問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ? 作:ほにゃー
俺と2人の少女、1人の少年が同時に湖の中に落ち、全員が濡れる。
「信じられないわ!まさか、問答無用で呼ばれて、水の中に落とされるなんて!」
「右に同じだ。クソッタレ。これなら石の中に呼び出される方がよっぽとマシだ」
「石の中に呼び出されては動けないでしょう?」
「俺は問題ない」
「そう。身勝手ね」
「三毛猫……大丈夫?」
『二、ニャ~、(じぬかとおぼった……)』
3人は湖から上がり、服を絞る。
俺はというと、
「ガホッ、ゴホッ、ちょっ、誰か……た、助け…」
溺れていた。
「……あれ、どうする?」
「ほっとけばいいんじゃね?」
「流石にそれはまずいわよ」
「しゃーねーな。助けてやるよ」
ヘッドホンを付けた少年が足元の小石を拾いソレを
「ぶっ飛べや――――!」
湖に投げた。
小石が湖に投げ込まれると巨大な水柱が上がり、それに巻き込まれる形で湖から脱出。
「助け方を考えろよ!」
空中で身を捻り器用に両足から地面に降り立つ。
「なんだよ。運動神経は良さそうじゃねーか」
「お前さ~、俺だからよかったものの死んだりしたらどうするんだよ」
「まぁ、いいじゃねーか。結果的に助かったんだし」
「さっき、ぶっ飛べや――――って言ってなかったか?」
気にすんなっといってヘッドホン少年はヤハハと笑う。
「此処……何処だろう?」
三毛猫を抱えた少女が言う。
「さあな、世界の果てっぽいものが見えたし大亀の背中じゃあねーか」
此処が俺たちにとって知らない場所でまた、未知の世界であるのは確かだ。
服を絞りおえヘッドホン少年が顔を向ける。
「一応確認しとくが、お前たちも変な手紙が来たのか?」
ヘッドホン少年は、髪をかき上げながら聞く。
「そうだけど、まず“お前”って呼び方を訂正して。私は久遠飛鳥よ。
以後気を付けて。それで、そこで猫を抱えている貴女は?」
飛鳥は猫を抱えた少女に質問をする。
「………春日部耀。以下同文」
「そう。よろしく、春日部さん。それで、さっき溺れていながら凄い身体能力を持った銀髪の貴方は?」
耀の自己紹介が済み、今度は俺に矛先が向いた。
「月三波・クルーエ・修也だ。間違ってもクルーエとは呼ばないでくれ。呼ぶなら、月三波か修也で頼む。取りあえずよろしく」
無難に自己紹介をしとく。
こういう時はシンプルに。
「分かった」
「分かったわ。よろしくね、修也君。最後に野蛮で狂暴そうなそこの貴方は?」
「見たまんま野蛮で狂暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれ」
中々、面白い自己紹介をする奴だ。
「取扱説明書をくれたら考えてあげるは十六夜君」
「ハハハ、面白いな。修也だ。よろしくな、十六夜」
「おう、よろしくな、修也。後、今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」
心からケラケラ笑う十六夜
傲慢そうに顔を背ける飛鳥
我間せず無関心を装う耀
なんか、すごい個性的なメンバーだな。
ついでにいえば、あそこの茂みで隠れている奴も気になる。
「てか、召喚されたのに誰もいないってのはどういうことだ?
こういう場合この“箱庭”ってのを説明する奴が現れるもんじゃねえのか?」
「そうね。説明のないままでは動きようがないわね」
「・・・・この状況に対して落ち着き過ぎてるのもどうかと思うけど」
「まったく同感だが、耀も落ち着き過ぎだよ」
「えっ?」
耀が俺を見て疑問の言葉を発した。
「ん?何?」
「名前。どうして名前で呼ぶの?」
あれ?もしかして男に名前で呼ばれるの嫌いな人?
「あ~悪い。もしかして嫌だったか?なら、やめるけど……」
「ううん。嫌じゃない。ただ、気になっただけ」
あぁ~そういうこと。
よかった、一瞬嫌われたかと思ったぜ。
てか、初対面で嫌われるってどんだけだよって話だな。
「いや、だって友達って普通は名前で呼ぶもんだろ」
「えっ、友達?」
あれ、もしかして俺とは友達になりたくないってオチ?
何それ。
俺、すげぇー、恥ずかしい奴じゃねーか。
「もしかして、俺と友達は嫌?」
「ううん。むしろ、嬉しい。ありがとう、修也」
耀がほんの少しだけ笑った。
なんというか、可愛かった。
「取りあえず、そこに隠れている奴に話を聞くか?」
十六夜の言葉に反応して振り返る。
へぇー、十六夜も気づいてたのか。
「あら、気づいてたの?」
どうやら飛鳥も気づいてたみたいだ。
「当然。かくれんぼじゃ、負けなしだぜ。修也と春日部も気づいてんだろ」
このパターンってもしかして……
「風上に立たれたら嫌でもわかる。」
やっぱりか。
「まぁな、あんな獲物を狙うような視線送られちゃーな」
俺達の言葉に反応したのか、隠れていた人物が現れた。
「や、やだな~、御四人様、そんな怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?」
現れたのは、ミニスカートにガーダーソックスを履き、
頭にウサ耳を生やした少女だった。
「なんだ?バニーガールか?」
「ウサギ人間かしら?」
「……コスプレ?」
「痴女じゃね?」
上から順に十六夜、飛鳥、耀、俺の順番だ。
「ちょっと待って下さい!御四人様方、好き放題にいい好きです!というより、最後の方は失礼にも程があります!」
ウサ耳少女が怒りを露わにして切れる。
「俺達は前振りなしに呼ばれた揚句、湖に叩き落され全身ずぶ濡れにさせられたんだが………どう思うよ、十六夜君?」
「全くだぜ。これじゃ~怒りが収まらないなぁ~」
「同感ね。ちゃんと説明はしてもらうわよ」
「同じく」
悪そうなことを企む俺たちの思惑に感づいたのか、
ウサ耳少女がたじろぐ。
「そ、それに関しては黒ウサギのミスです。申し訳ありません。」
ウサ耳少女がウサ耳をへにょらせて謝るが………
「それで許すと思うか?」
十六夜が許しませんでした。
「ま、待ってください!ここは一つ穏便に黒ウサギの御話をどうか聞いていただけませんか?」
「断る」
「却下」
「お断りします」
「聞く気が無い」
「あっは、取り付くシマもないですね」
ウサ耳少女もとい黒ウサギはバンザーイ、と降参のボーズをする。
その時、隣にいた耀が消えていることに気付く。
どこ、行ったんだ?
っと、よく見たらいるじゃねーか。
黒ウサギの背後に。
「えい」
「フギャ!」
力ない声で黒ウサギの耳を強く引っ張る。
「ちょ、ちょっとお待ちを! 触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?」
「好奇心の為せる業」
「自由にも程があります!」
耀を怒るのに夢中で背後から来る十六夜に気付いていない。
「へえ? このウサ耳って本物なのか?」
十六夜は黒ウサギの右耳を掴み
「なら、私も」
飛鳥が左から左耳を掴み、引っ張る。
「ちょ、ちょっと待――――――」
黒ウサギの言葉にならない悲鳴が森中に響き渡った。
十六夜然り、飛鳥然り、黒ウサギ然り、耀然り
何やら楽しくなってきたな。