【完結】熱血キンジと冷静アリア   作:ふぁもにか

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アリア「ふ、ふふッ。ついに私の雪辱を晴らす時が――え、あれ?」

 どうも、ふぁもにかです。今回はジャンヌ戦の後編なので、前回まではただの傍観者だったキンジくんとアリアさんもようやく動き始めます。さぁ、激化する戦闘に勝利するのはどっちだッ!?

 ……それにしても。最近この二次創作のカオス成分が足りなくなってるような気がするんですけど、こんな感じで大丈夫なんでしょうかねぇ。



54.熱血キンジと轟く氷雷

 

(よくやった、ユッキー! ここから先は俺たちの番だ!)

 

 白雪がジャンヌの目の前でスタングレネードを発動させるという自爆行為を行った、まさにその時。目と耳をしっかり塞いでスタングレネードの効果をやり過ごしたキンジとアリアは二手に分かれてそれぞれ戦場へと駆けていく。

 

 先ほど白雪の投げたスタングレネードはキンジたち三人が地下6階へと上がる際にちゃっかりキンジが地下7階から拝借していた代物だ。火薬爆薬何でもござれの地下倉庫の地下7階にスタングレネードの積まれた領域があったのを見つけたため、何かに使えるかもしれないとキンジは数個だけありがたく頂戴し、それをあらかじめ白雪に渡していたのだ。

 

 ちなみに。ジャンヌと同じく至近距離でスタングレネードをモロに喰らったはずの白雪はというと、ジャンヌの眼前から音もなく消失していた。その代わりに、さっきまで白雪のいた場所をヒラヒラと紙人形が宙を舞っている。白雪はジャンヌの放った銃剣に自身の折鶴を衝突させて意図的に煙を発生させた時に、自分を紙人形の偽物とすり替えていたのだ。そのため。本物の白雪は今何をしているかというと、物陰でのんびりと休憩中である。さらに言うなら、「ふぃー、疲れた……」とため息を吐きつつグイーッと背伸びをしている。

 

 一方。キンジはジャンヌの背後へと移動し、アリアはジャンヌの前方を陣取る。ジャンヌを前後で挟み込む配置へと移動したキンジとアリアはジャンヌ越しに視線を交わすと、二方向から一気にジャンヌへと接近し始めた。その途中でキンジはジャンヌに向けて発砲する。

 

「チィッ!」

 

 ギリギリの所で目を瞑ったことでスタングレネードの攻撃的な光からは逃れられたものの、耳を襲う爆音までは防ぎきれなかったジャンヌはグワングワンと揺れる頭とふらついた足取りながらどうにかキンジの銃弾を避ける。しかし。さすがに完全にはかわせなかったのか、銃弾はジャンヌの頬を掠めていった。

 

「ハッ! バカか貴様はッ!? 貴様の位置から発砲すれば、我の避けた弾丸は全て神崎・H・アリアに直撃――何ッ!?」

 

 銃弾の脅威から逃れられたジャンヌはキンジの行いを愚かと嗤う。しかし、その嘲笑の笑みはすぐさま驚愕の表情に塗り替えられた。アリアがジャンヌが避けたばかりのキンジの銃弾に自身の発砲した銃弾を当てて、自身の放った銃弾ごと再びジャンヌの元へと弾道を方向修正してきたのだ。

 

 アリアの高度な銃弾撃ち(ビリヤード)により一発から二発に増えて飛来してくる弾丸。体を無理やり捻って寸での所で避けきったジャンヌを前に、キンジも銃弾撃ち(ビリヤード)の技術を駆使して、自身へと迫りくる二発の弾丸を四発に倍増させてジャンヌへと送り返す。

 

「こ、の――小癪な真似を!」

 

 未だにフラフラとしたおぼつかない足取りのジャンヌは苛立ちを惜しみなく表情に顕わにすると、調子に乗るなと言わんばかりに剣を床にグサリと突き刺す。そして。「凍結陥穽(フリージング☆カラミティ)!」と技名を叫んだ瞬間。ジャンヌを守るようにしてドーム状に氷のバリアが形成され、即座にジャンヌの体を包んでいった。よほど生成された氷が分厚いのか、氷のバリアの外からは中のジャンヌの様子が一切見えないようになっている。

 

「今ので勝負を終わらせたかったのですが……この様子だと仕切り直し、ですかね?」

「ま、そうなるだろうな。にしてもこの氷、結構固いな」

「……みたいですね。ちょっと私の小太刀でも試してみましょうか」

 

 キンジは拳銃の弾倉を変えてから試しに一度発砲する。だが。弾丸が氷にめり込みこそしたものの、ジャンヌを囲む氷の守護を破壊するには至らない。それを見たアリアが次は自身の小太刀で斬れるかどうかの確認をしようとドーム状の氷へと慎重に近づいていく。

 

「かかったなァ! 神崎・H・アリア!」

「ッ!? しまっ――うッ!?」

 

 と、その時。ドーム状の氷をバッサリと水平に切り裂く形でジャンヌがアリアに標的を定めてブオンと剣を力一杯振ってきた。凍結陥穽(フリージング☆カラミティ)で形成された氷が存外頑丈で分厚かったために、実はこの氷が内側からの攻撃に滅法弱く、また内側から外側が丸見えになるよう設定されている可能性に思い至れなかったキンジとアリアの隙を狙った奇襲である。

 

 不意打ち極まりないジャンヌの攻撃に回避が間に合わないと判断したアリアは尋常じゃない速度で迫ってくる剣を交差させた小太刀2本で受け止めようとする。しかし。地についた両の足で踏ん張って剣の衝撃を殺そうとするアリアの努力もむなしく、アリアの体は実にあっけなく吹っ飛ばされた。結果。風を切る勢いで後方へと飛ばされたアリアはガラクタと化したコンピュータの山へと背中から突っ込んでいった。

 

「アリアッ!」

「チッ。あの小太刀も業物か。どいつもこいつも平然と我が聖剣の切れ味に耐えおって。ムシャクシャする」

 

 キンジがアリアの安否を確かめようと半ば無意識に声を上げるも、アリアからの返事はない。積み重なる苛立ちを舌打ちに変換するジャンヌをよそに、キンジは頭からサァァと血が引いていくのを感じた。

 

 見た所、ジャンヌによって吹っ飛ばされたアリアは全く受け身を取れていなかった。それに加えて、アリアが吹っ飛ばされた場所が場所だ。もしもガラクタと遜色ないコンピュータ群の部品がアリアの体に突き刺さるようなことがあったらどうなるか。刺さり所次第では致命傷どころの話じゃない。即死だ。

 

(今は一秒でも早くアリアの所に行きたいけど――)

「まぁいい。まずは貴様からだ、遠山麓公キンジルバーナード! ふとした拍子にヒステリア・サヴァン・シンドロームにでもなられたら面倒だからな!」

 

 アリアを容易に吹っ飛ばしたジャンヌは周囲に出現させた銀氷で剣をキラリと煌めかせつつ、近場にいたキンジへと一直線に迫ってくる。その全身を無駄なく利用した駆動から、ジャンヌが氷のドームに囲まれている間にスタングレネードによるダメージから回復したのは明らかだ。

 

(まずはこいつをどうにかしないと!)

 

 キンジはアリアが大事に至っていないこと、もしくは仮にアリアに何かあったとしても今現在姿を隠している白雪が何らかの対処を施してくれていることを期待すると、眼前のジャンヌとの1対1の戦闘に意識を集中させることにした。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 ジャンヌがあたかも自分の体の一部のように自在に振り回す武器はあくまでジャンヌの自称だが聖剣だ。それもこれまで周辺に置かれたコンピュータたちを大した労力もなしに簡単にガラクタに変えてきた代物であり、ジャンヌが全幅の信用を置いているであろう代物でもある。ゆえに。そこらの拳銃やバタフライナイフであの剣を受け止めるのはリスクが高すぎる。

 

 切り払い、逆袈裟、唐竹、袈裟切り、右薙ぎ、刺突。ジャンヌの剣から流れるように繰り出される多様な攻撃をキンジは後退しつつしゃがみ込んだり、軽くジャンプしたりと器用にかわす。その一方で、キンジは隙を見てバタフライナイフで斬りつけようとしたり銃弾を放ってみたりするも、ジャンヌはその身に纏う部分的な西洋甲冑を巧みに駆使してキンジの攻撃を防御してみせる。どうやらキンジの手持ちの武器ではジャンヌの防具の耐久力を超える攻撃はできないようだ。

 

(さっきは銃弾を避けてたから拳銃は有効手段だと思ってたけど、違うみたいだな。さっきの回避はあくまでスタングレネードのせいで判断能力が落ちてただけってことか?)

 

 キンジがジャンヌとの激しい攻防の中でもしっかりと頭を働かせる中、対するジャンヌは「ええい! ちょこまかと!」と苛立ちを存分に声と表情に表している。大方、自身の得意戦術である緩急をつけた剣撃がキンジに通用せず、自分の思うように事が運ばないことに怒り心頭なのだろう。

 

(一々緩急のついた攻撃してくるから目で追うのがかなり大変だけど……ま、タイミングさえわかればそこまで深刻な問題じゃないな)

 

 キンジは剣を振り回して猛攻を仕掛けてくるジャンヌを前にひとまず内心で安堵の息を吐く。白雪とジャンヌが戦っている間。何もキンジはボーッとその場に突っ立っていたわけではない。キンジは己が戦闘に参加しないでいいことを利用して、ジャンヌの一挙手一投足をきちんとその目で観察していたのだ。

 

 ジャンヌが緩急をつけた剣撃を放つタイミング。呼吸の周期。目線の動かし方。足運び。手の動き。その他各種の細かな動きを隈なく観測したキンジはある程度ジャンヌの行動パターンを先読みできるようになっていた。でなければ、キンジがこれほど長くジャンヌの変則的な攻撃をかわし続けることなどできなかったことだろう。

 

(でも、拳銃やバタフライナイフが効かないんじゃ、決定打がない。アリアの小太刀やユッキーの色金殺女(イロカネアヤメ)があればまだ何とかなったかもしれないけど、所詮はないモノねだりだしなぁ……)

「――とっとと沈め! 氷葬連鎖(アイス☆コラプション)!」

 

 キンジが自身の決定打不足に頭を悩ませる中。現状でキンジにかすり傷さえつけることのできていないジャンヌはこのままでは埒が明かないと、キンジへの接近をピタリと止める。そして。青白い凍気を纏わせた剣先をスッと下ろしたかと思うと、一気に剣を天へと振り上げた。すると。剣を包んでいた凍気が剣を振る過程で鋭く尖った先端を持つ氷の弾幕へと具現化し、キンジ目がけて一目散に突撃してきた。

 

「いッ!?」

 

 ゴウと唸りを上げて迫りくる大量の氷の矢。全ての氷の矢を撃墜することはできないと瞬時に悟ったキンジは左足を軸に右へと跳ぶ。結果。キンジは自身の想定を軽く超えたジャンヌの攻撃に若干反応が遅れたために数か所切り傷を負うこととなるも、致命傷を避けることには成功した。

 

(ヤッバい、これホントにどうやって対処すれば――あ、そうだ。強力な武器がないなら、いっそジャンヌから剣を奪えばいいんじゃないか? ジャンヌの持ってる聖剣デュナミス何とかなら、鎧の耐久力なんて余裕で超えられるんじゃないか? そうと決まれば……)

 

 ほんの少しとはいえダメージを喰らったことで本格的に焦り始めたキンジの脳裏に天啓のごとく一つのアイディアが舞い降りてくる。勝機が見えてきた。キンジは笑みを浮かべたい衝動を堪えながらも、右手のバタフライナイフをしまってフリーな状態にする。

 

(……て、あれ? あいつは!?)

「大人しく斬られていろ! 遠山麓公キンジルバーナード!」

(後ろか!)

 

 キンジの視線が氷の矢へと向いていた間にキンジの背後へと回り込んでいたジャンヌはここで一気に勝負を決めようと、高く振り上げていた剣をキンジの頭目がけて振り下ろしてくる。白雪との戦いでそれなりに精神力を消耗している影響か、その剣は氷で覆われていない。キンジにとって、まさに降って湧いたような好機だった。

 

(よし、ここだ!)

 

 キンジは振り向きざまに眼前に迫るジャンヌの剣を右手の人差し指と中指のみを使った二指真剣白刃取り(エッジキャッチング・ビーク)で止めようとして――

 

「――ッ!?」

 

 ――咄嗟に左手の拳銃を捨てて、両手で剣を挟む形で真剣白刃取りをする判断を下した。ジャンヌの剣の振り下ろされるスピードがグンと急激に跳ね上がったが故のキンジの選択だ。

 

 先までのジャンヌの振り下ろしの速度ならば、二本の指を使った二指真剣白刃取り(エッジキャッチング・ビーク)で何ら問題なかっただろう。しかし。今の速さで振り下ろされた剣を片手で止められるとはキンジにはとても思えなかった。たったの指二本であの剣のスピードを殺せるとはとても思えなかったのだ。事実、もしもキンジが先の状況下で二指真剣白刃取り(エッジキャッチング・ビーク)を行おうものなら、今頃は物言わぬ斬殺体と化していたことだろう。

 

「ほぅ、これを止めるか。今のは決まったと思ったのだがな。いい判断ではないか」

「そうかよ。つーか、今のもそうだけどさっきから動きがおかしいにも程があるぞ、お前。何がどうなってんだ?」

 

 ジャンヌはあくまで上から目線ながら、キンジが自身の剣を止めたことに称賛の言葉を贈る。一方。先ほどの攻防で危うく命を落とすところだったキンジは顔面すれすれまで迫っていた聖剣デュランダルを前に、心の中に浮かんだ率直な気持ちをつい口に出してしまう。その背中にタラリと冷や汗が流れていくのをキンジは感じた。

 

「ククッ。なに、簡単な話だ。我は体の随所に軽く電気を流すことで瞬間的に我の筋力を増加させた上で戦っているだけだ。そうだな、わかりやすく言うなら、ドーピングだ」

「……電気を流すって、そんなの意図的にできるわけ――」

「――できるさ。我を誰だと思っている? 銀氷の魔女(ダイヤモンドダスト・ウィッチ)だぞ? この程度のこともできなければそれこそ名前負けだし、偉大なる我が始祖に顔向けできなくなってしまうだろう?」

 

 ジャンヌはよほど自身の聖剣を手放したくないのか、剣を捨てて別の手段でキンジに攻撃するという選択肢を取ろうとしない。そのため。キンジはジャンヌの剣を白刃取り状態で止めたまま、ジャンヌは剣の柄を強く握りしめたまま互いに言葉を交わす。

 

「知るかよ、そんなの。とにかく、武器は封じた。お前の活躍はここまでだ、ジャンヌ。痛い目に遭いたくないんなら、さっさと投降しろ」

 

 意図せずジャンヌ本人の口からジャンヌの通常ではありえない戦闘方法に関する情報を入手できたキンジは、剣にさらに力を込めてキンジを強引に斬ろうとするジャンヌとどうにか拮抗状態を保ちつつ、剣を奪うためにジャンヌの手を蹴ろうとする。が、キンジが軽い挑発を目的に放った一言がジャンヌの怒りのボルテージを最大限にまで引き上げる結果を招いてしまった。

 

「……クククッ。面白いことを言うな、遠山麓公キンジルバーナード。実に笑えるぞ。が、あまり我を舐めるなよォ!」

「グァッ!?」

 

 ジャンヌが怒りの赴くままに声を荒らげた瞬間、キンジの体に電流が走った。比喩ではない。突如としてジャンヌの体から生まれた緑色の電流が剣を伝ってキンジへと到達し、体全身を駆け回ったのだ。不意打ち気味に走った鋭い電撃により生じる痛みにキンジは思わず悲鳴を上げる。

 

(電撃ッ!? どうなってる!? こいつは氷の超能力者(ステルス)じゃ――)

「クククッ。何を驚いている? さっきもちゃんと説明してやっただろう? 『我は体の随所に軽く電気を流すことで瞬間的に我の筋力を増加させた上で戦っているだけだ』と。我の所属するイ・ウーとは我のような天賦の才を持つ超人どもが集い、能力をコピーし合う場所。ゆえに。我がリコリーヌの変装術に変声術を習得していても不思議ではあるまい。雷の超能力(ステルス)を習得していても不思議ではあるまい。能ある不死鳥(フェニックス)は炎を隠す。能ある超能力者(ステルス)超能力(ステルス)を隠す。常識だろう?」

「……う、まさか――」

「そう、そのまさか。我は氷と雷、二つの超能力(ステルス)を扱える、選ばれし人間なのだ!」

 

 してやったりと言わんばかりにニタァと笑みを深めるジャンヌを前にキンジは驚愕に目を見開く。同時にキンジは合点がいった。おそらく、ジャンヌは今まで氷の超能力(ステルス)と並行して雷の超能力(ステルス)を使用していたのだろう。しかし。それはいつもではない。ここぞという時だけ、ジャンヌは雷を使って己の神経を刺激することで、本来のジャンヌの身体能力では実現しえない並外れた動きを実現させていたのだろう。それが、ジャンヌの緩急のついた攻撃のカラクリだったのだ。

 

「さーて。我の秘密を知った以上、もはや貴様をコンマ1秒たりとも生かすつもりはない。さぁ、消滅しろ! 遠山麓公キンジルバーナード! 幻獄雷帝(アムネジア☆リミット)!」

 

 ジャンヌはその表情を凶悪なものに変えると、ありったけの精神力を総動員して雷の超能力(ステルス)を行使する。すると。さらに威力の増した緑色の雷がバチバチと己の凶悪性を音で示すとともにキンジに容赦なく襲いかかる。

 

「~~~ッ!」

 

 キンジは雷のあまりの威力に声にならない悲鳴を上げるも、ジャンヌの剣を決して手放さそうとしなかった。いや、手放せないのだ。手放したら最後、キンジはジャンヌの剣に真っ二つにされてしまうのだから。

 

 ジャンヌの剣を手放せば即死。手放さなければ雷の超能力(ステルス)によるなぶり殺し。まさに万事休すの状況。しかし。キンジは微塵も勝利を諦めていなかった。

 

 

 耐えろ、耐えきってみせろ! 遠山キンジ! 電撃が何だ? こんなのただの静電気じゃねえか! この程度の電撃も耐えられなくて、何がRランク武偵だ! 何が世界最強の武偵だ! ふざけるのも大概にしろよ! いずれ武偵の頂点に立つ気でいるんなら、どんな窮地だろうと凌いでみせろ! 突破してみせろ!

 

 

「ぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお――ッ!!」

「ッ!?」

 

 キンジは全身を駆け巡る激痛に負けないように腹の底から雄叫びを上げる。ギロリとジャンヌを睨みつける形でジャンヌを威圧する。キンジの咆哮に不覚にも面食らっていたジャンヌはキンジの鋭い眼差しを受けて「なッ!? 貴様、この状況でまだそんな目が……!」と動揺と困惑の入り混じった声を漏らす。

 

「ユッキィィィイイイイイイイ!!」

「あいさぁぁぁああああああああああ!!」

「って、いつの間に――!?」

 

 眼前のキンジに思わず気圧されるジャンヌ。それをチャンスと判断したキンジは白雪の名前を呼ぶ。すると。打てば響くように白雪から威勢のいい返事が返ってきたかと思うと、直後にはキンジとジャンヌとの間に抜刀の構えを取る白雪の姿があった。どうやら白雪はキンジに合図を出されるまでもなく、今が攻め時と判断して行動していたらしい。

 

「星伽候天流――緋緋星伽神(ひひのほととぎがみ)!」

 

 白雪は鞘に納めてある色金殺女(イロカネアヤメ)を神速と言っていい速さで抜刀する。刹那。白雪の刀から生じた緋色の閃光がジャンヌの剣をあっさりと通過し、豪快に炎の渦を巻き上げた。それだけに留まらず、刀から解き放たれた炎は荒れ狂うままに天井を穿ち、周囲に爆音を響かせる。今この瞬間、ジャンヌ・ダルク30世が信を置いていた聖剣デュランダルは根元から真っ二つに折られた。

 

「……」

「さて。貴女の自慢の剣はポッキリ折ったけど――どうかな? まだ戦う? 私としては、これ以上の戦いはあまりお勧めしないよ?」

 

 白雪の一撃必殺並みに強力な攻撃を受けて柄から分離された剣先は宙をクルクルと舞い、ザクッと床に突き刺さる。その様子をただただ呆然と見つめていたジャンヌに向けて、白雪は凛とした表情とキリッとした瞳で問いかけたのだった。

 




キンジ→久しぶりに熱血精神が復活した熱血キャラ。ヒスってもないのに二指真剣白刃取り(エッジキャッチング・ビーク)ができるだけの戦闘技術を持っている。
アリア→キンジとのコンビネーションが凄いことになってるものの、折角の見せ場であんまり活躍できなかった子。只今ログアウト中である。安否はいかに。
白雪→最後の最後でちゃっかりいい所を持っていった堕落巫女。アイエエエエ! ユッキー!? ユッキーナンデ!?
ジャンヌ→実は雷の超能力も使えちゃう厨二病患者。日頃から氷の超能力を使いまくっていたり自身を『銀氷の魔女(ダイヤモンドダスト・ウィッチ)』と名乗っていたのは自分が雷の超能力者でもあるという最大級の切り札を隠すためのブラフの意味合いもあったりする。

 以上、実は雷の超能力も使えちゃうジャンヌちゃんの巻でした。まぁ、ここでは登場人物全員の性能がもれなくアップしてるからこういった方面からのキャラ強化くらい当然ですね!

 ……いや。最初はこの設定ってどうなのとは思いましたよ? 思いましたけど、教授なんかイ・ウーに所属していたメンバー全員の超能力使えるっぽかったですし、それなら別にジャンヌちゃんが2つ超能力使えたっていいじゃないかとの結論に至ったのでジャンヌちゃんには氷雷姫になってもらいました。反省はしています、後悔はしていません。


 ~おまけ(ジャンヌの使った技説明)~

・凍結陥穽(フリージング☆カラミティ)
→人一人を覆い隠す程度のドーム状の氷のバリアを形成する技。氷の外側と内側とで自由に強度を設定できる。また、外側から内側の様子を見ることはできない。今回ジャンヌはこの技を自身を守るために行使したが、本来この技は敵を閉じ込めて外から斬撃を与えるためにジャンヌが編み出した技である。とはいえ、この技は攻防双方に使えるため、非常に使い勝手のいい技と言える。

・氷葬連鎖(アイス☆コラプション)
→凍気を纏った剣を振るうことで大量の氷の矢を放つ技。技の特性上、対象と剣をぶつけ合った際の至近距離からも放つことができるため、ジャンヌは基本的にこの技を不意打ち用に行使する傾向がある。また、この技は銃剣をただひたすら対象に向けて尋常じゃないスピードで投げ続けるほとばしる包囲網(ピアシング☆ウェブ)とよく似た系統の技でもある。

・幻獄雷帝(アムネジア☆リミット)
→自身の体で生成した緑色の雷をただそのまま相手にぶつけるだけの荒技。単純だがそれゆえに強力で、常人の意識を3秒も経たない内にブラックアウトさせるほどの威力を持っている。しかし、精神力の消耗が割と激しい上にどこか対象の身体に触れていないと技を発動できない仕様となっているため、ジャンヌはこの技をほとんど使わない。今回ジャンヌがわざわざこの技を使ったのは、キンジ相手に怒りを覚えたことで判断能力が大幅に低下したのが原因である。

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