【完結】熱血キンジと冷静アリア   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。ついに記念すべき100話目前ですね。感想も700件を超え、お気に入り件数も1000件を突破し、推薦された上に現状では「参考にならなかった」が多数となっておらず、実に嬉しいこと尽くしですよ。

 ま、それはさて置き。次回で100話となりますが、100話突破記念に何かぶっ飛んだ本編を載せるか、同じくやたらとぶっ飛んだ突発的番外編を載せるか、読者の皆さん的にはどっちがいいんでしょうねぇ……。



99.熱血キンジとメンバー集め

 

 白雪を深刻な単位不足による留年の危機から救うためにカジノ「ピラミディオン台場」私服警備の依頼を受けることにした、その放課後。まだまばらに生徒が残っている2年A組教室にて。

 

「カジノ警備、ですか」

「あぁ、頼めるか?」

 

 理子に向けて一方的にももまんの魅力について話しまくるアリアに協力してもらおうと、キンジはアリアに先の事情を全て話していた。対するアリアは思案顔。どうやらあまりカジノ警備に乗り気ではなさそうだ。

 

(まぁそうだよな。カジノ警備なんてイ・ウーとはまるで関係ない依頼だし)

「……キンジ。少し気になるのですが、この『被服の支給有り』というのは――」

「警備がいるって悟られないようにカジノっぽいものを支給してくれるって意味だと思うぞ? 女子だったら女性投資家らしい衣装とか、バニーガールの衣装とか、その辺のものくれるんじゃないか?」

「バニーガールですか……」

 

 バニーガール。その言葉を聞いた途端に乗り気でなかったアリアの瞳に「興味津々です」と言わんばかりの爛々とした光が宿る。アドシアードにてチアガール衣装のためにチアガールを志願した前例から考えて、アリアには通常では中々着る機会のない衣装一般に強い好奇心を持っているらしい。正当な理由の下でバニーガール衣装を着ることのできる機会を前に、もう見るからにカジノ警備へのやる気をみなぎらせていたアリアだったが、ハッと我に返ったような表情を浮かべると「……いえ、やめておきましょう」と力なく首を振った。

 

「ん? どうしてだ? 今メチャクチャやりたそうな顔してたじゃねぇか?」

「ええ。やりたいですよ、カジノ警備。ですが、ブラドにやられた足がまだ少し違和感があって気になりますし……悲しいことに、私の容姿は一見すると小学生並みですからね。見た目小学生のバニーガールなんてカジノに来るような人たちには需要ないでしょうし、仮に小学生を働かせてるなんて風評被害が広まって来客数が減ったり、警察沙汰になったりしたら経営陣の方々に非常に申し訳ないですしね」

(あぁ、言われてみれば確かに)

「なので……そうですね。私のことはあくまで後二人、人数がそろわなかった時の保険と考えておいてください」

「……わかった」

 

 目に見えて肩を落として落ち込むアリア。ズーンという効果音を引き連れてため息を吐くアリアをどうにか元気づけたいキンジだったが、特に気の利いた言葉を思い浮かべられなかったのでアリアへの対処は一旦保留とし、次のターゲットを隣の理子に定めた。

 

 

「理子はどうだ? やってみないか、カジノ警備?」

「……」

「理子?」

「ひゃい!?」

 

 キンジは理子にカジノ警備の話を振るも当の理子はまるで無反応。心なしか顔色が青くなっていることに心配したキンジがもう一度理子の名を呼びかけるとビクッと擬態語とともに小さく飛び上がり、ドギマギとした様子で「ど、どどどどどうしたの、キンジくん!?」と尋ねてくる。

 

「どうしたのって、それ俺のセリフなんだが……」

「え、えと、大丈夫、だよ! キンジくん! ボクはトラックに轢かれたりしないから! ちゃんと気をつけるから!!」

「……えーと。何言ってるんだ、理子?」

「あ、う、ええと、その……ゴ、ゴゴゴゴメン、今のは忘れて! お願い!」

 

 キンジからの疑問に満ちた視線を前に目を左右に泳がせまくっていた理子は洗練された動きで腰を90度に曲げて謝ってくる。このまま放置していると土下座しかねない勢いだったため、キンジは「あ、あぁ! わかった! わかったから頭を上げてくれ!」と即座に理子に頼み込む。以前、理子の土下座→中空知による強制連行ルートを経験してるがゆえの迅速な対処である。

 

「えと、その、それで? 何の話だったっけ?」

「……その分だと、最初から説明した方がよさそうだな」

「よ、よろしくお願いします」

「ま、簡単にいうとだな――」

 

 キンジは白雪の現状やカジノ警備の件について簡単に理子に伝える。すると、理子は神妙な表情とともに「バニーガールかぁ……」とポツリと呟いた。

 

 

「衣装に興味があるのか?」

「い、いや! べ、べべべ別に! バニーガールの服をタダで着れるからちょっとカジノ警備やってみたいなぁーなんて全然思ってないよ!? ホントだよ、キンジくん!? ね!? ね!?」

「理子ってホントわかりやすいよな」

「うぅぅ。で、でも、こういう服ってボクなんかが着ても似合わないし、やめようかな……」

「大丈夫だろ、理子なら。むしろ理子が似合わないってんなら大抵の女子は似合わないと思うぞ、バニーガール」

 

 アリアと同様、バニーガール衣装に興味を示しつつも自身を卑下する理子にキンジは理子の不安を取り除くべくすぐさま言葉を掛ける。

 

「でも、ボク……」

「理子はもっと自分の容姿に自信持った方がいいぞ。そんなに可愛いのに自分を下に見てたら相手によっては嫌味に思われるかもだしな」

「……そ、そそ、そうかな?」

「あぁ。俺を信じろ、理子。いずれ世界最強の武偵になる男の言葉だぞ?」

「……わかった。ボク、やるよ!」

 

 キンジの言葉に自信づけられた理子は両手でキュッと小さく拳を握るとカジノ警備への意気込みを見せる。これでカジノ警備への理子の参加が決まったため、後は女子一人の協力を取りつければいいだけとなった。

 

 

(さて、誰に頼んだものかな。陽菜は何か最近忙しそうだし、平賀はアリアレベルに幼児体型だからアウト。ジャンヌは現場で問題しか起こさなそうだし……いっそのこと綴先生とか高天原先生辺りに頼んでみるか? いや、でも生徒への依頼に教師を巻き込むのはさすがにダメだろ。となると、ここは無難に『ダメダメユッキーを愛でる会』か『ビビりこりん真教』に所属してるクラスメイトにでも打診――)

「何やら興味深い話をしていますね、キンジさん」

「ッ!?」

 

 と、その時。キンジの背後から実に聞き覚えのある天敵の声が響いていたため、キンジは咄嗟に後ろを振り向く。コンマにも満たない俊敏な動きで後ろを見やった先に、キンジの予想通りの緑髪に琥珀色の瞳をした小柄少女の姿があった。

 

(ゲッ、レキ!?)

「あ、レキさんですか」

「こんにちは、アリアさん。峰さん」

「こ、ここここんにちは」

「こんにちは、キンジさん。久しぶりですね」

「あぁ、そうだな! 久しぶりだな! で、俺との再会を懐かしく思ってんのなら銃剣付きのドラグノフで突き刺そうとするのやめろ!」

「お断りします。私とキンジさんは永遠のライバルですから」

「理由になってねぇよ、それ!」

 

 レキはアリアと理子にごく普通に挨拶した後、スタスタとキンジへ近づき迷うことなく銃剣つきのドラグノフ狙撃銃を突きつけようとする。どうにか二指真剣白刃取り(エッジキャッチング・ピーク)で凶刃を防いだキンジがレキの相変わらずのぶっ飛んだ行為に抗議の声を上げるも、レキは涼しい無表情を崩さない。

 

「珍しいですね、レキさんがここ(2年A組教室)に来るなんて。何かあったんですか?」

「はい。キンジさんにちょっとした用事がありまして」

「用事?」

「キンジさん。貴方は今度カジノ『ピラミディオン台場』の警備をする、これは間違いありませんね?」

「あぁ、そのつもりだけど」

「その依頼、私も参加してもいいですか?」

「え!?」

 

 キンジはレキのまさかの発言に一瞬思考停止に追いやられる。つい数時間前に受けると決めたばかりの依頼の件を知っていることはもとより、根っからのバトルジャンキーたるレキが己の研鑽に絶対に結びつかないと断言できる依頼を受けようとしていることがキンジにはとても信じられなかったのだ。

 

(レキに限ってバニーガールに興味があるってわけじゃないだろうし、何が目的だ?)

「……レキも単位が不足してるのか?」

「いえ」

「じゃあ、なんで?」

「キンジさん。貴方は最近連載を開始した『オラクルフォース』という人気少年漫画を知っていますか?」

「え、いや。名前ぐらいしか知らないけど」

「……そうですか。実はその最新話でライバル観の話があり、色々と考えさせられたのです」

 

 レキはキンジがらんらん先生原作、平賀あやや先生作画の少年漫画こと『オラクルフォース』についてほとんど知らないことに落胆の眼差しを浮かべながらも自身がカジノ警備へやる気を見せている理由を口にする。

 

 内容を簡単に纏めると、ライバルとは互いが互いを競争相手として強く意識し、なおかつ互いとの接触回数が多ければ多いほど真のライバルたり得る、というライバル観を『オラクルフォース』とやらで触れて深く感銘を受けたらしいレキは、今後は永遠のライバルたる俺との接触回数を増やすため、機会あらば俺と行動を共にすることを決意したらしい。それで俺がカジノ警備について話しているのを偶然耳にし、こうして積極的に参加表明したのだそうだ。

 

 

(マジか、マジかよ!? 今の頻度ですら割と精神的に辛いのにこれからレキと出くわす頻度が増えるっていうのか……!?)

 

 レキと出くわす回数≒レキに問答無用で襲撃される回数だと心得ているキンジが内心でレキの方針転換に戦慄する中、当のレキは「それに」と言葉を続ける。どうやらレキのカジノ警備参加の理由は一つだけではないようだ。

 

「それに?」

「――風を感じるのです。熱く、乾いた、喩えようもなく……邪悪な風を……」

「え……」

 

 無表情ながら真剣さ3割増しの瞳で妙に不吉なことを口にするレキ。何の前触れもなく突如立てられた悪い予感しかしないフラグを前に小さく声を漏らすキンジを見て自身の要求が受け入れられたと勝手に解釈したレキは「では、当日はよろしくお願いします」と言葉を残して2年A組教室を去っていく。

 

 かくして。カジノ「ピラミディオン台場」警備に常軌を逸したブラコンな遠山キンジ、怠惰の化身な星伽白雪、ビビり勢筆頭な峰理子リュパン四世、バトル脳なレキの四人が参加することとなるのだった。明らかに過剰戦力のはずなのになぜか不安の残る面々だと言ってはいけない。

 




キンジ→カジノ警備のメンバーを募る熱血キャラ。特筆すべき点はなし。
アリア→作者の奸計によりカジノ警備から外された哀れなメインヒロイン。理子相手にももまん大好きっ子洗脳教育を施そうとするも今回は効果なしだった模様。
理子→キンジがユッキーと一緒にいた98話頃にジャンヌちゃんがトラックに轢かれたとの連絡を受けた影響で、キンジが声をかけるまでまるで上の空だったビビり少女。そのため、もちろんアリアのももまん語りなど全く耳に入っていない。アリアe...
レキ→少年漫画を通してライバル観について考え直す機会を得たバトルジャンキー。キンジにとってはとばっちりだが当人に知るよしはない。

原作のカジノ警備参加者:鈍感キンジ、ツンデレアリア、不思議ちゃんレキ、ヤンデレ白雪
当作品のカジノ警備参加者:ブラコンキンジ、ビビりこりん、RBR、ダメダメユッキー

 というわけで、99話終了です。原作と違ってカジノ警備にアリアさんの代わりにりこりんが参戦することとなります。いや、違うんですよ。別にアリアさんをハブってるわけでも『ビビりこりん真教』の信者に脅されたわけでもないんこりん! この私、ふぁもにかを信じてほしいこりん!


 ~おまけ(本編補完:98話の時のりこりん)~

理子「え、ジャンヌちゃんが意識不明の重体!?」
救護科の人「はい。目撃者の情報によると、武偵高付近を散策中、その辺にいた黒猫を抱き寄せてかいぐりかいぐり愛でていた所で猫が逃走。それを追いかけていった際に信号が赤だったらしく、バッと通ったトラックがダルクさんを轢きずって鳴き叫んだようです。しかも不幸にもトラックに轢かれた後にどこからか降ってきた鉄柱がダルクさんの腹部を貫いて突き刺さり、ダルクさんは『ぉ、おのれパトラッシュ、我は決してすり潰されんぞ……』との謎の言葉を残して意識を失ったそうです。今は手術により死こそ回避できましたが、非常に危険な状態だということを理解してくれれば幸いです。生きてる方が不思議なくらいの傷ですから」
理子「ジャ、ジャンヌちゃん。どこからツッコめばいいか全然わからないよぉ……!(←両手で顔を覆って涙しつつ)」

 りこりんは乱心していた。

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