アリア「どうしてしばらく更新しなかったんですか?(ジト目)」
ふぁもにか「どうしてって、そりゃ……ディスガイア4にドハマリしたからに決まってるでしょー? ヴァルバトーゼくぅん?」
キンジ「ヴァルバトーゼくんって誰だよ」
どうも、ふぁもにかです。お久しぶりです。今回は久しぶりの執筆なので文章の雰囲気が変わっちゃってないか凄く心配です。あと、あとがきに長々と今後の執筆活動に関するお話を綴っていますので目を通してもらえると助かります。
平賀文が己の傑出した技術力によって生み出したトンデモボストーク号を周囲の連中に見せびらかし、武藤と火花を散らした一件から数時間後。昼休みの時間帯にて。
キンジは一人、とある場所へと向かっていた。目的地は一般校区の自転車置き場周辺に位置する、教務科からの連絡が貼られた掲示板である。なぜわざわざ今の、大体の武偵が昼食をとっているであろう時間帯にキンジが掲示板へと歩みを進めてるのか。答えは簡単、今ならば人がごった返していない可能性が高く、じっくり掲示板の内容を見れるからである。
(といっても、今日俺がここに来たのはちょっとした確認目的だから、敢えて人の少ない時間帯を選ぶ必要なんてないかもだけど)
キンジはテクテク歩き、目的の掲示板まで到着する。そして。キンジの両眼は画鋲の代わりにサバイバルナイフで止められた『1学期・単位不足者一覧表』との張り紙に記された一部分、『2年A組 遠山金次 専門科目(
「やっぱ不足してるよなぁ、単位」
(ま、ここの所依頼受けてなかったし当然か)
綴先生から頼まれた白雪護衛任務以来、紅鳴館潜入からの3週間にわたる入院生活やカナ戦などの影響で何一つ単位絡みの任務を行っていないキンジはため息を一つ吐くも、すぐに気持ちを切り替えて視線を隣の掲示板へと移す。
そこに貼られた張り紙に記されているのは『夏期休業期・
(さて、ちゃっちゃと終わりそうな感じの依頼があればいいけど……)
武偵高が単位不足者のために夏休み中に解決すべき問題を割引価格で引き受けることで生まれる緊急任務。そのありがたみをそんなに実感していない武偵の一人たるキンジは強襲科が民間から受け付けてきた依頼を中心にザッと『夏期休業期・緊急任務』の張り紙を見やる。そして、一通り張り紙に目を通したキンジはどうしたものかと内心でため息を吐いた。
別に厄介な任務しかなかったわけじゃない。むしろ強襲科Sランク武偵たるキンジからすれば赤子の手をひねるレベルに簡単な任務ばかりだ。問題なのは緊急任務の報酬たる単位が1.5単位だとか1.7単位だとか、とにかく単位報酬が大盤振る舞いな依頼ばかりだという点だ。
現状、確かに俺の単位は不足している。だが。あくまでそれは0.5単位。わざわざ1.5単位も1.7単位も貰える依頼を受ける必要はない。そもそも、そういう単位をたくさんゲットできるような依頼は実際にそれだけ単位が不足していて本気で進級も危うい哀れな武偵のために取っておくべきだ。といっても、実際に1.5単位も1.7単位も単位が不足しているような、何かもう色んな意味で致命的な奴なんていくら武偵高といえどいないだろうが。
(……いないよな?)
一般的な武偵の気質を改めて鑑みた結果、己の考えに疑問を感じ始めたキンジ。と、その時。キンジは自身の側を「う~ん」と眉を寄せて唸りながら通っていく白雪の姿を捉えた。
「ユッキー?」
「んー、ホントにどうしようかなぁ……」
「おーい、ユッキー?」
「うむむむ……」
「俺が見えてるかー、ユッキー?」
「ッ!? あ、キンちゃん!? え、いつの間に!?」
「いや、いつの間にって、さっきからずっとユッキーの近くにいたぞ」
声をかけても華麗にスルーしてキンジの前を通り過ぎようとする白雪。キンジが白雪の進路へ回り込み両肩にポンと手を乗せて声をかけたことでようやくキンジの姿を認知した白雪は驚愕の声を上げ、キンジはらしくない白雪の様子に首を傾げる。
「で、どうしたんだユッキー? なんか悩み事か? えらく悩んでたみたいだけど」
「あ、うん。実はね、単位が足りなくて……」
「なんだ、ユッキーも足りないのか」
「『も』ってことは、キンちゃんも?」
「あぁ、0.5単位な。ま、これぐらいすぐに回収できるから全然問題ないけど。それで? どれくらい足りないんだ? なんなら手伝うけど」
「1.9単位」
「……へ、え!? ちょっ、1.9単位ぃ!?」
ポツリと1.9単位足りないことをキンジに告げ、ごまかすように「えへへぇー」と緊張感の欠片もない笑みを浮かべる白雪。一方のキンジはあまりの白雪の単位の足りなさ具合に目を瞠り、思わず声を張り上げる。そして。バッと実に俊敏な動きで『1学期・単位不足者一覧表』に目を通すと、確かに白雪の名前もリスト化されていた。
『2年B組 星伽白雪 専門科目(
(いたよ。いやがったよ、1.9単位不足の何かもう色んな意味で致命的な奴! 凄く身近にいやがった! てか、何やってんだよユッキー!? 仮にも生徒会長だろ!?)
一応生徒会長の地位を持つ白雪がちゃっかり留年ルートに片足突っ込んでいるという事実にキンジは驚愕と戦慄を禁じ得ない。
とはいえ、少し考えてみれば当然だ。最近は時折能動的な一面を見せてくる影響ですっかり忘れていたが、ユッキーは基本的に俺が積極的にユッキーの寮に通ってないと「面倒だ」という単純明快な理由で一歩も外に出ないで引きこもり生活を営むような、超絶的なめんどくさがり屋である。そんな怠惰の化身が自ら進んで依頼を受けて単位をゲットするなんて面倒極まりないことなんて、するわけがない。むしろ0.1単位分の依頼をこなしていた事実にビックリすべき所だろう。
(こんなことならちゃんとユッキーに依頼受けさせるべきだった……!)
キンジはフラフラと白雪から数歩後退し、右手で顔を覆って空を仰ぐ。その心は悔恨の念で埋め尽くされているが、後悔後に立たずである。
(いや、絶望するにはまだ早いぞ遠山キンジ! 緊急任務がある! 何のための救済措置だ!? ユッキーのような何かもう色んな意味で致命的な単位不足者に手を差し伸べるための緊急任務だろう!?)
と、ここで『夏期休業期・緊急任務』の張り紙の存在を思い出したキンジはまさしく目を皿にして張り紙に書かれた依頼を凝視する。それから十数秒後。はたしてキンジは砂礫盗難事件に関する依頼ばかり記されている張り紙の中から、白雪の窮地を救うに足る依頼を見つけた。
『港区 カジノ「ピラミディオン台場」私服警備(
「これだ!」
自身の望む依頼を見つけたキンジは顔をほころばせる。カジノ警備。それは武偵業界では『腕が鈍る仕事』とバカにされている依頼だ。世界最強の武偵を目指すキンジとしても率先して受けたい依頼ではないのだが、1.9単位も貰える依頼はこのカジノ警備だけ。何とも話が出来過ぎている気がしないでもないが、この依頼を受けるしかないだろう。何せ、地道に少ない単位を積み上げていくなんてこと、めんどくさがり屋をこじらせているユッキーにできる芸当ではないのだから。
「キ、キンちゃん?」
「ユッキー。一緒にこの依頼受けるぞ」
「えっと、どれどれ……。えぇ~、カジノ警備? そんなもう想像するだけで面倒そうな依頼なんて受けたくないよ、キンちゃん。それより私の単位不足を特別に見逃してくれるよう綴先生を説き伏せる方法を考えた方が――」
「あの綴先生を説き伏せられるわけないだろ。てか、嫌でも何でも依頼受けて単位取らないと、留年なんてしたら星伽神社に召還されかねないぞ?」
「……あ」
「受・け・る・よ・な、ユッキー?」
キンジはサバイバルナイフを抜き取って依頼の書かれた張り紙を掲示板から剥がすとそれをそのまま白雪に突きつける。進級の危機だというのに面倒だからと依頼を突っぱねようとする、実に相変わらずな白雪の言動を前にキンジの態度は少々荒くなっているようだ。
「うぅ、仕方ないね……」
「よし。そうとなれば後二人、人を集めないとな」
(それもできれば女子でな)
数分間に渡る長考の末。白雪は渋々といった風にキンジとともに依頼を受ける旨を口にする。一方のキンジは依頼の中の『女子を推奨』との一言を受けて、女子の協力者を二人集めることに決める。かくして。0.5単位不足のキンジと1.9単位不足の白雪の二人はカジノ「ピラミディオン台場」の警備をすることとなるのだった。
キンジ→0.5単位不足の熱血キャラ。ユッキー留年の危機という寝耳に水な状況に割とテンパっている模様。
白雪→1.9単位不足の何かもう色んな意味で致命的な怠惰巫女。単位取得という正攻法でなく、担任の綴先生を説き伏せて見逃してもらうという裏技で楽して単位不足の現状を解決しようとする辺り、ブレないダメダメユッキーである。
というわけで、98話終了です。原作ではキンジくん留年の危機でカジノ警備の流れですが、ここではユッキー留年の危機からのカジノ警備の流れとなります。さすがはユッキークオリティ。揺るぎないですね。
さて、約2か月間もの休止期間を経て連載再開したふぁもにかによる、この作品の執筆方針転換のお知らせです。
突然ですが、ここから先、私は主にリアルのせいで執筆時間があまり確保できない状況下に否応なく晒されます。なので、更新速度は亀さんになっちゃうでしょうし、文字量も少なくなっちゃうでしょうし、今までノリノリでやってた感想返しも滅多に行えなくなることでしょう。また自重しないことに定評のあるおまけを毎話載せることも厳しくなるでしょう。
加えて、この熱血キンジと冷静アリアをキリのいい所で「俺たちの戦いはまだまだだ!」なノリで終わらせることにしました。具体的には後2~30話先の話でしょうかね。キリのいい所のタイミングは、原作既読者の方々にはピーンと来るかと思われます。
とはいえ、そのキリのいい所まではどうにかして執筆するつもり(最悪、ソードマスターヤマトレベルに急展開な最終話を載せる)ですので、気長にこの物語が迎える結末を待ってくれると幸いです。こんなダメダメなふぁもにかですが、これからもよろしくお願いします。
……ハァ。あと2,3年早く、もっと時間に余裕のあった時期にこの作品を執筆し始めてたらとの気持ちが止まりませんね、ホント。
~おまけ(ネタ:♂♂ ※キャラ崩壊注意)~
キンジ「よし。そうとなれば後二人、人を集めないとな」
不知火「話は聞いたぜ、キンジ。協力してやるよ」
小夜鳴「私も協力するわよ、遠山くん」
キンジ「いや、悪いけどこの依頼女子推奨みたいだからさ。さすがに男3人、女1人で依頼受けるわけにはいかないだろ。気持ちだけもらっておくよ、ありがとな不知火。てか小夜鳴、お前どっから湧いてきた? なにサラッと脱獄してんだよ?」
不知火「ハッ、男がダメなら女装すればいいだろうがッ!(←まさに正論)」
小夜鳴「ふふふ、遠山くん。この魔女っ娘コスを着こなした私の姿を見ても同じことが言えるかしら?(←魔女っ娘コスをヒラヒラとさせながら)」
キンジ「帰れ! お前らはお呼びじゃねぇんだよ!」
不知火くんと小夜鳴先生。イケメン同士、意外に面白そうな組み合わせだと思うの。
ジャンヌ「