問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ? 作:ほにゃー
今、私たちは宮殿の大広間に集まっている。
ペストが発症していない人をかき集めたがその人数は五〇〇人程だ。
「今回のゲームの行動方針が決まりました。動ける参加者はそれぞれ重要ま役割を果たして頂きます。ご清聴ください………マンドラ兄様。お願いします」
サンドラの傍にいたマンドラが前に出て書状を読み上げた。
「其の一。三体の悪魔は“サラマンドラ”とジン=ラッセル率いる“ノーネーム”が戦う。其の二。その他の者は、各所に配置された一三〇枚のステンドグラスの捜索。其の三。発見した者は指揮者に指示を仰ぎ、ルールに従って破壊、もしくは保護すること」
「ありがとうございます。以上が、参加者側の方針です。魔王とのラストゲーム、気を引き締めて戦いに臨んでください」
おおと雄叫びが上がる。
ゲームクリアに向けて方針が決まり士気はかなり上がった。
「耀。ちょっといいか?」
「何、レティシア?」
レティシアに呼ばれ振り向くとレティシアは何かを持っていた。
何だろう?
「コイツを持っておけ」
渡されたものは細長く布に包まれていた。
布を取るとそれは白い槍だった。
「これって修也の………」
「白夜叉が封印されているバルコニーに落ちていた。おそらく連れ去られるときに回収されなかったのだろう。お前のことだがら必要は無いかもしれんが一応持っておけ」
槍を握り締め見つめる。
修也………少し借りるね
ゲームが再開されると同時に激しい地鳴りが怒った。
すると宮殿は光に呑み込まれて気がつくと見たことも無い別の街並みが広がっていた。
「な……何処だ此処は!?」
参加者から声が上がる。
見渡してみると町は木造の街並みに姿を変え、パステルカラーの建築物に造り変わっている。
これって
「ハーメルンの魔道書の力………ならこの舞台はハーメルンの街!?」
「何!?」
ジン君の声にマンドラは振り返る。
周りの参加者はこの出来事に驚き動揺している。
「うろたえるな!各人、振り分けられたステンドグラスの確保に急げ!」
マンドラが声を上げ参加者たちに一喝する。
「しかし、マンドラ様。地の利も無く、ステンドグラスの配置もどうなっているのかも分からないままでは、」
「安心しろ!案内役ならば此処にいる!」
そう言ってマンドラはジン君の方を掴む。
「知りうる限りで構わん。参加者に状況を説明しろ」
「け、けど、僕もそんなに詳しいわけでは」
「知りうる限りで構わんと言っただろ。貴様が多少情報を持っていることは知りわたっている。貴様の言葉なら信用する者もいるだろう!とにかく働き出さねば二十四時間などすぐに過ぎ去るぞ」
マンドラの言葉にジン君は反論できずに誰かを探し出す。
多分、十六夜を探しているのだろう。
でも、十六夜はゲーム再開になるとすぐにどこかに飛んでいった。
「まずは教会を探してください!ハーメルンの街を舞台にしたゲームなら縁のある場所にステンドグラスが隠されているはずです!“偽りの伝承”か“真実の伝承”かは、発見した後に指示を仰いでください!」
ジン君の声に参加者は我を取り戻し、行動を開始した。
「見つけたぞ!ネズミを操る道化が描かれたステンドグラスだ!」
「それは“偽りの伝承”です!砕いてください!」
ジン君の言葉でステンドグラスは破壊される。
「此処ってブンゲローゼン通りかな?」
「はい、耀さんの言う通りここは一三〇人の子供が攫われた街道。ブンゲローゼン通りです」
ジン君は地図を広げてステンドグラスが発見された場所と照らし合わせる。
「舞台区画とハーメルンの街の展示場所はそれほどずれていません。」
「どういうこと?」
「つまり、ハーメルンの街を召喚したという事です」
「はーい。其処までよ♪」
この声は聞き覚えがある。
上を見上げると建造物の上にラッテンが立っていた。
「ブンゲローゼン通りへようこそ皆様!神隠しの名所へ訪れた皆様には、素敵な同士討ちを御体験していただきます♪」
屋上から数十匹の火蜥蜴が現れた。
“サラマンドラ”の人たちだ。
戦って死なせたりすれば同士討ちになってしまう。
襲ってきた火蜥蜴たちに向けて旋風を起こして吹き飛ばす。
だが、今度は屋根から一斉に火を吐き出す。
風を起こせば火の勢いを強めるかもしれない………
旋風を起こさないで空を飛び火の玉を槍で打ち消す。
けど、それえ打ち消せる火の玉は僅かだった。
残りの火の玉がジン君たちに降りかかると思った。
だけど、その瞬間レティシアが現れ残りの火の玉を全て打ち砕いた。
「見つけたぞ。ネズミ使い」
「うわおお!本物の純血の吸血鬼!超美少女じゃない!」
なんか興奮しているラッテンを無視してレティシアはジン君の方を振り向く。
「怪我はないか?」
「はい。ありません」
「なら、すぐに捜索に急げ。ここは私一人で十分だ」
「はい」
ジン君と捜索隊の人達はこの場を後にして再びステンドグラスの捜索に向かった。
「耀、何故ここにいる?」
「一人で戦うのは危険。私も残る」
「ジン達の護衛はどうする?」
「大丈夫。ヴェーザーは十六夜が相手することになってる。ペストは黒ウサギとサンドラの二人と戦ってる。ラッテンも私達と闘うのに集中しないといけないから火蜥蜴を操ってジン君達を襲う心配はない。それに、ラッテンが私達二人に一人で戦うとは思えない。シュトルムを応援に呼ぶはず。だがら、大丈夫」
「あら?結構頭が回るのね。正解よ。ヴェーザーは今あの坊やと戦っているし、マスターは階層支配者と“箱庭の貴族”相手に闘ってる。そして、私も流石に貴方達を相手にしながら火蜥蜴共を操るのは無理。そして、一人で戦おうとも思ってないわ」
そう言うって笛を吹く。
すると彼方此方からシュトルムが現れた。
私とレティシアの所にも五体ほど現れた。
「あの巨兵、あんなに生み出すことができるのか!?」
「ええ。あの巨兵如きいくらでも生み出せるわ」
状況から考えるとラッテンの音色は私にとっては弱点でもある。
なら…………
「レティシア。私がシュトルム相手に戦うからラッテンと戦って」
「しかし、数が」
「相性的にも私とラッテンは悪すぎる。だから、お願い」
「…………わかった。」
納得したレティシアはギフトカードから槍を取り出しラッテンに向け投擲する。
私は槍に風を纏わせる。
「はぁぁぁぁぁ!」
地面を力強く踏み飛び上がる。
そして、一体のシュトルムの中央に槍を突き刺し、纏わせた風を一気に開放する。
すると、膨大な量の風がシュトルムを内側から破壊する。
後ろにいたシュトルムが殴りかかってくる。
すぐさまグリフォンのギフトで飛び上がり背後に回って体重を象に変幻させ押しつぶす。
流石に一撃で破壊はできなく、掌に集めて凝縮させた風を叩き付け破壊する。
残り三体。
しかし、残りの三体が乱気流を起こし、辺り一帯を吸収し始めた。
槍を地面に突き刺し、体重を象にしたまま耐える。
瓦礫を溜めこんた三体のシュトルムは私を目掛けて顔面の中央にあいた空洞を臼砲のようにして圧縮した瓦礫の山を三方向から打ち出した。
正面と背後の左右斜めから打ち出されたため逃げ場所が空しかない。
だけど、塊の大きさ、スピードから考えて逃げるのは不可能。
一つだけならグリフォンのギフトで破壊することもできると思うけど残りの二つにやられる。
ここまでか……………
私は死を覚悟して目をつむった。
できれば、苦しまずに死ねたらいいな…………
あれ?
痛みがこない?
目を開くと私は空にいた。
誰かに抱き抱えられ。
「大丈夫か、耀?」
黒いコートに銀髪と銀の瞳…………
「しゅう…や?」
「ああ、待たせたな」