問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ? 作:ほにゃー
「あすかっ!あすかっ……」
ん?
なんの声だ?
小さく幼い声が頭の中に響き、そして徐々にゆっくりと覚醒していく。
目を覚ますとそこは洞窟のような場所だった。
近くには飛鳥もいた。
「おい、飛鳥。しっかりしろ」
「う、う~ん…………ここは?」
「気がついたか」
「あすか!」
飛鳥が目を覚ますと精霊は飛鳥の顔にしがみついた。
「大丈夫よ。泣かないで………修也君、ここは?」
「どこかの洞窟みたいだがはっきりとは分からない。もしかしたら、アイツらのアジトの可能性もある」
「アイツら…………そうよ!私のあの女に蹴り飛ばされて!」
「落ち着け。精霊が驚いてるぞ」
「あすか、すごくげんきー?」
飛鳥は精霊を肩に乗せて立ち上がる。
見渡すと、自然に造られたような洞窟じゃない。
よく見ると人が手を加えた跡がある。
壁には松明が差し込まれている。
一つもらっとこう。
松明に明かりをともし、俺を先頭に飛鳥と共に進む。
暫く進むと天井高くまであるであろう門が現れた。
デケーな。
「この門にある紋章………どこかで見たような……」
「な!?ど、どこでだ!?」
「待って。今思い出してるの」
こめかみに指を当てて唸りながら考える。
「あ、ここ展示会場だわ!」
そうか、俺もどこかで見た覚えがあると思っていたが飛鳥が襲われたあの会場だ。
「あすか」
精霊が飛鳥を呼びそちらに顔を向けると一枚の契約書類があった。
『ギフトゲーム名:“奇跡の担い手”
・プレイヤー一覧:久遠飛鳥
・クリア条件:神珍鉄製 自動人形“ディーン”の服従
・敗北条件:プレイヤー側が上記のクリア条件を満たせなくなった場合
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下“ ”はギフトゲームに参加します。
“ラッテンフェンガー”印』
「これが契約書類?まさか」
するとその瞬間、声が聞こえた。
「私からあなたへのおくりものどうかうけとってほしい。そして、偽りの童話“ラッテンフェンガー”に終止符を」
虚空から、壁から、いたるところからその声が聞こえた。
「“群体精霊”あなた達は大地の精霊か何かなのかしら?」
「はい。私達はハーメルンで犠牲になった一三〇人の御霊。天災によって滅ぼされた者達」
人から精霊へ。
転生で新たな生を経て、霊格と功績を手にした精霊群。
それが“群体精霊”。
書庫で読んだ知識からだとこんなところか。
しかし、ハーメルンの犠牲者とはな。
「私を試したの?」
「いいえ。この子と貴女の出会いは偶然、私たちにとっての最後の奇跡。そこに群体としての意識的介入はありません」
「貴女には全てを語りましょう。一二八四年六月二十六日にあった真実を。そして、偽りのハーメルンの正体を」
「そして捧げましょう。我々が造り上げた最高傑作。星海龍王より授かりし鉱石で鍛え上げた最高の贈り物を」
「最早叶わぬ願いと思って居りました。しかし、一三一人目の同士が、貴女を連れてきた」
「決断は貴女に委ねましょう。我々のギフトゲーム………受けてくれますか?」
契約書類は宙を舞い、飛鳥の手元に落ちた。
飛鳥はその書類を確認すると顔を上げた。
「一つだけ教えて。貴方達が造ったギフトがあれば……奴らに勝てる?」
「貴女が使えば」
「貴女が従えれば」
「貴女が担うなら」
「「「貴女を、必ずや勝利させましょう」」」
その言葉を聞き飛鳥はふっと笑う。
「“ノーネーム”出身、久遠飛鳥。貴方たちの挑戦、心して受けましょう」
飛鳥は書類にサインすると書類は再び宙を舞い、飛んでいく。
飛鳥はその後を小走りで追いかける。
これは飛鳥のゲームだから俺が介入するべきではないか………
「おい、ちょっといいか?」