問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ?   作:ほにゃー

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第2話 交渉にいくそうですよ?

現在、俺達5人は“六本傷”が経営するカフェの一角に陣取り今後のことを話し合っている。

「毎回思うのだけど、ニ一○五三八○外門のあの悪趣味なコーディネートは、一体誰がしているの?」

悪趣味なコーディネートとは外門と箱庭の内壁の繋ぎ目に彫られてる虎の彫像だ。

今はもう潰れて存在しないがあれは“フォレス・ガロ”の旗印だ。

「箱庭の外門は地域の権力者が“階層支配者”の提示するギフトゲームをクリアすることでコーディネートする権利を得ます。コミュニティの広告塔の役割もあるんです」

「そう・・・それであの外道の名残が残ってるのね」

ジンの溜息交じりの説明に飛鳥は不機嫌そうに髪を掻き上げる。

「それで、北側までどうやっていけばいいのかしら?」

そう言って飛鳥は足を組み直す。

今の飛鳥の恰好はガルドとのギフトゲームの時と、“ペルセウス”のギフトゲームの時に着ていた真紅のドレスだ。

普段着にドレスってどうよ?

本人は気にしてないようだが。

まぁ、箱庭ではもっと突拍子もない服装の人もいたが。

この前、耀への埋め合わせのために、全て俺の奢りってことで耀と箱庭で遊び回った時、露出が多すぎてもはや服で無くなってる服を着た女性がいてビックリした。

その女性を見た直後、耀におもいっきり殴られ、回転を掛けながら近くの露店に突っ込んだ。

あの後、3日程首が痛かったな~。

「北にあるんだから、とにかく北に歩けばいいんじゃないかな?」

耀の無計画にも程がある提案に思わず苦笑する。

耀の恰好は箱庭に着た時とさほど変わらない恰好をしてる。

シャツ・ジャケット・ショートパンツ・ニーハイソックス・ブーツと、全く色気のない恰好である。お洒落と言えば右手に付けてるブレスレットとブーツについてるアンクレットぐらいだ。

だがブーツに付けてるアンクレットは黒ウサギがくれたギフトだ。

なんでも、飛行を手助けしてくれるギフトらしい。

ブレスレットは耀への埋め合わせパート2での俺からのプレゼントだ。

特になんの力もないが結構気に入ってくれたみたいだ。

「で?我らのリーダーは何か素敵な案はないのか?」

ニヤニヤと見下ろす十六夜も着た時と変わらない紺の制服と壊れたヘッドホン首にかけた格好だ。かなり簡単だな。

ちなみにおれの服装は黒い長ズボンに黒いシャツ、黒いコート全身真っ黒黒助だ。

更に吸血鬼は暑さ、寒さに強く夏場でも平気でコートを着れる。

「もしかして、北側の境界線までの距離をしらないのですか?」

「知らねえよ。そんなに遠いのか?」

「なら、説明する前に言いますが、箱庭の表面積が恒星級だという話を知ってますか?」

「え?恒星?」

素っ頓狂な声を上げる飛鳥と表情を変えずに瞳を三度瞬きする耀。

十六夜は知ってたらしくあまり驚いてない。

「知ってるが、箱庭の世界は殆どが野ざらしにされてるって聞いたぜ。それに、大小は有っても町もあると」

「有りますよ。ですが、それを差し引いても箱庭は世界最大の都市。箱庭の世界の表面積を占める比率は他の都市と比べ物になりません」

都市の大きさを星の、しかも恒星級の星での比率で表す事ができるってどんだけでかいんだよ。

もし、箱庭の世界が太陽サイズならそのでかさは地球の13000倍。

馬鹿げてるな。

「まさか、恒星の1割ぐらい都市が占めてるとは言わないわよね?」

「そ、それは流石にありえませんよ。比率といってもその数字は極小数になります」

「そ、そうよねそれで、ここから北側の境界線までどのぐらいあるの?」

安堵した息を漏らし飛鳥はジンに聞く。

ジンは少し考えてから言葉を話す。

「ここは少し北寄りなので大雑把でいいのなら・・・・・980000㎞ぐらいかと」

「「「「うわお」」」」

俺達4人は様々な声音で呟く。

嬉々とした、唖然とした、平坦とした、絶句した声を上げた。

 

 

 

~その頃のコミュニティ~

「食堂にはいなかったよ!」

「大広間、個室、貴賓室、全部見てきた!」

「貯水池付近もいないっ!」

「お腹すいた!」

「それはまた後でな。・・・・・・金庫の方は?」

「コミュニティのお金に手を付けていません。皆さんの自腹では境界壁まで向かうことができませんから、外門付近で捕まえれることが可能です!」

「なら、黒ウサギは外門へ向かえ。

捕まえれなくとも“箱庭の貴族”のお前なら境界門の起動に金はかからない。私は“サウザンドアイズ”の支店に向かう。招待状の贈り主が白夜叉なら無償で北の境界壁まで送り届ける可能性もある」

「あの問題児様方・・・・・!今度という今度は絶対に!絶対に許さないのですよ!」

 

~終了~

 

「いくらなんでも遠すぎるでしょう!?」

「遠いですよ!箱庭の都市は中心を見上げた時の遠近感を狂わせるようにできているため、肉眼で見た縮尺との差異が非常に大きいんです!」

へぇ~、そんなトリックがあったのか。

「なら、“ペルセウス”のコミュニティに行った時みたいに外門と外門を繫げてもらいましょう」

「“境界門”のことですか?断固却下です!外門同士を繫ぐにはお金がかかるんです!

“サウザンドアイズ”発行の金貨で一人一枚!五人で五枚!コミュニティの全財産を上回ります!」

それは、かなりまずいな。

そんなことをしたらコミュニティの子供たちが飢え死にしちまう。

「なら、ルイオスに頼んで見るか?あれでも五桁のコミュニティで元“サウザンドアイズ”の傘下だ。“サウザンドアイズ”発行の金貨ぐらいあると思うが」

実はこの前のギフトゲーム以来ルイオスはどういう訳が俺の事を「兄貴」と言って慕ってくるようになった。

言うなればルイオスは俺の舎弟。

悪く言えばパシリだ。

「嫌よ!アイツに借りを作るなんでごめんだわ」

飛鳥の一言でそれも却下になった。

他に方法は・・・・・

「今なら笑い話ですみますから・・・もう戻りませんか?」

「断固拒否」

「右に同じ」

「以下同文」

「同感です」

俺達の言葉に肩を落とすジンだった。

ん?そうだ。

「白夜叉が招待状送って来たなら、白夜叉に頼んで見たらどうだ?」

俺の一言に周りが沈黙する。

「それよ!その方法があったわ!早速行くわよ!」

「おう!こうなったら駄目で元々!“サウザンドアイズ”へ交渉に行くぞゴラァ!」

「行くぞコラ」

ハイテンションな十六夜と飛鳥に続き、ノリで声を上げる耀だった。

なんか可愛いな。

そして俺達は魂がぬけたようなジンを引きずり“サウザンドアイズ”へ向かった。

 


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