認めます。これは酷い駄文だ。
会話文も地の文も酷い、というか全体通して書きにくかった。
後半のグダグダなんかもう……
たぶんちょいちょい修正します
「はぁ~~~」
学園の寮内を歩きながら、一夏は大きく溜め息をつく。
その手には、今日からの住まいとなる部屋の鍵が握られていた。
(あと一週間か……)
自分も了承したとはいえ、突如決まった決闘。
更に生徒達からの相変わらずの視線の嵐に、心身ともに疲労困憊していた。
「食堂にまで付いてくるんだもんなぁ……と、ここか。1025室だな」
部屋番号と鍵につけられたタグの番号を見比べると、鍵を差し込む。
そのまま回そうとして、ドアのロックが開いていることに気が付いた。
不思議に思いつつそのまま部屋に入ると、そこにあったのは二つのベットと、部屋の隅に置かれた荷物。
「そうか、相部屋だって言ってたな」
突然のことに一瞬驚いたが、すぐに謎は解ける。
おそらくエミヤ先生だ。
ただでさえ用務等に数人いる程度の男性職員、普通の教員ではおそらくエミヤだけだろう。
同じ操縦者同士、同室というのも分からなくはない。
「しかしそうなると、部屋でも気が抜けなさそうだなぁ」
そんなこと考えていると、浴室の扉が開く。
一夏は挨拶しようとそちらへと顔を向けた。
「あ、どうも―――――えっ? 」
「ああ、同室になった者か。私は篠ノ之――――」
そこから出てきたのは、予想に反して再会したばかりの幼馴染。
その格好はバスタオル一枚だ。
「…………」
「…………」
長い沈黙が部屋を支配する。
どれほど時間が経っただろうか、時計の針が刻む音がやたらと大きく聞こえる。
「い、い、いちか……?」
「お、おう………」
ようやく口から出た声は、お互い機械音声かと思うほどに硬かった。
「う、う、う、………」
「 鵜? 」
「うわあああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!! 」
何処から取り出したのだろうか、何時の間にか握られていた木刀を構え斬りかかる箒。
「うわっ!?。おい、なにすんだよ!? 」
「うるさい! こっちを見るな!! 」
混乱のあまり暴れまわる箒から、間一髪部屋の外へと逃げ出せた一夏。
慌てて扉を閉めると、安堵の脱力からそのまま扉に背を預け、ズルズルとへたり込む。
――――ズトンッ!!!―――
……安心するには早かったらしい。
驚いた一夏がそのままの姿勢で顔を横に向けると、鼻が当たりそうなほど近くから木刀が突き出ている。
「って、本気で殺す気か!? 」
「うるさい! いいか一夏、私がいいと言うまで絶対に部屋に入るな!! 」
「………これなら先生と同室の方がマシだった」
これからの生活を想像して、一夏はガックリと項垂れた。
「なぁ………」
「………………」
「おーい、もう昼だぞ。何時まで怒ってるんだよ」
「……怒ってなどいない」
「顔が不機嫌そうじゃん」
「生まれつきだ、悪かったな」
相変わらずの箒の対応に、一夏は大きなため息を吐く。
あの後、慌てて千冬に連絡をとった二人だが、部屋の変更はものの見事に却下された。
正確には千冬が箒に何事かを話した後、「し、仕方ない」と箒がいきなり折れたのだ。
こうして二人同室となったのだが、その後も箒がギクシャクとしていて、そのまま現在に至っている。
「無理してるんなら、今からでも変更―――」
「駄目だ! 」
「!? 」
「あ、いや。もう部屋割りは決まっているんだ、今から変更などしたら先生方に迷惑だろう」
「いや、だけど……」
「構わないと言ってるんだろ! 」
「……まぁ、箒がいいならいいけどさ」
部屋の変更を凄まじい剣幕で拒否する箒に、一夏はそれ以上何も言えなくなってしまう。
「……そういやさ」
「何だ? 」
「ISのこと教えてくれないか? このままじゃ来週の勝負まで何もせずに終わりそうだ」
「くだらん挑発に乗るからだ。馬鹿め」
「……………」
「そこをなんとか! 」
「……………」
「なあ頼む、こんなこと箒にしか頼めないんだ」
「………わ、わたしにだけ、か? 」
「ん? あぁ、当たり前だろ」
「そ、そうか……そうか…」
「出会って日が浅い他の人にはなかなか気軽に頼めない」 というのが言葉の後ろに入るのだが、それを知らない箒の機嫌は途端に良くなっていく。
嬉しそうに顔を綻ばせる箒の反応に一夏はやや首を傾げつつも、機嫌が良いに越したことはないと、さほど気にはしなかった。
「きょ、今日の放課後……」
「ん?」
「だから、今日の放課後に剣道場に来い。一度、お前の腕が鈍っていないか見てやる」
「いや、俺はISのことを―――」
「見てやる」
「……わかったよ」
ジロリと睨まれれば一夏に反論する気は起こらず、ただただ黙って頷くしかなかった。
*************
「早くしろ一夏」
「待てって」
「全く、教室を出るのにどれだけ時間がかかったと思っているのだ」
「いや、それは俺に言われてもなぁ」
そう言いながら一夏は歩きながら顔だけを後ろに向ける。
そこには上級生含め生徒達が続々と続いていた。
教室から出る時も、この人の波に阻まれて時間を費やしてしまった。
「なんでこんなとこまで付いてくるんだ? 」
「し、知らん! ほら、着いたぞ。さっさと――」
中へ入ろうとした二人だが、剣道場の片隅に人影を捕え、ふと足を止めた。
後ろにいた大量の生徒達も、何だ何だと後ろから様子を窺っている。
「あれは……」
「エミヤ先生だな」
そこには、目を閉じて立っているエミヤの姿。
SHRにはいたので、終わった後その足でここまで来たようだ。
皆挨拶をしようとしたが、口から出かけた言葉はすぐに引っ込んだ。
「……………」
ただ立っている、それだけの姿は洗練されていて、古代からある彫像のような重厚さすら感じる。
そのまま見ていれば、目の前で動かぬ石像へとなってしまいそうだ。
そしてその纏う雰囲気、容姿は共に剣道場には異質なはずなのに、エミヤは不思議なほどその風景の中に溶け込んでいた。
「……君たちはそこで何を。いや、私のせいか。すまなかったな」
「あ、いや……」
気がつけばエミヤは目を開けて二人へと顔を向けており、ようやく止まっていた時は動き出す。
「先生は、何を……? 」
「少し瞑想を」
少し微笑みながら、それだけを答えるエミヤ。
「それで、君たちは鍛錬にでもしに来たのかね? 」
「は、はい! 箒が手合わせしてくれるみたいで」
「そうか……では、見せてもらってもいいかな? 」
「大丈夫ですよ、他にもあんなにいるし……」
一夏が視線を向ける先には、ギャラリーと化した沢山の生徒達。
「一夏、何をしている! 」
「おう、悪い。先生、それじゃあ! 」
声のする方にはすでに竹刀を持った箒の姿がある。
一夏はエミヤにそう言うと、試合へと意識を切り替えつつ箒への元へと駆け寄っていった。
**********
「どういうことだ? 」
「いや、どういうことだと言われても」
「どうしてここまで弱くなっている!? 」
あれから10分、一夏は沢山のギャラリーの前で箒に怒られていた。
手合わせの結果は箒の勝ち、面具を外した箒の目尻は、話しながらもどんどんと吊り上っていく。
「中学では何部に所属していた? 」
「帰宅部。三年連続皆勤賞だ」
「……………」
一夏の返答に、箒はプルプルと震えだす。
「――なおす」
「はい? 」
「鍛え直す! IS以前の問題だ! これから毎日、放課後三時間、私が稽古をつけてやる」
「え、それはちょっと長いような―――ていうかISのことをだな」
「それ以前の問題だと言っているだろう!! 」
箒の剣幕に一夏は従うしかない。
「情けない。ISならまだしも、剣道で男が女に負けるなど……悔しくはないのか、一夏! 」
「そりゃ格好悪いとは思うけど……」
「……格好など気にすることが出来るとは、随分と余裕なのだな。良いだろう、なら早速稽古だ。はやく構えろ一夏」
「ちょっと待て! 流石に少し休ませてくれって」
「……情けない。では休憩の後に稽古再開だからな」
「助かるよ、ありがとう」
「……ふん」
そっぽをむいた箒を目の端に捕えつつ、一夏は壁際へと歩いていき、その場に座った。
「織斑君ってさぁ」
「結構弱い? 」
「ISほんとに動かせるのかなぁー」
ヒソヒソと聞こえるギャラリーの声が一夏の心に突き刺さる。
「トレーニング、再開するか……」
己の弱さを痛感したところで、そう決意する一夏。
箒は一人素振りをしていたが、ふと動きを止めるとエミヤの方へ顔を向けた。
「何かね? 」
「……手合わせしてはいただけないだろうか? 」
「おい、箒!? 」
「手合わせ中、先生は漫然と試合を見るのではなく私の動きや一夏の足運びや反応を見ていた。あれは武道の経験があるからこその目だ」
「……手合わせ中にそんな余裕あったんだな」
箒の発言に若干へこむ一夏。
エミヤは少し考えるようにしていたが、やがて一夏の方へと顔を向ける。
「織斑君、竹刀を貸してもらえるかな? 」
「あ、はい! 」
一夏が答えるとエミヤは彼の方へと歩み寄り、竹刀を受け取る。
そしてギャラリーのざわめきなど気にせずに、そのまま箒の元へと歩いて行った。
「先生、防具は? 」
「いや、必要ない。さて、先程の質問だがね篠ノ之君。私は特段、君の言う武道などと言えるようなことはやっていない……それでもいいと言うのならば、僭越ながら相手になろう」
そう言うとエミヤは手にした竹刀をゆっくりと構える。
(正眼……いや、違う。なんだあの構えは? )
エミヤの構えは正眼に似ていたが、体の重心や足の運びが微妙に違う。
箒が訝しげな顔をしているのを見て、エミヤは小さく笑った。
「だから言っただろう、私は剣道などはわからん。それに私本来の剣術はこれとは違う。これは師の剣の劣化した模倣に過ぎんし、私の師に流派は無いよ」
「そうですか……ならば、いざっ! 」
エミヤの言葉を聞き届けた箒は、自らも構えを取り斬りかかった。
**********
「…………くっ」
「成る程、その歳でここまでの腕とは」
「嘘……あの箒さんが? 」
あれからどれほど経っただろうか。
剣道場の中央には息を荒げている箒と、涼しい顔をしたエミヤがいた。
その結果に、ギャラリーもあちこちから話し声が聞こえる。
面具を外した箒の顔には大量の汗が流れているが、エミヤの方にはそれすらもない。
ようやく呼吸を整えた箒が、エミヤの顔をまっすぐに見る。
「……私の負けです」
「君も素晴らしい腕前だ、今回は私に一日の長があったがね。鍛えれば、私などすぐに追い越せるだろう」
「ありがとうございます」
「やっぱり先生も剣道やってたんですね! 」
何時の間にか二人の元へとやってきた一夏が言う。
エミヤはそれに、自嘲するような苦笑を返した。
「言っただろう織斑君、私は武道など修めていない」
「えっ、けど……」
「剣、弓、槍、徒手……他にも様々やっていた。剣は中でも長く鍛えたが、どれもただ技術を磨くだけのものだ。心身共に鍛える武道の心得とはまるで違う。そういう意味で、私は武道などやっていないと言ったのだ」
「なるほど。それにしても剣に弓に……って、そんなにやっていたんですか!? 」
「そのどれもが大した腕ではない。そもそも私に才能など欠片も無くてね、ならばせめて、己が持ちうる全ての技能を限界まで伸ばそうとしたのだよ」
本来、彼が出来たのはただ一つのことだけ。
しかしその能力(チカラ)をより上手く扱う為に、仮にそれが使えぬ時の為にと様々な技を身に着けた。
「はぁ……器用貧乏ってことですか? 」
やや失礼な物言いであることを承知で、一夏が問う。
エミヤはそれを気にも留めず、自嘲の色を更に濃くしながら答えた。
「私のはそれ以下だ。良いかね?、器用貧乏とは大抵の事はすぐ人並みかそれ以上に出来てしまうが故のこと。私はそれぞれを全力で鍛え上げた結果、ようやく人並みかそれ以下だ。仮に結果が同じだったとしても、それは全く違うものだろう? 」
「は、はぁ……」
少し困惑気味に、それでもなんとなく納得したように一夏がうなづいた。
その傍らで箒は何やら考え込んでいたが、やがてエミヤへと顔を向ける。
「……先生は何が一番得意だったんですか? 」
「弓はまだ得意なほうだったな。アーチャーと呼ばれたこともあったが、その名を汚さぬ程度には扱える」
「ゆ、弓……」
エミヤの返答を聞き、箒はガックリと項垂れた。
「どうしたんだよ箒? 負けたのが悔しいとかか? 」
「そうではない……いや、半分正解か」
「 ? 」
「負けたのが悔しいのは事実だが、それは私の鍛え方がエミヤ先生のそれに及ばなかっただけの話。聞けば先生は並々ならぬ研鑽を積んだようだ、まだ若く、経験の少ない私が勝てないのも頷ける。ただ……」
「ただ? 」
「私だって私なりに剣の腕を磨いてきたつもりだったし、先生には全力で挑んだ。それを一番得意な分野でないはずなのに、汗一つかかずに対処されると……」
流石に、と箒はシュンとしたように項垂れる。
それ聞いたエミヤは僅かに目を見開くと、今度は小さく笑い出した。
その様子を見た箒は、バツが悪そうに先生を睨む。
「なんですか先生」
「ククク、いやすまない。少しばかり昔を思い出してね」
「昔? 」
キョトンとした箒の視線を受けて、エミヤは遠くを見るように目を細める。
「私が師と初めて手合わせした時、私も君と同じくらいの歳だったんだが、二時間ひたすらに打ち合って相手は汗一つかかなかった。あの時の私は、悔しさを通り越して清々しさすら感じていたよ」
「そうだったんですか!? 」
「あぁ、才能は無かったと言っただろう? 初めの一時間は初撃で失神、意識を取り戻し、起き上がったら一撃で失神の繰り返しだった。なんとか初撃を受け止めても後が続かない。防具なしの状況だったとはいえ、あれは手合わせと言えたかどうか……それに比べれば、私も少しは成長したということかな」
「……今の先生から聞いても信じられません」
「今だったら先生の師匠にも勝てるんじゃないですか? 」
「それはない。私がいくら鍛錬を積もうと、純粋な剣技では彼女の足元にも及ばんよ」
「へぇ~……っていうか先生、いま彼女って言いました? 」
「そうだが、それがどうかしたかね?」
「じゃあ先生の師匠って女の人だったんですか? 」
「あぁ」
その一言に、箒が目を見開く。
隣にいた一夏も、周りにいたギャラリーたちも同様の反応だった。
「何を驚くのかね。私が知る最も優れた剣技を持つ人間の一人はその女性だよ」
「本当ですか!? 」
彼の知る中で、剣において最上級の腕前を持つのは二人。
一人は刀、一人は剣と、それぞれの武器でそれに相応しい剣技を振るった。
「もっとも、私は彼女から剣の型を習った訳ではないがね」
「え、でも師匠って」
「私が習ったのは戦い方のみ、それも二週間ほど手合わせをしただけだよ。それに彼女と再会する頃には、私なりの剣術は既に出来上がっていた」
「………………」
「縁あって再会した後も幾度となく手合わせを重ねたが、やはりあの剣には適わなかった。今の試合も事前に言った通り、記憶にある彼女の剣を不完全に模倣しただけだ。今の試合を見て私を強いと言うのなら、それは私ではなく彼女が強いのだろうよ」
何か眩しいものを見つめるような、それでいて穏やかな顔で、思い出を紐解くように回想をするエミヤ。
しかし周りが色々と聞きたそうにしているのを目にとめて、彼は苦笑しつつ口を開いだ。
「……さて、思ったよりも時間が過ぎてしまったな。では私はこれで失礼させてもらおう」
「あっ、はい 」
エミヤから竹刀を渡されるがままに受け取る一夏。
箒やギャラリーの生徒達から発せられるまだ聞きたそうな視線を受けながらも、エミヤは淀みない足取りで剣道場から出ていった。
「なんていうか、本当に何者なんだあの先生は」
「若い頃から、よほど鍛錬を兼ねていたんだろう。それに先生にそれだけ思わせる程、師匠の腕も素晴らしいものだったんだろうな。私も更に腕を鍛えて、是非また先生と再戦したいものだ」
「箒もやる気だな。これじゃあ俺も負けてられない」
「……良く言った一夏。では早速鍛えてやる」
「え?……お、おい箒!? 」
「エミヤ先生の鍛錬を聞いたろう? あれは今のお前にこそ必要だ。私に先生の師ほどの腕は無いが、これから月曜まで全力で相手をしてやる!! 」
言いながらも迫ってくる竹刀を見て、一夏はこれから続く特訓に背筋が凍ったとか。
そうして時は過ぎて月曜日。
セシリアとの勝負の日を迎え、クラス内も勝負の行方をあれこれと話し、いつも以上に賑やかだ。
そんな中で、連日の箒の特訓に耐え抜いた一夏はふと思った。
「……あれ、ISの特訓は? 」
そして、勝負の時はやって来る。
お読みいただき感謝感謝です。
剣戟では強かったエミヤさんですが、IS戦では他を瞬殺するような強さじゃないです。
今後そこを上手く書けたらなあ……。
因みにエミヤさんの言う「人並み」の基準は英雄達ですので、一般人なら十分達人の域に達してます。