問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ? 作:ほにゃー
「おい!魔王が現れたぞ!」
すぐに白夜叉たちのもとに戻ると十六夜は既にいなかった。
おそらそらく魔王に向かっていったのだろう。
居るのは耀とジンと飛鳥だった。
「おい?これは何だ?」
着いてみると白夜叉がいるところには黒い風のようなもので覆われていた。
「修也君!大変よ!どうやら白夜叉の参戦条件がクリアされてないらしいの!」
なんだと!?
もう一度黒い契約書類を見直すが参戦条件に関してはなにも記載されていない。
まさかわざと参戦条件を書かなかった?
いや、“箱庭の貴族”の黒ウサギがいるのにそんな真似はしないはず。
なら一体どうやって?
「よいかおんしら!今から言うことを黒ウサギへと伝えるのだ!間違えは許さん!おんしらの不手際は、そのまま参加者の死につながる!」
白夜叉の言葉に耀と飛鳥、ジンは息を呑む。
「第一にこのゲームはルール作成段階で故意に説明不備を行っている可能性がある!これは一部の魔王が使う一手だ!最悪の場合、このゲームにはクリア方法がない!
第二に、この魔王のコミュニティは新興のコミュニティの可能性が高いことを伝えるのだ!第三に、私を封印した方法は恐らく――――」
「はぁい、そこまでよ♪」
後ろを振り向くと露出度がやたらと高い白装束の服に“サラマンドラ”の火蜥蜴がいた。
「本当に封じられてるじゃない♪最強のフロアマスターもそうなっちゃ形無しね」
火蜥蜴たちの様子がおかしい。
まるで、操られてるかのように行動がおかしい。
「おのれ!“サラマンドラ”の連中に何をした!」
「そんなの秘密に決まってるじゃない。以下に封印が成功したとしても貴女に情報を与える程驕っちゃいないわ。それより、邪魔よ♪あなた達」
火蜥蜴たちが一斉に俺達に向かい剣を振り下ろしてくる。
耀がグリフォンのギフトで火蜥蜴を吹き飛ばす。
僅かに残った火蜥蜴を俺が全員の首に噛みつき血を吸い気絶させる。
ちなみに、爬虫類の血って結構まずいんだよな。
「あら、今のグリフォンの力かしら?それに、そちらの男の子は吸血鬼かしら?女の子の方は顔が端正で中々可愛いし、男の子の銀髪と銀の瞳もいいわね。よし、気に入った!貴方たちは私の駒にしましょう!」
「修也!ジン君をお願い!」
「分かった!」
耀が飛鳥を、俺がジンを連れて逃げようとする。
だが、その直後白装束が笛を吹く。
その瞬間俺はその場に崩れ落ちた。
なんだこれは!?
甘く誘うような音色なのに頭の中を掻き混ぜられてるようなこの感覚は!?
見ると、耀と飛鳥、ジンも同じらしいが飛鳥とジンは俺と耀ほどひどくなさそうだ。
五感が良すぎるのも考え物だな………
「アイツが来る……修也。飛鳥とジンを連れて逃げて……」
「悪い……俺の方も無理だ……飛鳥、ジンと一緒に逃げろ……」
「バカ言わないで!ジン君!」
「は、はい!」
「先に謝っておくわ。………ごめんなさいね」
一体何をするつもりだ?
「コミュニティのリーダーとして『春日部さんたちを連れて黒ウサギの元へ行きなさい』
「………分かりました」
ジンは耀を抱え俺を抱えようとする。
俺は自分の力を振り絞りその場から消える。
対象を見失ったのでジンはそのまま耀だけを連れて消えた。
ジンがいなくなったのを確認して再び飛鳥の下へ現れた。
「修也君、どうして……」
「飛鳥一人、おいて行けるかよ」
ふらつきながらもギフトカードから白牙槍を取り出し、構える。
「飛鳥、俺がアイツの隙を作る。その隙に逃げろ」
「何言ってるのよ!それこそできないわ!」
「あらあら、予想以上に根性があるわね。さっきの子もいいけど貴女もいいわね。よし、貴女も私の物にするわ」
白装束の潮路で火蜥蜴たちが動き出す。
「全員『そこを動くな!』」
飛鳥のギフトにより白装束と火蜥蜴たちは動きを止めた。
その隙を見逃さずに槍で白装束の心臓を貫こうとする。
「――――ッ!甘いわ小娘共!」
しかし、すぐに白装束は動き出しそのまま俺を殴りつける。
「がはっ!」
白牙槍が手から零れ落ちその場に倒れる。
「修也君!」
「余所見してていいのかしら?」
「!?」
白装束は笛を吹き飛鳥の動きを封じ、腹部に蹴りを入れる。
そして、飛鳥もその場に倒れる。
薄れゆく意識の中最後に聞いたのは雷鳴と黒ウサギの声だった。
「“審判権限”の発動が受理されました!これよりギフトゲーム“The PIED PIPER of HAMELIN”は一時中断し、審議決議を執り行います!プレイヤー側、ホスト側は共に交戦を中止し、速やかに交渉テーブルの準備に移行してください!繰り返します――――――」
どうやら、ジンは無事辿り着けたみたいだな。
よかっ…………た………
修也がラッテンに倒された理由は笛の音色で五感が狂い普段通りに動けなかったからです。
次回から暫く修也が出なくなるかもしれません。