問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ?   作:ほにゃー

26 / 106
第12話 ゲームは終結に向かうそうですよ?

「修也、無事だったの?」

「ああ、どうやらかなり心配をかけたみたいだな。ごめんな」

もう一度謝ると耀は俺の胸に顔を埋めた。

「よ、耀!?」

「良かった……無事で……本当に良かった…………」

耀は少し涙声で言ってくる。

これが終わったら心配かけた分お詫びをしないとな。

「来たわね、クルーエの息子!ここで前マスターの仇を討つ!やりなさいシュトルム!」

「BRUUUUUUUUM!」

レティシアを相手していたラッテンは標的を俺に変えシュトルムに攻撃を命じた。

シュトルムが腕を振り上げ今まさに俺達に振り下ろそうとしていた。

「…………邪魔だ」

ギフトカードから一丁の銃を抜き、シュトルムに向け三発撃った。

銃身から三つの銛が飛び出しそれが当たると放物線を描きながら吹っ飛んだ。

そして、そのまま大破した。

「嘘………シュトルムが銃如きに破壊されるなんて………」

「どうした、ラッテン?終わりか?」

「まだよ!シュトルムはまだ二体い」

 

ドッバン!!

 

「どうした?」

耀から返してもらった白牙槍を肩に担ぎラッテンの背後から問う。

今の一瞬で、俺は残りの二体のシュトルムを破壊した。

「く!」

「今度はこっちから行くぞ!」

翼を出し、一気に距離を詰める。

「蜥蜴共、私を守りながら奴に飛びかかりなさい!」

すると背後に控えて知多火蜥蜴たちが火を噴きながら向かってくる。

「修也!同士討ちはルールで禁じられたから殺しちゃダメ!」

マジかよ。

殺すつもりはないが殺さないように戦うのは結構厳しいな。

蜥蜴を相手に戦い、戦い終わると既にラッテンはいなかった。

逃げたか……

「修也、さっきの銃は何?」

耀が近寄って来てそんなことを聞いてきた。

「ああ、それに関してはまた後日十六夜達も交えてゆっくりな。とにかく、今は早くラッテンを追うぞ」

「うん」

その時、耀とレティシアの二人が結構傷ついているのか分かった。

「耀、レティシアちょっと待て」

そう言ってギフトカードから一本の笛を取り出す。

そして、口を付け吹く。

軽快な音色があたりに響き渡る。

すると、耀とレティシアの体は淡く光輝く。

光が消えると二人の体は傷一つなかった。

「すごい」

「修也。これは一体……」

「それも含めて後で話す今は」

「見つけたぞ!ガギィィィィィィ!」

背後から飛んできた殺気を込めた声に俺は耀とレティシアの二人を抱えそのまま前に飛んだ。

そして、前に飛ぶと同時に俺達がいた場所に巨大なクレーターが出来上がった。

「激しい登場だな。ヴェーザー」

「テメーの為にわざわざ坊主との戦いをほっぽり出してまで来てやったんだ。感謝しろよ」

ヴェーザーは自分の背丈ほどありそうな笛を振り回しながら襲ってくる。

二人を抱えながら戦うのはきついな。

「耀、レティシア。あいつは俺が倒す。二人はラッテンを頼む」

「修也、私も一緒に」

「駄目だ」

俺の言葉に耀は驚きの表情をだした。

「でも、一人より二人の方が」

「悪い。正直、耀がいると戦いづらいんだ」

耀はショックを受け、酷く悲しそうな顔をしている。

だが、今のアイツからはとてつもなく大きな力を感じる。

耀の力では多分勝つことはおろか生き抜くことすら難しいだろう。

それに、連携をとるような戦いをしたことも無い。

少なくとも俺ならヴェーザーと戦って死ぬことは無いはずだ。

「……………わかった。修也、せめて血だけでも飲んでって」

「………ああ」

耀の首に歯を立て血を吸う。

吸い終わると俺は二人を近くの建物の屋根に下ろした。

「……修也、気を付けろ。アイツ、神格を得ている。おそらく魔王から授かったのだろう」

「わかった。行ってくる」

俺は翼を出し、ヴェーザーの下に向かった。

 

修也SIDE END

 

 

 

 

 

レティシアSIDE

「耀」

修也が去った後耀はずっと黙っていた。

「レティシア………私、力が無くて悔しい」

……………

「敵を倒せるほどの力が無くて辛いし、初めてできた友達を守ることができなくて胸が苦しいし、それに」

振り向き私にそう言う耀の瞳には涙があった。

「修也に頼られなくて………悲しい」

拳を握り、悔しさ、辛さ、苦しみ、悲しみが顔に表れていた。

「力があれば悔しい思いもしないし、敵だって倒せるし、飛鳥だって守れたはず。それに、修也にだって頼られたてはずだよ」

「耀、誰しも一度はそう思う。私だって力を欲した。大切なものを守り通す力を………だが、耀、お前にはまだ力が眠ってる。お前は必ず強くなる。それこそ、私以上になるかもしれん」

「でも、私は、今すぐにでも、修也と一緒に戦いたい………戦いたいよ」

励ますつもりだったが余計に泣かしてしまったな。

「大丈夫だ、必ず強くなる。焦るな。焦りは余計に成長を遅らせる。焦らずにゆっくりと行け。人生は長いんだ。だがら……………今は泣け」

「う、うぅぅぅぅ………うぅぅぅぅ」

耀は声を押し殺しながら私に抱き付き泣いた。

好きな人に頼られないのは一番辛いことだよな…………

 

レティシアSIDE END

 

 

 

修也SIDE

 

「ここに居やがったが。さっさと肉塊に変えてやるよ!」

「やれるもんなら、やってみろよ」

「は、上等だ!」

ヴェーザーの巨大笛と白牙槍がぶつかり合う。

ぶつかり合うたびに空気は揺れ、建物は余波で崩れる。

笛の一撃を紙一重で躱し、俺は槍をヴェーザーの顔面に向けて放つ。だが、ヴェーザーもまた躱し一撃を当てようとする。

新たに手に入れたギフト“ハープーンガン-パイドパイパー-”を取り出し、撃つ。

打ち出された銛をヴェーザーは受け止めるのは危険と判断し、体を捻ることで回避した。

「なにも力だけじゃないいんだよ!」

ヴェーザーが笛を鳴らすと俺の足場は崩れ、それに打ち上げられた。

俺は翼を出し、落下するのを防ぐ。

そのまま、俺は急降下しながら下で待ち構えるヴェーザーに向け槍を放つ。

ヴェーザーも笛を叩き付けるように槍にぶつけてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やるな、小僧」

「お前もな。神格ってのはすごいな」

「いや、吸血鬼の力も中々侮れないものだな。これじゃあ、神格の名が泣いちまう」

俺もヴェーザーも満身創痍もう立っているのですらやっとの状態だ。

「なぁ、最後の一騎打ちしないか?」

「……は?」

いきなり、ヴェーザーが変なことを言い出した。

「俺もお前もふらふらで立っているのがやっとの状態だ。なら、お互い今の自分が持ってる最高の一撃で終わらせようぜ」

「なんでそんなこと言う?」

「この一撃をお前に当てたら勝てる。だがらだよ」

コイツ…………おもしろいやつだな。

「わかった、いいだろ。その驕り砕いてやる!」

「できるならやってみろ!」

ヴェーザーは自分の霊格を解放し巨大笛を掲げ、頭上で円を描くように乱舞し始める。

俺は腕を斬り裂き、白牙槍を血で真っ赤に染める。

「我が血よ。我が名のもとに従え。その血に流れる力を槍に纏わせよ」

白牙槍に付いた血は槍にしみ込むように消え、槍に真っ赤なオーラが纏った。

「行くぞ、小僧!」

「こい、ヴェーザー!」

槍と笛はぶつかり合いそして、その余波は辺り一帯の地面を、建物を全て吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前、中々やるじゃねーか」

「お前もな」

笛は砕け、ヴェーザーはその場に大の字になり、倒れながら砕けた笛の先端を見つめていた。

俺の方は白牙槍は砕けなかったが全身はボロボロで動くことすら無理に思える程だ。

それでも、俺は槍を杖代わりに立ち上がる。

「まだ決着がついてない。ほら、構えろよ。笛なくても戦えるだろ?」

「いや、決着ならついた」

ヴェーザーの体は崩れ始めていた。

「召喚の触媒が砕けりゃこうなるわな。くそ、結局仇どころがそんなにダメージも与えられなかった」

「そうでもねーよ。お前の最後の一撃。結構効いたぜ」

実際、体がもうもたない。

「でも、なんでだろうな。前マスターの仇の息子だってのになんだかすんげー清々しい」

「そうか、そいつはよかっ……た……ぜ」

そこで俺の意識は切れた。

 

修也SIDE END

 

 

耀SIDE

 

あの後、すぐにレティシアとラッテンの捜索を行ったがラッテンは既に飛鳥が倒していた。

飛鳥、すごいな。

そう思っていると遠くからもの凄い音が響き、見てみると街が一ヶ所抉れていた。

あの場所は修也が戦ってる場所だ!

私はすぐさま飛び上がり抉れた場所に向かった。

向かうと修也ができたクレーターの真ん中で倒れていた。

「修也!」

駆け寄ってみると息をしていた。

「安心しろ。疲れて眠ってるだけだ」

その声に振り向くとヴェーザーがいた。

警戒し、構えるがよく見るとヴェーザーの体は徐々に崩れていた。

「貴方、消えるの?」

「ああ」

消えるってのになんかあっさりしてる。

「おい、娘」

「何?」

「小僧に伝えといてくれ。『結構楽しめた』ってな」

「……わかった」

「……サンキューな」

そう言ってヴェーザーの体は消えてなくなった。

「修也が勝ったみたいだな」

「十六夜」

「よお」

後ろには十六夜がいた。

「二人の戦いをみてたが、ありゃ、凄まじかったぜ。ハーフと言えども流石は吸血鬼だぜ」

「見てたのに助けなかったの?」

「おいおい、そんな睨むなよ。俺は修也が勝つと信じて見てたんだ。信じてなけりゃ俺が真っ先に戦ってた。それに、これはアイツと修也が戦うべき戦いなんだよ」

十六夜の説明に私は納得した。

納得できたけど……………

「まぁ、俺は今からペストと戦ってる黒ウサギとサンドラのとこに行く。春日部は修也を連れてここから離れとけ、いいな」

「…………わかった」

「頼むぜ」

そう言って十六夜は黒ウサギたちのとこに飛んでいった。

「ん……あっつ」

「修也!大丈夫!?」

「あんまり、大丈夫じゃない」

「そう」

「あ、ヴェーザーは!?」

「消えたよ」

「そうか……」

「伝言があるよ。『結構楽しめた』って」

「そっか」

修也は槍を手に立ち上がろうとした。

「どこ行くの?」

「魔王の所だ。早くいかないと」

体中怪我してるのにまだ、戦おうとする修也に私はキレた。

「駄目!修也は怪我してるの!今は大人しくする!」

「でも」

「でもじゃない!」

修也の目を見ながら私は怒る。

すると修也は諦めたのか溜息ついた。

「わかった。この状態じゃどの道、足手まといになる。大人しく十六夜達に任せる」

「うん。じゃあ、今だけ眠っていて」

倒れてる修也の頭を私は膝の上に乗せた。

「よ、耀?」

「いいから目を閉じて」

「………ああ、ありがと」

目を閉じると修也は直ぐに眠りについた。

私はてを修也の目の上に置き少しだけ微笑む。

「おやすみ、修也」

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。