問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ? 作:ほにゃー
レティシアに案内された部屋には耀がいた。
ベッドに横になり、そして、健康的だった姿は衰え、痩せこけていた。
レティシア曰く、今はあるギフトを使い、呪いの進行を遅らせてるとのことだ。
だが、あくまで呪いの進行を遅らせることしかできない。
呪いは徐々に耀の体を蝕み、確実に死へと導いてる。
そして、呪いが体を蝕むたびに耀は苦しむ。
耀を呪いの苦しみから助けるには、魔王を倒す。
それしか方法は無い。
「…………こんなにもやつれちまって………見違えちまったな」
誰にいう訳でもなくぽつりと呟く。
「こんな時でも修也の奴は顔を出さねぇ」
いつの間にか十六夜が来て、俺の隣に立っていた。
「薄情な奴だ。テメーの嫁さんが死ぬかもしれないって瀬戸際なのによ………」
「……十六夜は修也が生きてると思うか?」
「ああ、生きてる」
即答に俺は少し驚いた。
「もう十年だろ。終焉の魔王が討伐された地に向かって、そして、終焉の魔王の復活。どうみても絶望だと思うが」
そう言った瞬間、十六夜は俺の胸倉を片手で掴んだ。
「テメーにアイツの何が分かる?ちょっと会ったぐらいでアイツの事知ったつもりでいるなら大間違いだぜ。アイツは、仲間やダチを残して死ぬ奴じゃねぇ!それは親友の俺が一番知ってる!これ以上修也が死んでるとか言ってみやがれ!テメーを叩き出す!」
そう言って十六夜は俺の胸倉を離し、耀に視線を移す。
「それに、春日部自身が修也の事をまだ生きてるって信じてるんだ。それなのに、俺達が信じなくてどうするんだ。こうして、苦しい思いまでして、今を生きようとしてるのだって。まだ修也が生きてるって信じてるからなんだぞ」
声を落とし、十六夜は拳を握る。
その時、部屋の扉が開きの女の子が出てきた。
「………パパ?」
え?パパ?
「ああ、わりぃ起こしちまったか」
「ううん、トイレ………誰?」
女の子は目を擦りながら俺を指差してくる。
「ああ、廉のパパのお友達だ」
「廉のパパの?」
「ああ、そうだ。ほら、もう寝な」
「うん……」
寝ぼけながら頷き、女の子は部屋を出ていく。
「………今の子は?」
「ああ、俺の娘の明日菜だ」
うん………まぁ、予想は出来てた。
飛鳥も十六夜と同じ苗字なんだし、子供が居てもおかしくないな。
てか飛鳥とよく似てるな。
………十六夜みたいな雰囲気もあったが…………
てか、今の話からして、廉ももう生まれてるみたいだ。
十六夜と部屋を出て、館の外に出る。
石階段に腰を掛け、十六夜に言葉を掛ける。
「なぁ、父親になるってどんな感じだ?」
「……そうだな。護りたい者が増えた。そんで、愛しい奴も増えた」
そう言う、十六夜は嬉しそうに言う。
「十六夜君、ここにいたのね」
飛鳥もやって来て、十六夜の隣に立つ。
うん、二人が寄り添ってるのを見ると、本当に夫婦なんだなって実感できるな。
「………多分、そう長くは無いってレティシアが………」
「………そうか」
「………春日部の容態はそんなに悪いのか?」
そう尋ねると飛鳥は無言で頷いた。
「これ以上“サウザンドアイズ”の連中を待つことは出来ねぇ。俺と飛鳥で終焉の魔王に立ち向かうか…………」
「それしかないかもね。でも、どう戦うの?あの魔王と」
十六夜と飛鳥は悔しそうに唇を噛む。
そんな二人の姿を見て、俺はある話を持ちかけた。
「なぁ、十六夜、飛鳥。一つ提案がある」
「俺と一緒に終焉の魔王を倒そうぜ」