問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ?   作:ほにゃー

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第4話 情報は信頼第一だそうですよ?

翌朝、俺達はすぐに黒ウサギの捜索を開始した。

十六夜は一人で行動、耀と飛鳥は二人で捜索。

俺は空から黒ウサギを捜索した。

だが、一向に見つからない。

捜索を続けると耀と飛鳥を見つけたので様子を伺うことにした。

「二人とも、そっちはどうだった?」

「修也、ううん、全然見つからない」

「あーもうっ!本当に何処に行ったのよ黒ウサギは!」

飛鳥はとてつもなく怒っている。

「まーまー、落ち着いて飛鳥」

「昨日からこれだけ探しても見つからないなんて迷子にしてはおかしいんじゃなくて!?きっとどこかで道草を食ってるに違いないわ」

「それはないよ。道草は美味しくない」

「いえ、そういう意味じゃなくてって食べたの!?」

まさか、現実に道草食う人がいるなんてな。

驚きだぜ。

「あすか、あすかー」

遠くから幼い声が聞こえる。

声の正体はメルンだった。

「メルン!おかえりなさい。本拠の方はどうだった?」

「ダメー、いなかったー」

「そう…ありがと」

本拠に帰っていないとなるとアテがなくなってしまったな。

どうするか………

「もしかしたら御飯の匂いにつられて来るかも」

「それは耀だけだぞ」

なんで、コレいける!みたいな顔してるんだよ。

いくら黒ウサギでもそんなアホみたいな作戦に……………引っ掛かるか?

「おーい、黒ウサギは見つかったか?」

「十六夜、残念ながらダメだった。お前の方は?」

「ああ、こいつが話があるっつーから聞いてた。中々に面白い話が聞けたぜ」

十六夜は自分の後ろにいるフェルナを指差す。

「話?」

「実は「いいいいいやっほおおおおおおおお!!」

この叫び声は!

「会いたかったぞ黒ウサギィィィ!!正確には「揉みたかったぞ黒ウサギ」となるわけだがな!うーむ、やはり何度抱き付いてもこの感触はたまら…………ん?えらく、まな板だのう。黒ウサギよ…」

白夜叉だよ。

てか、それ黒ウサギの胸じゃなくて耀の胸だぞ。

その瞬間、白夜叉は地面にめり込んだ。

「いやはやこれはまったく失礼をした!てっきりおんしらの輪の中に黒ウサギがおるものだと確信し渾身の抱擁を繰り出してしもうたわ!しかしながら、無いと思えるようなぺったんこの胸でもしっかりとした柔らかさがあるのだのぉ。うむ、悪くない」

「白夜叉、次は記憶が無くなるまで殴るよ」

「お前らその辺にしとけ、修也がトラウマを引き起こして上空退避したぞ」

あれ?いつの間に俺、空に移動したんだ。

耀が白夜叉を殴った瞬間、いきなり体が震えたと思ったら空にいる。

とりあえず、地上に降りる。

「それで、東側最強であらせられる白夜叉様がどうしてこんなところまでセクハラをしに来たのかしら?」

「うむ、少々野暮用があっての!して、黒ウサギは何処におるのだ?」

「それはこっちが聞きたいところだわ。昨日からはぐれてしまって見つからないのよ」

「急性胃腸炎で逃げ出したか…だからストレスは溜めるなとあれほど…」

「違うわよ」

「まぁ、挨拶代りの冗談はそこそこにして、はぐれたとはどういう事だ?」

急に白夜叉が真面目になり聞いて来る。

相変わらずスイッチが入るのが唐突だな。

「私が今日ここに来たのは他でもない。近頃不穏な話を耳にしておるからなのだぞ」

「不穏な話?」

「うむ、サーカスを見に行った者達が帰って来ぬという話をな」

「それって黒ウサギと同じ…」

「やはりおんしらも見物に言っておったか。だとすれば、黒ウサギはそれに巻き込まれた可能性が高い」

「ちょっといいか?それに関してこいつからも話がある」

十六夜がそう言うとフェルナがその話を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええっ!?フェルナのコミュニティにも行方不明者がいる!?」

フェルナの話を聞くとフェルナのコミュニティは前に一度あのサーカスを見に行ったらしく、その時仲間の一人がショーに参加した。そして、そのまま帰って来なかったそうだ。

スタッフにきいても「裏口から退場させた」の一点張り。

「サーカスが怪しいとは思ったけど私達じゃもう打つ手がなくなっちゃって。そんな時、皆と出会ったの。それで思ったんだ…この人達なら何とかしてくれるんじゃないかって」

「それじゃあ、私たちをサーカスに誘ったのは初めからそのつもりで!?」

「ごめんなさい!危険だとはわかってたけどそうするしかなかったの!それに黒ウサギさんが巻き込まれる思って無くて」

フェルナの言葉に俺達は顔を見合わせる。

「貴女、なかなか見る目あるじゃない。私達に頼ったのは正解よ。黒ウサギも貴女のコミュニティの仲間も必ず取り戻して見せるから」

「お姉さん」

フェルナは目から涙を流しながら嬉しそうな顔をする。

「黒幕はやっぱりサーカス団か。そこに魔王がいる可能性はあるのか?」

「そういえばおんしらは打倒魔王が目標だったの」

十六夜の言葉に白夜叉は思い出したように言う。

「魔王とは“主催者権限”を悪用する者共のこと。あの天幕で何が起きてるかは分からんが行方不明者が続出している点から十中八九そうであろう。故に秩序の守護者“階層支配者”である私がここへ来ておるのだ。これ以上被害を出す訳にはいかぬ。ひとまず様子を探りにいくぞ」

「はいはい、もう夜だってのにまた歩くのね」

白夜叉のセリフに飛鳥はうんざりするように言う。

まぁ、この中じゃ一番体力なさそうだからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テントに着くと灯りがついていた。

やっぱり昨日の灯りは気のせいじゃなかったんだな。

テントの周りを歩きながら様子を見る。

これといって変わったことは…………なんで誰も気づかないんだ?

一日一回しか公演しないサーカス団のテントに灯りがついてたら誰だって不自然に思うはずだ。

そういえば、周りは屋台や商店ばかりで民家は少ないから誰も気づかないのか。

それとも、気づいた人たちに何かあったのか……

そんなことを考えながら歩き、テントの入り口前に着く。

すると、手元に一枚の契約書類が現れた。

「皆!こっちに来てくれ!」

すぐさま、十六夜達を呼び契約書類を見せる。

「それは契約書類!?」

 

『ギフトゲーム名:Funny Circus Clowns

 プレイヤー一覧:現時刻テント前に現れた者

 クリア条件:円形闘技場にて五回試合での三勝以上。なお、プレイヤー達は招待状を見つけなけ              れば闘技場への入場を許可されない

 敗北条件:上記の条件を陽が昇る前に満たせなかった場合

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します

 

                                  “トリックスター”印』

 

「どうやら始まってしまったようだの。覚悟は良いなおんしら。これは“主催者権限”の掛かったギフトゲーム。リスクは高いが拒否は出来ぬ。契約書類によればまずはこの天幕に入るための招待状とやらが必要。大至急それを探すことから始めるのだ。奴らの根城に黒ウサギはおる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言う訳でなんか情報はないか?」

俺は現在、情報を取り扱うコミュニティ“インフォーマント”に来ている。

フェルナを助けたあの日、耀と飛鳥をナンパしていた頭の悪そうな男が属してるコミュニティで俺の前に居るこの女性はコミュニティのリーダーのネズミさんだ。

本名ではないらしく通り名だそうだ。

この前のナンパの件の謝罪で“ノーネーム”を訪れてきた時に知り合った。

その時、親父に昔、命を救われたことがあり恩があるらしくその恩返しとナンパの件での謝罪の意味もあり、俺に無償で情報を提供してくれることになった。

ちなみに、ナンパ男はコミュニティのルールである御客や女性に手を出さないを守らなかったことからコミュニティを追放されたそうだ。

情報を扱うだげに信頼は絶対なもの。

コミュニティのルールを守れない者は即刻追放。

それもコミュニティのルールなのだと言っていた。

「そうだナ。招待状があるかは分からないが、一つサーカスに関係がありそうな情報ならあるゾ」

「どんなだ?」

「毎晩、その町はずれの小高い丘にピエロが現れるそうダ。サーカス関係なら当たってみるのはどうダ?」

ピエロか。

行ってみる価値はあるか。

「ありがとな、ネズミさん。これお代」

財布から銀貨二枚を取り出し机に置く。

「オイオイ、情報は無償で提供するって言ったロ?」

「いくら命の恩人の息子だからって無償は無いだろ?だから、払う」

「………………まったく。性格まで親父さん似だナ」

ネズミさんはそう言うと銀貨一枚を投げつけてきた。

それを右手で受け止めてネズミさんを見る。

「無償じゃなくて割引ダ。それなら文句はないだロ?」

フードで目は見えないが僅かに見える口元はニヤリとしていた。

「わかったよ。ありがたくそうさせてもらう」

「ああ、死なないように気を付けナ。シュウ坊」

「そのシュウ坊はやめてくれよ」

「悪いナ。気にいった奴は渾名を付けたくなるんだヨ」

ニシシと笑うネズミさんを呆れたように見ながら銀貨をしまいもう一度お礼を言ってから部屋を出る。

「……………ヤレヤレ、妥協の仕方も親父さん似カ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丘に向かう途中十六夜と白夜叉を見つけた。

「十六夜」

「修也か。そっちはどうだ?」

「可能性の高い情報は得た」

「奇遇だの。私らも情報を手に入れた」

「なら、答え合わせも兼ねてそこに行こう」

十六夜達と共に町はずれの丘に向かうと飛鳥も付いていた。

そして、そこには情報通りピエロがいた。

「アハハ、いらっしゃいマし、みなサマ」

笑ってるのかよくわからない顔をしているピエロの足元には倒れている耀がいた。

 


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