問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界に来るそうですよ? 作:ほにゃー
まだプロローグの段階だ。
「改めて言おう。黒鬼だ。クルーエ・ドラクレアと白夜叉の息子だ」
正直驚きだ。
あの親父が、白夜叉との間に子供を作っていたなんて………
聞いた話によると、ある日、親父と白夜叉が三日三晩に渡って酒盛りをしたらしい。
そして、気付いたら生まれたままの姿で白夜叉と共に布団の中だったそうだ。
親父も酒の勢いとは言え、過ちを犯したことに変わりはないから、責任は取るとのことでそのまま結婚。
白夜叉も満更じゃなかったそうだ。
親父も白夜叉の事は好きだったとかで、結婚自体問題は無かったそうだ。
だが、その後、例の大量虐殺事件がきっかけで、親父は“箱庭”を追放。
このままだと、白夜叉もろとも追放になるから、白夜叉の事を考えて別れた。
白夜叉も自分も付いて行くと言って、話を聞かなかったそうだが、結局は折れて、別かれる形になった。
その後、親父は独自に“箱庭”を行き来する方法を見つけ、“箱庭”に訪れたが大っぴらに行動は出来ないため、白夜叉とよりを戻すことは無かった。
そして、再び親友と言うか悪友の関係になったそうだ。
ちなみに、親父がお袋と結婚することになった時、盛大に祝ってくれたそうだが、その後三日程寝込んだとか………
「以上が、俺がお袋から聞いた話と見た話だ」
「何と言うか、親父凄いことしてたんだな」
黒鬼はケラケラと笑いながら、親父と白夜叉のことを話してくれた。
「てか、俺は白夜叉の事を母さんとでも呼べばいいのか?」
「多分、喜んでくれるんじゃね?」
ちなみに、今俺達はレティシアの自室に居る。
俺の部屋では耀が寝てるし、客間には黒鬼自身が行きたくないそうだ。
なんでも、黒ウサギと顔を合わせれないとか。
ん~~~~~、黒ウサギとの関係が気になるところだ。
「黒鬼も親父の子ってなら、お前も吸血鬼なのか?」
「ああ、一応な。でも、あるのは治癒能力ぐらいだ。俺は親父よりもお袋の方の血を濃く引いてるみたいだ」
まぁ、あれでも太陽と白夜の精霊らしいし、紅炎を扱えてるあたり、白夜叉の血が濃いんだろう。
「じゃ、俺帰るわ。蛟劉の仕事も手伝わないといけんし」
「いいのか?せめて、黒ウサギやジンに会っていったら」
「……俺はあいつらに会う資格はない。特に、黒ウサギにはな」
「……黒鬼」
「本当ならお前と少し話したら帰るつもりだったんだがな。結局戦いたくなって、レティシアにばれちまった。……レティシアも、俺が帰って来て迷惑に思ってるさ。コミュニティの一大事に、コミュニティ、特に、黒ウサギの傍に居てやらなかったんだからな」
黒鬼は目を伏せ、悔しそうに呟く。
「悪い。湿っぽくなっちまったな。もう行く」
そう言うと、黒鬼は窓から出ようとする。
「なぁ、黒鬼」
俺は逃げるように帰ろうとする黒鬼を呼び止める。
「お前が、何考えてるかはわからない。でもな、ジンや黒ウサギはお前に会いたいっと思ってるはずだぜ」
「……そう思うか?」
「思う。だって、仲間なんだろ」
「……そうだな」
黒鬼は笑みを浮かべ、俺に向かって言う。
「サンキューな。でも、俺はまだ会えない。でも、必ず会いに行く。だから、それまで俺の事は内緒だ」
「分かったよ。また会おうぜ」
そう言うと、黒鬼は何処かすっきりした顔で部屋を後にした。
「うん?黒鬼の奴、帰ったのか?」
部屋の扉を開けて、レティシアが入ってくる。
手にはお盆を持ち、その上にはコーヒーの入ったカップが三つあった。
「ああ、たった今な」
「まったく、相変わらずせっかちな奴だ。コーヒーぐらい飲んで行けばいいのに」
「……なぁ、レティシア。黒鬼の事をどう思ってる?」
「あいつのことか?………そうだな」
レティシアは少し考えると微笑んで答えた。
「どうしようもなく、放浪癖があり、ことあるごとに黒ウサギを泣かせる男で、そして………大事な仲間さ」
「……そうか」
レティシアは今だに黒鬼をコミュニティの仲間と思ってる。
恐らく、黒ウサギや、ジンも思ってるだろう。
それより
「レティシア、黒ウサギと黒鬼について聞いてもいいか?」
「ほほう、話してもいいが、長くなるぞ?」
「それは楽しみだ」
「その話僕も聞きたいな。聞かせてもらってもいいかな?」
「ああ、聞くといいぞ。………ちょっと待て」
「うん?」
「ナチュラルに会話に入って来たお前は誰だ!?」
「うをっ!?誰だお前!?」
今気付いたが、こいつ誰だ!?
黒いコートに、顔はフードで隠れてよくわからん。
俺とレティシアは警戒態勢に入り、構える。
「ちょ、ちょっと!!別に僕は貴方方と敵対する気はありません。ただ、少しお話をね」
「前置きはいらん。用件を言え」
「あ、はい。………あの、用件言う前に一ついいですか?」
俺達は警戒の手を緩めずに頷く。
「なんか、食べ物下さい」
その直後、空腹音が部屋中に響いた。
ガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツ
こいつ、凄い食欲だな。
耀と同じぐらいか?
今俺たちの目の前にいる男はガツガツと出されたおにぎりと味噌汁を食っている。
それも凄い量を凄い速さで。
「……負けたくない」
「春日部さん、妙な対抗意識燃やさないで」
なんかいつの間にか耀たちも集まって来た。
「おい、修也。こいつは誰だ?」
「いや、俺も分からん」
十六夜が聞いて来るが、俺だって分からないんだ。
正直困ってる。
「やれやれ、今日は来客が多いな」
レティシアはおにぎりを握りながらぼやく。
幸いと言うか、黒ウサギは急な用事があるとかで今はいない。
ジンも同盟の件で話がある為、ペストと共に、出かけてる。
「いや~、食った食った。ごちそうさま」
男は手を合わせてごちそうさまをする。
「さて、腹も満たされたことだし、お前が誰なのか教えてもらおうか」
「ああ、そうだったね。貴方たちには、初対面でも、僕にとってはもう何回も会ってるんですけどね」
そう言うと男はフードを取る。
そして、現れた顔に俺達は驚いた。
その顔は耀そっくりだった。
耀は固まり、飛鳥は思考が停止してる。
十六夜ですら、口を開けて驚いてる。
確かに耀そっくりだが、それ以上に、髪と瞳の色にも驚いた。
それは、銀色だった。
「初めまして、そして、お久しぶり。僕は、春日部廉。春日部耀と、月三波・クルーエ・修也の息子です」
その瞬間、俺の口から魂的な物が飛び出した気がした。