問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ?   作:ほにゃー

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第3話 北側へ着いたそうですよ?

「お帰り下さい」

まだなにも言ってないのにこの扱い、酷くね?

「そこそこ常連客なんだし、もう少し愛想良くしてもいいと思うのだけれど?」

「常連客とは店にお金を落としていくお客様で、毎度、毎度、換金しかしない者は取引相手と言うのです」

確かに俺達は基本“サウザンドアイズ”の店で何も買わない。

全てがギフトゲームで得たものを換金している。

でも、それなりに良い物を換金してるんだがな。

飛鳥と店員(店長)が言い争っていると空から何かが降って来た。

「やっふぉおおおおおお!ようやく来おったか小僧どもおおおおおお!」

嬉しそうな声を上げ空中でスーパーアクセルを繰り出し荒々しく登場する。

誰かというと白夜叉だ。

というより白夜叉しかこんなことしない。

「よぉ、荒っぽいお出迎えだな」

「このぐらいインパクトがある方がよいと思ってな」

着物についた埃を払いながらケラケラ笑う白夜叉。

「まぁ、取りあえず、店の中へ入れ。そこで話をしよう」

俺達は白夜叉の案内で客室に招かれた。

「白夜叉、一つ聞きたいことがある」

「何じゃ?」

辺りが静かになる。

全員が息を呑み誰一人として喋ろうとはしない。

至極真面目な目をしている白夜叉に俺は言葉を掛ける。

「なんで俺の膝の上に座っている?」

そう、白夜叉は現在俺の胡座をかいた膝の上に座っている。

「おんしの膝の上は座り心地がよくての。暫くそのままでおってくれ」

「いつ調べたんだよ?」

「おんしがここに泊まった時に膝枕をさしてもらった」

どおりで朝起きたら膝が痛かったわけだ。

「よかったじゃねーかよ。この際たっぷり楽しめよ」

十六夜は新しいおもちゃを貰った子供の如く笑っていやがる。

どういう訳か耀からは何やらどす黒いオーラが出てる気がする。

「さて、本題に入る前にジンよ。おんしに聞きたいことがある。“フォレス・ガロ”とのギフトゲーム以降おんし達のコミュニティが魔王関連のトラブルを引き受けるとの噂を耳にしたのだが、真か?」

白夜叉の質問にジンは頷く。

「はい。名も旗印が無い僕たちにはこうしてコミュニティの存在を広めていくしかありませんから」

「リスクは承知の上なのだな?」

「覚悟の上です。今の僕たちでは箱庭の上層に行くことができません。ですから僕たちの名と旗印を奪った魔王に出向いてもらい迎え撃つつもりです」

「無関係な魔王もくるかもしれんぞ?」

ぐいぐいと詰め寄るように質問をする白夜叉。

俺はそんな白夜叉の頭に手を置き撫でる。

「それこそ望むどころだ。魔王を倒し、隷属して“ノーネーム”の戦力を上げ、そして、名を広める。“打倒魔王”を掲げたコミュニティとして」

「ふむ」

頭を撫でられながらしばし瞑想すると、呆れた笑みを浮かべる。

「そこまで考えとるなら良い。では、そのコミュニティに東のフロアマスターとして正式に依頼をしよう。よろしいかな、ジン殿?」

「は、はい!謹んで承ります!」

白夜叉がいつになく真面目な表情で言ってくる白夜叉に慌てながらもジンが引き受ける。

「まず、北のフロアマスターの一角が世代交代した。急病で引退とか。まぁ、亜龍にしては高齢だったからのう。寄る年波には勝てなかったってことだ。此度の大祭は新たなフロアマスターである、火龍の誕生祭での」

「「龍?」」

龍の部分に十六夜と耀が反応した。

十六夜のことだから火龍と戦いたいと思ってんだろうな。

耀は火龍と友達にでもなりたいのかな。

火龍の特性って何だろう?

口から炎?

耀が口から炎・・・・・・・・・想像したくねぇ~。

「ところでおんしら、フロアマスターについてどのぐらい知っておる?」

「私は全く知らないわ」

「私も」

「俺は少しだけなら」

「俺もちょっとは」

フロアマスターとは下層の秩序と成長を見守る連中で箱庭内の土地の分割や譲渡、コミュニティが上位に移転できるかを試すのにギフトゲームを行ったり魔王が現れたら率先して戦うといった義務がある。それと引き換えに“主催者権限(ホストマスター)”が与えられてるそうだ。

「北は鬼種や精霊、悪魔といった種が混在した土地なのでそれだけ、治安が良くないのです。そのため、マスターは複数存在します。」

ジンの補足説明により話が少しずつ進む。

「“サラマンドラ”とはかつては親交は有りましたが、頭首が替わっていたとは知りませんでした。今はどなたが頭首を?」

「末の娘のサンドラだ」

その名前にジンが身を乗り出して驚く。

「サンドラが!?そんな、彼女はまだ十一歳ですよ!?」

「ジン君だって十一歳で私たちのリーダーじゃない」

「それはそうですけど・・・・いえ、ですが」

「なんだ?御チビの恋人か?」

「ち、違います!」

十六夜がジンを弄って遊んでるうちに話を進めてもらう。

「それで?俺達に何をして欲しいんだ?」

「あぁ、今回の誕生祭は次代マスターのサンドラのお披露目も兼ねている。

じゃが、まだその幼さ故、東のフロアマスターの私に共同の主催者を依頼してきた」

「北には他のマスターもいるのでしょう?なら、そのコミュニティにお願いして共同主催すればいい話じゃない?」

「うむ。まぁ、そうなのじゃが」

白夜叉が歯切れ悪く話す。

「幼い権力者を良く思わない組織がある、とか在り来たりにそんなところだろ」

「まぁ、それもあるが色々事情があるのだ」

十六夜のセリフに肯定も否定もしない白夜叉。

何か隠してる、いや、言いにくいことなのか。

「ちょっと待って。その話長くなる?」

急に耀が何かに気付いたのかそんなことを聞いてくる。

「ん?そうだな、短くとも後1時間ぐらいかの」

なんだと!?それはマズイ。

十六夜と飛鳥も気づいたらしく少し慌てる。

ジンも気が付き立ち上がる。

「白夜叉様!どうかこのまま「ジン君『黙りなさい!』」

飛鳥のギフトで口が無理やり閉じられるジン。

「白夜叉!今すぐ北側へ向かってくれ!」

「構わんが内容を聞かずによいのか?」

「構わねぇ!事情は追々話すし、何よりそっちの方が面白い!保障する!」

十六夜のセリフに白夜叉はニヤリと笑う。

「よし、わかった。それでは、北側へと連れて行こう」

白夜叉が両手をパンパンと二回叩く。

「これでよし。北側へ着いたぞ」

「「「「・・・・・・・は?」」」」

9800000㎞の距離を今ので移動したのか?

ありえんだろ。

白夜叉を膝から降ろし、十六夜達と共に外に出る。

ちなみに外に出るまで耀に頬を引っ張られたがなんで?

 


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