問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ?   作:ほにゃー

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第2話 バーベキューセットだそうですよ?

「作戦会議を行いましょう!闇雲に動いても無駄に体力を消耗するだけですから突破口となりうる案を出し合うべきです!」

黒ウサギは率先してゲームクリアのために行動する。

自分がウサギ肉にならないために必死だ。

そして、俺達はと言うと

「気を付けて進む」

と飛鳥。

「前向きに進む」

と耀。

「奇跡を信じてまっすぐ進む」

と俺。

「明日を見据えてまっすぐ進む」

と十六夜。

「「「「ガンガン進もうぜ!」」」」

ノープランでも構わなかった。

「作戦会議終わったー!!」

ものの数秒で作戦会議は終了した。

取りあえず適当に進んで行けば何とかなるんじゃね?

「もう、待ってくださいよー!」

「ったく、何やってんだよ。ちんたらしてっとおいてくぞ」

「み、皆さんは石橋をたたいて渡るということわざを御存じないのですか!?」

失礼だな。

いくらなんでも知ってるに決まってる。

罠があってもあえて不用心に進む。

その方がおもしろい。

「とにかく十分に注意して進むのですよ!」

そう言って黒ウサギが一歩踏み出した瞬間、黒ウサギの居た地面が消えて黒ウサギは落ちた。

「きゃああああああああああ」

「「「「………………………」」」」

一瞬の沈黙。

そして

「「「「ガンガン進もうぜ!」」」」

スルーする。

「助けてくださーい!!」

冗談はこの辺にして助けることにした。

助けた後黒ウサギはずっとむっすーとしていた。

「流石にへそ曲げちゃったみたいだね」

「少しやりすぎたか」

「まぁ、ほっときゃすぐに治るだろ。それより、春日部、お前グリフォンのギフトで空飛べたよな?修也も翼が出せる。ちょっと二人で上空から迷路の全景を見てきてくれ」

なるほど。

上から迷路を見下ろしゴールを見つける作戦か。

それなら、早く終わりそうだな。

「うん、わかった」

「了解」

翼を出し飛びあがり、少し遅れて耀も飛び上がって来た。

だが、飛びあがって俺と耀は気づいた。

霧がかかっており遠くまで見えない。

そのことを十六夜に伝えると十六夜は少し、不満そうに納得した。

そこで飛鳥が右手を壁について歩くという提案をした。

しかし、その方法が通用するのは平面的な迷路での話でここみたいな孤立した階段や建物がある立体迷路には応用できない。

十六夜も知っているらしく訂正すると飛鳥は少しむっとした。

「しかし、広さが分からないのはちと難儀だな」

確かに。

「私に任せて。要は脱出はできればいいのでしょ」

飛鳥の言葉に俺は飛鳥の方を見る。

飛鳥はギフトカードを構えていた。

「来なさい!ディーン!」

「DEEEEEeeeeeeeeeEEEEEN!」

ディーンを召喚した。

まさか………

「壁を薙ぎ倒して一直線に進むのよ!」

「豪快だな」

なるほど、考えたな。

それなら、迷宮の突破にもなる。

ディーンが拳を振り上げ振り下ろす。

まさに、振り下ろすその瞬間

「だ、ダメー!!」

黒ウサギが間に入った。

振り下ろされた拳は十六夜が間に入り受け止めた。

「何やってるんだ駄ウサギ!」

「あぶないでしょ!」

「す、すみません!反則だったもので!」

「反則?」

ん?どういうことだ?

「このゲームのクリア条件はステージの謎を解き迷宮の突破。つまり、壁を壊して迷宮としての形を崩してしまえばルール違反!黒ウサギがいる限り違反は見過ごせません!」

「黒ウサギを審判にしたのはそう言う意図があったからなのね」

でも、壁を破壊してはいけないなんて書いてない。

破壊してはいけないならそう書くはずだ。

もし、破壊して責められても向うの説明不備で話は通るはず。

でも、ペストの時みたいにルールの一文に隠されてるってこともあるか

「修也行くよ」

「ん?あ、ああ」

耀に呼ばれて気付いたが、どうやら十六夜達はさっきに行ってしまったらしい。

「結局、どうなった?」

「黒ウサギを先頭に地道に進むことになった」

取りあえず納得して十六夜達の後を追う。

それにしても、さっきから気になることがあるがそれが分からない。

何だろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒ウサギを先頭に進み数時間が経過した。

「あれ?この道さっきも通りました?」

「「「「ほら、迷った」」」」

迷ってしまった。

俺や十六夜はともかく耀と飛鳥の疲労が気になるな。

耀にいたってはお腹も空いたらしい。

「仕方がない。壊すか。速やかに」

「爆死しろと!?速やかに!?」

壁を壊した進もうとする十六夜に黒ウサギは涙ながらに止める。

ん?なんかおかしい。

でも、それがわからない。

「あ…大きな建物が見えます!あそこにはいってみませんか!?」

「ん?本当だ」

「待って、建物に入るならあっちへ行った方が近そうだけど」

「いえ!こっちの道が安全そうです!こっちから行きましょう!」

「張り切っちゃってるわね。とりあえず黒ウサギについて行きましょう」

建物に入ってみると広い部屋に着いた。

「すごい、壁画が沢山」

「見るからに怪しいわね」

「きっとここになんらかのヒントがあるはずです!」

「なるほどな。修也、コイツを見ろ」

「ん?」

十六夜に言われて見るとソレはミノタウロスの壁画だった。

「これってギリシャ神話のミノタウロス伝説か」

「ミノタウロス?」

飛鳥は知らないらしい。

「ミノタウロスってのは人間と牡牛の間にできた子供で、頭は牛、体は人間の怪物だ」

「成長するにつれてミノタウロスは狂暴になり手におえなくなった島の王ミーノース王はダイダロスに命じて入ったら二度と出られない迷宮ラビュリントスを作らせたんだ」

「相変わらずの博識と見事な連携説明ね。つまり、その伝説が関係してるってこと?」

「ああ、迷宮には毎年、七人の少年少女を生贄としてラビュリントスに入れられてた」

「だが、ミノタウロスを退治することを志したテセウスって言う王子がいたんだ」

「テセウスはある二つの道具を隠し持って迷宮に入った。一つは糸玉。糸を迷宮に引っ掛けて脱出の際の目印にした。そして、短剣。テセウスはコイツでミノタウロスを退治し見事生還を果たした」

そう言うと十六夜は瓦礫の中から短剣を拾った。

「流石です!十六夜さん、修也さん!これはきっと迷宮攻略につながる鍵!それを大事に持ち歩き他の建物もくまなく探っていけば迷宮の謎も解けるかも!」

「ああ、これは大事に持っておこう!」

十六夜は笑顔で言いながら、短剣をへし折った。

うん、清々しい笑顔だ。

「「「「「………………………」」」」」

また一瞬の静寂。

「「折った――――――!!!」」

飛鳥と黒ウサギが叫んだ。

耀はお腹が空き過ぎたらしくお腹を押さえてる。

しかも、お腹が鳴ってるし。

「何しでかしてくれてるんですか、十六夜さん!?」

「発言と行動が噛み合ってないわよ!?」

怒鳴る飛鳥と黒ウサギを余所に十六夜は大切だなぁとか言いながら折った短剣を投げ捨てた。

俺は十六夜の行動を信じるぜ。

ああしたってことはそこまで重要じゃないんだろう。

「なぁ、黒ウサギ。このゲームのクリア条件はなんだった?」

「え?ステージの謎を解き迷宮の突破、又はステージ内に潜むホストのを打倒ですが?」

「そうか。今ならもれなくその条件で二つ同時に満たせるぞ」

「え?」

その瞬間、十六夜は黒ウサギの腹を殴り飛ばした。

殴り飛ばされた黒ウサギは壁に激突し、気絶した。

「ど…どういうつもりなの十六夜君!?」

「どうして黒ウサギを…」

「落ち着け二人とも。十六夜が理由もなしに仲間を殴るわけが無い」

「その通りだ修也。よく見ろ。あれは黒ウサギじゃない。そして、この迷宮も実にチープだ」

するとガラスが割れるような音が聞こえ気がつくと最初の街に戻っていた。

「戻って…来た?」

「私たちの勝ちなのかしら?」

状況が掴めず耀と飛鳥は混乱してる。

「見ろ。さっき殴ったのはアレだ」

十六夜が指さす方向にはロリコンハンバーガー屋が倒れてた。

「ま…まさか、さっきまで一緒に居たのって…」

「おっさん(変態)」

飛鳥は青ざめながら十六夜に聞く。

そりゃ、自分の知らない所でおっさんと行動してたんだからな。

「おそらく姿を変えるギフトを持ってたんだろう」

「なるほど。黒ウサギが落とし穴に落ちた時に入れ替わったのか」

「ああ、そして、そこから黒ウサギになり替わり行動を共にしてた。奴が率先して動いてたのは迷宮に果てがあること…見た目より広さの無い張りぼての作りだと悟られないため。

そして、俺達の体力の消耗を待った」

「壁画の謎解きを意味があるように言ってたのも単なる時間稼ぎってわけね」

「だがら、ディーンで壁を破壊しようとした時慌てて止めたんだな。実際は違反で無く迷宮を破壊することが突破に繋がるから」

「ああ」

「でも、どうして黒ウサギが偽物ってわかったの?」

耀が疑問に思っていたことを聞いていた。

俺もなんか黒ウサギに違和感を感じてたがそれが分からなっかた

「髪だ、アイツは普段髪の色は青だが感情が高ぶった時は桜色になる。だが、落とし穴に落ちた後、見るからにテンションが低かったのにも関わらず髪の色は桜色のままだった」

あ、そう言えばそうだ。

でも、俺が違和感に感じてたことと違う。

一体何だろ?

「そして何より決定的だったのが……」

十六夜が真剣な顔でもう一つの理由を言う。

それは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            「あんまり、アホ面じゃなかったった事だ」

 

 

 

 

 

 

   

                 「「「ああ……」」」

 

 

 

 

 

 

             そうか…俺が気になってた違和感はそれか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

取りあえず気絶してるロリコンハンバーガー屋を叩き起こし、優しく平和的に、チップをカツアゲした。

そして、黒ウサギを探し始める

「あ、いた」

「こんなところでのびてたのね」

「意外と早く見つかったな」

「黒ウサギ久しぶりだな」

「あっ皆さん!!見てください。こちらのご親切な方がこんな物を………あ……あれ?」

 

いない?と首を傾げる黒ウサギ。

何がいないんだ?

「どうした?落とし穴で頭にクリティカルヒットでも食らったか?」

「はっ!!そうだ。そんなことよりゲームはどうなったのですか!?勝負はついたのですか!?」

「ああ、見てのとおり俺達が勝ったぞ」

「と……言うことは黒ウサギは……黒ウサギはお肉にならずに済んだのですよね!?」

勝利報告に黒ウサギは涙を流す。

ウサギ肉にならなくてよかったな。

「あぁ!!しかもチップにスゲーものを貰ったぜ!」

「すごいもの!?それはもしや新たなギフトなどですか!?」

何を貰ったのか気になるようだ。

確かにアレは凄い物だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

           「お手軽バーベキューセットだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今の黒ウサギの表情はチーンと言う交換音が似合うぐらいピッタリだ。

「コミュニティの子供たちも大喜びね!」

「たまには肉っも食わねーとな――」

「おなかすいたー」

「野菜はコミュニティの畑にあるから……肉となんか買ってこうぜー」

「おっいいな!俺、イカがいいぜ!」

「私はカボチャがいいわ」

「私、全部」

バーベキューで何を食うか話し合いながら皆でわいわい言いながら帰る。

黒ウサギはと言うと

「黒ウサギの命運を賭けたゲームだったと言うのに………バーベキューセットって………」

なんか震えてる。

「もっと他になかったのですか!!このお馬鹿さんたちはー!!」

絶叫する黒ウサギの声を聞き、俺達は笑いながらコミュニティへと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~おまけ~~~~~~~~~~~~~~~

 

「ところでウサギ肉って美味しいのかしら?」

「鶏肉に似た味らしいぞ」

「俺、食ったことあるぞ。結構うまい」

「……………」

「!?」

 


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