【完結】熱血キンジと冷静アリア   作:ふぁもにか

82 / 147

ふぁもにか「ブラドさん、ボッシュートです!」
ブラド『イ゛ェアアアアアアアアアア!!(←ひ●し君人形を失ったブラドの悲痛の叫び)』

 どうも、ふぁもにかです。今回から熱血キンジと冷静アリア連載2年目突入です。これまでシリアス一辺倒だったブラド戦ですが、今回はサブタイトルからも察しがつく通り、本編も決してシリアスオンリーではありません。……別に私がシリアス展開を書き続けるのに飽きたとか、そんなんではないですよ? 当たり前じゃないですか、ハァーッハッハッハッハッハッハッ!(;´・ω・)



82.熱血キンジとボッシュート

 

 風すさぶ横浜ランドマークタワー屋上にて。

 

『じゃあまずは左足からね!』

「――ッ」

 

 血まみれのメイド服を纏ったブラドはアリアを床に押さえつけた状態で、アリアの左足を踏み潰そうとクククッと足を上げる。対するアリアは数秒後には自身の左足に襲いくるであろう激痛に恐れを抱き、思わずギュッと目を瞑る。

 

(キンジッ……!)

 

 しかし。アリアが想定していた激痛が襲いかかってくることはなかった。

 

『ッあ!?』

 

 パァンという、乾いた銃声。それが響いたかと思うとブラドの体がズシンと倒れる音が鳴った。ブラドの巨体が倒れたことで発生した振動がアリアの体を揺らす中、アリアは恐る恐る瞑っていた目を開ける。そして。ブラドの倒れた方向を見やると、そこには頭蓋を撃ち抜かれ真横に倒れるブラドの姿があった。

 

「え……?」

 

 なぜブラドが倒れているのか。状況が読み込めずにただただブラドに視線を向けるアリア。その当のブラドは既に再生を始めている頭に手を当ててうめき声を上げている。

 

「――なってないな、ブラド」

 

 その時。ブラドの背後から、高圧的な声が聞こえた。その声はアリアが先ほど心の奥底で無意識の内に望んだ声だった。

 

(キンジ!)

「例え相手が倒すべき敵であっても、男なら女の子はもっと丁重に扱うべきだ。異論は認めない」

 

 アリアはバッと顔を上げてブラドの背後に視線を移す。その視線の先に、ブラドを憤怒の眼差しで見下ろすキンジの姿があった。頭から大量の血を流し、そして防弾制服の大部分を血で濡らしたキンジの姿があった。

 

「ッ!?」

 

 アリアは思わず息を呑んだ。無理もない。今のキンジは確実に致死量レベルの血を流している。だから明らかに今のキンジは弱っている。死にかけている。瀕死になっている。そのはずなのに。今のキンジはまるで存在感が違う。身に纏う雰囲気はまるで別人そのもので、いつ倒れてもおかしくないはずなのにまるで死にそうには見えない。

 

 アリアが視界に捉えているのは遠山キンジに間違いない。なのに、違和感が拭えない。この感覚にアリアは覚えがあった。

 

(ANA600便の時と同じ……)

『なッ!? どういうことよ!? なんでヒステリアモードになってるのよ、遠山キンジ!?』

「知るかよ、んなもん。むしろ俺が聞きたいぐらいだ」

 

 驚愕に満ちた声色で発せられたブラドの問いにキンジはすげなく答え、頭を掻く。キンジ自身、自分に起こった現象の正体を知らなかった。わかっているのは精々、ヒステリアモードに切り替わった経緯だけだ。

 

 右足を折られたアリアの夜空をつんざく悲鳴で目を覚ましたキンジは自身の出血量と抗うことを許してくれない脱力感、朦朧とする意識から今の自分が命の危機に瀕していることを自覚した。そして。薄れゆく意識の中、兄さん一色な走馬灯を見始めたことでぼんやりと死を悟ったキンジだったのだが、その時なぜかヒステリアモードが発動したのだ。

 

 性的興奮もなしに発動したヒステリアモード。それを機にそれまで指一本動かすことさえかなわなかったはずのキンジの体は何事もなかったように動かせるようになっていた。理由はわからない。本来なら不気味に思ってしかるべきなのだろう。しかし、そんなことはキンジにとって問題ではなかった。まだ動ける。まだ戦える。それだけわかれば十分だった。

 

 ちなみに。今のキンジがヒステリアモードの派生系の一つであり、死に際(ダイイング)のヒステリアモードとも称されるヒステリア・アゴニザンテを発動させていたのだと知るのは後のことである。

 

「ま、強いて言うなら主人公補正って奴なんじゃねぇのか?」

『主人公、補正?』

「あ、そっか。そういやブラドって頭が2位クオリティの残念な奴だったな。難しい言葉使って悪かった」

『――ッ! ふッッッざけんじゃないわよぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!』

 

 相変わらずブラドをバカにして嘲笑を浮かべるキンジにいともたやすくブチ切れたブラドの拳が迫る。「キンジッ!」とアリアの悲痛に満ちた声が響く中、キンジは自然体のままブラドの方へと歩を進め、ブラドの拳をすり抜けるようにして攻撃をかわす。ブラドとすれ違う際にブラドの足を引っかけてブラドを転ばせることも忘れない。結果、ブラドは『ギャン!?』と顔面から盛大に転ぶこととなった。

 

 今、キンジは何をしたのか。答えは簡単、以前レキがオオカミ相手に使った流水制空圏を使用しただけである。一度近くで見ただけの技をぶっつけ本番でいとも簡単に成功させる辺り、ヒステリアモードの凄まじさがよくわかるというものだ。

 

「すまない、アリア。遅くなった。大丈夫か? 立てるか?」

 

 キンジは背後のブラドのことを軽くスルーしてアリアの元に歩み寄り、膝をついて全身ズタボロのアリアの両肩にポンと両手を乗せる。それからキンジは罪悪感に満ちた瞳とともにアリアに謝罪の言葉を述べる。

 

「ちょっ、謝ってる場合ですか、キンジ!? 後ろ、後ろを見てください!」

 

 一方のアリアはブラドのことを気にも留めずに自分に謝罪してくるキンジに切羽詰まった声で後ろを見るよう呼びかける。何よりもまず女性のことを優先するヒステリアモードのデメリットが早速表に出てしまっているようだ。

 

 そうこうしている内にもアリアの視線の先にいるブラドは即座に立ち上がり、ズドドドドッと効果音がつきそうなぐらいの全力ダッシュ&奇声とともに怒りのままにキンジへと拳を振るおうとする。しかし。当のキンジは「大丈夫。心配いらないよ、アリア」とアリアに優しく微笑むと、右手を床につきそれを起点としてブラドに鋭いローキックを放った。勢いよく走っていた所で脛を強く蹴られたブラドは勢いのままに前のめりの状態で宙を舞う。そして。キンジとアリアの上空を越えた先にて、背中から床に叩きつけられることになった。

 

『ガフッ!? こッの――』

「どこを見てるんだ、ブラド?」

 

 背中を襲う衝撃にブラドは肺の空気をもれなく吐き出す。その後、一秒も経たない内に無限再生能力の恩恵で背中の痛みから解放されたブラドは一刻も早く自身の激情をキンジにぶつけるためにすぐさま起き上がる。

 

 しかし。キンジはブラドがちょうど立ち上がる頃合いでブラドの背面に回り込み、膝の裏に全力の蹴りを放つ。膝カックンの要領だ。そうして。無理やり膝を床につかされることとなったブラドを前にキンジは空高く跳躍し、ブラドの頭を両足でガシッと掴む。それからキンジはブラドの頭を巻き込んだまま宙で体をねじって回転し、ブラドの頭を地に叩きつける形で着地した。

 

 グシャアといったグロテスクな擬音とともに床にめり込むブラドの頭。無理に頭を床に叩きつけられたことで確実に首の骨が折れているであろうブラド。しかし。ここで攻撃の手を緩める気などなかったキンジは背中から取り出した小太刀二本によるX斬りでブラドの首を切断した。

 

「首を斬り落としてもダメか……」

 

 ブラドの頭と体が離婚した影響でおびただしい量の血があふれ出る中。キンジは斬られたブラドの頭部が首元へと飛んでいき元通りにくっついていくという18禁不可避な光景を前に深々とため息を吐く。いくらブラドが無限再生能力を持っているとはいえ、首を斬られてもなお復活する様子を見せられてはため息を吐いてしまいたくなる心情もよくわかるというものである。

 

(さて、これからどうしたものか……)

 

 キンジはヒステリアモードのおかげで爆発的に加速する思考回路を存分に駆使して今後の方針を思案する。今の現状から考えて、当初の作戦通りにブラドの精神をへし折ることは難しいだろう。当然だ。そもそもあの作戦は俺もアリアも無傷のままでいることが絶対条件なのだ。何せ、ブラドのような強者の心を折るには俺とアリアがブラドより格上の存在だということをブラド本人に知らしめる必要があったのだから。

 

 しかし。俺もアリアもブラドの攻撃を喰らって随分とボロボロになってしまっている今、自分たちが格上だと思い知らせることはほぼ不可能だろう。となると、ブラドを倒そうと考えるなら四つの魔臓を撃ち抜けば倒せるという情報に賭けるしかないということになる。

 

(けど、四つ目の魔臓の位置がまだわからないんだよなぁ)

 

 キンジはガクッと脱力したくなるのを寸前でどうにか堪える。これまでブラドの四つ目の魔臓も他の魔臓と同様に体の表皮部分にあるものという考えを前提に四つ目の魔臓探しを敢行していたキンジだったが、魔臓の場所を示す目玉模様が未だ見つけられていないことを考えると四つ目の魔臓はブラドの体内にあると考えるべきだろう。

 

 そうなると、これ以上のブラドの魔臓探しは不毛な行いだ。というのも、もしも体内に最後の魔臓があるとしたら、例の目玉模様もまた体内に刻まれているはずで、それを見つけ出すのは非常に困難だからだ。そんなことをするぐらいならいっそブラドを軽く消滅させるほどの威力を持つ爆弾でも投げつけた方が遥かに効果的だ。尤も、ブラドが爆死してしまったら最後、ブラドにかなえさんの冤罪を証明させられなくなってしまうのだが。

 

(……仕方ない。今はとにかく戦略的撤退。作戦を考え直してまた後の機会にブラドを倒すしかないな)

 

 キンジは渋々といった表情で決断を下す。普段のキンジだったら勝利への渇望からまだブラドと戦うことを選択しただろうが、今のキンジは女性を何よりも最優先に考えるヒステリアモードを発動中だ。それゆえに。キンジは右足を折られてしまったアリアや小夜鳴に散々蹴られてボロボロの理子を病院へと連れていきたいという感情を採用したのである。

 

 とりあえずこの場から逃げるために、ブラドを屋上から突き落としてみよう。どうせ再生するのだろうが、それでも高度297メートルもの高みから命綱もなしに落とされればさすがに気絶の一つぐらいはしてくれるだろう。一瞬にも満たない時の中で考えを纏めたキンジが再生を終えたブラドを見やった時、ブラドが叫んだ。

 

『ガァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――ッッ!!』

 

 ブラドは叫ぶ。天を仰いだ状態で怒りの感情を咆哮の形で存分に放出する。どう見ても死にかけの人間一人にいい様にされているのが我慢ならなかったのだろう。

 

「くッ!?」

 

 ワラキアの魔笛ほどではないが、それでもキンジのヒステリアモードを余裕で解除できそうなほどに強力なブラドの咆哮にキンジは咄嗟に耳を塞ぎつつ、バックステップでブラドから距離を取る。似たような技を二度も喰らうようなキンジではないのである。

 

 咆哮が止んだのを確認するとキンジは両耳を覆っていた両手を外す。と、その時。ブラドの咆哮によって脳を揺さぶられていた影響でキンジはグラッとバランス感覚を失い、ついよろめいてしまう。その一瞬が、致命的だった。

 

(あ――)

『死ねぇぇぇぇえええええええええ!』

 

 あっという間に距離を詰めたブラドがキンジに向けて拳を叩きつけようとする。既に限界を超えている体を死に際(ダイイング)のヒステリアモードで無理やり動かしている今のキンジがブラドの拳を喰らってしまえば、待っているのは逃れようのないオーバーキルだ。

 

 しかし。キンジの回避は間に合わない。キンジが攻撃をかわすよりも早く繰り出されたブラドの拳が命中しキンジの命を無慈悲に刈り取るのはもはや時間の問題だった。

 

 

 ――そのはずだった。

 

 

『グギャッ!?』

 

 突如、屋上に爆音が響いたかと思うと、どこからか飛んできた基地局の巨大なアンテナがブラドの背中に突き刺さったのだ。そして。ブラドという障害物にぶつかった程度で勢いの収まる気配のないらしい携帯基地局アンテナは、その重量をもってブラドをズドンと押し倒した。

 

(え、え? 何これ? 何なのこれ? つーか、どこから飛んできた?)

(……これは一体、どうなっているのでしょうか?)

 

 キンジとアリアは5メートルは裕にありそうなほどの長さの携帯基地局アンテナの下敷きにされたブラドを思わず困惑の眼差しで見つめる。

 

『ハァーハッハッハッハッ! ど、どこを見てやがりますか、吸血鬼!』

 

 すると。二人の背後から高慢なようで、実は幼児が強がっているだけといった感想を抱かせる感じの声が聞こえてきた。その声は、二人にとって非常に聞き覚えのある機械音声だった。かつて、理子が武偵殺しとしてセグウェイ操作時に使用していたあの機械音声だった。キンジとアリアが声の元へと視線を向けると、その先には仁王立ち状態の理子の姿があった。

 

「理子!?」

「峰さん!?」

『理子? 峰さん? それは誰で、やがりますか? ボクはただのしがない武偵殺し:リコリーヌ・ヴィ・ガルランディア・ロゴス・ゼルベスドール・ウィルフィン・アークスウィッドで、やがりますよ』

 

 どうして理子がここにいるのか。キンジとアリアは驚愕と疑問をそのままに理子にぶつける。しかし。サングラスを装着し、髪を下ろしている理子は何を思ってか、例の機械音声とともに自分は武偵殺しだと主張する。見た所、機械音声は理子の変声術の為せる業のようだ。

 

「ええと、理子? いくら何でも、サングラスだけじゃ俺もアリアもごまかせないと思うけど?」

「え? ウソ!?」

「その反応がもう峰さんそのものですしね……」

「うぐッ!? し、仕方ないじゃん! 近くにこれしか変装に使えそうなのなかったんだから!」

 

 ヒステリアモード継続中のキンジとジト目のアリアが困り気味に理子に指摘すると、対する理子はビクリと肩を震わせた後、両手を上下にバタバタしつついつもの理子音声で言葉を返す。直後。理子は「しまった」と言いたげな表情を浮かべると、『と、とにかくそういう設定なので、二人とも合わせてください! でやがります!』と機械音声で語気を強めた。どうやら理子は自身をあくまで武偵殺しのリコリーヌとして扱ってほしいようだ。

 

『四世ぃぃぃいいいいいいいいいいいい! これは何のつもりかしらァ!?』

『何のつもり? それはボクのセリフで、やがります』

『あぁ!?』

『遠山キンジ、及び神崎・H・アリアはボクこと武偵殺しの獲物で、やがります。それを貴様のような筋肉と図体しか取り柄がない分際が横取りしようなんて、いい度胸でやがりますねぇ!』

 

 ブラドの怒声の矢面に立つ理子はプルプルと体を小刻みに震わせつつも、決して恐怖に屈することなくブラドを煽る。この時、キンジは気づいた。自分がブラドに怯えて縮こまってしまわないようにするために、理子が武偵殺しとしての自分を演じているのだということに。

 

『この武偵殺したるボクを舐めたらどうなるか、思い知らせて――』

『ふふふふふふ、よっぽど死にたいみたいねぇ! 四世!』

「みゃぁぁぁぁあああああああああ!? ごめんなさい調子乗ってましたぁぁぁぁああああああああああ!」

 

 尤も、押しつぶされていた状態から復帰し、怒りの赴くままに携帯基地局アンテナを投げつけてきたブラドを前に理子の虚勢はあっけなく無に帰したのだが。

 

「し、死ぬかと思った……」

 

 理子はギュオオオと迫ってくる基地局アンテナを間一髪、横っ飛びでかわす。その後。数瞬前まで自分のいた位置に深々と突き刺さる携帯基地局アンテナを前に理子はペタンと座り込み「ブラド怖いブラド怖いブラド怖い――」と涙目でガクガクブルブルと震える。

 

『貴女には私の恐ろしさをもう一度教え込む必要がありそうね、四世!』

「ひぅ!?」

 

 ブラドは小動物のごとく震える理子を見て少しだけ溜飲を下げると、嗜虐的極まりない笑みとともに理子へと一目散に駆ける。キンジやアリアのことなど気にも留めずに理子を次なる攻撃対象に定めて襲いかかる。

 

(マズい!?)

「峰さん!」

「理子、逃げろ!」

 

 うわ言のように「ブラド怖い」を連呼する理子にキンジとアリアは警告を飛ばす。同時に理子を守るために急いで駆けるキンジだったが、このままではブラドの行動の妨害が叶わないことを悟ったことでその表情に絶望の念が浮かんだ。

 

 一方。誰にも邪魔されることなく着々と理子の元へとたどり着かんとするブラドはあと数秒で自身の拳の有効範囲内に理子を収められる所まで理子に接近する。と、その時。「こ、ここここ来ないでぇ!」と理子が恐怖のままに叫んだ途端に、ズドドドドドドドーンといった盛大な爆発音と共にブラドの床が崩れ落ちた。

 

「は!?」

「え!?」

『床がッ……!?』

 

 唐突に自身の足場が崩落し始めたことで体の支えをなくしたブラドは為す術もなく下層へと落下する。しかし。ブラドの落下は終わらない。空中で体勢を整えて下層に上手く着地しようと眼下を見下ろしたブラドが見たのは、底の見えない穴のみだった。ゆえに、ブラドはどこまでも落ちていく。ブラドの体を受け止める床がないために、宙を自在に動き回るための翼も羽もないブラドに与えられた選択肢はボッシュート一択だった。

 

 

――ボクはこのタワー全体に罠を仕掛けてる。屋上のリモコン式の地雷もその一つ。……全部爆破させたらこのビルなんてすぐに倒壊すると思うよ?

 

(そういや、そんなこと言ってたな。理子の奴)

 

 未だに散発的に響き渡る、まるで雷が落ちたような爆音と、どんどん小さくなっていくブラドの巨体。ブラドの落ちていった穴へと近づき、そこから重力に抗えずに落ちゆくブラドの様子をその目で捉えたキンジは、おそらく理子はブラドがいた周辺の位置に仕掛けていた爆弾をもれなく全て発動させたのだろうと当たりをつける。

 

(この感じだと軽く100メートルは落とされたんじゃないか?)

 

 一方。あらかじめ仕掛けていた爆弾をいくつも同時に起動させ、ブラドにボッシュートの刑をプレゼントした当の理子はブラドが落ちていった穴を呆然と見つめながら「あはは、やった……」と裏返った実に情けない声を漏らす。

 

 かくして。キンジ&アリアとブラドによる第2ラウンドは戦場に舞い戻ってきた理子の活躍によって幾ばくかの時間的猶予を得る形で終結したのだった。

 

 




キンジ→ヒステリア・アゴニザンテを発動させた熱血キャラ。死にかけなのに中々死なないのは主人公補正の賜物である。
アリア→現在右足骨折中のメインヒロイン(空気担当)。せっかくヒロインとして美味しい立ち位置にいたのにいつの間にやら理子に全部持ってかれた感がある。
理子→携帯基地局アンテナがちゃんとブラドに突き刺さるよう綿密に爆弾を配置し、爆破させる形でキンジの窮地を救ったビビり少女。武偵殺しとして行動していた時の口調を真似ることで虚勢を張るも、すぐに撃沈した。
ブラド→首を斬り落とされたり携帯基地局アンテナの下敷きにされたりボッシュートされたりと、何かもういっそ哀れなメイドさん。

 というわけで、82話終了です。今回は前半ではキンジくんが俺TUEEEEEE!!を実行し、後半ではビビりこりんが見事に返り咲きましたね。にしても、やっぱりビビりこりんは優秀なシリアスブレイカーですね。彼女はいとも簡単にシリアス特有の緊迫したシーンをふんわり仕立てのほわほわ展開に差し替えてくれますし。


 ~おまけ(没ネタ:ブラド戦を難易度ルナティックにしてみるテスト)~

理子「あはは、やった……」
ブラド1号『やった? 何が?』
キンジ「なッ!?」
理子「ど、どうして!? こんなに早く戻って来れるはずが――」
ブラド1号『ふふふ、思い込みはよくないわよ、四世』
理子「え……」
ブラド2号『私が一人だと』
ブラド3号『いつ言ったかな?』
ブラド4号『ふふふふ……』
ブラド5号『さっき落ちていったのはブラド6号よ』
キンジ&アリア&理子「「「……(←白目)」」」
キンジ「あ、あー。そういや俺、今日『わんわんおー』のアニメ録画するの忘れてたんだった。急いで帰らないと、じゃあな!」
アリア「逃がしませんよ、キンジ!」
理子「待って! ボクを置いていかないで!」

 ブラドわらわら。絵面を想像するとメチャクチャ怖いですね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。