介かもな。

となると、ディーンを使っても小回りの利いた攻防をしてくる。

ならば、飛鳥のギフト『威光』を使って降参させるのがベストか。

飛鳥もそれを分かってるらしく降参させようと口を開く。

「今すぐ『降参し「降参します」

飛鳥が言い終える前に猫耳少女は剣を捨て降参を宣言した。

「やっぱり、あたしもう戦いたくないよ。家に帰りたいよ、もうこんなの嫌だよぉ!」

「な、何なの、急に?もしかして貴女もこのサーカスに取り込まれた被害者なのね!?」

飛鳥が猫耳少女に近づく。

「飛鳥!下がれ!」

「え?」

俺の言葉に飛鳥は驚く。

そして、右手を猫耳少女に切りつけられる。

「アタシ、こんな弱いのと戦うのもうやだ」

先程の涙が引っ込んで今は冷酷な顔をしている。

「あーあ、テンション下がるなー。せっかく思い切り体動かせると思ったのにさ、相手がただの人間なんてマジ最悪!せっかくのショーが台無しね。余興にもならねぇよ。この田舎女じゃ」

「なんですって?」

猫耳少女の発言に飛鳥は青筋を立てて声を震わせる。

「女って怖ぇな」

「特に若いのはな」

十六夜と白夜叉が呑気にそんなことを言う。

「何を呑気なことを言っているのですか!?なんなのですか、あのヤンキーさんは!?飛鳥さんと正反対のタイプで、すっかりあちらのペースです!黒ウサギならあの様な罵詈雑言、褒め言葉の内なのに!」

「つぐつぐ可愛そうな体質だなお前」

まぁ、黒ウサギのM発言はどうでもいいが、確かに向うのペースに乗せられてるな。

「まさか猫被ってたなんて…こんなにも癪に障る女性に出会ったのは久しぶりよ」

「そりゃネコ科なんだから猫も被るよ、なんてな!つーかこんなの箱庭じゃゴロゴロいるっての!なのにあんな三文芝居に騙されるなんて田舎女って言うより世間知らずのお嬢様かお前」

「『黙「させるかよ!」

飛鳥が再びギフトを発動させようとする前に猫耳少女はそれを妨害し、蹴りを放つ。

そして、ギフトを発動させる間もなく剣を投げつける。

「飛鳥さん!?」

「攻撃を畳みかけて『威光』を発動させないようにしてる」

「あの猫耳少女、飛鳥のギフトのこと知っていやがる」

でなきゃ、あんな対応できない。

「つまんないの。アタシ弱い者いじめって好きじゃないんだよね。だからさー、今から五秒間だげ動かないであげる………なんて、冗談だけどんね」

今度は火の輪を使い飛鳥に攻撃を仕掛ける。

「まずいです!降参を」

「ダメよ!一言言い返すまで退くものですか!」

「何言ってんの!?もう立てもしないくせに!」

猫耳少女はまた、剣を投げつけ飛鳥にダメージを与える。

「人間の女ってなんでこうも傲慢で身の程知らずなの?何でも思い通りになると思ってさ。流石に動けないでしょもうあたしの勝ちでいいよね?」

猫耳少女はそう言って帰ろうとする。

「待てよ。猫耳少女」

「何よ?」

不機嫌そうにこっちを見てくる。

「お前は一つ間違ってる。確かに飛鳥は世間知らずのお嬢様だ。だけどな……………飛鳥も十分な問題児なんだよ。それに、まだ試合は終わってない」

「はぁ?何それ?意味分からないんだけど。もう、あの女は立つこともできないんだよ?今更何ができるって」

「その通りよ。まだ、終わってないわ」

もうボロボロで怪我だらけの飛鳥だが、それでもまだ立ち上がり、猫耳少女を見据えていた。

「な、何なのあんた…どうしてただの人間がまだ立ってられるのよ!?」

予想外のことに猫耳少女は狼狽える。

「白夜叉様、あのドレスの身を守る加護はどれほどのものなのですか?」

「せいぜい少量のダメージを減少させる位のものだ。故にあれほどの攻撃を受けああも毅然としていられるはずもないのだが……まさかあやつ、自分自身にギフトを掛けておるのか!?」

『威光』生き物やギフトを支配することの出来るギフト。

飛鳥は自分自身にギフトを掛けて自己支配をしているんだ。

「一つ言っておくわ。確かに私は世間知らずの箱入り娘で物事を知らないかもしれない。でも、だからこそこの箱庭が楽しくて仕方がないの。何もかも思い通りにならないこの箱庭がね。もしも、まだあの世界に残ってたらと思うとゾッとするわ。だってここに来なければ仲間と出会うことも、サーカスを見ることも、夜更かしをすることも、本気で怒ることもなかったもの。それに…………こんな言葉を使ってみることもなかったでしょう」

そう言うと飛鳥はギフトカードを取り出し叫ぶ。

 

「ク ソ ッ タ レ が !」

 

そう叫ぶと同時にディーンを召喚する。

飛鳥はとても満足気な顔をしていた。

「よし、いいぞお嬢様!そこはもっとドスを利かせて言うんだぞ!」

「清楚な令嬢に口汚く罵られるのというのも中々に良い!」

絶対にこの二人の影響がでかいな。

「行くわよ、ディーン!『攻撃なさい!』」

ディーンの拳が振り下ろされる。

しかし、猫耳少女はそれを素早く躱す。

「ふん!なにそれ!ただ的がでかくなっただけじゃん!あたしのギフトはサーカス用具を無尽蔵に操ることができる。そっちが大きさで勝負なら、こっちは数!避けれるもんなら避けてみろよ!」

飛鳥を目掛けて一斉に色んな刃物が襲い掛かる。

しかし、飛鳥はただ微笑むだけだった。

「こんな無茶ができるのも箱庭ぐらいのものね。ディーン…………『ぶん投げろ!!!』」

「DEEEEeeeeeeN!!」

ディーンは客席を引っぺがしそのまま猫耳少女に向け投げ飛ばした。

「む、無茶苦茶よおおおおおぉ!!!」

そんな事を叫びながら猫耳少女は客席ごと吹っ飛んだ。

「お嬢様だからって優雅に戦うとは限らなくってよ」

うん、凄い勝ち方だな。

「でも、まぁ……」

「やりました飛鳥さん!“ノーネーム”一勝ですよ」

全員でハイタッチをし勝利を喜んだ。

 

 

 

   ~~~~~~~~~~~~~~~~おまけ~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「ほえづらかきやがれこの駄ウサギっ!」

「よし、いいぞ。その調子で次は」

「教え込まなくていいです!このおバカ様っ!」

飛鳥に汚い言葉を教えてる十六夜に黒ウサギはハリセンを叩き込んだ。

どこにしまってたんだ?

 


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