問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ?   作:ほにゃー

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第10話 ギフトゲームが終了するそうですよ?

遠くから水が流れる音と多くの男どもの悲鳴が聞こえる。

どうやら首尾よく囮はうまく行ってるようだ。

「修也、状況はどんなもんだ?」

「飛鳥が首尾よくやってくれてるぜ」

「流石だな」

今回、俺の役割は耀と共に不可視のギフトを持つ兵士を倒しハデスの兜(レプリカ)を奪う役割だが、それは嘘だ

本当の役割は十六夜の保険だ。

万が一、十六夜の姿が見られた時、俺が十六夜の代わりにルイオスを潰すことになってる。

今の所、十六夜以外でルイオスに勝てそうなのは俺ぐらい。

その為、十六夜が俺を保険という形で温存することになった。

だから、なるべく俺は敵に姿が見られないようにしてる。

このことは、俺と十六夜、ジン、耀の4人しか知らない。

ていうか、この場に俺らしかいないからってだけなんだが。

「ぐっ!」

ドサッと地面に何かが倒れ、急に男が現れる。

どうやら耀が不可視のギフトを持つ兵士を倒したらしい。

「不可視のギフト、ゲットだな」

「やっぱり匂いと音は消せないみたいだね」

ハデスの兜とは言え、所詮はレプリカ。

本物みたいに音や匂いまでは消せないみたいだ。

「このゲームはこのギフトが鍵になる。最奥に続く道に数人配置されてたら不可視にでもならないと攻略は無理だ。兜を使う手下を限定してるのも安易に奪われないため」

「だが、不可視の兵士をさがして動き回るのは自殺行為だ」

「この兜で御チビだけ守っても俺が見つかれば勝ち目はなくなる。

となると作戦変更だ。もう一つ兜を奪う。春日部には悪いが―――」

「気にしなくていい。私が敵を引き付けるから透明になったまま叩いて」

不可視のギフトは最低でも2つ必要。

欲を出せば俺と耀の分も欲しいが欲を出し過ぎて失格になるのはマズイ。

取りあえず十六夜とジンの分を確保できればいいか。

「良いとこ取りみたいで悪いな。これでもお嬢様や春日部、修也にはソレなりに感謝してるぞ。今回のゲームなんかは、ソロプレイで攻略出来そうに無いし」

「大丈夫、埋め合わせはしてもらうから」

「安心しな。埋め合わせはする。修也がな」

ちょっと待て、何故俺が十六夜の埋め合わせをしなきゃならん?

「期待してる」

こっちに親指を立てて耀が言ってくる。

明らかになんかおかしいよね?

「よし、御チビは隠れとけ。死んでも見つかるなよ」

兜を被り、十六夜の姿が消える。

物陰から飛び出して宮殿を駆け回る。

暫く廻ってると兵士どもと遭遇した。

「いたぞ!名無しの娘だ!」

「これで敵の残りは四人だ!」

兵士が一斉に襲い掛かってくる。

「邪魔だ!」

見えない十六夜の拳が炸裂し、兵士を一気に片づける。

「春日部、こいつら以外に敵は?」

「今の所何も聞こえない・・・わ!?」

いきなり耀が飛ばせれて驚く。

飛ばされたっていうより殴り飛ばされた感じだな。

「春日部!」

俺と耀が気づけないってことはオリジナルのハデスの兜か。

こいつは厄介だな。

「くそ、ここはひとまず撤退だ!」

十六夜が耀を抱きかかえて逃げようとすると十六夜も殴り飛ばされた。

いくら姿が透明になっていても姿が見える耀を抱えていたら位置がばれるにきまってるか。

殴られたときに十六夜の被ってる兜が壊れたらしく十六夜の姿が現れる。

「くそ!兜が壊れちまった!」

姿が見られたため十六夜は失格になってしまった。

俺はすぐさま動く。

そして、姿が見えない兵士の背後に立ち、首に噛みつく。

「なっ!・・・・がっ」

そのまま兵士は崩れ落ち兜を拾う。

「こいつが本物か」

「修也、どうして奴の居場所が分かった?本物のハデスの兜は匂いも音も気配も消す。

なんでだ?」

「確かに匂いも足音もしなかった。ひょっとして見えてる?」

十六夜と耀が不思議そうに聞いてくる。

「いや、見えてない。ただ何となく分かる」

「「は?」」

「俺、吸血鬼だからさ、何となく分かるんだよ。血が騒ぐってのかな?

とにかく血に飢えてるとほとんど感覚で分かるんだよ。

特に最近は飲んでないからな。余計に分かる」

そう言うと十六夜はヤハハと笑い、耀は少し何か考え始めた。

「取り敢えず、ハデスの兜のオリジナルが手に入った。後は最奥まで行くだけだ。

十六夜、護衛を頼めるか?」

「おう、まかしとけ。連中が修也を見る前に黙らしてやるよ」

「よし、なら行こう」

いつの間にか居たジンにハデスの兜を渡すと耀が話しかけてきた。

「修也、私の血、飲んでって」

「え?・・・・・・・いいのか?」

「うん。血に飢えてるなら飲んでいいよ。それに、飲めば強くなるでしょ?」

確かに飲んだ方が力が強くなるし色々メリットもある。

「分かった。ありがとな」

そして、再び耀の首に噛みつき血を吸う。

実を言うと吸血鬼は人間の血に味を感じる。

基本的にはトマトジュースに近い味がするが極稀に味のある血がある。

それが耀だ。

耀の血はなめらかな濃いバターの様に濃厚な味わいでとてもうまい。

そして飲みやすい。

首から口を離し、傷口を舐めて塞ぐ。

耀は終始顔を真っ赤にしていた。

「ふぅ、ごちそうさま」

口に着いた血を拭い拳を握る。

力が漲ってくる。

 

 

「おっす、黒ウサギ」

「修也さん、十六夜さんにジン坊ちゃん!」

宮殿の最奥に着くと黒ウサギがいた。

俺たちの姿を確認すると安堵したかのように息をもらす。

「ふん、使えない部下共だ。これが終わったらまとめて粛清しないとね

ともあれ

ようこそ白亜の宮殿・最上階へ、ゲームマスターとして相手しましょう

あれ?この台詞言うの初めてかも?」

ルイオスは翼の生えた靴で空に飛びあがる。

なるほど、ペルセウスがゴーゴン退治で神から授かった武具、ヘルメスの靴か。

となると、ハデスの兜を除けば神霊殺しの鎌“ハルパー”とアテナの盾か。

黒ウサギが言うにはアテナの盾は箱庭で失ったそうだが。

ルイオスはギフトカードから炎の弓をだして構える。

「炎の弓?神霊殺しの鎌ハルパー使うのだと」

「飛べるのにどうして同じ土俵で戦わなきゃいけないのさ。

それにメインで戦うのは僕じゃない。コイツさ」

ルイオスは首のチョーカーについてる装飾を引き千切ると投げ捨てた。

「目覚めろ。アルゴールの魔王!」

装飾が光を放ち、その中から拘束具に縛られた女性と思しき者が現れた。

あれが精霊アルゴール。

「GYAAAAAAAAAAaaaaaaa!」

アルゴールの絶叫が響き渡る。

その直後、空から何かが落ちてきた。

「飛べない人間は不便だよね。落ちてくる雲も避けれないんだから」

アルゴールの持つ石化のギフトで雲を石化したのか。

雲まで石化するとは恐ろしい。

アルゴルとはペルセウス座のゴーゴンの首の位置にある恒星で“悪魔の頭”という意味がある。

ゴーゴンの首の位置にあるから石化のギフトを持っているというのが十六夜の推測らしい。

「今頃君たちの仲間と部下どもは石になってるだろうさ。ま、無能にはいい罰さ。

安心しなよ。君たちに石化のギフトは使わない。すぐに終わらせたら勿体ない」

「目論見は外れたな。レティシアが戻れば魔王に対抗できると思ったんだろうが、肝心のレティシアは使えない。どうする、例の作戦止めるか?」

「・・・・ですが、僕たちにはまだ貴方たちがいます。

この舞台でそれを証明してください」

「OK。見せてやるよ」

十六夜の言葉に黒ウサギは期待するような目で十六夜を見る。

「と言いたいが、残念なことに俺はあいつに挑む資格が無い」

「え・・・えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

アルゴールの次は黒ウサギの絶叫が響く。

「なら、どう戦うんですか!?」

「落ち着けよ、黒ウサギ。後は、修也がやる」

「その通りだ」

ギフトカードから白牙槍を取り出し構える。

「見とけ、黒ウサギ。十六夜だけが魔王を倒せるってわけじゃないぜ。」

ルイオスを見ながら馬鹿にするように挑発をする。

「こいよ、名前負け。二度と逆らう気が無くなるぐらい徹底的に叩き潰してやる」

「この――――名無し風情がァ――――ッ!」

ルイオスが切れ炎の弓を放つ。

「はぁ、止まって見えるぞ!」

放たれた炎の矢を一つ残らず槍で払い落とす。

弓が無駄だと分かるとすぐさま仕舞い、今度はハルパーを取り出す。

「押さえつけろ!アルゴール!」

アルゴールと挟み込んで俺を討つつもりか。

アルゴールは俺に襲い掛かって来てねじ伏せようとする。

だが

俺は真正面からアルゴールを見据えて迎え撃つ。

「くたばれ!」

アルゴールの顔面をぶん殴り、ノックダウンさせる。

「くっ、調子に乗りやがって!」

「テメーもな!」

後ろからハルパーで斬りかかってくるルイオスの鎌を槍で弾き、腹に蹴りを入れる。

「どうした?随分調子が悪そうだが?」

「はッ、あれでアルゴールが終わったと思うなよ。

今だ!押しつぶせ!アルゴール!」

アルゴールはかなりタフらしくすぐさま意識を回復させ後ろから俺に殴りかかる。

「残念だったな!これで僕たち“ペルセウス”の勝利だ!」

「誰の勝ちだって?」

「な!?」

アルゴールの一撃は俺に当たらず地面を砕いただけだった。

俺は翼を出し、アルゴールの攻撃を躱しルイオスの背後に着いた。

「おらよ!」

「がは!」

下からルイオスを殴り上に飛ばす。

そして、すぐさま飛び上がり再度攻撃をする。

「覚えとけ。翼があるのはお前だけじゃないんだよ」

もう一度ルイオスの腹を蹴り飛ばし地面に叩き落す。

「ぐ・・・がは・・・・・・・なんだよ!?なんなんだ!?お前は!?

本当に人間か!?いったいどんなギフトを持っている!?」

「ギフトネーム“忠義の吸血騎士(ロード・オブ・ヴァンパイアナイト)”これでわかるだろ?」

「ヴァ、ヴァンパイア!?お前、吸血鬼なのか!?」

「ああ、ついでに言うとレティシアの従弟になる」

「・・・・・・もういい、アルゴール。どんな手を使っても構わない。

奴を――――――――殺せぇ!!」

ルイオスの命令に従うようにアルゴールは絶叫する。

すると黒いしみがアルゴールを中心に広がり、あたりからいろんな魔獣を生み出す。

「確かゴーゴンにはそんな力もあったけ」

「そうだ!これが数々の魔獣を生み出したゴーゴンの特性!お前の相手は魔王とこの宮殿そのものだ!逃げ場はないものと知れ!」

「へぇ~~~~、そいつは面白いな。だが、覚えとけ俺は吸血鬼。たかが魔獣如きに遅れは取らないぜ!」

言うや否や俺は自分の腕を斬り血を辺り一帯に撒く。

そして、槍を地面に突き刺す。

「我が血よ、我が名のもとに従え。ここ一帯を――――――破壊せよ!」

血は地面に吸い込まれる。

吸い込まれると闘技場が揺れ始める。

「な、一体何が!?」

「俺のギフトの力の一つ。俺の血は俺の体の一部。ありとあらゆる命令に従う。今みたいな無茶苦茶な命令でもな」

「だが、この宮殿には常時防御用の結界が貼られている!いくらなんでもそれを破るのは不可能だ!」

「そうかい。なら、俺も良いこと教えてやるよ。この白牙槍って結構いい武器でな。

ちょっとした恩恵があるんだよ」

ルイオスだけでなく黒ウサギ、ジン、十六夜までもが耳を傾ける。

「結界破壊効果だそうだ」

「な!?」

「さっきコイツを地面に突き刺した瞬間、お前の言う防御用結界はもう壊れた。すなわち」

急に地響きが起こり、闘技場全体が震えだす。

「ここは破壊できるんだよ」

そして、巨大な音と共に闘技場が破壊された。

「どうした?もうネタ切れか?」

ルイオスは悔しそうな顔を浮かべるがすぐに真顔に戻った。

「もういい、アルゴール。終わらせ―――」

「る、前に俺が終わらせるぜ」

ルイオスが何かを命じようとするがその前に俺はアルゴールの額に槍を突き刺す。

そして、そのまま、蹴り倒し、爪で引き裂き、腕をもぎ、踏み潰す。

そして、元魔王アルゴールは動かなくなった。

「まぁ、こんなもんか。さぁ、次はどんなものを見せてくれる?」

「・・・・・・もういい、やめだ。お前たちの勝ちでいい。もともと乗り気じゃなかったんだ。こんなことで生死を掛けたくない」

「修也さん、もうこれ以上のものは出ないと思います。アルゴールが拘束具で繋がれてる時点で察するべきでした。ルイオス様はアルゴールを支配するにはまだ未熟すぎるのです」

ルイオスは悔しそうにした俯く。

所詮は七光りか・・・・

「おい、このまま終わっていいのか?」

俺の言葉にルイオスは反応する。

「このゲームでお前たちの旗印を手に入れたら、今度は旗印を盾にもう一戦申し込む。

そして、次は名前を頂く。そうすればお前らも名無しだ」

ルイオスは恐怖に顔を歪め怯える。

大方、“ノーネーム”になった自分たちを想像したんだろう。

「そして、また名と旗印を掛けて勝負をする。お前たちから絞るだけ絞って、箱庭で活動できなくなるぐらいに徹底的に潰してやるよ」

「や、やめろ!僕のコミュニティが崩壊する!」

「なら、最後まで戦え。ゲームマスターとして、“ペルセウス”のリーダーとして立ち向かってこい。投げやりにゲームを終わらせるな。ゲームは・・・・・・まだ続いてる!」

ルイオスはゆっくりと立ち上がりギフトカードからハルパーを出す。

「いいだろ。やってやる。やってやるさ!アルゴールがいなくても、僕の力でやってる!」

ルイオスは鎌を構え突っ込んでくる。

俺も槍を構え相手になる。

「は、結構根性あるじゃねーか」

そして、俺の拳はルイオスの顔面を貫いた。

 


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