問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ?   作:ほにゃー

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第3話 黒ウサギはどこへだそうですよ?

「お肉が焼けましたよー。順番に取りに来ましょうねー」

黒ウサギに号令で子供たちは集まりそれぞれ串を取に行く。

「なんだかんだで、結構役立ってんな」

十六夜はイカ焼きを頬張りながら言う。

「そうね、黒ウサギも笑ってるし万事OKね」

飛鳥はカボチャを食べながら言う。

「うん。くろうふぁひのふぃくをふぁふぇたふぁいふぁふぁっふぁね(黒ウサギの肉を賭けたかいがあったね)」

耀は口いっぱいに肉やら野菜やら魚介類やらを頬張りながら話す。

「物食べながら話すのは止めなさい」

取りあえず肉汁とソースで汚した耀の口をハンカチで拭く。

すると、どういう訳か急に動きを止めた。

「おい、耀、どうした?」

「ナンデモナイ」

「片言だぞ?」

「ねぇ、十六夜君。あれってわざと?」

「いや、ガチだぜ」

「たちが悪いわね」

十六夜と飛鳥が何かしゃべってるな。

なんの話だ?

「何者だ!」

急にレティシアが串を茂みに投げつける。

「え、あの…」

茂みには女の子が一人尻餅をついて倒れていた。

「本当に何者だ?」

いや、敵がどうかも分からんで投げたのかよ。

「あ、あなたは、もしかしてあの時の!」

ん?あ、この子ロリコンハンバーガー屋に襲われかけてた子じゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「え!?サーカスのチケット!?」」

「うん今東の街に移動サーカスが来てるって知ってる?そのチケットを手に入れることができたからぜひ皆にと思って!」

女の子が言うには俺達にサーカスのチケットをくれるとのことだ。

でも、なんで?

「私はフェルナって言うの。あの街の小さなコミュニティに属してるわ。十日前に助けてくれたお礼をどうしてもしたくて、貴方達の事を聞いて回ったらここじゃないかって言われて……」

「それでわざわざお礼に出向いてくれたのですか!」

お礼ね~、ぶっちゃけ俺達が調子に乗ってゲームを受けただかだがら、お礼って言われると正直なんか悪い気がする。

「ねぇ、サーカスってなんなの?」

「そっか、飛鳥の時代はまだ、サーカスは知られてないんだね。サーカスはね、人や動物たちが火の輪をくぐったり、空を飛んだり、玉乗りしたり色んな芸をする見せ物なんだよ」

「へぇ…なんだが野蛮そうだけど気になる…かしら…」

滅茶苦茶面白そうといった顔だな。

「黒ウサギも大変興味があります」

「何だ、お前らサーカスも見たことが無いのかよ?」

「東側にはそういった娯楽が少ないから無理もない。お陰でその一座が来たときは周辺の住人は大混乱だったらしい」

へ~、そうだったんだ。

サーカスねぇ~。

話で聞いたことはあるが見たことはないな。

「行ったことが無いならなおさら良かった!絶対楽しめると思うよ!?」

「で…でも、私達色々忙しいし…」

「そ、そうなんです。お気持ちはとても嬉しいのですが今コミュニティをほうっておいて黒ウサギたちだけ遊びにかまけるわけには…」

そう言いながら二人共うずうず、そわそわしてるじゃねーか。

本当はとても行きたいんだろ。

「気にしなくていいよ」

ジンがそう言ってきた。

「黒ウサギにはこれまで苦労をかけっぱなしだがらね。羽を休めるいい機会じゃないか。行ってきなよ」

「ジン坊ちゃん」

相変わらずジンは優しいな。

「御チビもこう言ってることだし行こーぜ行こーぜ!」

「いたいっ!ちぢむっ!」

十六夜はジンの頭をばしばし叩きながら言う。

「外で遊びたくてたまらない小学生ですか!」

「それなら、飛鳥もそんな感じだぜ?」

飛鳥を指差すとなんか行く準備をしていた。

遠足前の小学生かよ。

「実は行きたくてたまらないんですね…」

「よし、じゃあ、決まりだな!」

「YES!本日はギフトゲームもお休みにして行楽日と洒落込みましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

「わあーっ!」

「大きなテントですね!」

飛鳥と黒ウサギは声に出して喜んでいる。

耀も声に出してはいないが口を開けて驚いてる。

「この辺りは商業施設もずいぶんと活気付いてるわね」

「あのテントが物珍しくてこの街に集まるから近頃自然と賑わってきたんだ。元々は廃れかけた寂しい街だったからここにサーカスが来てくれて良かったよ」

サーカスのお陰で街も救われたってことか。

いいことじゃないか。

「そういえば公演何時からなのでしょう?」

「お昼過ぎからだって。このサーカス一日一回しか公演してないの。でも、その割に観客があっちこっちから集まってくるから…」

「なるほど…つまりとても貴重なチケットなのですね!そんなチケット黒ウサギたちのためにわざわざかき集めてくださったなんて…フェルナさんはなんと良い子なのでしょう!それに比べてうちの問題児たちと来たらもう大変でしてね!いつも少し目を離した隙に………………………………やっぱり突然の自由行動してた!」

 

「黒ウサギ見て!露店のおじさまが「幸福になるツボ」を格安で売ってくれたわよ」

「詐欺られてるんで、すぐリリースして来てください!」

「ポップコーン、メガ盛りにしてもらった…」

「もはや屋台荒らしいじゃないですか!」

「そこの店でウサギ五十匹ゲットしたぞ。今晩はウサギ鍋にしよう」

「黒ウサギへの嫌がらせですか!」

「着ぐるみが喧嘩売ってきたからボコッといたぞ」

「謝って下さい!」

黒ウサギはさっきから怒ってばっかだな。

「「「「祭りの空気に浮かれてやった。今は反省している」」」」

取りあえず笑顔で謝っとこう。

「せっかくの休日なのに胃がねじ切れそうです…」

黒ウサギはお腹を押さえて倒れ込んでしまった。

「…大変なんだね…」

 

 

 

 

 

その後、サーカスの公演が始まりテントの中に座った。

サーカスの内容はとても凄くおもしろいものだった。

初めて見るサーカスとしては合格点だな。

「さぁ、ショーもクライマックス!ラストは大マジックで締め括りどすえ!ここからはそのマジックの主役をお客はんのなかから選ぶさかい!それは、この方!」

スポットライトが当たりその人物が主役になった。

「え…えっ!黒ウサギですか!?」

黒ウサギだった。

「おめでとうどす、ウサギはん。さあ、舞台の方へおいでやす」

団長に呼ばれ黒ウサギは舞台に向かう。

「いいなー黒ウサギ」

「たまには黒ウサギに花を持たせてあげましょう」

そして、団長の合図とともに黒ウサギはその姿をドラゴンに変えた。

「これにて、本日の公演は終了どす。皆様のまたのお越しを待っとります」

サーカスは終了した。

観客も徐々に帰って行く。

「すごい」

耀が呟く。

「すごい…けど…」

「ええ、黒ウサギは何処へ行ったの?」

そう、肝心の黒ウサギが何処かに行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ」

「どうだった、お嬢様?」

「スタッフが言うには黒ウサギは裏口から退場させたそうよ。だから今頃このあたりをうろついてるんじゃないかって」

「たっく面倒だな…先に帰るわけにも行かないし探すしかないか。修也と春日部の五感で居場所を把握できないのか?」

「それがこの街、雑然とし過ぎて匂いの判別がつかなかったの」

「視界も色んなものがあり過ぎてよく分からねーし。音もごちゃごちゃし過ぎてまったく意味が無い」

「ちっ、こりゃ予想以上にめんどくせぇ」

てか、黒ウサギが俺達を待たずにどっか行くってのは不自然すぎなんだが………

「みんなー!取りあえず無効に宿を取っておいたの。どっちにしろ今から帰ったら暗くなっちゃうし今夜はこの街に滞在したらどうかと思って」

「…それも、そうね」

「取り敢えず一休みしてすぐに探そう」

「うん」

「ええ」

「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

宿の部屋で俺は外を眺めていた。

一体黒ウサギは何処に行ったんだ?

あの黒ウサギが俺達を放っておくはずがない。

まさか、ストレスの溜め過ぎで急性胃腸炎に!

………………んな訳ないか…………

何アホなことをってあれ?

「なぁ、十六夜。サーカスの公演って一日一回だよな?」

「ん?そうだが?」

「今、サーカスに灯りがついてたような…………気のせいか………」

取りあえず窓を閉めた。

 


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