どうも、ふぁもにかです。67話の感想で早くもブラドの登場をwktkしてる人が多かったようですが、彼の登場はまだまだ先です。その前に、まずはこのイベントを消化する必要がありますしね。ちなみに。今回は久々に文字数多めです。
世にも珍しい厨二病喫茶:
その用事とやらを済ませなければ
結果。キンジから許可をもらった理子はアリアを伴って足早にどこかへと去っていった。いや、嫌な予感を直感で感じて全力で逃げようとしたアリアを理子が捕獲。そのまま無理やりどこかへと連れ去っていったと表現した方が正しいか。
(泥棒かぁ……)
一方。廊下を歩くキンジはハァとため息をつく。いくら今回の
(……兄さんの汚名を返上するためにはマスコミの力は絶対不可欠だし、後になってこういったことを掴まれて俺のイメージを悪くさせられる、なんてことにならなきゃいいんだけどなぁ)
いくら俺が兄さんの功績を全世界に周知させようとした所で肝心の情報発信源たる俺に対する世間の印象が悪ければそれは効果をなさない。いくら有罪判決を受けた被告が自身の無実を高らかに主張しても中々世間に受け入れられないのと一緒だ。人々が抱いた第一印象を覆すのはそれだけ困難なことなのである。
「ん?」
キンジが己の未来について憂慮しつつも選択教科棟の周辺を歩いていると、ふとピアノの音がキンジの耳を捉えた。何となく気になったキンジはその場に立ち止まり、かすかに聞こえるピアノの音に真剣に聞いてみる。どうやら今はシューベルトの魔王が演奏されているようだ。
(……確か、父親は病気の息子を何とか医者に見せようと息子を乗せて馬を走らせるけど、当の息子は父親には聞こえない魔王の声に翻弄されて、結局息子は死んでしまう、とかそんな感じだったよな?)
キンジはおぼろげな音楽の知識を脳裏からどうにか引っ張り出してから、再びピアノの演奏に耳を傾ける。
(上手いな)
キンジは心の中で正直な感想を述べる。そう、上手いのだ。それもプロのピアニストを軽く凌駕するレベルに上手い。次元が違う、なんて言葉がしっくりくるような、そんな演奏にキンジには感じられた。ピアノに造詣のないキンジだったが、それでも今まさに行われている演奏が卓越した技術によるものだということはよくわかった。
(……けど、何だこれ?)
キンジは人間離れした演奏に感嘆の息を吐きつつも、同時に首を傾げる。ピアノの演奏は素晴らしく上手い。しかし。荒ぶっていた。これでもかといった具合に荒ぶっていた。何か悪魔やら邪神やら魔神でも呼び出そうとしているかのように激しい音楽だった。あたかも一つ一つの音符がそれぞれ踊り狂っているかのようだ。
その影響か、どこから湧いてきたのか、不意にキンジの前方に姿を現した怪しげな集団がそれぞれゆらゆらと揺れている。どうやらこの全身を黒のローブで包んだ謎の集団は音楽室から流れる魔の旋律に聞き惚れているらしい。一体誰がこんなキチガイ染みたピアノ演奏をしているのだろうか? ちょっとした好奇心に駆られたキンジは音楽室へと足を運び、ドアを開けた。もちろん、謎のローブ集団に見つからないように細心の注意を払いながら行動した上でだが。
ピアノ椅子に座り、歌うようにピアノを弾いていたのは一人の少女だった。華奢な体躯に綺麗に整った銀色の髪、珍しい赤と青のオッドアイの瞳、そして全身から滲み出る理知的なオーラ。日本人離れした外見ながら武偵高の防弾制服をしっかりと着こなしている少女は、キンジにとって非常に見覚えのある人物だった。それもそのはず、眼前の少女はついこの前、ユッキーの誘拐を阻止するためにアリアとともに戦った相手:ジャンヌ・ダルク30世その人だったのだ。
(なッ!?)
「何だ。誰かと思えば遠山麓公キンジルバーナードか」
思いもよらぬ人物を見つけたことで思わず硬直するキンジ。一方のジャンヌはキンジが近くにやって来たことを気配で察したのか、演奏を止めてクルリと体を向けてくる。
「……ジャンヌ」
「我はジャンヌではない。
「その言葉、そっくりそのままお前に返してやるよ。それを言うなら俺も遠山麓公何とかじゃない。遠山キンジだ。いい加減ちゃんとした名前で呼んでくれ。そしたら俺も
ジャンヌから理不尽な指摘を受けたキンジは不満げな表情で言葉を紡ぐ。キンちゃんと呼ばれるくらいならどうってことはないが、さすがに遠山麓公キンジルバーナードは嫌だ。名前の長ったらしさや語感の悪さもあいまって拒絶感が凄まじいのだ。
しかし。キンジの願いも虚しく、ジャンヌは「……やれやれ。未だに己の真名を受け入れられないとは、哀れだな」と憐憫に満ちた眼差しを注いでくるだけだ。ジャンヌにキンジの意見にまともに取り合う気はほんの欠片もないらしい。
(まぁ、それは置いといて――)
「なんでお前がこんな所にいるんだよ……って、まさかお前も司法取引か?」
「ほぅ。察しがいいな、遠山麓公キンジルバーナード。我は頭の回る奴は嫌いじゃないぞ、余計な手間が省けるからな。実に効率的だ」
「そうかよ。で、ここに通ってるのも司法取引のせいか?」
「あぁ。条件の一つとして強制されたのだ。不条理極まりないが、敗者の我に選択肢はない。ゆえに。今の我はパリ武偵高からの留学生の一人、
ジャンヌは物憂げにため息を吐く。その後、「……全く、なぜ我がこのような仕打ちを受けなければならないのだ」とか「こうして音楽に身をやつしでもしなければやってられんぞ」などと、あたかも呪詛を唱えるかのようにブツブツと不満を顕わにしている。そのジャンヌの口にした音楽というワードから、キンジは先のピアノ演奏がジャンヌによるものだということを思い出した。
「にしても、ジャンヌって意外にピアノ上手いんだな。驚いたぞ」
「……音楽は荒んだ心を癒してくれる不思議で偉大な存在だ。それに精霊は澄んだ音に惹かれて集まる習性があるからな。彼らと話したいと思った時によく弾いていたら、いつの間にか上達した。それだけのことだ」
(全然澄んだ音じゃなかったけどな。むしろ、おどろおどろしかったけどな――って、え?)
「……は? 精霊?」
「む? 何を首を傾げている? ……クククッ、何だ、遠山麓公キンジルバーナード? まさか貴様、ここにいる精霊たちの姿が見えないのか? クッハハハッ! なるほど、道理で彼らの愛らしい姿を前にしておきながらこうも無反応だったわけだ!」
ジャンヌは実に愉快そうにひとしきり笑うと、虚空に視線を移して何事か言葉を投げかける。ジャンヌのキンジをバカにしたような発言から察するに、どうやらジャンヌの視線の先には複数の精霊が浮かんでいるらしい。
(そういやこいつ、厨二病だったな)
ロクに聞き取れそうにない謎の言語で楽しそうに精霊とコミュニケーションを取るジャンヌの姿を、キンジは呆れきった半眼でただ眺めるのだった。
◇◇◇
「さて。貴様は4日後に紅鳴館に潜入するのだろう?」
「なッ!?」
数分後。精霊とやらとの会話から復帰したらしいジャンヌはシャキッと背筋を伸ばす。そして。人差し指でポーンと鍵盤を叩いてキンジを見やると、唐突に話題を変えてきた。『なんで俺ここにいるんだろう』と疑問を抱いたのをきっかけに音楽室から去ろうとしていたキンジだったが、本来ジャンヌが知らないはずの内容がジャンヌの口から飛び出してきたことに思わず驚きの声を上げ、その足を止める。
「なんで、それを――」
「リコリーヌ・ヴィ・ガルランディア・ロゴス・ゼルベスドール・ウィルフィン・アークスウィッドからの情報だ。我とリコリーヌは前世より繋がりし盟友だからな。定期的に情報交換をしていても不思議ではあるまい」
「リコリーヌ、って……まさかとは思うけど、それって理子のことか?」
「? それ以外に誰がいるというのだ?」
(いやいやいや! その疑問はおかしいって!)
ジャンヌは心底不思議そうにコテンと首を傾けるも、納得のいかないキンジは内心でジャンヌにツッコミを入れる。と、ここで。キンジは目の前のジャンヌと理子との関係性を思い出した。
ジャンヌは理子のことを盟友と言った。理子もジャンヌを大事な友達と言った。二人は互いが互いを認め合う関係を築いている。それなら、ジャンヌは知っているかもしれない。昨日の理子が見せた、あの異常な怯えようの源泉を知っているかもしれない。
「……ジャンヌ。一つ聞いていいか? 理子のことで気になることがある」
「ふむ、話してみろ」
理子の話題に露骨に興味を示したジャンヌは目と言葉でキンジに話を促す。キンジは軽くうなずくと話し始めた。先日、自身とアリアが見ることとなった異様なほどに震える理子のことを。その状況が出来上がるまでの自分たちの言動の全てを。そして。一切を聞き終えたジャンヌの第一声は「リコリーヌの反応も無理はないな」というものだった。
「……リコリーヌはな、ああ見えてブラドに監禁され、虐げられてきた凄惨な過去を持つ」
(ああ見えてって言われてもな。理子を見てると特に意外性とか感じられないぞ? むしろそんな過去でもないとあそこまで極端な性格にはならないだろ)
「当時の話は我も断片しか聞いてないが、どうやらリコリーヌはブラドに人間として扱ってもらえなかったようだぞ? 例えるなら、実験動物か、替えの利く愛玩人形か……そんな所だろうな。ゆえに、リコリーヌの前でブラドの話を長々とすることは理子のトラウマを引きずり出すことに他ならない。おそらく、当時の記憶がフラッシュバックしたのだろうな」
「そっか……」
理子を純粋に心配するようなジャンヌの言葉を受けて、キンジは顔をしかめる。
監禁。それは日常生活を送る上ではまず縁のない言葉だ。それを過去の理子はブラドという絶対支配者の下で経験している。そして。監禁状態から解放されたはずの今でも、その時に味わった恐怖に理子は囚われている。囚われ続けている。いくら敵対関係にある理子の話であっても、聞いていて気分のいい話ではなかった。
「……なぁ、ジャンヌ」
「ジャンヌではない。
「あーはいはい。で、ブラドって結局どういう奴なんだ? まぁ、理子を監禁してたってだけで大体性格の予想はできるけど……」
ひとまず理子に関する疑問が消え去ったため、キンジの次なる興味は理子にそれだけ深い心的外傷を刻み込んだ張本人へと移る。キンジはブラドについてあまり知らない。精々、イ・ウーのナンバー2に君臨する実力者だとか、無駄に物欲が強いだとか、人を監禁するような外道だということぐらいだ。そのため。今後ブラドと接触する可能性が浮上してきた以上、前もってブラドについて知っておいて損はないだろう。そう考えたが故のキンジの問いである。
「そうだな。一言で言うなら――世紀末の住人だ。『ヒャッハー!』って叫び声が似合いそうな雰囲気を纏っている」
「えーっと、他には何かないのか? それともブラドは謎に包まれた奴だとか――」
「それはないな。奴は悪い意味で良く目立つからな、情報なら無駄にある。……少し待て、今情報を整理する」
キンジに伝えるべき情報を選別する時間を要求したジャンヌは口元に手を当てて目を瞑る。微動だにせずにピアノ椅子に腰かけるジャンヌの姿からは窓ガラスから差し込む日差しの効果もあってか、深窓の麗人のような儚さが色濃く感じられる。
(ホント、黙ってたら美少女なんだけどなぁ。……もちろん、兄さんには遠く及ばないけど)
「……そうだな。ブラドは無駄に筋肉質で、無駄に凶悪面で、無駄に横柄で、無駄にうるさくて、無駄に物欲が強くて、無駄に大柄と、とにかく無駄尽くしの奴だ。無駄のオンパレードと言ってもいい。その姿を一目子供が見れば、あまりの怖さに一か月はうなされ続けること間違いなしの『生きる18禁』でもあるな」
「生きる18禁って……おいおい、随分と酷い言い草だな。同じイ・ウーの仲間じゃないのか?」
「我とアレを同一視するなよ、遠山麓公キンジルバーナード。虫唾が走る。そんなに我が聖剣、デュナミス・ライド・アフェンボロス・クライダ・ヴォルテールの錆になりたいのか?」
「いや、遠慮しとく。……何つーか、お前がブラドを嫌ってるってことはよくわかったよ」
「当然だ。幼少期のリコリーヌを散々痛めつけた時点で我の奴への好感度はマイナスを振り切っている。あんな奴、虚無の世界で永遠にもがき苦しめばいい」
ジャンヌは吐き捨てるようにしてブラドへの負の感情を語る。瞳に暗い光を宿し、怨念に満ちた声でブラドを語る。一見平静を保っているように見えるが、時折バチッバチッとジャンヌの周囲で小規模の電撃が発生していることから今のジャンヌが自身の雷の
「そこまで嫌ってるのかよ、ブラドのこと」
「当然だ。……奴は全ての元凶だ。奴がいなければ、奴さえいなければ、リコリーヌがあのような性格になることはなかった。あらゆる対象に異様に怯えを見せるようなことはなかった。……奴がリコリーヌの心をズタズタにしたんだ。そのせいでリコリーヌは人生を思うように楽しめなくなった。何をしようにも恐怖という名のフィルターがついて回るようになった。怯えなくていいものにまで警戒心を抱くようになった。実力があるのに、もっと誇ったっていいのに、リコリーヌは自分に自信を持てなくなった。世界の真の素晴らしさを知る機会を得ることが困難となったのだ」
「……」
ジャンヌは沈鬱なため息とともに目線を下に向ける。何となく今のジャンヌに声をかけてはいけない気がしたキンジは無言のままジャンヌを見やる。
(人生を思うように楽しめなくなった、ね……)
時折、世界が変わったなどと言う人が現れることがある。だけど、それは実際に世界が変わったというわけではない。特別な力の有無に関係なく、人一人の手で変えられるほど世界の規模は小さくないし、世界のシステムは単純じゃない。人が世界が変わったと感じる時、それはただその人の世界に対する視点や心持ちが変化しただけだ。見方を変えれば世界が変わるのは当たり前。だから、取り立てて騒ぎ立てるほどのことではない。
けれど。ジャンヌ曰く、理子にはその理論が通用しない。理子の負った心の傷が、理子の世界の見方を変えることを許さないから。二度と傷つけられることのないように常に防御態勢を崩さない理子の心が世界を不変のものとしているから。だから、理子はあらゆるものに恐怖する。世界が自身を傷つける何かで満ちているのだと、理子の心が無意識の内に思い込んでいるから。
そして。ジャンヌはそんな理子の現状を憂えている。いや、痛々しいと思っている。何とかしたいと考えている。少なくともキンジの目にはそう映った、
「我は奴を許さない。例えリコリーヌが奴を許したとしても、我は奴を許さない。例え全人類が奴を許したとしても、我だけは奴を許さない。リコリーヌに訪れるはずだった輝かしい未来を奪った奴を我は絶対に許さない。未来永劫、許さない」
「……」
「もしもどこかに奴を殺す気のある人間がいるのなら、一刻も早く実行に移してほしいぐらいだ。あんな害悪の権化みたいな奴は処分した方が世のため人のためだからな。そのために必要ならば我の全財産を報酬としてくれてやったっていい。お膳立てだって喜んで引き受けよう」
下を向いた状態のままジャンヌはブラドへの憎悪の念を淡々と、思う存分外に放出する。それからジャンヌはキンジを見上げて「何なら貴様が奴を殺すか、遠山麓公キンジルバーナード?」と、ニタァと浮かべた凶悪な笑みとともに問いかけてくる。対するキンジは我ながら名案を思いついたと言わんばかりのジャンヌの表情に思わず圧倒され、何も言えなくなる。
「あぁ。安心しろ、遠山キンジルバーナード。奴を殺した所で武偵法9条破りにはならんよ。奴は見た目の時点でとっくに人間を止めているからな。いざとなったら鬼退治をしましたとでも主張すればいい。もしくは正当防衛か。とにかくそれで万事解決だ。鬼退治を成し遂げた貴様は桃太郎よろしくその功績を称えられ、万人にとってのハッピーエンドが訪れることだろう」
ジャンヌは現在進行形でキンジを凍りつかせていた笑みを解くと、呼吸をするかのようにつらつらとブラドへの憎き思いを口にした。そして。静かながら殺気の滲んだ声色で言いたいことを全て言いきったジャンヌは背後のピアノに視線を落とす。
(……こういう一面もあったんだな)
怨嵯に満ちた声色に負の感情を詰め込んだ凄惨極まりない笑み。これまでジャンヌの見せた一挙手一投足はキンジに強烈な印象を残していた。
「お前……何というか、結構いい奴だったんだな」
「――ッ。何を言うかと思えば……我は
キンジの率直な感想を受けて、ジャンヌは相手にしてられないとでも言わんばかりにクルリとキンジに背を向けて腕を組む。だが、キンジは見逃さなかった。ジャンヌは顔がわずかながら赤くなっていたことを。
「はいはい、そういうことにしとくよ」
ジャンヌの反応が照れ隠しだと気づいたキンジは曖昧な笑みとともにテキトーに対応することにしたのだった。もちろん、後ろ目で訝しげな視線を送ってくるジャンヌを華麗にスルーすることも忘れない。
キンジ→今回の一件でジャンヌに対して好感を抱いた熱血キャラ。
ジャンヌ→ピアノの上手い厨二少女。ブラドへの憎しみが天元突破している。また、白雪の占いで『魔王召喚の儀式中の凄く怪しい悪魔』扱いされている。
というわけで、68話終了です。この回は第三章で書きたかったシーンの一つだったりします。2013年6月頃には既に文章化していたジャンヌちゃんの長台詞をようやく表に出すことができました。……ふぅ、やっとここまで辿りつけましたよ。
~おまけ(その1 雰囲気破壊に定評のあるジャンヌちゃん)~
ジャンヌ「……奴は全ての元凶だ(←ピアノに向き直り、鍵盤に両手を置きつつ)」
ジャンヌ「奴がいなければ、奴さえいなければ、リコリーヌがあのような性格になることはなかった。あらゆる対象に異様に怯えを見せるようなことはなかった(←モーツァルトのレクイエムを弾きながら)」
キンジ(何か自分でBGMつけ始めたぞ、こいつ? あ、でも……これ、雰囲気合うなぁ)
ジャンヌ「……奴がリコリーヌの心をズタズタにしたんだ。そのせいでリコリーヌは人生を思うように楽しめなくなった。何をしようにも恐怖という名のフィルターがついて回るようになった(←突如、演奏曲を猫踏んじゃったに変えつつ)」
キンジ(え、ちょっ!? なんでこの状況で猫踏んじゃった!? シリアスな雰囲気が一気に台無しになったぞッ!?)
ジャンヌ「実力があるのに、もっと誇ったっていいのにリコリーヌは自分に自信を持てなくなった。世界の真の素晴らしさを知る機会を得ることが困難となったのだ(←突如、演奏曲をベートーヴェンの運命に変えつつ)」
キンジ(また変わった!? 今度はベートーヴェン!? って、ヤバッ、話聞いてなかった……)
~おまけ(その2 ネタ:キンジくんが音楽室にやって来た前日の出来事)~
神崎(……下手くそ。こいつも下手くそ。みーんな下手くそ)←イライラしながら選択教科棟周辺を歩くオリキャラ:神崎千秋くん
神崎(まっ、武偵高の音楽系の部活にクオリティを求めてるのがそもそも間違いなんだけどなぁ……くそッ。俺はこんな所で何をやってるんだ)
神崎(俺はホントは一般人になりたいんだ。それで音楽関係の仕事に就きたいんだ。なのに俺はどこで道を間違えたのか、武偵高なんてものに入る羽目になって……いや、ホントに何がどうしてこうなった!? この状況はさすがに理不尽すぎるだろ!?)
神崎「……ん?(←かすかに聞こえてきたピアノの音に足を止める神崎くん)」
神崎(これは、ベートーヴェンのピアノソナタの『悲愴』か。……フッ、すっげえデタラメ。これじゃあ悲惨だ)←鼻で笑いつつ
神崎(ッ!? いや、違う。デタラメだけど間違ってるんじゃない。凄い上手い。でもデタラメ。というか禍々しい。何だこれ!? 一体誰がここまで独創的な音楽を!?)←ダッシュで音楽室まで向かい勢いよく扉を開ける神崎くん
神崎「……何だ、これは(←唖然としつつ)」
神崎千秋が見たのは、ピアノを弾く銀髪の少女と彼女を取り囲む、全身を黒いローブに身を包んだ明らかに怪しい謎の集団だった。……怪しさ満載の謎の集団の中で妖しく響くピアノソナタ。奏でるのは銀髪の少女。
――と、その時。フードの集団が一斉に千秋の方にギロリと目を向ける。
神崎「――いッ!?(ヤバッ!? 何か見られたぞ!? 怖えよ! 何だよ、こいつら!?)」
フードA「あ」
フードB「あ」
フードD「あ」
フードF「あ」
フードC「Oh dear!」
フードD「見られた」
フードA「見られた」
フードE「見られた」
フードF「見られた」
フードJ「見られた」
フードA「どうする?」
フードB「どうする?」
フードⅠ「どうする?」
フードG「どうする?」
フードC「What to do?」
フードB「決まってる」
フードH「アレだ」
フードM「アレだな」
フードD「アレをやろう」
フードE「そうか」
フードI「そうだな」
フードA「それはいい」
フードF「それが良さそうだ」
フードN「それにしよう」
フードC「That’s a great idea!」
フードω「あの男を
フードA~Z「「「「「異議なし(←一斉に大鎌を構えつつ)」」」」」
フードα~ω「「「「「異議なし(←一斉にロープを取り出しつつ)」」」」」
フードC「No objection(←ムチを構えつつ)」
神崎「ひぃぃぃいいいいいいい!?(←神崎くんは逃げ出した!)」
ジャンヌ「……ん? 今誰かここに来ていたのか?(誰もいなくなった音楽室にてクエスチョンマークを浮かべつつ)」
――ジャンヌカンタービレ、始まりませんよ?
実の所、このネタをやるためだけにオリキャラ:神崎くんの名前を『千秋』にしたという裏話があったりします。まぁ何だ……強く生きてくれ、一般人代表:神崎くん。