問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ?   作:ほにゃー

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三ヶ月ぶりの更新です。

プロローグはこれで終了

次回から、オリジナルストーリーになります。


プロローグ③

息子……息子ってアレだよな。

 

子供の事だよな。

 

あれ?子供って何だっけ?

 

男と女が夫婦の営みをすると生まれる愛の結晶。

 

コウノトリが運んでくる。

 

キャベツ畑から生まれて来る。

 

あれ?子供ってなんだっけ?

 

こいつが、俺と耀の………

 

「息子!?」

 

「うん、そうだよ」

 

目の前に居る自称俺と耀の息子は笑顔で言う。

 

「……この子が私と修也の…」

 

耀、なんで嬉しそうなの?

 

いや、確かに自分の子供と会えるのは嬉しいけど、ここには十六夜や飛鳥もいるんだぞ。

 

絶対冷やかされるに決まってる!

 

「なるほど、修也は既にやることをやっているって訳か」

 

「そんな訳あるか!?」

 

耀ははまだ14歳だぞ!

 

せめて18からだろ!

 

「ふむ、修也の息子か。となれば、私は叔母さんなのか?」

 

「従姉だとそのへんはどうなのかしらね?」

 

レティシアと飛鳥は別の事を考えてるし…………

 

「いや~、皆若いなぁ~。ボクと同い年ぐらいかな?」

 

自称息子の廉はその光景を見つめてニコニコと笑っている。

 

「ところで、廉だったか?一つ聞かせろ」

 

「何、十六夜叔父さん」

 

「叔父さんか、ヤハハ、悪くねぇ響きだぜ」

 

十六夜は笑みを浮かべ、廉に聞く。

 

「お前の名字だが、なんで春日部なんだ?修也と春日部が結婚したんなら春日部の名字は月三波になるはずだろ?それとも、修也が婿入りしたのか?」

 

「ああ、それか。それはちょっと複雑な事情があるんだけど、あえて言うなら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「形式上夫婦なんだよ、父さんと母さんは」

 

形式上?

 

どういうことだ?

 

「形式上夫婦ではあるけど、正式には夫婦じゃないってことかな。父さん、結婚式前日に失踪したから」

 

は?失踪?

 

ちょっと待て!

 

無視できない単語が出てきたぞ!

 

「失踪ってどういうことだ?」

 

「まぁ~、話せば長くなるんだけど、なんでも南側の若い幻獣たちが幻獣で頂点はどの種族なのかを求めて喧嘩して、それを止めるために南側に行ったきり。まぁ、元々夫婦同然だったし、形的には夫婦ってことになってるよ。名字が違うのはそのためだよ」

 

それって…………俺死んだってこと?

 

いや、精々行方不明?

 

てか、どっちにしろ最悪じゃねぇか!

 

「修也………ご愁傷様」

 

「修也君………安らかに眠って」

 

「私、若くして未亡人になっちゃったんだ」

 

「妻子を置いて先立つとは最低だな」

 

「お前ら!勝手に未来の俺を殺すなよ!」

 

こいつら、ここぞとばかりに悪ノリしやがって。

 

「いや~、楽しいな!」

 

「元凶が何言ってやがる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数分ほど、皆でわいわいやっていると廉が急に立ち上がって、そろそろ帰る時間だと言った。

 

「少しの間だったけど、楽しめたよ」

 

「そうか。そいつは良かったな」

 

「うん、じゃあ、またね。父さん」

 

廉は少しだけ寂しそうに言う。

 

そんな廉を見て俺は手を伸ばし、頭を撫でる。

 

「未来の俺が迷惑かけたな。ごめんな、廉」

 

「…………はは、母さんの言った通りだな」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「いや、別に」

 

そう言うと同時に廉の身体が光に包まれた。

 

「もう行かないと。じゃあね、父さん、母さん。それと皆さんも」

 

そう言って廉は姿を消した。

 

「あれが俺の息子………」

 

「私そっくりだった。でも、髪と瞳は修也そっくりだったね」

 

「性格は若干十六夜みたいだったがな」

 

俺がいないから十六夜が父親代わりだったのかもしれないな。

 

そう思うと、未来の俺は本当にどうしたんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれが僕の父さんか」

 

廉は自分が本来居るべき時間軸の“箱庭”に着き、過去で会って父親の事を振り返っていた。

 

「………母さん」

 

母から譲り受けた“生命の目録”を見つめ、母の事を思いだす。

 

ベッドの上に横になり、指一本すら動かすことのできない弱り切った母親を。

 

そんな母親が、言っていたこと。

 

『あの人は、仲間や友達の為なら自分の命も惜しいとは思わない人。一度は死にかけたこともあった。そんな姿を見て、私はとても辛かった。でもね、それがあの人なの。だから、母さんはあの人を恨んでいない。むしろ、自分の遣りたいことを我慢して欲しくない。廉もいつか、あの人に会えばわかるはず…………廉、いつかあの人と会えたら伝えてね。ずっと愛してるって』

 

廉は今日まで父の事を恨んでいた。

 

母が大事な時に、会いにも来ない、父が憎かった。

 

だが、今日、過去の父親と会い、父が本当に母を愛していたことを知ることできた。

 

廉にはそれだけで十分だった。

 

「………ごめん、母さん。伝えれなかった。だって、今の父さんと母さんは幸せそうだったからね。でも、いつの日か伝えるよ。母さんの最後の言葉を」

 

「れ――――――――ん!」

 

遠くで自分の名前が呼ばれ振り返ると、赤いドレスを纏った少女がやってくる。

 

「こんな所でなにしてるのよ!さっさと食材の買出しに行くわよ!」

 

「ごめん、明日菜。行こっか」

 

少女と並ぶようにして、廉は“ノーネーム”の敷地を歩き出す。

 

父と母が、仲良く寄り添っていたように。


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